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 「ふむふむ。では、其方が織田参議殿の妹君と」

 「えぇ。兄上が留守の時などは、こうやって大切な方の面会は妾が行っている次第にございますれば」

 「いや、大切なって程でもないのだが・・・」

 「時に・・・其方はイシュや山岡と同じ国から来たと思うのだが誠、かぇ?」

 「イシュ・・・山岡・・・えぇぇぇーーーっ!?!?」

 「ど、どうされたか!?」

 「い、いや・・・取り乱してしまった。許せ。如何にも・・・妾はその国から参った。申し遅れたが、妾はセイントハイアール国 女王のレイラ・セイントローソルトと申す」

 「じょ、女王ですとぉぉ!?!?」

 「こら!遠藤!失礼ですよ」

 「はっ・・・・お市様、女王様。失礼致しました」

 「うむ。女王といっても、ここは妾の国ではない。気にしないでいただきたい。それで・・・タケルは今はどこに!?」






 ~堺 山岡邸~

 ブゥンッ ブゥンッ ブゥンッ ブゥンッ

 「ほっほっほっ。ゆっくり朝は過ごすかと思いきや、殿は相も変わらず、朝は鍛錬ですか?」

 「ふん。毎日の習慣は大切にするものだ。それに、タケルが作る飯を食べると身体が軽い」

 「ほんに・・・妾も同じ感想です」

 ブゥォォンッ!!!

 「うむ。これで良いだろう。朝から温泉に入っても良いと言っていたな?お濃も来るか?」

 「ほっほっほっ。ご一緒しましょう。妾が殿のお背中を流しましょう」



 「うぅ~ん・・・朝か・・・」

 オレは昼くらいまで眠る予定だったが、最近は戦国時間に慣れてしまったせいか、早朝に目が覚めた。

 「犬・・・」

 オレは於犬さんを起こそうかと思ったが、可愛い寝顔で寝ていたため、起こす事を辞めて、朝風呂に向かう事にした。

 チュッ

 軽く唇を重ねて部屋を後にする。だが困った・・・。まさか信長と濃姫が朝風呂に来るとは思わなかった。

 「うむ。おはよう!」

 「お、おはようございます!」

 信長は意外にも礼儀正しい。挨拶は必ず元気良く、自分から声を掛ける人だ。これもこの時代に迷わなかったら分からなかった事だ。

 「貴様も朝風呂というものに入るのか?」

 「はい。そうしようかと思いましたが、お先にどうぞ。オレは時間をずらしますよ」

 「ほっほっほっ。男同士で語らう事もありましょう。妾は後で、三喜子等といただきますよ」

 「ふん。そういう事だ。それにここは貴様の家だろう?ワシに遠慮せずとも良い」

 いやいやまったくオレが落ち着かないんだけど?


 ゴッシッ ゴッシッ ゴッシッ

 クッ・・・やっぱりこうなるよな。何でオレが信長の背中を擦らないといけないだよ!!しかも信長のチンコが普通に大きいんだけど。

 ザパー

 「うむ。昨日の女より洗い方が上手いな。力加減が絶妙だ。次は前だ。朝から素振りをして汗をかいたから念入りに洗え」

 「は、はぃ・・・」

 オレは見たくもないものを見ながら無言で信長の体を洗う。そして、ボディーソープの泡でゴシゴシ洗い、それが股の所へ来ると・・・

 「こうすれば洗いやすかろう。確と洗え」

 オレは生まれて初めて男のナニを剥いで洗った。いわゆる・・・仮性というやつだ。

 「こ、こんな感じでよろしいでしょうか!?」

 「ふん。安心しろ。ワシもそれなりに男色を嗜んだが好みというのもある。貴様はそうではない」

 いやいや好みじゃないとか言われても、半勃起してるんだが!?

 「そ、そうですか・・・。で、ではこの辺で・・・」

 「うむ。先に浸かっている」

 信長はそういうと、湯船に浸かった。オレもさっさと全身を洗い、信長と少しスペースを空けて浸かる事にした。

 ザパーン

 湯が溢れる音だけが聞こえる。

 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 お互い無言の時間が少し流れる。が・・・唐突に信長が語りかけてきた。

 「ここは良い所だ。乱世という事を忘れさせてくれる」

 「ははは。そう思ってもらえて良かったです。朝飯も南蛮風のパオンを用意するようにしていますよ」

 本当はパンだが、信長にも分かりやすく言った。

 「パオンか。フロイスから以前に食わせてもらった。南蛮の米のような扱いらしいな。貴様の国も主食はパオンなのか?」

 「いえ。米もありますし、パオンもありますし、麺なんかも食べますよ。個人的には米が好きですけど」

 「ふん。やはり日の本と似ておるのだな。いつか、日の本が落ち着けば行ってみたいな」

 信長のこんな雰囲気は初めてだ。そりゃ出会って少ししか経っていないが、全然イメージと違う。今のイメージは優しいダンディーな人だ。

 「ワシは・・・昔、年がら年中、尾張兵を強くする事を考えていた。この乱世を終わらせ、諸外国に負けない日の本を作るため天下布武を行っている。足軽に三間半の長槍を持たせた。他国もそれを真似し始めた。次にワシは女子供でも農民でもすぐに武者になれる鉄砲に目を付けた」

