戦国時代にタイムスリップした件 何故かファンタジーみたいなスキルが使えるんだが

デンデンムシ

文字の大きさ
上 下
272 / 373
永禄の改革

突如始まる角力。

しおりを挟む
 オレは勘違いしていた。坊津から直線上ではかなり近い距離だったが船での移動となるとぐるりと回らないといけないのだ。まあそれでもドンペリなら20分で到着だけど。

 鹿児島湾に入り桜島が見える。

 「あれが桜島か!?」

 「知っておるのか?いやそんな事より実にこのばにああいすは美味い!」

 「バニラアイスですよ。お供の人達も遠慮せずにどうぞ」

 「かたじけのうございます」

 「何から何まで畿内は凄いのう?こんな寒い日に冷たいあいすとやらが美味く感じ、中は暖かい。波は荒れているが揺れを感じない。素晴らしい。この船があれば肝付なんかに負けはしないのだがな」

 まあ農業神様と砂糖ドバドバ大好きな神様の力作だからな。

 敢えて戦の事に関しては答えずにいた。それ以上は義弘さんも言ってこなかったが手を貸せという感じでもない。なんなら船の事もそこまで詳しくは聞いてこない。それはそれで不安でもある。何か企んでいそうな感じがするからだ。

 「久しぶりだ。やっと内城が見えて来た!」

 桜島の反対側あたりに確かに城はあるが思ってたのとこれまた違う。古き日本家屋のような横にかなり大きい平城だ。それに坊津のように賑やかな城下って感じはしないな。

 「清水の方が栄えてはいるのだが海からの政務はこちらの方が近くてやりよいのだ。時間があれば清水の方も案内しよう」

 「いえいえ。またその時はよろしくお願いします」

 そういうと手を差し出して来た。

 「うん?何ですか?」

 「土産を持つのを手伝おう」

 「あぁ~!少しお待ちを。竹中さん少しいいですか?」

 オレは迎えに来た小早の船に乗り切らないくらいの土産があるからどうしようかと思い竹中さんに相談する。

 「もうこの際押し切ってもいいと思うのだが?」

 「いやさすがにそれは・・・」

 「それとノア嬢達はどうするのだ?」

 「小川さん?ノア嬢を風呂敷に包み陸に連れてってあげて!」

 「畏まりました!さあ!ノア嬢おいで!ロザリーヌも来い!ロザリーヌ!何故反対に向くのだ!?」

 小川さんはいつも通りだな。

 結局、砂糖、醤油、菓子、服なんかを迎えに来た薩摩兵の人達にお願いした。重い鏡やなんかは後でこっそり出そうと思う。

 少し大きめな小早がやってきたが、それが義弘さんの迎えの舟らしい。まあそれでも木造船に見えるくらいの大きさだけど。波は湾に入っているから穏やかではあるが寒いのは寒い。

 「剣城様?食い物はどうしますか?あちらに任せますか?それとも・・・」

 「う~ん。例の肥料と種や苗を適当に見繕って渡してあげよう。明日には岐阜と変わらない物が食べられるしね。大野さんは出し惜しみなく内城の料理人達に料理を教えてあげてください」

 「秘伝のカレーは秘密にしても?」

 「任せます・・・」

 何で秘伝のカレーなんだよ!?基本ベースは同じだろうがよ!?いや落ち着け・・・沈黙の処刑人を怒らせてはだめだ。殺られてしまう。

 「剣城様?今回も我らは留守番にさせてください。昨日の件の償いで・・・」

 「確かにね?女を侍(はべ)らせてね?杉谷さん?」

 「・・・・申し訳ない」

 「冗談ですよ。もういいですよ。早く行きますよ」

 船の留守番役は要らないと判断している。勝手な信頼だけど義弘さんは信用していいと思っている。




 「おい!あの鉄甲船はなんだ!?見た事ないぞ!?明の船か!?」

 「分からん!あの船で大隅を攻めるつもりなのではないのか!?」

 「チッ。志布志城でまだ懲りてないのか。すぐに使いを出せ!貴久がこの船を使わないわけがない!すぐにあの船を沈める!まさか貴久が明の手を借りるとは薩摩人めが!見損なったぞ!!」



 「はぁ~!!やっぱ陸地が1番だな!」

 「若ッ!!」「坊ちゃん!!」

 「やめ!やめ!その呼び方はするなと何回も言っているだろうが!兄者達は!?先触れを出していたであろう?全力を以て出迎えろと!なんだこれは!?」

 「いえ実は・・・」

 なんか不穏な雰囲気だな。別にこのままでもオレは気にしないのだが・・・。

 「とりあえずオレ達は馬に乗ろう。慶次さん?隊列を」

 「おう。松風!大きくなれ!」

 "ノア?待たせて悪いな。大きくなれるか?"

 ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ

 うん。いつも以上に激しい。そして痛い。涎ベタベタ。臭い。

 "キャハッ♪陸地いいね!剣城っち♪大好きだよ"

 "何でいきなり告白になるんだよ!?何回も言ってるだろ!?痛いの!しかも涎ベタベタになったじゃないか!?オレ今から偉い人と会うんだよ!?"

 "キャハッ♪"

 ダメだ。話しが通じないわ。

 「おっ・・・どこから現れた!?」

 「うん?普通に船に居ましたよ?オレ達の愛馬ですよ?」

 これは押し通すしかない。

 「どうだ!畿内は凄いだろう!尾張では当たり前らしいぞ!?兄者に自慢せんといかん!誰ぞ!おいの膝付栗毛を連れてこい!」

 「若ッ!既にこちらに・・・」

 「おう!剣城君のような体躯ではないがこのおいの馬も中々のもんであろう?」

 確かにノア程ではないが岐阜や尾張にいるような馬と違うように思う。普通に大きい。

 "キャハッ♪眷族にしよっかなぁ~♪"

 "馬鹿!見境なく眷族にするな!まだそこまでお互い知らないのだからな!"

