異世界からの帰還。ただし・・・時間軸を間違えた件

デンデンムシ

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 「どうして!?どうして内緒で帰ってしまったのよ!!」

 ドンッ ドンッ

 レイラ皇女様はオレの胸に拳を叩く。

 「帰る?どういう意味じゃ?ふん。まぁ良い。久方ぶりに会ったのだろう?部屋を設けてやる。ゆっくり語らうがよい。ワシはりぞっとを食べる」

 「織田様。すいません。後程、必ず報告致しますので」

 
 オレ、イシュ、レイラは岐阜城の三の丸にある、元々オレに充てがわれた部屋に入った。まぁそこから大変だ。セイントハイアールの事を聞いたり、日本の事を聞かれたり・・・。

 「そうか・・・。王様は・・・お父さんは亡くなってしまったのか・・・」

 「うん・・・。魔王が死んで、タケルが居なくなってから、政務中に倒れてそのまま・・・」

 「そうだったのか・・・。城の方は大変じゃないのか?ってか、どうやって日本に来たんだ!?」

 「それは、タケル達の魔法の残滓を解析してよ!そんな事より・・・ここは本当にタケルの故郷なの!?眠らない街どころか、ひこうきやくるまって物もないじゃない!?」

 「そっか。そうだよな。まずはそこから説明しようか」

 オレは今の時間軸がオレが居た時間軸とは違う事、世界はオレが居た地球の日本だが、約500年程、昔に帰ってしまった事を言った。

 そして、その次は歴史の事だ。それなりに日本史は好きだったし、常識レベルくらいには日本史の事は知ってるつもりだ。世界史は少し怪しいけど。

 「500年って・・・。じゃあ今は戦争ばかりしてるって事なの!?」

 「あぁ。そういう事。今、オレがお世話になってる人が織田信長って人で、戦国時代の三英傑の筆頭とまで言われてる人だね。けど、既にオレが知ってる歴史とは変わってきているから、三英傑という言葉は生まれないかもしれない」

 まずは、日本史の事だ。

 「今は分かりやすくいうと、西暦でいうと1575年。この西暦とはキリストが誕生した事で・・・あぁ~!ここはなんて言えばいいのか。とりあえず、ざっくり、世界を数えだして今は1575年目って事だ」

 「タケルが熱くなるのなんて珍しいね。分かりやすいように言ってくれたのでいいよ。妾が勝手に解釈するから」

 「ごめんな。それで、だいたい1467年に応仁の乱っていう政争が起こり、色々あったけどこの織田信長がそれらを武を以って制する、天下布武というのを行っている時代なんだ。要は群雄割拠だ。この時代の事を、オレが居た時代では戦国時代と言っていたんだ」

 「戦国・・・時代・・・」

 「まさにその通りだ。全国各地で戦ばかりして、民は疲弊仕切っている。このままなら諸外国に日本はやられてしまうかもしれない。それをどうにかするために織田信長という人物が台頭して、この狂った世界を終わらせようとしている時代なんだ。簡単に言えばね」

 「そう。妾の世界でも争いは色々あったけど、ヒューマンで争う事はあまりなかったのにね」

 「う~ん。地球は魔物や魔王なんて居ないからね。あっ、いや・・・第六天魔王は近くに居るかな」

 「だ、だ、だいろくてんまおう!?6人も魔王が居るの!?」

 「え!?いやいや違う!違う!織田信長は自らをそうやって言っているだけだよ。魔王は地球に居ないから!」

 「そ、そうよね・・・。ビックリしたわ・・・。それでタケルは・・・この世界で生きるつもりなの?」

 レイラがそう言うと、オレの手を握る力が強くなった気がした。正直、レイラの気持ちは知っている。なんなら、オレも惹かれていたからだ。だが、今更向こうに戻るということは・・・ない。

 確かにここはオレが居た時代ではないが、既に色々な人に情も湧いているし、織田信長という男にも惹かれている。ここは有耶無耶にしてはいけない事だ。

 「レイラ皇女様。いや・・・レイラ。オレはレイラの事が心から好きだ。向こうに居たら間違いなく求婚していたと思う。オレの全てをレイラのためにと言えるくらいに。けど・・・ごめん。オレはこの日本で・・・時代は違うけど、骨を埋めるつもりだ」

