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永禄の改革

飛鳥井に!大きさに!勝った剣城!

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 ある日の日中、岐阜の町を飛鳥井さんと歩いている時に不意に聞かれた。

 「ここは平和で良いのう」

 「まあ確かに他所よりは平和だと思います」

 「そうだな。京にもこのような場があればかつての京の在りし日の姿に酔いしれる事ができるのだがな・・・」

 「そぉ~れ!!あっ!!!」

 ポンッ

 「剣城のおっちゃん!ごめーん!!」

 「だからオレはおっちゃんじゃない!お兄さんだ!!間違えるなよ!!そんな事言う子にはもう飴玉やんないぞ!?」

 最近流行っているゴムボールのドッチボール的な何かだ。オレが出したボールなんだが普通のボールでも当たると怪我する可能性があるから神様印の超超柔らかいボールだ。

 あれは岐阜のオレの家から15m程離れた場所に住んでいる田吾作さんの子供。オレの事をおっちゃんやおじさんと呼ぶ不届者だ!

 「剣城お兄様!ボールをお取りください!!!」

 「よろしい!今大事な人とお話ししてるからあっちで遊びなさい?小川さん居る?」

 「はっ!我が君!ここに!!」

 「子供達に飴玉でもあげて遊んであげてくれます?未来の織田軍を担う人になるかもしれませんよ!!」

 「畏まりました!おい!童共!ワシと遊ぶぞ!将来は剣城様の手となり足となり働くのだ!働くにあたっての極意を教えてやろう!」

 「チェッ。やだよ!そんなの教わりたくないもーん!」

 
 「およそ、他所の武家とは違うな。一乗谷で武家に町の童があんな事すれば大事になるのだがな」

 「え?別にあれくらいどうって事ないでしょう?ボールが当たったくらいでーー」

 「そう。その何かが当たった事くらいで手討ちに致す者も多いのが武家だ。だから麿達公家は武家が嫌いだ!だがこのような在り方ならば良いと思う。見よ!往来の人の顔を!」

 飛鳥井さんは言った。みんな希望に満ちた顔になり痩せ細った人が少ないと。町には物が溢れ返り食べ物が非常に多いと。これがどれだけ幸せな事かとも。

 「まあ食は大事ですからね。衣食住。人が生きる上で大切な事ですよ」

 「本来ならば京がこのようにならねばならないというのに・・・京は政争に明け暮れ民や朝廷は疲弊していくばかり・・・お上(おかみ)がどっしり構える日の本にはならないものか」

 多分それは無理じゃないかな?力のない天皇、朝廷が武家を従えさせるのは今の時代では無理だ。ただ一つ言える事は帝を馬鹿にしている人が多い中、帝を抑えた家が時代の覇者だ。

 「少なからず信長様は帝を排除する方向ではございません。むしろ私自身は悠久の時を過ごした帝の血筋を途絶えさせるのは馬鹿のする事だと。この先日の本が一つに纏まり諸外国・・・明や南蛮と本格的に貿易などする事になれば国のトップ・・・国の頭は帝です」

 「だがそれでは権力しかない実の力がない偽物になるのではないのか!?」

 「それは時代だから仕方ありません。今は強き者に従い力を蓄える時です。帝が武を持ち日の本を一つに纏めると言う事は正直今は絵空事。また南北朝になりますよ。公武合体とはそれ程までに難しい」

 「公武合体・・・・」

 「もし武家に歴史ある諸外国から何か因縁でもふっかけられたとしましょう。まず間違いなく争いますね。それを朝廷・・・帝がそういう外交の場に出たとしましょう。外交の場、国と国の話になった場合国の歴史が重要になってきます。お前の国は建国何年だ!とかです」

 「い、いったい何を喋っておるのだ?」

 「聞いてください。信長様から聞いてはいないと思いますが信長様が日の本を統べます。それはそうなる歴史だからです。私はその後の在り方を話しています。飛鳥井様?私はあなたは常に織田家と懇意にする公家になってほしいと個人的に思います。公武合体は難しいですが織田家は帝を蔑ろにする政策は致しません」

 「そんな事、一家臣の芝田殿とてーー」

 「私はこう見えて織田家の中でそれなりに意見が通ります。私は帝を排除するのは愚策中の愚策。帝には帝にしかできない事がたくさんあります。今はここまで。覚えておいてください。偉そうに言いすいません」

