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城下町でのデート
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「ルーナ、婚約パーティーの準備はどうだい?」
「…まだです。なかなか自分で決められなくて。」
私は王城に来てからも、キースと毎食を共にしていた。
本来キースは王族と食事するべきだろうところそうするのは、婚約者になる私への何かの配慮なのかと思っていた。
私はキースと二人で食事をしながらたくさんのことを話していたのだが、キースが朝食の時に話題にしたのは一ヶ月後に予定した私達の婚約パーティーのことだった。
元々あまり欲がないというか、優柔不断な私は、なかなか婚約パーティーの衣装や装飾を決められず、準備が進められていなかった。
「ルーナは今日、時間があるかい?私は今日予定がないから、一緒に選びに行こう。」
「え?選びに行くんですか?何回も業者の方が王城にいらしてくださっていましたが…。」
「ついでに城下町でデートをしよう。」
「え?デート…ですか?」
私はあまり気乗りしなかったが、キースの目は輝いていて断ることができなかった。
そして私達はロイや側近を連れて、まず城下町の衣装屋に向かったのである。
「これが可愛いな。ルーナにはこのドレスが似合うと思う。」
「はぁ…。」
衣装屋では、私以上にキースがご機嫌で、キース好みのドレスを私に着せては楽しんでいた。
きっと、こ今までも付き合った貴族の令嬢達をこうして衣装屋に連れて行き喜ばせていたんだろうなと、私は想像してキースを遠い目で見ていた。
「…この色いいですね。この形も素敵。」
「いいんじゃないか。」
そして小一時間経った頃に私がようやく選んだのは、オフホワイトより少しベージュのかかった、シルクのスレンダーラインのドレスだった。
これまで王城ではスカート部分がふわっと広がるプリンセスラインのドレスを着ることが多かったから、目新しくて気に入ってしまった。
「じゃあドレスは決まり。次は装飾だな。」
「装飾…ですけど。キース様、私大切にしているネックレスがあるんです。それを婚約パーティーの時に、身につけては無礼ですよね?」
「…ちなみに何の石なんだ?」
「エメラレルドです。」
それはソラから最期にもらったネックレスだった。
あれから肌身離さず持っていて、私のたった一つの宝物だった。
キースは一瞬目開いたが、すぐに穏やかに微笑んで言った。
「構わないよ。ただ左の薬指だけは、私のためにとっておいてくれれば。」
「それは勿論です。」
私は強制的ではあったが、キースとの結婚を今更拒否しようとは思っていなかった。
私はキースの深い意味を知ることもなく、気が付くとキースに頭を撫でられていた。
「さぁ、デートに行こう。衣装は用意していていたよ。着替えよう。」
「そう…ですね。」
私は気乗りしなかったが、衣装屋に付き合ってくれたキースへのお礼だと思い、キースの用意した衣装に着替えた。
平民が着るワンピースに着替えた私はキースに手を繋がれ、城下町にやって来た。
衣装屋まで大勢いた護衛達に対し、キースは「俺がルーナを守れるから。二人きりにしてほしい。」と説得がしたが折れず、護衛達は私達から少し離れた場所で陰から見守っているようだった。
私はキースにエスコートされ、城下町の賑やかな屋台を回っていた。
「あれ、今日はいつもの友達はいないのかい?まさか彼女?」
「そう、彼女とデートなんだ。」
「あら、女の子を連れてくるなんて初めてよね。なんだか息子に彼女ができたようで嬉しいわ。」
キースは屋台で顔見知りが多く、なぜか私を彼女だと紹介して回った。
確かに間違ってはないがなんだか恥ずかしくなり照れる私の手を、キースは離すことはなかった。
そして最後にカフェに入ると、私は甘たるいミルクティーを飲みながら、終始機嫌が良く笑みが絶えなかったキースに言ったのだ。
「キース様、とても楽しそうでしたね。」
「あぁ。私は小さい頃から、ロイやリュートと身分を隠して城下町を回っていたんだ。」
リュートとは、宰相の息子でキースの友人である。
「ルーナは少し気分転換になったかい?王城に来てから、忙しくしていただろう。」
「そうですね…なんだかこうやって、街で気兼ねなく遊ぶのは初めてだったんです。もし平民として生まれ変わってたらなんて、想像もしちゃいました。」
私も気分が良かったからか、つい本音を溢すと苦笑した。
こうやって街で遊ぶなんて、本当に生まれて初めてのことだった。
今世では母や兄の監視下で唯一許されたソラとは、限られた社交の場に行くことしかできなかったのだ。
「王城だけの生活も窮屈だろう。平民の生活を見るためにも、時々こうやって城下町でデートをしよう。あと、今度私の友人達と飲みに行こう。」
「…前に言ってた祝杯ってやつですか?」
「そうそう。」
「そうですね。外でお酒…ちょっと飲んでみたいです。」
「じゃあ計画しておこう。」
極めて王族らしからぬ計画を前に、私達は手を取り笑い合った。
