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永禄の改革
間話
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本圀寺防衛戦が終わり、幕府と朝廷から論功行賞や、その後の取り決めが行われている時・・・。
~剣城邸~
「奥方殿!次は明の商船の女です!なんでも、名前を言えば分かるとの事です!朱華と申しております」
「え!?朱華様ですか!?布施様!今すぐ晩餐室にお呼びして下さい!林様は仕官してきた人達を紙に書いて、何を希望しているか記しておいて下さい!」
「うむ。相分かった」
まさか剣城様が不在の時に帰ってくるとは・・・。
「ゆき?そんなに慌ててどうしたの?」
「明の女の人が居たでしょう?帰って来たみたいなの。剣城様は戦の前に、今年の織田家の抱負を言っていたのだけど、それには朱華様始め、明の商船が重要らしいのよ」
「そうなの?私は何も聞いていないけど・・・」
「菊は仕方ないんじゃない?小見様付きになったんだし。そんな事じゃなく、菊は何か料理作って来てちょうだい!」
「分かったわよ」
「ふふふ。久しぶりね。今日は金剛や剛力も居ないのね?」
「お久しぶりにございます。剣城様は少し中央にて小競り合いがあり、出陣しております」
「そう。なら仕方がないわね。ハオユー!土産を」
「はっ!」
「これは!?」
「ふふふ。気にしないでちょうだい。船は那古屋に置いて来たのだけど、その那古屋の吉蔵達一門の者達が、剣城殿が結婚したと聞いてね?あんたが妻だろう?」
「は、はい!私が剣城様の妻のゆきと申します」
「ふぅ~ん!良い女じゃないか。まぁそれで急遽、贈り物をと思ったんだけど、なんせ急だったから渡す物が無くてね。それは鳳凰っていう故郷に伝わる霊獣の木彫りさ」
「鳳凰!?ですか!?」
「あぁ。鳳凰とは、平和をもたらす寿福の象徴とされ、東方より太陽の光に乗って飛んで来ると言われている。人生を良い方向に運ぶって意味があるのさ。アタイの個人的な私物の一つで申し訳ないけど、それを結婚の贈り物として貰ってちょうだい」
「そ、そんな!貰えません!」
「いいさいいさ。それにこれからはね・・・。アタイもよく顔を合わせる事になるしさ」
「どういう意味でしょうか?」
「剣城殿から聞いてないのかい?アタイは本国でも特殊な立場になったのさ。まぁ、旦那が帰って来たら全て言うよ」
「そうですか。分かりました。兎に角、暫くはこの家をお使い下さい。今、食事の支度をしております。湯に浸っては如何ですか?按摩の方も手配しております。長旅の疲れを癒して下さい」
「ふふふ。本当にデキた女ね!いただくわ」
~剣城邸 大広間~
「ふむ。では、其方は・・・?」
「はっ。自分は大谷休泊(おおやきゅうはく)と申します」
「ふむ。この書状は矢沢何某殿の直筆とな?それで、その上野国の矢沢何某殿から言われて来た、というのだな?」
「はっ。芝田様に伝えれば無下にはされない。某も農業の事に関しては、国では1番だと自負しておりましたが、どうも聞いたところによると美濃や尾張では、有り得ないくらいの稲穂が出来る、と聞きまして。『田植えから収穫まで約1年間学んで来い』と言われました」
「ほぅ?ただで学べると?」
「そんな滅相もございませぬ!矢沢様が『できる事なら何でも協力する』と伝えろとも言われております!」
「其方の殿は豪族であろう?格が違うのではないのか?」
「も、申し訳ございませぬ!『芝田殿から学舎なら誰でも学んで良い場所』と文が届いておりまして、それを鵜呑みにしてしまいました」
「ゴホンッ。林殿。少しよろしいか」
「ふん。布施の爺か。控えろ!ワシが応対している」
「いや、そんな事では剣城殿に叱られますぞ」
「何だと!?」
「剣城殿はそういうのは望んでいないでしょう?しかも、矢沢殿は今後も『仲良くしたい』と申しておりましたぞ!」
「クッ・・・。ここは、お主に任せる!」
ワシともあろう者が・・・。織田家 1番家老のワシが、このような事も我慢せねばならぬとは・・・。いや、短気は損気。ここで短慮を起こしてしまっては、本当に裏切り者と謗られよう。ここは悔しいが、布施の姿勢を真似てみようか。
「ほっほっほっ。これはこれは・・・。林様ではございませぬか?」
「おっと・・・。小見殿ではありませんか。こんな所に来られるとは何用で?」
「それは異な事。この家は妾の・・・失礼。私も住んで居る故、どこへでも現れましょう。それより、なんぞ苦労してるように見えまするが?私で良ければ話くらい聞きますよ?」
「いや、美濃の母と言われる小見殿に、造作をかけるのは忍び無い」
「何でも熟す林様ともあろう殿方が、仕官してくる者の選別も出来ないと?」
「・・・・・」
