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 ストンッ

 「あっ!イシュの姐御様!どこかへお出掛けでしたか?」

 「あら。熊五郎様。ごきげんよう。色々と理由があってこの女の子3人は今日からここで暮らす事になりました。よろしくしてくださる?」

 「そうですか。最早、驚く事もありません。見事に女の子ばかりですな」

 「強い男には自然と女が群がるものですよ。あなた達?自己紹介しなさい。ここはタケルが治る土地よ」

 「あら?可愛いお嬢ちゃん達ね?」

 「本当ね!新しく桃源郷で働く子達かしら!?」

 「朱音様。百合様。この子達は違う仕事をする子達です。仲良くしてあげてほしい」

 「今更なんだい?ここでは喧嘩なんてしないさ」

 「おや?タケル様がお見えになりませぬが?」

 「於犬様。後で理由は言いますが、この3人がここで住む事となりました。朝の3人と同室させてもよろしいですか?」



 ~シゲ目線~

 ここはなんて所でしょう!?見た事がない建物・・・。しかも本当に女性ばかり・・・それどころか、全員がどこかのお姫様のような着物を着ている!?

 「於犬様。後で理由は言いますが、この3人がここで住む事となりました。朝の3人と同室させてもよろしいですか?」

 あの小間使いを連れている女性だけ格が違うのが分かる。絶対にあの人はタケル様の正室の人だ。目を合わせないように頭を下げておこう。

 「そう。では、妾は童の女子(おなご)の相手をしていましょう。シゲ!テル!フク!もそっと近う寄りなされ!」

 「「「は、は、はい!」」」

 「ふっ。そんな緊張しなくてもよろしい。婆や?この3人も風呂に入れてたもれ」

 「畏まりました」

 「あっ、シゲ様?言い忘れていましたが、このお方が尾張国、美濃国、近江、越前と治る、織田家の姫様ですよ。タケルの正室でもあるから。優しい人だから安心してね」

 うわ・・・一歩間違えると首が飛んでしまう・・・。

 「ハハァー!」

 「イシュ殿。そんな妾は大層な女なんかじゃありませんよ。ふふふ。小太郎!ミヤ!食事の用意を!3人分じゃ!」




 
 「クッ・・・この船は本当にヤバいな。全員助けてやりたいが、流石に面倒は見切れないからな。せめてもの・・・エリアキュア!!」

 ポワン

 「あなたは誰!?」 「助けてくれるのですか!?」

 「どこの国の者かは分からないけど助ける事はできない。許せ。その代わりオレの技で病気や怪我は治ったはずだ」

 全員助けてあげたいと思うのは本音だが、さすがに50人以上は居る異国の人を助ける事はできない。多分、明の人間が殆どだろう。そして・・・

 ガチャン

 「邪魔するぞ」

 「だ、誰だ!?さっきから身体が動かねぇ~。お前がなんかしたのか!?」

 奴隷が居た場所の奥に更に戸がある船室があり、そこに入ったわけだが・・・ギルティ。此奴等は許さない。4人の汚い男が着物だっただろうと思う服を下に敷いて、女を甚振っていた。ムチの跡、殴られたような跡、火傷のような跡まである。しかもそれは、つい最近付けられたかのような跡だ。

 「ウィンドカッター」

 パシュンッ パシュンッ パシュンッ パシュンッ

 「ヒッヒィ~!!お助けを!!何でもしますから!」

 「大丈夫だ。君は日本人・・・日の本の民だろう?助けてやる。とりあえず・・・エクストラキュア!」

 ポワン

 「え!?アタイが光っている!?祟り!?」

 「違う。違う。オレが治してあげたんだ。治る前に少し光るんだよ。君は親とかに売られたのかい?」

 「違います!アチキは夜蝶という名前で男を相手に商売していたんだ!」

 アチキ・・・堺の子か?

 「うん。うん。それから?」

 「そう。それで、病気になってしまったところを今井のとっつぁんに薬で治してもらって・・・その今井のとっつぁんに南蛮人のこの・・・きやぁ~!!!」

 いやいや、今更遅れて驚くのかよ!?

