上 下
329 / 373
永禄の改革

落着

しおりを挟む
 「我が君!そう浮かない顔ばかりしてると幸せが逃げますぞ!」

 「はぁー」

 オレは本陣にていつか、Garden of Edenで購入したなりきり王様イスというものに座っている。なんでもこのイスに座れば気分が高揚するらしい。今のところオレには効果が現れていないけど。信長さんに叱られるだろうな・・・

 『これほど圧倒的に戦力、人を持ってしてなにをしておるのかッ!!!』

 って、言われそうな気がする・・・。

 「甲賀隊 第一部隊 前田慶次戻ったぞ」

 「同じく砲兵隊 小泉伝七郎帰参致しました」

 「お帰り!戦果はどうだった?」

 「見ての通りだ。小泉が寸でのところで国友大筒mk-2をぶっ放すところを俺が諫めたのだ」

 「あぁ~。やっぱり撃たなかったんだ?それで?」

 「池田城には国友大筒を5発程放ちました。一門台座に亀裂が入ったため撃つのを辞めたのと同じくらいに剛力が・・・」

 「坂井隊ただいま戻りました」「柴田隊戻ったぞ」

 「森隊戻った。ついでに浅井隊、徳川隊も戻ったぞ」

 「みなさんお疲れ様です!」

 「他愛ない。あの大砲の轟音が鳴るとともに城兵は恐慌状態になった。少し乱戦にはなったが死亡者は0だ。怪我した者は居るがな」

 「怪我!?早くその人達を後方に!鞠ちゃん!怪我人が居るから早く!」

 「はい!」

 「剣城よ。敵も中々だった。それで怪我人しか居ないとは普通なら有り得ない」

 「森様・・・」

 「そうだ。ワシも何も考えず飛び出したが実に気持ち良い戦場だった。戦に負傷者、死亡者は付きものだ。だが見てみろ。完勝も完勝。お館様も、きっと驚くぞ!どえらい褒美がお前は貰えるかもな!」

 「いやそんな気分には・・・」

 「剣城君!」

 「あっ、義弘さん!」

 「うむ。織田殿の本隊がこちらへ向かって来ている!ほぼ被害が0だそうだな?羨ましいぞ!薩摩兵児(さつまへご)なら半分は脱落してるぞ!その分敵も9割は屠っているだろうがな!ははは!」

 いやそれは薩摩人が頭おかしいだけだと思う。

 「まぁそういうことだ。ワシも戦の前には100は足軽達は死ぬと思うておったがこのような戦は初めてだ。気を落とすな。これが戦だ」

 「まぁそう思う事にします。それで敵の池田勝正はどうなりましたか?」

 「お前の隊の一軍が捕らえたぞ。まぁ坂井隊が町を燃やした火攻めで降伏を示してきたがな」

 「やはり坂井様ですね。信長様にちゃんと伝えておきますよ」

 「あ、いや・・・そんな事は・・・」

 「ほら。また謙遜する。オレが言えた事じゃないですけど、少しは胸張りましょう!」

 暫くは本陣で各々は泥を払ったり、柴田さんなんかは帰ってそうそうオニギリを食べたりと落ち着いた雰囲気になった。

 オレはやはりどうしても浮かない。だがそんな中、剛力君と金剛君が3人の男を縛り上げて連れて来た。真ん中の男がそうだろう。

 「剣城様、遅れて申し訳ありません。池田勝正以下2名捕縛致しました」

 「剛力君、金剛君お疲れ様。下がって休んでていいよ」

 「「御意」」

 二人は誰かは分からないけど、一人はどっしりと構えている。然も『どうだ!これが俺の力だ!』と言わんばかりだ。

 「この隊の大将の織田軍の芝田剣城と申します」

 「池田城 城主 池田勝正であるッ!!隣は弟の池田知正、池田光重であるッ!!」

 「ふっ。降伏した将の割に偉そうですね」

 「あの轟音の鳴る大筒がこちらにもあれば負けはしなかった!池田の兵も美濃兵、尾張兵にも負けてはいない」

 いやよく、そんな事が言えるな!?確かにこちらに被害は出たけど100倍は違うと思うぞ!?

 「思い残す事は?」

 オレは冷たい声で戦神様から貰った蛇剣を抜く。

 シャキンッ

 「お、おい!待て待て!こっちは降伏を示した!それを一軍の将のお前が処遇を決めるのか!?」

 「信長様には後からオレが伝えますよ。いやなに・・・少し怒られるでしょうけどね」

 「いや、ま、待て!」

 柴田さんも坂井さんも美濃三人衆も森さんも義弘さんもみんな黙っている。降伏した敵をオレが自ら斬るというのは初めてだ。

 そして剣を振りかぶろうとしたところで伝令らしき人が現れた。

 「剣城様!お館様御着陣!繰り返しますお館様御着陣!」

 「おう!剣城!皆の者!励んでおるようだな!」

 「信長様・・・。すいません。重傷者を出してしまいました」

 オレは一先ず剣を下ろした。

 「なんじゃ。死んだわけでもあるまい!お前の配下の衛生班だったか?彼奴等が治すであろう!城攻めで足軽雑兵一人死ななかったってだけであり得ない事だ」

 「ですが・・・」

 「さっき聞いたがワシが老婆心で援軍に出した梶川が負傷したらしいな。ワシは彼奴に褒美を考えているくらいだ。将たる者ウジウジするな!それでもそう思うなら次に活かせ!大方、茨木を簡単に抜いて勢いに任せた結果だろう」

 「はい・・・」

 信長さんの言う通りだ。好戦的なみんなに呑まれてそのままの勢いで進んだ結果だ。結果だけ見ると完勝だけど、オレの慢心だ。
 
 「ふん。死んだわけではあるまい。後でお前も梶川を見舞ってやれ。で、お前はそれをどうしようとしてたのだ?」

 「はい。斬ろうかと」

 「ほぅ?お前がか?辞めておけ。この我が軍を見て城から打って出るくらいの器量が此奴にはある。それに滅多に怒らぬお前を怒らせるような奴だ。其方が池田勝正か?」

 「いかにも」

 グワッ

 冷たく信長さんに池田勝正が答えると信長さんから禍々しいオーラのようなものが発せられた。本物のオーラだ。

 「此奴は織田軍一温厚な者なのだ。此奴を怒らせるとは其方は大概じゃな。人質を出すなら許す。出さぬのなら斬る。選べ」

 これまた信長さんが冷たい一言を言う。オレ達みんなは肝を冷やした。オレの怒りやなんかでは表せられないくらいの本物だ。

 「母親を人質に出しまする・・・この度はつまらぬ争いを起こし申し訳ありませぬ」

 「ふん。以後気をつけい!皆の者!ここまでじゃ!三好は大方去った!将軍を迎え入れるぞ!坂井!稲葉!氏家!安藤!池田城、茨木城、滝山城、芥川山城に詰めておけ!後程指示をだす!」

 信長さんがそう言うと池田城の中に入り出した。オレ達も慌てて後を追う。

 「剣城君。そう落ち込むな。織田殿に期待されてるという事だ!後でおいも梶川殿に会いに行く」

 「ははは。義弘さんありがとうございます」
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...