「おや?ほんに、面白い男達ばかりではありませぬか?どれ・・・私が一つ、林様の仕事を一つ試してみましょうか」
「いくら小見殿とて、勝手は許されぬのではありませぬか?」
「いいえ。剣城殿とは義息子のように思っております故。このような些末な事を一々言われませんよ。仮に私が敵方の間者を迎え入れたとしても、わざとでなければあの方は笑って許してくれますので。林様は剣城殿の本質を見れば、活路が見出せるのでは?どれ・・・其方、名は何と申す?」
「えっと・・・アッシは既に剣城様に仕えているのでございます。実は隣に居る者なのですが・・・」
「うん?確か其方は年末のバーベキューとやらの折に苔に話し掛けていた者だったかぇ?」
「猿飛佐助と申します。隣の者は・・・」
「某は・・・元織田信次様支配内 洲賀才蔵(すがさいぞう)と申します」
「はて?聞かぬ名じゃな?」
「貴様ッ!!どのツラ下げて戻ってきた!!お館様が許してもワシは許さんぞ!!」
「林様!控えなさい!ここは私に任せると一任したではありませぬか!洲賀とやら。其方の昔に何が起こったかは知りませぬ。じゃが、信次殿の許しとやらはあるのかぇ?」
「クッ・・・・。小見殿・・・。お任せ致す」
「あのう・・・」
「構わぬ。州賀とやらは続けなさい」
「はぁ~。それで、信次様には御目通り願うも暇を与えられ・・・。お館様から逃げる形となりましたが、逃げ続ける事も相叶わず。もし捕らえられようとも、今一度、下っ端からでも使いっ走りでも、織田家の役に立ちたいと・・・」
「ふむ。何故、芝田家へと?」
「それは、この旧友の猿飛に『仕官するなら絶対に芝田家にしろ』と言われまして。それにここの主は差別はしない、と聞いていまして。元、お尋ね者の某には丁度良いかと・・・。寧ろ、他の家は誰も仕官させてもらえません」
「ふむふむ。相分かった。ここの主へは私から伝えておこう。それと、婿殿にも口添えしておこう」
「小見殿!?」
「林様も、昔の事を根に持つだけではいけませぬよ。恐らく、喜六郎殿の事でしょう?あれは婿殿を真似ていたと、聞いた事があります。まぁ、悪いようにはせぬよう口添えしよう」
「あ、ありがとうございまする!!」
「小見殿・・・。さすがのワシもあの者はどうかと思いますぞ?」
「他の皆はどう思うかは知りませぬが、芝田家はお尋ね者の集団ですからね。それが、今や織田家では重要な役割の者達ばかりですよ?草草と皆が侮っていた者達です。昔ならいざ知らず、今の私は無下にはしませんよ」
「左様ですか。ならば、ワシも何も言いますまい」
~剣城邸~
「奥方殿!次は明の商船の女です!なんでも、名前を言えば分かるとの事です!朱華と申しております」
「え!?朱華様ですか!?布施様!今すぐ晩餐室にお呼びして下さい!林様は仕官してきた人達を紙に書いて、何を希望しているか記しておいて下さい!」
「うむ。相分かった」
まさか剣城様が不在の時に帰ってくるとは・・・。
「ゆき?そんなに慌ててどうしたの?」
「明の女の人が居たでしょう?帰って来たみたいなの。剣城様は戦の前に、今年の織田家の抱負を言っていたのだけど、それには朱華様始め、明の商船が重要らしいのよ」
「そうなの?私は何も聞いていないけど・・・」
「菊は仕方ないんじゃない?小見様付きになったんだし。そんな事じゃなく、菊は何か料理作って来てちょうだい!」
「分かったわよ」
「ふふふ。久しぶりね。今日は金剛や剛力も居ないのね?」
「お久しぶりにございます。剣城様は少し中央にて小競り合いがあり、出陣しております」
「そう。なら仕方がないわね。ハオユー!土産を」
「はっ!」
「これは!?」
「ふふふ。気にしないでちょうだい。船は那古屋に置いて来たのだけど、その那古屋の吉蔵達一門の者達が、剣城殿が結婚したと聞いてね?あんたが妻だろう?」
「は、はい!私が剣城様の妻のゆきと申します」
「ふぅ~ん!良い女じゃないか。まぁそれで急遽、贈り物をと思ったんだけど、なんせ急だったから渡す物が無くてね。それは鳳凰っていう故郷に伝わる霊獣の木彫りさ」
「鳳凰!?ですか!?」
「あぁ。鳳凰とは、平和をもたらす寿福の象徴とされ、東方より太陽の光に乗って飛んで来ると言われている。人生を良い方向に運ぶって意味があるのさ。アタイの個人的な私物の一つで申し訳ないけど、それを結婚の贈り物として貰ってちょうだい」
「そ、そんな!貰えません!」
「いいさいいさ。それにこれからはね・・・。アタイもよく顔を合わせる事になるしさ」
「どういう意味でしょうか?」
「剣城殿から聞いてないのかい?アタイは本国でも特殊な立場になったのさ。まぁ、旦那が帰って来たら全て言うよ」
「そうですか。分かりました。兎に角、暫くはこの家をお使い下さい。今、食事の支度をしております。湯に浸っては如何ですか?按摩の方も手配しております。長旅の疲れを癒して下さい」