そして日も暮れると、護衛騎士に連れられて王城へと戻って行った。
「…まだです。なかなか自分で決められなくて。」
私は王城に来てからも、キースと毎食を共にしていた。
本来キースは王族と食事するべきだろうところそうするのは、婚約者になる私への何かの配慮なのかと思っていた。
私はキースと二人で食事をしながらたくさんのことを話していたのだが、キースが朝食の時に話題にしたのは一ヶ月後に予定した私達の婚約パーティーのことだった。
元々あまり欲がないというか、優柔不断な私は、なかなか婚約パーティーの衣装や装飾を決められず、準備が進められていなかった。
「ルーナは今日、時間があるかい?私は今日予定がないから、一緒に選びに行こう。」
「え?選びに行くんですか?何回も業者の方が王城にいらしてくださっていましたが…。」
「ついでに城下町でデートをしよう。」
「え?デート…ですか?」
私はあまり気乗りしなかったが、キースの目は輝いていて断ることができなかった。
そして私達はロイや側近を連れて、まず城下町の衣装屋に向かったのである。
「これが可愛いな。ルーナにはこのドレスが似合うと思う。」
「はぁ…。」
衣装屋では、私以上にキースがご機嫌で、キース好みのドレスを私に着せては楽しんでいた。
きっと、こ今までも付き合った貴族の令嬢達をこうして衣装屋に連れて行き喜ばせていたんだろうなと、私は想像してキースを遠い目で見ていた。
「…この色いいですね。この形も素敵。」
「いいんじゃないか。」
そして小一時間経った頃に私がようやく選んだのは、オフホワイトより少しベージュのかかった、シルクのスレンダーラインのドレスだった。
これまで王城ではスカート部分がふわっと広がるプリンセスラインのドレスを着ることが多かったから、目新しくて気に入ってしまった。
「じゃあドレスは決まり。次は装飾だな。」
「装飾…ですけど。キース様、私大切にしているネックレスがあるんです。それを婚約パーティーの時に、身につけては無礼ですよね?」
「…ちなみに何の石なんだ?」
「エメラレルドです。」
それはソラから最期にもらったネックレスだった。
あれから肌身離さず持っていて、私のたった一つの宝物だった。
キースは一瞬目開いたが、すぐに穏やかに微笑んで言った。
「構わないよ。ただ左の薬指だけは、私のためにとっておいてくれれば。」
「それは勿論です。」
私は強制的ではあったが、キースとの結婚を今更拒否しようとは思っていなかった。
私はキースの深い意味を知ることもなく、気が付くとキースに頭を撫でられていた。
「さぁ、デートに行こう。衣装は用意していていたよ。着替えよう。」
「そう…ですね。」
私は気乗りしなかったが、衣装屋に付き合ってくれたキースへのお礼だと思い、キースの用意した衣装に着替えた。
平民が着るワンピースに着替えた私はキースに手を繋がれ、城下町にやって来た。
衣装屋まで大勢いた護衛達に対し、キースは「俺がルーナを守れるから。二人きりにしてほしい。」と説得がしたが折れず、護衛達は私達から少し離れた場所で陰から見守っているようだった。
私はキースにエスコートされ、城下町の賑やかな屋台を回っていた。
「あれ、今日はいつもの友達はいないのかい?まさか彼女?」
「そう、彼女とデートなんだ。」
「あら、女の子を連れてくるなんて初めてよね。なんだか息子に彼女ができたようで嬉しいわ。」
キースは屋台で顔見知りが多く、なぜか私を彼女だと紹介して回った。
確かに間違ってはないがなんだか恥ずかしくなり照れる私の手を、キースは離すことはなかった。
そして最後にカフェに入ると、私は甘たるいミルクティーを飲みながら、終始機嫌が良く笑みが絶えなかったキースに言ったのだ。
「キース様、とても楽しそうでしたね。」
「あぁ。私は小さい頃から、ロイやリュートと身分を隠して城下町を回っていたんだ。」
リュートとは、宰相の息子でキースの友人である。
「ルーナは少し気分転換になったかい?王城に来てから、忙しくしていただろう。」
「そうですね…なんだかこうやって、街で気兼ねなく遊ぶのは初めてだったんです。もし平民として生まれ変わってたらなんて、想像もしちゃいました。」
私も気分が良かったからか、つい本音を溢すと苦笑した。
こうやって街で遊ぶなんて、本当に生まれて初めてのことだった。
今世では母や兄の監視下で唯一許されたソラとは、限られた社交の場に行くことしかできなかったのだ。
「王城だけの生活も窮屈だろう。平民の生活を見るためにも、時々こうやって城下町でデートをしよう。あと、今度私の友人達と飲みに行こう。」
「…前に言ってた祝杯ってやつですか?」
「そうそう。」
「そうですね。外でお酒…ちょっと飲んでみたいです。」
「じゃあ計画しておこう。」
極めて王族らしからぬ計画を前に、私達は手を取り笑い合った。
そして日も暮れると、護衛騎士に連れられて王城へと戻って行った。
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