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 ~岐阜城~

 「ふん♪ふん♪ふん♪」

 「おい。遠藤。お前はなんかご機嫌だな?良い事でもあったのか?あっ!そういえば・・・」

 「いやぁ~、某はお館様が居らず寂しくて寂しくて・・・」

 「けっ。よく言うぜ」

 「そういうお前こそ、そんな湯呑みなんか出して何をするのだ?」

 「お!?これか!?茶でも飲もうかとな?お館様が不在の時にしか味わえない茶もあろう?」

 「まっ、お互いに今日は茶でも飲み、軽く後で酒でも飲むか」

 「うむ。小姓筆頭の遠藤殿がそういうならそうしよう。普段話せぬ事もな?ふはっはっはっ!」

 「大変です!誰ぞ!!」

 「ぬっ!?蘭丸殿か!?どうなされた!?まさかお館様が帰られたのか!?」

 「え!?いや、違います!空に人が居まして、お館様かと思いきや、遠目ながら女子のように見えまして、濃姫様かと思いましたが、南蛮の女のように見えまする!」

 「南蛮の女?山岡殿のイシュ殿ではないのか?」

 「某もそう思い、手を振ったところ違う女子のようでして・・・」

 「ぬぁ!?蘭丸殿!?森家の者が女子に手なぞ振るとは・・・まさかイシュ殿とそんな軽口を聞ける仲になったのか!?」

 「え、遠藤殿!?」

 「おい!お前が南蛮の女と話したいという事は分かったが今はそんな時ではない!あの山岡殿の故郷の者ではないのか!?オレが知る限り、日の本の者が空を飛ぶ奴は聞いた事がない」

 「うむ。確かに・・・。ではとりあえずもてなすか」

 「そうだな。騒いで、もし追い返してでもみろ。お館様は・・・」

 『折角、魔法なるものを知る貴重な女をお前達は引っ捕らえたのか!?貴様等全員手討ちじゃ!』

 「と、言われそうではある・・・。」

 「う、うむ・・・。もし、山岡殿のような、まほう?を使うならば、接近戦ならまだしも、俺では太刀打ちできぬやもしれぬ」

 「お二人様!某はどうすれば!?」

 「蘭丸殿は台所衆を起こして、何か作らせてくれ!それと女中も4人程起こしなさい!」

 「御意!」

 「お前はどうするのだ?」

 「俺は・・・」




 ~岐阜上空~

 あそこは家々が並んでいるわね。それにしても暗いわね。眠らない街とはお世辞にも言えないね。うん?あの山の上に変わった形の家がある・・・。あれがおだという場所かしら?あれ?誰か手を振っている?

 「おーーーい!!」

 って、聞こえるわけないか。こんな所をマイクに見られると・・・

 「姫様!端のうございます!」

 と、言われそうだな。だが、今は束の間の休み・・・。正直、日本にはまだ良い印象がないけど、せめて楽しもう。とりあえず、あそこに行ってみよう。タケルの事も知ってるからもしれないしね。

 近付いて分かった事だが・・・この家は凄い。何の材質か分からないけど、形が素晴らしい。側は木かしら?火には弱そうだけど、そんな事よりセンスが素晴らしい。

 それに数人程、妾を待っているのか。空からいきなり人が現れても驚く様子もない。なんなら、整列までしているし、着ている衣装も先程の男達とは違い初めて見るのに、どことなく素晴らしく見える。女も数人居るが、あれは民族衣装だろうか。男も女も非常に似合っている。腰に差しているのは・・・剣か。タケルのやつに似てる気もする・・・。

 「せ、整列ッ!!!!よくぞお越しくださいました!」

 「う、うむ!何が何やら分からぬが、こんな夜更けに申し訳ない」

 「はっ。時間なぞ気にしておりませぬ!某、織田家 小姓の遠藤と申しまする。あなたは、せいんとはいああるからお越しなさったのですか!?」

 「なんと!?我がセイントハイアールを知っておると申すのか!?」

 いや、思わず興奮してしまった。妾は、おだという地名かと思ったが、織田という人が居るのだな。いや、そんな事より何故この者がセイントハイアールを知っているのだ!?タケルが居るのか!?