「ふふふ。本当にデキた女ね!いただくわ」
~剣城邸 大広間~
「ふむ。では、其方は・・・?」
「はっ。自分は大谷休泊(おおやきゅうはく)と申します」
「ふむ。この書状は矢沢何某殿の直筆とな?それで、その上野国の矢沢何某殿から言われて来た、というのだな?」
「はっ。芝田様に伝えれば無下にはされない。某も農業の事に関しては、国では1番だと自負しておりましたが、どうも聞いたところによると美濃や尾張では、有り得ないくらいの稲穂が出来る、と聞きまして。『田植えから収穫まで約1年間学んで来い』と言われました」
「ほぅ?ただで学べると?」
「そんな滅相もございませぬ!矢沢様が『できる事なら何でも協力する』と伝えろとも言われております!」
「其方の殿は豪族であろう?格が違うのではないのか?」
「も、申し訳ございませぬ!『芝田殿から学舎なら誰でも学んで良い場所』と文が届いておりまして、それを鵜呑みにしてしまいました」
「ゴホンッ。林殿。少しよろしいか」
「ふん。布施の爺か。控えろ!ワシが応対している」
「いや、そんな事では剣城殿に叱られますぞ」
「何だと!?」
「剣城殿はそういうのは望んでいないでしょう?しかも、矢沢殿は今後も『仲良くしたい』と申しておりましたぞ!」
「クッ・・・。ここは、お主に任せる!」
ワシともあろう者が・・・。織田家 1番家老のワシが、このような事も我慢せねばならぬとは・・・。いや、短気は損気。ここで短慮を起こしてしまっては、本当に裏切り者と謗られよう。ここは悔しいが、布施の姿勢を真似てみようか。
「ほっほっほっ。これはこれは・・・。林様ではございませぬか?」
「おっと・・・。小見殿ではありませんか。こんな所に来られるとは何用で?」
「それは異な事。この家は妾の・・・失礼。私も住んで居る故、どこへでも現れましょう。それより、なんぞ苦労してるように見えまするが?私で良ければ話くらい聞きますよ?」
「いや、美濃の母と言われる小見殿に、造作をかけるのは忍び無い」
「何でも熟す林様ともあろう殿方が、仕官してくる者の選別も出来ないと?」
「・・・・・」
「おや?ほんに、面白い男達ばかりではありませぬか?どれ・・・私が一つ、林様の仕事を一つ試してみましょうか」
「いくら小見殿とて、勝手は許されぬのではありませぬか?」
「いいえ。剣城殿とは義息子のように思っております故。このような些末な事を一々言われませんよ。仮に私が敵方の間者を迎え入れたとしても、わざとでなければあの方は笑って許してくれますので。林様は剣城殿の本質を見れば、活路が見出せるのでは?どれ・・・其方、名は何と申す?」
「えっと・・・アッシは既に剣城様に仕えているのでございます。実は隣に居る者なのですが・・・」
「うん?確か其方は年末のバーベキューとやらの折に苔に話し掛けていた者だったかぇ?」
「猿飛佐助と申します。隣の者は・・・」
「某は・・・元織田信次様支配内 洲賀才蔵(すがさいぞう)と申します」
「はて?聞かぬ名じゃな?」
「貴様ッ!!どのツラ下げて戻ってきた!!お館様が許してもワシは許さんぞ!!」
「林様!控えなさい!ここは私に任せると一任したではありませぬか!洲賀とやら。其方の昔に何が起こったかは知りませぬ。じゃが、信次殿の許しとやらはあるのかぇ?」
「クッ・・・・。小見殿・・・。お任せ致す」
「あのう・・・」
「構わぬ。州賀とやらは続けなさい」
「はぁ~。それで、信次様には御目通り願うも暇を与えられ・・・。お館様から逃げる形となりましたが、逃げ続ける事も相叶わず。もし捕らえられようとも、今一度、下っ端からでも使いっ走りでも、織田家の役に立ちたいと・・・」
「ふむ。何故、芝田家へと?」
「それは、この旧友の猿飛に『仕官するなら絶対に芝田家にしろ』と言われまして。それにここの主は差別はしない、と聞いていまして。元、お尋ね者の某には丁度良いかと・・・。寧ろ、他の家は誰も仕官させてもらえません」
「ふむふむ。相分かった。ここの主へは私から伝えておこう。それと、婿殿にも口添えしておこう」
「小見殿!?」
「林様も、昔の事を根に持つだけではいけませぬよ。恐らく、喜六郎殿の事でしょう?あれは婿殿を真似ていたと、聞いた事があります。まぁ、悪いようにはせぬよう口添えしよう」
「あ、ありがとうございまする!!」
「小見殿・・・。さすがのワシもあの者はどうかと思いますぞ?」
「他の皆はどう思うかは知りませぬが、芝田家はお尋ね者の集団ですからね。それが、今や織田家では重要な役割の者達ばかりですよ?草草と皆が侮っていた者達です。昔ならいざ知らず、今の私は無下にはしませんよ」
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