 「ヴァースサンド!」

 サラサラサラ

 「え!?死体が砂になった!?」

 「これで話しやすくなったか?」

 「は、はい!この男に奉公するようにと言われ・・・」

 「まさかとは思うが、今井のとっつぁんとはあの今井宗久の事か?んで、薬というのはこの瓶に入っていた薬か?」

 オレは店に並べているポーション類全てを見せた。

 「そう!これです!このギヤマンのやつです!」

 これは・・・黒幕が分かったな。搦め手でも使い黒幕を突き止めようと思ったが、これで分かった。

 「そうか。とりあえず日の本に連れて帰ってあげるよ。たまたまだが、オレも堺に住んでいるんだ。詳しい事は戻ってからだな。フライ!」

 ビシューーーーーン

 オレは夜蝶をお姫様抱っこをして甲板に出て、フライで堺に戻った。




 ストンッ

 「あっ、タケルちゃん!お帰り~!あら?また女を連れてるの?」

 「アキさん。こんにちわ。南蛮に売られそうになっていたんだよ」

 「へぇ~。あら!?まさか夜蝶の姐御じゃないかぃ!?」

 「その声は・・・アキ!?アキなの!?」

 「知り合いか?まぁいいや。アキさん?風呂に入れてあげて、何か新しい着物を用意してあげてくれる?」

 「分かったよ~!夜蝶の姐御!こっちに来てちょうだいな!」

 「タケル殿!!!」

 「あぁ。熊五郎さんか」

 「奥方様が連れて来られた皆を世話してくれています」

 「於犬さんが?分かった。すぐに向かうよ」

 於犬さん・・・武家の姫な筈なのに普通の人みたいな事をしてくれる。やっぱ良い女だわ。

 そんな事を思いながら於犬さんの部屋へと向かう。

 「すいません。入りますよ」

 「あ、タケル様。お帰りなさい」

 「ただいまです。なんかみんなの世話をしてくれていたようで。とりあえず理由を言いますね。イシュ?イシュも来てくれ」

 オレはイシュを呼び、人身売買の事、夜蝶さんの事を簡単に説明した。ここで一つ分かった事は、この於犬さんにはここに居る小間使いだけではなく、護衛として忍びが複数人居るらしい。その人に既に文を渡し信長へと届けていると言っていた。

 「タケル様。お着替え手伝います」

 「え!?あっ、自分でするから大丈夫ですよ!」

 「いえいえ、妾はここに居る事しかできぬ身ですので、それくらいはさせてください」

 前の旦那の佐治何某さんにもしてあげていたのだろうか。いや、旦那とは仲良くなかったと言っていたからそんな事はないのか。本当に於犬さんは健気だ。

 「犬・・・ありがとう。まだまだお互いの事詳しく知らないかもしれないけど、ここに来てくれてオレは嬉しいよ」

 「あぁ~・・・姫様にそんな事を・・・」

 オレが感謝の言葉を言うと、小間使いの女性が歓喜している。

 「そのような言葉は初めて言われました。妾は美人とは程遠い容姿です。ただ、この身に流れる織田の血は価値があるかと思い、前の夫には迷惑だけは掛からぬようにしていましたが、遂に妾を気遣ってはくれなんだ・・・」

 「佐治何某さんでしたよね?オレはその人とは違うよ。それにオレは犬の事・・・本当に可愛いと思いますよ。今日の夜、呼びますよ。あっ、後・・・お子さんの事ですけど、織田様に伺い立ててからですが、贈り物とかも出していいですよ」

 「誠にございますか!?」

 「えぇ。オレはあなたを織田家との繋がりの為に結婚したつもりはありませんので。まぁ、とりあえずオレはまだやる事がありますので、また夜にでも」

 今日はだいぶ疲れた。夜は於犬さんに癒してもらおう。だが、まだその前にしないといけない事がある。

 「フライ!」

 オレは1人で岐阜城へと向かった。
 
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