 「はっ!お館様のお客様から聞いております!こんな所でもあれですので・・・城の中へ。お市様がお待ちしておりまする」

 お市・・・初めて聞く者だが誰だ?




 「タケル・・・少し寒いです・・・」

 「ごめん。う~ん。一応、甲賀の周辺を回ったけど見つからないな。スーラは何か感じるか?」

 「分からな~い」

 「私も分からない。何かあれば今度は見逃さないから、於犬様の身体が冷えてもいけないから今日の所は帰ろうか」

 「うん。そうしよう。犬、こんな寒い中ごめんね。帰ってマッサージでもしてあげるよ」

 「まっさあじ?」

 「ごめんごめん。按摩の事だよ。オレは月ものの時でも犬と一緒に居たいんだよ。さぁ帰ろう!」

 ストン

 「タケル殿!奥方様!」

 「熊五郎さん!?何で起きてるの!?」

 「いや、アオイ殿から聞きまして、それにお亀殿からも・・」

 「姫様!」

 「これ!騒ぐでない!妾は大丈夫じゃ!」

 犬はオレの前に居る時と、女中達が居る前では変わるんだな。まぁ本当に姫だから体裁もあるし、しょうがないか。あの甘えてくる犬がオレは好きなんだけどな。

 「イシュもスーラも付き合わせて悪いな。風呂でも入って休んでくれ」

 「「了解」」

 「犬、部屋に行こうか」

 「はぃ・・・・」

 「旦那様!?」

 「お亀さん。オレは月ものだからって犬を不浄の者とか思わないからね。これから犬に按摩してあげるから、後少しでも朝になるけど、起こさないでね。織田様には朝ご飯にパンでも出してあげて」

 「畏まりました。申し訳ありません」

 
 「なんていうか・・・こんな真冬の寒い中に悪かったね。お腹大丈夫?」

 「は、はぃ・・・こんな殿方に優しくされるのは初めてです・・・」

 「そうかな?オレは普通だと思うけど。強いていうなら、ここは本当に女が多いけど、犬はオレの中で特別な存在だからね。イシュも大切だけど」

 「はい!それは知っています!妾も・・・私も、イシュのようにタケルと一緒に居れるように魔法を極めます!」

 「いやいや極めなくていいからね!さぁ。このまま按摩するから寝落ちしそうならしていいからね」

 オレはエロ関係なく本当に純粋なマッサージを犬にしてあげた。10分も経たない内に犬は可愛らしい寝顔へと変わり、オレもその横で寝る事にした。




 「さぁさぁ。遠慮なくお食べください!用がある場合はその横に居る4人の女に何でもお申し付けください」

 「う、うむ。其方は妾の事は聞かないのですか?」

 「え!?いや、そりゃ聞きたいですが女に根掘り葉掘り聞くのは失礼かと思いまして」

 「そうか。妾は逆に聞きたい事が山程あるのだが?」

 「はっ。ならば某が知る範囲の事ならばお答えいたしましょう」

 「すまぬな。その前にまずは・・・う、うむ!なんとも素朴な料理である!褒め言葉だ!初めて食べるが美味である」

 本当はタケルがたまに作ってくれていた日本料理を期待していたがこれは・・・言葉は悪いが程遠い。不味くはない。寧ろ本当に美味しいが、少し膳が寂しい気もする。いや、いきなり押し掛けた妾にこんなにも尽くしてくれる事に不満を漏らしてはいかぬ!
 
 「うむ。非常に美味であった。感謝する。それで・・・遠藤殿だったな?聞きたい事があるのだが構わないか?」

 「はっ。某に何でもお聞きください!」

 ふぅ。まずはこの辺りのことを聞こうか。タケルの事もだな。この男は教養がありそうだ。
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