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友人たち
沢下さん
しおりを挟む高校の先輩に「澤下さん」がいた。
澤下さんは、バレー部の先輩。
澤下さんは、どう見ても高校生には見えない「おっさん顔」。
澤下さんは、バレー部とは思えないデブの巨漢。
私は高校1年の夏休みにバレー部の練習のため学校へ行った。
用意をしていると先輩方がのそのそやってきた。
キャプテンの中丸さんは
「昨日、アンパンやりすぎて体がだりーよ。バレーなんかやってられるか!」
と朝からやる気がない。
澤下さんも昨夜のプロレス話に夢中になっていて、バレーどころではない。
そのころ、
世の中では初代タイガーマスクがブラックタイガーやダイナマイトキッドと戦い
新日本プロレスがゴールデン進出。
話題になっていた。
古館伊知郎が有名になった番組である。
澤下さんは大声で「あの技はすごい」とか「あそこで、こうだ」とか
身振り手振りでおおはしゃぎしている。
そこへ「用意ができました」と私が告げに行くと
「いいところへ来たね」という感じで、私を捕まえた。
私を仰向けにすばやく倒し「四の字固め」をかけてきた。
「痛てて、痛てー。ちょっと勘弁してください」と懇願すると。
「じゃあ、こうだ」といって今度は立ち上がり「サソリ固め」をかけようとした。
私は「冗談じゃない」と思い、足にチカラを入れてつっぱった。
すると、巨漢の澤下さんが、前のめりに顔から「ドカン」と倒れた。
「やばい」と思って、「大丈夫ですか?」と聞くが返事が無い。
先輩が集まってきて、
「澤下!」
「澤下!、大丈夫か!」
と声をかけるが返事が無い。
前のめりに倒れているので、巨漢の体をゴロンと仰向けにした。
すると、目が半開きで白目をむいている。
完全に気絶。
「これは、やばいぞ」と思っていると
キャプテンの松丸さんがやってきて
「おい、澤下! 起きろ!」
と襟首を持ってユサユサゆらしたり、平手で頬を思いっきり叩いたりしている。
松丸さんは
「駄目だな、こりゃ。寝せとけ!」
「じゃ、練習はじめるぞ!」と言った。
えーっ。寝せておくの?
救急車とか呼ばないの?
練習始めちゃうの?
私の不安をよそに、先輩方は練習を始めだした。
私もぐずぐずしていると、怒られるので
気にはなったが、澤下さんをそのままで、練習に参加した。
練習も中盤に差し掛かったとき、顧問の先生がやってきた。
この先生、学生時代にアメフトをやっていて、すごい体つき。
某神奈川の大学をアメフト日本一にしたときのキャプテンで、
某神奈川の大学では、神であり伝説の人である。
体育館の隅で大の字に倒れている澤下さんを見て、
キャプテンの中丸さんに
「おーい、中丸、澤下は何で寝てるんだ?」と聞いた。
中丸さんが顧問のところへ行き、事情を説明した。
すると、私が呼ばれた。
「やばい。これは絶対に怒られる。半殺しにあう」と思って、恐る恐る行くと
「バケツに水を持って来い」という。
言われたとおりにバケツに水を汲んで持っていくと
バシャーッと澤下さんにかけた。
澤下さんは「ヒューッ」っと声を出して目が覚めた。
そして「練習中に寝てるとは、何事か!」とコンコンと怒られているのを
私は、水浸しの体育館の床をモップで拭きながら聞いていた。
そして、何事もなかったように澤下さんは練習に参加した。
私は澤下さんの動きがいつもより俊敏なのを見逃さなかった。
いま思えば、気絶している者は放っておくし、
バケツで水をかけるし、
私は、とんでもない先輩と顧問に育てられたものである。
よくよく聞くと、澤下さんの気絶は2回目で
以前は、調子にのって、ダイナマイトキッドばりの
フライングヘッドパット(飛び込み型頭突き)をして自爆し
やはり水をかけられて復活したそうである。
不死身だ。
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