上 下
286 / 373
永禄の改革

高山城の仕置き

しおりを挟む
 「うむ。剣城殿も参ったか。では始めよう」

 島津家の歴戦の猛者達の中に何故かオレは呼ばれている。そして然も自分が1番偉い!と言わんばかりの顔の小川さんも一緒だが。

 慶次さんや野田さん達は暫く戦で禁酒していたらしく昨日、島津兵の人達も解禁したようで浴びるように飲んだらしい。

 「まずは・・・剣城殿?ありがとう。こんなに早くこの高山城を落とすとは思わんかった。兼続はあのような形になってしまったがあれはあのような男だ。むしろ褒めてやりたい」

 「はい。何も問題ありません」

 「うむ。それでだが・・・嫡男の現当主の肝付良兼の事だが・・・どうも戦働きが出来そうには思わないのだがどうであろうか?」

 確かにオレもそれは思う。むしろ仕事ができるのかすら不安に思う。

 「そうですね・・・一目しか見てませんが彼はそんな風には見えませんね」

 「義弘が剣城殿と約束したであろう?殺してはならぬと?」

 「あ、はい。そうですね。害にならない人まで殺さなくてもと思いました」

 「それでだ!ここ高山城を剣城殿に渡そうと思うのだ!」

 まさに青天の霹靂。本拠では城持ちじゃないのに九州で城持ちになったんだが!?

 「そそそ、それは・・・この私がこの城に相応しいと!?」

 興奮する気持ちを押し込みながら聞いた。

 「まあ今のは端折りすぎたようだ。ここでおいどんが剣城殿に城を渡せば織田殿・・・剣城殿の殿から見れば良い気はしないであろう?剣城殿の城と言ったが要は織田殿の城としてくれないかと言う事だ」

 あぁ~・・・やはり城持ちの夢はまだなのか。治外法権的な何かかな?けどこの時代でこの考えに至るのは中々じゃね!?

 「それは・・・この付近だけは織田領としてって事ですか?」

 「うむ。言葉悪く言えばこの地だけならば仮に織田が我らを狙うにしてもそこまで兵を隠す事はできまい。そんな心配をするよりおいどん達は畿内に負けぬように色々な物を作り、昨晩のようなトンカツを毎日食したいと思う」

 あぁ~。確かに昨日野田さんに言ってトンカツ作ってもらったよな。正確には猪だけど。この城がある高山にかなりの猪が居るって聞いたから熱燗を餌に慶次さんに言ったら速攻で捕まえて来てくれたんだよな。

 「そんなに変わりませんよ。食に関してはどんどん変わっていくでしょう。私の権限を超える事と思いますので一度持ち帰らせていただいても?」

 「うむ。本来ならこちらが出向き頭を下げても良いくらいだがおいどんは剣城殿になら頭を喜んで下げよう。だが剣城殿の主の信長殿とはまだ会った事もないからな。そう簡単に頭は下げれないのだ」

 これだよ。笑顔の中にも絶対自分を曲げない芯があるんだよな。

 「多分ですが、私の主の信長様はこういう事は自分で出向いたりしないと気が済まない人なので言えば喜んでこちらに来るかと思いますよ」

 「そうかそうか。ならその折は最大級のもてなしをせねばなるまい。決定!肝付良兼は剣城殿の支配とする!異論のある者は?」

 「なし」 「問題なし」 「些細任す」 「うむ」

 いやそういう事だったのかよ!?えらいみんな静かだなと思ってはいたけど・・・・。あの人をどう使えばいいんだよ!?あんな人信長さんに会わせれば『捨ておけッ!』とか言いそうじゃん!?

 貴久さん達は他の城なんかの仕置きもしないといけないためまだ続けるとの事。オレは『良兼を相手してやってくれ』と笑顔で言われ退出した。

 「父上・・・」

 「と、とにかくそれは写真だから大事に保管しておいてくださいね!?」

 「う、うむ・・・」

 「とりあえず仕置き上はこの城は私になったわけだけど文句ないです?」

 「俺には毎日父上が女子(おなご)と、お小遣いを用意してくれていた!それをしてくれるならば黙っている!」

 スパコンッ!

