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番外編
プロポーズの花(マリア✖️ロク)
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二国の戦争の終結から一ヶ月後。
マリアはゼロを連れ、アリセナ国に戻った。
戦場となったリガードはすっかり荒れ果てていたが、クルート国の支援が入り少しずつ整えられていた。
「ゼロとアリセナ国に帰ってこれて、本当に良かった。」
「マリア女王様。」
マリアはゼロを連れて自室に帰ると、突然ゼロの胸の中に飛び込み顔を埋めた。
女王様らしからぬ行動をしているのをマリアは重々分かっていたが、ゼロの前ではもう感情を自制できなかった。
「少しでも早く国を建て直さないと。ゼロの力が必要よ。」
「はい。精進いたします、女王様。」
「二人きりの時は敬語も様付けもやめて、ゼロ。これは王命よ。」
「分かったよ。」
ゼロはすっかり顔が赤くなったのをマリアに見つからないよう必死に隠し、左腕でマリアの頭を撫でた。
幼い頃から可愛らしく自分を慕ってくれたマリアはすっかり強情な一国の王になり、自分へのアプローチも積極的になっていることにゼロは気づいていた。
ゼロはある意味これからの二人の関係を不安に思ったが、マリアからの恋慕は嬉しい限りであった。
そしてリガードに戻って一週間。
旅の疲れが癒やたマリアは、居所や執務室を整えて、本日から公務に戻ろうとしていた。
オーウェン王様に仕えていた重臣の多くは二国の戦争の際に逃亡したり、亡くなってしまった。
マリアはただ一人信頼するルーエンを流刑地から呼び戻し、アリセナ国の宰相に任命した。
そしてアリセナ国に戻ったルーエンとゼロを、マリアは王宮に呼んだ。
ルーエンは死んだとされていた息子が生きてアリセナ国に戻ってきたことに歓喜し、涙が溢れていた。
「ルーエン、キース。これから戦後最初の王命を下します。この王命はクルート国からも許可を得ています。」
「「王命頂戴致します。」」
「異国の従者、セラ王子様の護衛騎士であったキースよ。私と婚姻してください。」
「「え…。」」
マリアの初めての公式な王命に対し、跪き深く頭を下げていたルーエンとゼロは顔を見合わせて同じ言葉を漏らした。
マリアが咳き込むと、ルーエンとゼロは体勢を戻し、ゼロが恐る恐る口を開いた。
「こんな私がマリア女王様の夫ー王配の役目が務まるのでしょうか。」
「ええ。この国では、ルーエンにしか務まらないことです。私を支えてはくれませんか?」
「大変申し訳ありません。考えさせてもらえませんか?」
「キース!」
マリアに対しる無礼な発言に、ルーエンは王宮から出てからゼロを説教した。
しかしその日、ゼロはマリアの出した王命へ返事をすることはなかった。
一方のマリアはゼロに対する強引なプロポーズをしたことに後悔し、悲観的になっていた。
『私の夫に、ゼロ以外の人が務まると考えられないのに。』
そして日付が変わり、早朝のことだった。
マリアが朝の支度を終えると、キースから庭園に呼ばれた。
花園もまだ荒れていて再建できておらず、戦火の名残が感じられた。
「どうしたんですか、こんな時間に。ゼロ。」
マリアが少し声を荒げながら振り返ると、ゼロは跪き花束をマリアの前に掲げていた。
「マリア、私と結婚して欲しい。ずっと愛していた。母親が同じ兄弟であるからと悩み、国内から離れることでこの気持ちを忘れようとしたが、想いは募るばかりだった。片腕がなく非力ではあるが、マリアの一番側で支えさせて欲しい。」
「ゼロ…。」
マリアはゼロの熱いプロポーズに涙が溢れ落ちるのを堪えながら、花束を受け取った。
そしてゼロはマリアを胸に寄せ、二人は強く抱き合った。
「マリア。もう絶対に離れたりしないよ。」
「私も愛してる。まさかわざわざゼロからプロポーズをするために昨日は返事をしてくれなかったの?」
「その通り。こんなに愛しているのに王命なんかで、マリアと結婚なんてしたくないよ。」
「ごめんなさい。」
ゼロの強い想いを感じたマリアは、その胸の中で嬉し涙を流した。
そしてしばらく抱擁を交わした後、マリアはゼロの体から離れると、ゼロから貰った華やかな明るい色の花束を見つめた。
「ガーベラ?」
「そう。ガーベラの花言葉は一途な強い愛や希望らしい。レイからプロポーズの花の一つとして教えてもらったんだ。ずっとマリアにプロポーズする時はガーベラを贈ろうと決めていたんだよ。」
マリアはまたゼロに抱きつくと、二人の強い愛だけでなく幸福な未来をも連想させるガーベラの花を眺め、二人は微笑み合った。
幼い頃から不可能だと諦めていた、マリアとゼロの初恋が成就した。
愛する人の幸福を祈りながら生きているレイと遠い地で愛する人を探しているセラの幸福を思い、マリアとゼロはガーベラの花によってまた深く結ばれたのであった。
マリアとゼロは大変仲睦まじく夫婦生活を送り、たくさんの子宝に恵まれた。
そして二人の作るアリセナ国は、幸福な国へと生まれ変わったのであった。
~
前代未聞の婚姻かもしれません!!笑