 「・・・・・グスン」

 「ごめん・・・」

 「謝らないで!分かってた!分かってたわよ!タケルは日本から再び向こうに行く事なんてないって!でも・・・妾は・・・私はタケルと一緒に居たいの!」

 「いやいや、皇女様が・・・今は女王になったんだよな!?その女王が不在ってのはまずいだろ!?」

 「いいの!オーガストも居るし、ジョン達も控えている!あの織田信長という男が日本を纏めると暇になるんだよね!?ならそれからならまた向こうに行けるわよね!?ずっとじゃなくていい。また魔力を貯めて、日本に戻ってもいい!それならいいよね!?」

 「え・・・まぁ・・・そうだな・・・」

 「タケルは・・・私の事どう思ってるの?」

 「さっき言った通りだよ。好きだよ。けど・・・今のオレは・・・」

 そう。今のオレは春町を運営している。それをレイラに伝えていいのか。いや、伝えないといけないが・・・。

 バタン

 「おぅ!このりぞっととやらは誠に美味いな!ちょうど良い!タケル!城下の飯屋に作り方を教えておけ!うん?なんぞ?何で女が泣いておるのだ?」

 「織田様!!」

 「そんな驚いた顔をするでない!ここはワシの城だ!どこへ現れようがワシの勝手だろうが。して、うぬの事をワシは聞いておらん。誰ぞ?」

 「申し遅れました。セイントハイアール国 女王のレイラ・ローソルトと申します」

 「じょ、女王だと!?という事は国の頭という事か!?」

 「えぇ。まぁ・・・」

 「これはいかん!失礼した!明らかに格上ではないか!タケル!何故、はよう言わんのだ!失礼を致すところだったではないか!」

 内心、オレは笑ってしまった。こういう所が意外にと言えば失礼だが、信長は意外に礼儀正しいからな。確かに一国の女王と、日本の一大名の信長とは格が違うよな。




 「そうであったか。其方の国は女でも国の舵取りを致すか」

 「まぁ、男性が国の頭というのが多いのは多いですよ」

 「ふむ。して、一国の王様・・・失礼。女王が何用で?」

 「それは・・・」

 信長とレイラの問答を黙ってオレは聞いていた。レイラは言葉を選びながらモジモジしながら言った。

 「た、タケルに・・・気持ちを伝えたくて・・・」

 「気持ち?」

 「私の世界では、途轍もない敵が居ました。それを倒したのがタケルです。私はタケルに惹かれていました。けど、タケルは黙っていなくなって・・・」

 「それで追いかけて来たわけか。いやはや・・・失礼だが、一国の女王が個人の情で国を空けるのは些か軽率ではないですか?」

 「そうですね。けど、我が国では優秀な臣下が居ますので安心して日本に来て居るのですよ。それに妾は一応、休暇って事ですので」

 なんか、少しバチバチした雰囲気になってきた。いくら目上の人といっても信長がずっと下手に出るわけは・・・ないよな。

 「休暇ですか」

 「この場は非公式であり、いきなり押し掛けたのも妾の方です。好きにお話しください。貴方様はそんな方には見えませぬ」

 「ふっ。なら互いに好きに喋ろうか。スゥ~・・・。タケルに今し方聞いただろうが、ワシは武を以てこの日の本を統べようとしている。南蛮の武器や兵、国の事を色々聞きたい。タダでとは言わぬ。ワシが揃えられる物なら何でも与える。如何か」

 「私は女王です。他国に勝手に肩入れする事は御容赦願いたし。ただ・・・タケルを通してなら構わないでしょう。タケルは武も凄いですし、内政の手腕も中々です」

 「うむ。それで構わん。まずはこんな所では失礼だな。本丸の方へ」

 あれよあれよと決まった。レイラは本当に日本に居るらしい。ってか、春町の事言いそびれた・・・。
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