 思わず羨まけしからんで便所スリッパで叩いてしまった。

 「は!?毎日女用意してもらってたの!?舐めてんのか!?どうやって!どのように!どこの女の子だ!事細かくーー」

 「がははは!さすが我が君!ゆきには内緒にしておきますぞ!!」

 おっと・・・ここには忍びが多く居るんだよな。気をつけないといけない。九州に居る間はたまにこの人に女を紹介してもらわないとな。

 「とにかく・・・良兼さん?あなたはまず残った兵とかを纏めてください。怪我した兵なんかは無償で治します。小泉さん?野田さん?瞬時に食べ物を育てましょう。任せても?」

 「「御意」」

 「良兼さん?これ!」

 ドンッ

 「こ、これは・・・・」

 「鐚銭も混ざってるかもしれないけど多分20貫くらいあると思う。良兼さんが必要と思う人、これからも支えてくれるだろうと思う人に有効に使ってほしい。くれぐれもそれを遊びで使わないように。慶次さん?数日着いてくれます?」

 「えぇ~?めんどくーー」

 「あぁ~あ。チラッ。せっかく山先オールド40年のチラッ。ウィスキーを渡そうと思ったのにな?チラッ」

 「それならそうと言ってくれれば良いのに!剣城と俺の仲じゃないか!な!?良兼殿!俺は前田慶次!まあ好きなように呼んでくれ!よろしくな!」

 チョロいな。よし。数日休んで一度岐阜に帰るか。

 

 次の日オレは貴久さんと2人で話している。志布志の例の三の丸の温泉でだ。2人だけで話したいと言われオレは緊張しながらも聞いた。

 「あっという間な戦だった。これ程楽な戦は初めてであった」

 「私も数回戦に参加しましたがこんな戦は初めてでした」

 「うむ。時に・・・高山城だけ渡すのは些か少ないと思う。一晩考えたのだがやはりここは上下関係なく一度おいどんの名代を立てこちらが出向くのが筋だと思うがいかがか?」

 「配下の人のメンツとか大丈夫なのですか?」

 「剣城殿の此度の働きやここ数日での食物の収穫量を鑑みれば頭を下げないといけないのは明白である。おいどん達が食べるために育てている牛。猪。量産ができるなら喜んで尾張の国に輸出しよう」

 「ありがとうございます!!信長様もお喜びになりますよ!」

 「うむ。一度会ってみたいな」

 「昨日も言いましたが、おそらく本人が来られると思いますよ。しかも私達が帰った数日後に来ると思います。動きだせば早い人ですので」

 「ははは!そのような男の方が話が早くて助かる。一度戻るのだろう?くれぐれもよろしく伝えてくれ。文も書こう」

 「分かりました。後、7日程ゆっくりさせてください。高山にある関所は廃止します。あそこは尾張国と同じように致しますのでいい所があれば真似してください。間者は入り込むかもしれませんが経済が動き人が集まり必ず発展しますよ」

 「うん。徐々に・・・だな。それで今宵は細やかながら祝勝会を開こうと思っている。志布志に泊まって欲しい。歳久が是非、志布志で行ってほしいと嘆願されてな?義弘もだがかなり剣城殿を気に入っている」

 「ははは。ありがとうございます。少し珍しい物を持っているからですよ。楽しみにしていますね」

 口ではそう言いながら内心がっかりしている。本当に浴びる程酒を飲まされるからだ。しかも家族に甘々なのか珍しく義久さんは信長さんと同じで下戸なのだ。だから義久さんはあまり飲まされてないけどオレは少し飲めるからかなり飲まされてしまう。

 二日酔い確定だな。まあ飛地だが一部九州の足掛かりができた。日向や豊後とこれから忙しくなるだろうがまずはこれで信長さんは喜んでくれるだろう。輸送船なんかも作らないといけないしやる事がいっぱいだ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...