マリアには辛い罪を抱えさせてしまったので、幸せな未来を願ってやみませんでした。
番外編は全六話公開予定です。
マリアはゼロを連れ、アリセナ国に戻った。
戦場となったリガードはすっかり荒れ果てていたが、クルート国の支援が入り少しずつ整えられていた。
「ゼロとアリセナ国に帰ってこれて、本当に良かった。」
「マリア女王様。」
マリアはゼロを連れて自室に帰ると、突然ゼロの胸の中に飛び込み顔を埋めた。
女王様らしからぬ行動をしているのをマリアは重々分かっていたが、ゼロの前ではもう感情を自制できなかった。
「少しでも早く国を建て直さないと。ゼロの力が必要よ。」
「はい。精進いたします、女王様。」
「二人きりの時は敬語も様付けもやめて、ゼロ。これは王命よ。」
「分かったよ。」
ゼロはすっかり顔が赤くなったのをマリアに見つからないよう必死に隠し、左腕でマリアの頭を撫でた。
幼い頃から可愛らしく自分を慕ってくれたマリアはすっかり強情な一国の王になり、自分へのアプローチも積極的になっていることにゼロは気づいていた。
ゼロはある意味これからの二人の関係を不安に思ったが、マリアからの恋慕は嬉しい限りであった。
そしてリガードに戻って一週間。
旅の疲れが癒やたマリアは、居所や執務室を整えて、本日から公務に戻ろうとしていた。
オーウェン王様に仕えていた重臣の多くは二国の戦争の際に逃亡したり、亡くなってしまった。
マリアはただ一人信頼するルーエンを流刑地から呼び戻し、アリセナ国の宰相に任命した。
そしてアリセナ国に戻ったルーエンとゼロを、マリアは王宮に呼んだ。
ルーエンは死んだとされていた息子が生きてアリセナ国に戻ってきたことに歓喜し、涙が溢れていた。
「ルーエン、キース。これから戦後最初の王命を下します。この王命はクルート国からも許可を得ています。」
「「王命頂戴致します。」」
「異国の従者、セラ王子様の護衛騎士であったキースよ。私と婚姻してください。」
「「え…。」」
マリアの初めての公式な王命に対し、跪き深く頭を下げていたルーエンとゼロは顔を見合わせて同じ言葉を漏らした。
マリアが咳き込むと、ルーエンとゼロは体勢を戻し、ゼロが恐る恐る口を開いた。
「こんな私がマリア女王様の夫ー王配の役目が務まるのでしょうか。」
「ええ。この国では、ルーエンにしか務まらないことです。私を支えてはくれませんか?」
「大変申し訳ありません。考えさせてもらえませんか?」
「キース!」
マリアに対しる無礼な発言に、ルーエンは王宮から出てからゼロを説教した。
しかしその日、ゼロはマリアの出した王命へ返事をすることはなかった。
一方のマリアはゼロに対する強引なプロポーズをしたことに後悔し、悲観的になっていた。
『私の夫に、ゼロ以外の人が務まると考えられないのに。』
そして日付が変わり、早朝のことだった。
マリアが朝の支度を終えると、キースから庭園に呼ばれた。
花園もまだ荒れていて再建できておらず、戦火の名残が感じられた。
「どうしたんですか、こんな時間に。ゼロ。」
マリアが少し声を荒げながら振り返ると、ゼロは跪き花束をマリアの前に掲げていた。
「マリア、私と結婚して欲しい。ずっと愛していた。母親が同じ兄弟であるからと悩み、国内から離れることでこの気持ちを忘れようとしたが、想いは募るばかりだった。片腕がなく非力ではあるが、マリアの一番側で支えさせて欲しい。」
「ゼロ…。」
マリアはゼロの熱いプロポーズに涙が溢れ落ちるのを堪えながら、花束を受け取った。
そしてゼロはマリアを胸に寄せ、二人は強く抱き合った。
「マリア。もう絶対に離れたりしないよ。」
「私も愛してる。まさかわざわざゼロからプロポーズをするために昨日は返事をしてくれなかったの?」
「その通り。こんなに愛しているのに王命なんかで、マリアと結婚なんてしたくないよ。」
「ごめんなさい。」
ゼロの強い想いを感じたマリアは、その胸の中で嬉し涙を流した。
そしてしばらく抱擁を交わした後、マリアはゼロの体から離れると、ゼロから貰った華やかな明るい色の花束を見つめた。
「ガーベラ?」
「そう。ガーベラの花言葉は一途な強い愛や希望らしい。レイからプロポーズの花の一つとして教えてもらったんだ。ずっとマリアにプロポーズする時はガーベラを贈ろうと決めていたんだよ。」
マリアはまたゼロに抱きつくと、二人の強い愛だけでなく幸福な未来をも連想させるガーベラの花を眺め、二人は微笑み合った。
幼い頃から不可能だと諦めていた、マリアとゼロの初恋が成就した。
愛する人の幸福を祈りながら生きているレイと遠い地で愛する人を探しているセラの幸福を思い、マリアとゼロはガーベラの花によってまた深く結ばれたのであった。
マリアとゼロは大変仲睦まじく夫婦生活を送り、たくさんの子宝に恵まれた。
そして二人の作るアリセナ国は、幸福な国へと生まれ変わったのであった。
~
前代未聞の婚姻かもしれません!!笑
マリアには辛い罪を抱えさせてしまったので、幸せな未来を願ってやみませんでした。
番外編は全六話公開予定です。
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