上 下
191 / 373
この時代の一員になる

褌の付き合い。

しおりを挟む
 「まずは・・・わざわざ足労してもらい悪いな。あぁ、剣城も無礼講だ。ワシの事は友と思い話してくれて結構」

 「分かりました。敬語は癖なので気にしないでください」

 「分かった。それでこの岡崎を見てどう思った?率直に言ってくれ」

 オレはここに来た時の出来事、農民の人達の事城の事をオレの思った意見、みんな疲れている感じがする事を言った。

 そしてやはり貧しいだろうと。

 「人が疲れ城が疲れているとな・・・言い得て妙だ。その通り。ワシの不徳の致す所じゃ」

 オレはある程度歴史で知ってる事だけど家康さんは教えてくれた。

 今川から独立して、ここ三河でもまだ纏まっていないこと。東三河、奥三河ではまだ争ってるということ。早くに纏めたいが中々難しい事。一応は表面上は家康さんを主としてるみたいだが・・・。

 「三河は・・・一揆が絶えない場所だ。無いものは他所から奪えばよいと皆が考え奪い奪い返され残るは・・・屍と禍根のみよ」

 「・・・・・・・・」

 「民を豊かにすればどうすれば良い!?与えるだけ与えるとその上の物が奪っていく。その者を処罰しても他の者が同じ事をする。ワシの目が届く範囲でそれをすると他が一揆を起こす。どうすれば良いか・・・」

 難しいな。根本的に生産能力が低すぎるし、民度も低すぎる。無い物は奪う。

 この時代では当たり前かもしれないがその当たり前を無くさない事には始まらないな。これは1日2日ではどうにもならないぞ。

 「まずは・・・小さな事から。私は色々な苗や種を持って来ております。それととある物も。それを育てればまずは飢えは凌げるでしょう」

 「それでは今までと同じではないか?」

 「まず根本的な最初の話です。私は何者ですか?」

 「剣城殿は・・・未来から来たとな?」

 「その通りです。正直やろうと思えば1日で尾張を抜く生産地にする事も可能です。けどさすがにそれをすれば私の首が物理的に飛ばされそうなので堪えてください。24時間で作物を育て成長できる肥料を持って来ております。一揆の原因は貧しさにあると私は思っています」

 一揆は貧しさ、貧困からくるものだとオレは思う。食べる物がないから戦をしてでも奪う。

 じゃあその食べ物があれば豊かにはならないにしてもまず一揆は起こらなくなる。

 では他所が奪いに来るのでは?他所にも同じように食べ物を潤わす。

 それにこの事を家康さんが率先して特に三河の人には当面は無償で食べ物を渡し施しをする。

 弱者に対しては違う食い扶持を持ってもらう。その食い扶持が綿花だ。

 綿花の選別は大変だ。小さなカスとかゴミを取り省いてもらわないといけないし。この事をオレは一生懸命に伝えた。

 「綿花とはあの白いやつか?」

 「そうです。本来はあれを一番に育ててもらおうかと思いましたがそうもいけなくなりました。まずは他の物からいきましょう。その都度支持はだします」

 「ワシの領の事なのにすまんな」

 けど、本来ならこの状態からこの人は天下人まで駆け上がるんだよな。やっぱ本物はチートだよチート!

 「もし綿花の栽培までいくとしましょう。そこからは重さに対して織田は銭を支払いましょう」

 「何故尾張で育てない?」

 「単純に場所が足りないってのもあります。それに綿花は松平様の領土でよく生えているでしょう?」

 「よく調べている。これはお互い様か。綿花は我が領土の人間でも育てておる者も居る。余裕ができれば人を回そう」

 なんか無礼講と言いつつなにか壁がある気がする・・・この壁を省けないと一生毒味が続いてしまうな。

 「綿花を育てるまでいけば尾張では腐らせてしまう程まで作物が出来ているでしょう。それを他国に輸出して行く予定です」

 「輸出してそれをどうする?」

 「外貨を得ます。まぁまずは国内・・・日の本からですが。現在尾張より石高が高い地域はないでしょうね。年がら年中育てられますからね。それを戦に繋げて考えてみてください」

 「兵糧を……いや織田に依存しすぎて…詰みだな」

 回転早いな!信長さん並みだな。

 「その通りです。平時に従来の飯より美味い飯を食べると余程の事がない限り質素な飯には戻れませんよ。それも戦の間だけなら絶えられますがそれがずっととなると特に下々の人は逃げ出すでしょう。豊かな地に。そう尾張に。それを私が受け入れ仕事を斡旋します」

 「さすれば他国は農民の流入を止めようとしても織田家より良い待遇をしないと止まらん。戦を仕掛けようとしても兵糧が集まらん。仮に集まっても割高。そして大事な人が居らん。という事か?」

 「簡単に言えばその通りです。信長様にも話は出してあります。最初こそこのやり方は銭がかかります。人を派遣して教えてとしますからね。ですが、回り回って最後の受け皿は織田です。戦をして負けて降参しますでは今後は済まないですよ」

 「末恐ろしいや・・・。だが間者はどうする?」

 「そこを言いますか?現に今私の村には最高の警備が張ってあると自負しておりますが潜り抜けたのでしょう?」

 「・・・・・」

 「沈黙は肯定と捉えます。どんなに警備を張ろうが綻びはありますよ。旧知の仲だから。親戚だから。友達だから。全部を防ぐのは無理です。ですが私の行っている事はいずれ他国にも是非行ってほしい事ですからね」

 「何故我がの技術を宣伝するような事を言うのか?」

 「それはみんなが笑って暮らせる戦のない世になってほしいからですよ。織田の人達によく言ってるのは私の配下は歳の人が多いので【畳の上で往生できるように】が心情です」

 「いい言葉だがそれがこの乱世でどれどけ難しい事か・・・いや剣城や信長殿ならやってくれそうではあるな。その中にワシも含まれておるか?」

 「当たり前ですよ!なので今ここに居るのですよ!!ちなみに先日、中伊勢まで侵攻し作戦は成功しましたが松平様が一番ですよ」

 「何が一番とな?」

 「いやだからこの技術を伝えに来たのがですよ!だから頑張りましょう!」



 ふん。面白い未来人だ。当初は信長殿も騙されておると思うておったが話を聞けば絵空事ばかり言うかと思えば理論だっておる。考える事は全て織田に帰結する事ばかり。
ここは甘んじて自分を捨て教えを請おう。

 そして、ワシの唯一の友になってもらいたい。変な男だがこの男の前ではワシは薄っぺらく何もなく感じる・・・。だがこの感じも悪くない。

   ワシは信長殿よりこの日の本の誰よりも民の事を思っておる!ワシは安祥松平家9代当主松平蔵人佐家康!ここで終わる男ではないぞ!!

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

処理中です...