 "怒られちったぁ♪後でまた甘えさせてあげるね♪"

 いや誰も甘えたいとは一言も言ってないぞ!?これ以上は勘弁してくれ!!

 「素晴らしい馬ですね!」

 「そうであろう?速駆けと行こう!着いて来てくれ!お前達!積荷は尾張からの贈り物である!丁重に内城に持って参れ!赤塚!」

 「はっ!」

 「剣城君?この者は、おいの信頼する家臣である!」

 「赤塚真賢と申します」

 「初めまして。芝田剣城と申します」

 「うむ。これで赤塚も剣城君とは友達である!お前はあの鉄の船の見張りをしてくれ!」

 「はっ。命に代えましても勤め上げまする」

 いや命は張らなくてもいいけど!?多分操船できないだろうし。

 「すいません。よろしくお願いします。気になるなら乗ってもいいですよ?義弘さんは信用してますので」

 オレがそう言うと周りの兵の人達から殺気が放たれる。

 「己れ!義弘様の事を気安く呼ぶとは!そこに直れ!己れがなんぼのもんじゃ!!!!」

 いやいや何故に怒るんだよ!?

 「これ!静まらんか!馬鹿どもが!客人に向けて失礼であろうが!剣城君?すまない。例の肝付の事で少々兵が殺気立っておるのだ。間者も最近やたらと多いのだ。許してくれ」

 「失礼しました。少々勘繰ってしまいました。船は必ずお守り致す」

 いや薩摩人ってなんなの!?少しちびりそうなんだけど!?

 「後で角力でもしようかのう?若いの?」

 「小川さん!何言ってんの!?」

 「そうだな!鬱憤が溜まってるなら俺も相手してやるぞ?」

 「慶次さんまで・・・」

 「ならここで今勝負するか?いくら義弘様の客人とておいどんは手加減できぬ性格でな!?」

 はぁ~・・・なんで喧嘩腰なんだよ・・・。例の食物でパワーアップしてるんだからボロ勝ちだろ!?

 オレは小声で竹中さんに耳打ちする。

 「程々に勝ってたまに相手にも勝たすようにしてあげてください」

 「畏まりました。まったく脳筋共には困りますな」

 その通りだわ。

 「おい!そこの優男!貴様の相手はおいだ!」

 「ほほほ!私と?良いでしょう。怪我しない程度に稽古つけてあげましょう」

 いやあんたも脳筋かよ!?いや確かに竹中さんも見た目によらず武闘派だったの忘れてた・・・

 「剣城君?すまぬ。薩摩人は他所より闘争心が強いのだ。薩摩兵児は皆闘争を望んでいるのだ。許してくれ。角力にて力を抜けば収まる。暫し相手してやってほしい」

 いや闘争を望むって阿保か!?これが後の幕末最強の薩摩兵の祖先か!?

 「鈴ちゃん?鞠ちゃん?ごめん、手当ての用意だけよろしくしていい?」

 「・・・・・・」

 「鈴ちゃん!?」

 「え!?あっ、はい!私も投げ飛ばしてやりたいと思ってました。ここまでコケにされて悔しいです!!!」

 「落ち着いて!」

 「さぁ!剣城君!おい達も1勝負どうだね!?」

 いやいや何で服脱いでんの!?寒くないのか!?しかも傷がやべーんだけど!?どんだけ修羅場潜り抜けて来てんの!?

 「・・・・剣城様・・・受けてください」

 「鞠ちゃんまで・・・分かった!分かった!義弘さん!1勝負だけですからね!?文句なしっすよ!?」

 「がはは!おいに角力にて勝とうと思うとは!怪我はさせるつもりはないからな!剣城君は全力できたまえ!さぁ!!」

 オレも寒いの我慢して上着を脱ぎ・・・義弘さんに50%くらいの力で突っ込んだ。

 ドンッ!!

 「ンッグフッ・・・・・」

 「「「「「若ッ!?!?」」」」」

 勝負は一瞬だった。当たった瞬間、義弘さんが後ろに転けたからだ。

 オレは心の中で『オレはまだ全力を出していない』と唱えた。それに・・・勝ったなと。

 「強いな!舐めてた。いやすまんすまん!では今度はこちらの番だ!構えてくれ!!」

 はぁ!?マジか!?

 義弘さんの突っ込みはタックルのようだったが日頃から池田さん、堀さんの特訓のおかげか普通に受け止める事ができた。

 「若の突進を受け止めただと!?」

 「まさかっ!?」

 「がははは!負けだ!こんな気持ちの良い負けは初めてだ!さぁもう一本いこう!」

 いやいかねぇーよ!?

 「こらぁ~!!!馬鹿共が何をしておるのだ!!!!城にて待っておったが確認に来てよかったわ!!義弘!!貴様は何をやっておるのだ!!!」

 「兄者!これは角力をしているのだ!!」

 ドガンッ!!!!

 いやいや助走ありの全力フックかよ!?凄い音がしたぞ!?体育会系か!?

 「客人に角力をしてどうするのだ!!酒が入っているのか!?海に入り頭を冷やせ!他の者もだ!!!御客人・・・島津貴久が長男 島津義久と申す。愚弟が申し訳ない」

 「いえいえ。大丈夫ですよ」

 「早く服を着てくだされ。そして着いて来ていただきたい。おい!お前等は海で頭を冷やしてから戻ってこい!本当この馬鹿共がッッ!!!!」

 いや何で2回同じこと言ったんだ!?

 「鞠ちゃん?義弘さんを見てあげて!先に城に行ってるから!」

 「畏まりました」
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

処理中です...