 「・・・・・・・・」

 「あれ!?怒ってしまいました!?」

 「いや・・・誰の言葉より・・・お上の御言葉より芯に響く。決めた!芝田殿?悪いが織田殿に渡りをつけてはもらえぬか?」

 決心したような顔で飛鳥井さんがオレに信長さんと話したいと言ったのでオレは信長さんに言い山科さん抜きの話し合いの場を作った。山科さんも同席するかと思ったが二人で良いと言ったせいか、場所は何故かオレの家の横の温泉だ。密室、他人が来ないとの事でいい場所らしい。

 オレはもちろん身体洗い要因だ。オレは下男かよ!?

 「して何用ですかな?岐阜が飽きてこられましたかな?」

 「ほほほ。またまたご冗談を。いえ、単刀直入に・・・麿は今後何が起ころうとも、何をしようとも織田家と共にありたいと・・・」

 「・・・・理由をお聞きしても?」

 「飛鳥井家は代々、蹴鞠、和歌、短歌などの師範家として続いて参りました。だがそれだけではいかんと思いましてな?先に芝田殿とお話しをさせてもらい考えが変わりましてな?ほほほ」

 「もし・・・ワシが・・・織田家が帝に刃向かえば飛鳥井殿はどうされるおつもりか?」

 「織田家に従いましょう。そんな不利益な事貴方様はしないお方だと思っておりますれば」

 「ふん。誠に頭のキレる公家だ。三好の馬鹿みたいに自分に都合の良い将軍を建て京を私物化して自分を正当化するなんぞ何も分かっておらぬ。そのような事をして外敵が来ればやられるだけである!」

 「ではやはり・・・?」

 「此奴から聞いたのであろう?おい!剣城?言ったのか?」

 「はい。信長様のお考えを私なりに解釈して」

 「うむ。此奴の考えとワシの考えは一致している。ならば問題ない。知っておるか?笑顔で堺で取り引きしておる明の商船が買い付けておる日の本の粗銅には金が含まれておることを」

 「なんですと!?」

 うん。フルチンの男二人が言う事ではないな。金だけに金が4つか!?ただこれだけは言える!飛鳥井さんにはオレは勝っている!!

 「もしその事を明の商船の奴らに言えばだからなんだ!?馬鹿めが!と言われるであろうな。それで我らは仕返しできるか?できないであろうな。まず船もない」

 「・・・・・・」

 「続けるぞ。では話し合いにて明のそれなりの奴が出張って来たとしよう。その場に時の支配者三好や細川が出て行って何が話せようか。軽く丸め込まれるだけじゃ。奴らは目先の事しか見えておらぬ。それこそ帝の出番だとは思わぬか?」

 気付けば信長さんはタメ口みたいになっている。それ程までに熱弁か。

 「そんな中に帝を出すのは・・・」

 「それならば御飾りだけになる!何のために帝が必要か分からぬではないか!別に武家の真似事をしろと言うわけではない!」

 「そのような事すれば征夷大将軍の足利家がーー」

 「実の力がない足利なんぞ意味がない。あれこそ御飾り将軍である!鎌倉も滅びた。足利もいつかは滅びる運命なのだ!その引導は誰が出すのか・・・朝倉か?三好か?六角か?織田だ!名前として征夷大将軍は足利家の物となっておる常識をワシは潰す。これを聞いても飛鳥井は織田に味方すると?」

 「迷いませんな。それほどまで先を見通しておる方は織田殿しか麿は知りませんな。朝倉殿はこんな事話す方ではない」

 飛鳥井さんが言った瞬間、信長さんが屈託のない笑顔になる。

 「土産を出しましょう。全て飛鳥井殿の名で贈られるが良い。まずは京に返り咲き派閥争いに負けぬよう。山科殿はどうされるか?」

 「彼は脚が軽いですからな?麿の方から伝えましょう」

 「うむ。では山科殿にも土産を渡さないといけませんな?各地に散った公家を呼び寄せる餌になれば良いですがな。無骨ですが腕が立つ者を護衛に付けましょう」

 「ありがたい。よろしく頼みますぞ」
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