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番外編

もう一つのエピローグ

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※「二人の王女様の結末」の続きから、作者が用意していた別のエピローグです。


二国の戦争が終わって、五十年が経った。
セラは国民の大反対を受け王位を退位できず、戦争の後すぐにクルート国の王様に即位して国を収めた。

そして腎臓病を患ったセラは譲位した。
セラは生涯妻を迎えなかったため、学者になったカラの息子へと王位継承権を譲った。

重い腎臓病で余命宣告を受けたセラは、シェリーが最期を迎えたエルベラに赴くこととなった。
シェリーとレイとエルベラで過ごした日々は、あれから五十年の時間が経ってもセラは一日も忘れることがなかった。

二国の戦争が終わって間もなく、セラはレイがエルベラで亡くなったことを知らされた。
セラは王様としての公務に追われ、詳しいレイの死因も聞かず、愛する人が亡くなった辛い現実とずっと向き合うことができなかった。

「セラ王様、こちらです。」
「レイ…。」

エルベラに着いたセラは、大聖女サンから案内され、レイが眠る墓へ案内された。
セラはレイに渡すことができなかった白いストックの花束を、墓前に添えた。

「長い時間、待たせたね、レイ。プロポーズに用意していた花だったんだよ。ずっとレイの死を受け入れられなかった。」

そう言うとセラはレイの墓前に崩れるように倒れると、大量の涙を流した。

「なんであの時、レイをエルベラに置いて行ってしまったのか。ハルクに連れて行かなかったのか。後悔しない日はなかったよ。」

セラは感情的にレイへの気持ちが溢れていた。
セラの背をただ見つめていたサンは、セラの涙が落ち着くと話した。

「セラ王様。レイ様の死因をお伝えしてもいいですか?」
「あぁ…。」
「レイ様は妊娠しており、子供の命と引き換えに亡くなりました。そしてレイ様は私のお母様です。私はレイ様と…セラ王様の娘です。」
「なっ…!」

セラは振り向き目を丸くし、サンを見つめた。
サンは頭に深く被っていた白いローブを外し、結っていた髪を解いた。
金色に輝く髪と碧い目は、セラの風貌によく似ていた。

「大聖女様が私の娘?」
「はい。お父様、ずっとお会いしたいと思っていました。私がお母様の代わりに、エルベラで待っていました。」

サンがそう言って柔らかく微笑むと、両頬に笑窪が現れた。
その微笑みはレイに似ており、セラは胸が熱くなった。

「レイは命を繋いでくれたんだね。」

セラはそう言って涙を拭うと、サンの身体を包み込んだ。
愛しきレイの残したものに、セラは歓喜した。

そしてセラは二ヶ月エルベラでサンと穏やかに過ごした後に、息を引き取った。
セラは最期にレイの墓参りをし、そのままレイと眠るように墓前で倒れた。

安らかに眠るセラには、もう後悔はなかった。
そしてまた来世でレイと出会えた時は、サンと三人で暮らせることを夢見ていたのであった。



悲恋展開も、少し綴ってみました。
苦手な方いたらすみません。
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