 「鉄砲は離れた場所から攻撃できますからね」

 「あぁ。練度もそんな必要としない。だが、他国も鉄砲に目を付け始めた。次はなんぞ・・・。ワシは貴様に勝機を見出した。貴様が使う魔法だ。ワシをも打ち負かす貴様の魔法も是非ワシのために使ってくれんか?」

 信長は唐突にオレに頭を下げ始めた。いきなりだし、まさかあの信長がオレに頭をさげるとは思わなかった為、変な返事をしてしまう。

 「え!?あ、い、いや・・・」

 「なんぞ?ワシが頭下げるのはおかしいか?ワシは目的の為なら頭なぞ何度でも下げてやる」

 そうだよな。戦に参加せず、夢の城持ちなんて無理な話だし、オレが信長を討って代わりにオレが統一したところとて、そんなの面倒なだけだ。適度な自由はやはり欲しい。特にこれから起こるであろう高屋での戦は坊さん相手だ。

 現代感覚からすれば坊さんに戦なんて・・・と思うだろうが、この時代の坊さんは、そりゃ真面目な人も居るだろう。だが、腐ってる坊主の方が多い。布施の強要。高利な金貸し。人攫い。その借金のカタに嵌められた者の家族の女を捕まえ強姦と・・・。これは今日までに調べた事実の事だ。

 それなのに、中立を守らないといけない立場なのに守らず、門徒を使い進めば極楽、下がれば地獄のような事を謳い、襲ってくる一揆勢。オレはまだ坊主と戦っていないからその脅威を知らないが、人攫い、人身売買は既に経験してるからな。

 「スゥ~・・・」

 オレは大きく息を吸い込み、決心した事を言う。

 「なんだ?その顔は?」

 「オレは織田様が為さる天下布武の手助けを致しましょう。まぁ既に一度伝えはしましたが、既に動いているんでしょう?」

 「あぁ。飯盛山城、萱振城を昨年落城させて一度兵は退かせた。ここで一気に本願寺を屠る事が出来れば脅威ではなくなる。細川に朱印状を出し、丹波の国人衆を与力にし、兵力増強するように伝えてある」

 「そうですか・・・。その戦に参加する方をお伺いしても?」

 「それを聞いてどうするのだ?」

 「少し贈り物でもと思いましてね。やるからにはオレは徹底的にやりますよ」

 「なに!?」




 「う~む。では、本日にその参議殿とタケルとイシュがこの家・・・失礼。城に戻ってくるということだな?」

 「えぇ。兄上からはそのように聞いております。正確には山岡殿から聞いているのですが」

 「そうか。ならば待たせてもらいたい。その参議殿にも挨拶くらいせねばな。う~む。そうだな・・・もてなされてばかりでは妾の沽券に関わる。少しばかり皆に贈り物をいたそう」

 「贈り物・・・ですか?」

 「うむ!手前上、国では女王の立場故、臣下に贈り物をするのも苦労するのが、妾は此度は休暇という程になっているから気兼ねがない。まずは、この尾張国、美濃国と友好と致そう。遠藤殿!其方は参議殿の小姓という立場だったな?これを」

 「な、なんですか!?これは!?」

 「これを装備すると腕力、俊敏力が上がるのだ。使ってほしい。そして、妹君にはこれを。ミスリルでできた短剣だ。その腰に巻いた布の下に忍ばせやすいと思う」

 「き、綺麗・・・」

 「あぁ~、遊びで使わないでほしい。斬れ味は我が国でも指5本に入る鍛治師が作った物だ。石でも斬ってしまう」

 「うわー!本当ですわね!床が斬れてしまいましたわ!」

 「お、お市様ッッ!?それをどうするのですか!?」

 「え?遠藤が兄上に伝えれば良いでしょう?」

 「え!?某がですか!?」

 この妹君はなんという性格なのだ・・・。話し方は普通だが、好奇心旺盛というかなんというか・・・。

 「ゴホンッ・・・ダイアローグ!」

 コポコポコポ

 「「えっ!?!?」」

 「どうした?」

 「直った!?」

 「うむ。妾は木属性の適性があるからな。これくらいなら問題ない」

 うむ。やはり魔法がないというのは本当だな。2人が驚くのもしょうがないか・・・うん!?

 「うぉうたぁ~!」

 「お市様!?床を濡らしてどうするのですか!?誰がお館様に報告をすると思っているのですか!?」

 「遠藤がすればいいのよ~!女王様!妾も少し魔法が使えるのよ!」

 なんと!?これは驚いた。初級ではあるが水属性魔法を使っている!この女は楽しい女だ!せっかくだ。魔法を少し教えてやろう!
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