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 「嘘!?マジで!?」

 「え、えぇ。武士の間では赤犬が特に美味しいと聞いた事があります」

 「いや・・・その土地の食べ物を馬鹿にするわけではないが・・・オレには犬を食べる事はできないや」

 
 「はぁ!?越後は謙信が村同士で争わせるの!?何のために!?」

 「なんでも・・・『来たる宿敵のため足軽雑兵全ての戦力を底上げするためである』と言いまして・・・」

 「いやいやアホだろ!?確かに上杉軍は強いと聞くけどよ・・・。それで家が無くなったり死んだ人なんかは!?」

 「さすがに、人を殺したりすれば厳しい罰があり、褒美が貰えないと聞いた事があります。飽くまで、越後国全体の演習と言っていました!」

 いや、上杉謙信ヤバすぎだろ!?昔の大日本帝国みたいな1億総玉砕的なアレか!?

 「安心してくれ。オレはそんな事させないし、シゲちゃんは肉が食べたいなら犬ではなく猪とかもっと美味しい肉を食べさせてあげるから!」

 事実は小説よりも奇なり。ではないが、まさかぶっ飛んだ事が行われているとは思わなかった。


 その後はイシュも話に加わり、普段の下々の人の生活の事や、娯楽の事なんかも聞き更に1時間程経った。

 「大人の人は男女で交わる事をよくしておりました」

 「はい!?テルちゃんが何で知ってんの!?」

 「道端で・・・そういうのを見た事がありました・・・」

 この時代は本当に娯楽が少ない。なら何をするか。セックスをする。という風になるらしい。そりゃ、嫌がる女性も多いらしいが、案外そこに関しては大らからしい。

 そして性教育なんてものもない。だが、この時代の一般家庭でも普通に物心付いた子供が居る前でも平気で父親母親がそんな事する農奴の人達なんかも居るらしい。

 権力者は多分別だろうが、平民の人達は浮気や離婚、結婚なんかは結構普通に行うみたいだ。これは薩摩出身のシゲちゃんも、越後のテルちゃんも言っていた。

 「まぁ、オレが居る所は男は少ないけど、もし結婚とかしたいなら言ってくれ。お祝いくらいはちゃんとしてあげるから」

 オレが話を閉めた所でちょうどミゲルが現れた。大荷物を抱えてだ。

 「兄ちゃん!お待たせしました!」」

 「ミゲル!やっと来たか」

 「すいません!例の金に見合う物、量を見繕うのに時間が掛かりました」

 「すまないな。オレはそこそこで良かったんだが」

 「いえいえ!そんな事はありません!これでも少ないくらいです!」

 このミゲルという男は本当にいい奴だ。オレは少し吹っかけられるかと思っていたが、そうでもないらしい。香辛料はこの時代では非常に高価だ。主に薬で使う事が多いみたいだが、それにしてもズタ袋だが一杯に持って来てくれたようだ。

 「本当に色々持って来てくれたんだな」

 「えぇ。正直、少し苦労しました!この辺で取引される香辛料を殆どと、薬で使う物も入れておきました!」

 「そうか。苦労をかけた。後・・・これを持っていてくれ」

 「うん?これは何ですか?」

 「その瓶は蓋が付いているが、空かないように出来ている。中身は何も入っていないが、もしミゲルが奴隷市で日の本の民や、ミゲルが命に関わるくらい危ない事があればその瓶を割ってくれ」

 「えっ!?割るんですか!?」

 「あぁ。そうすればオレがすぐに駆け付けてやる。さっき言ってたよな?胡椒は国が管理しているって?色々持って来てくれたが胡椒が1番多い。それなりに危ない橋を渡って持って来てくれたんだろう?それはオレから見れば恩人だ」

 「いえいえ・・・そんな事・・・もあります・・ははは」

 「ふん。正直な奴は良い。オレは既に友と思っている。まぁ間違って手を滑らせて割ったりするなよ?」

 瓶の中にはオレの魔力を込めてある。魔力がない地球で、瓶が割れるとすぐに探知できる。ミゲルはオレと歳がかなり離れてはいるが、本当に友達のように思っている。

 「分かりました!兄ちゃんに次出会うまでに更に香辛料の他、珍しい物を仕入れておきましょう!それと、日の本のなんという所に居るのですか?」

 「堺という所だ。もし日の本に来るなら薩摩や肥前に停泊するだろう。それより更に北にある商業が盛んな所がオレが居る堺だ」

 「そうですか。外国に行ける商人はごく僅かですからね。俺が目標としてるところです」

 「あぁ、言い忘れていたが黄金の国というのは、幻だからな?オレは金塊を渡したが、たまたまだからな?」

 「へへっ。それは言わないでほしかったですよ」

 「ふっ。まぁそれが現実だ。マルコポーロが見た記録より、ポルトガル人のトメ・ピレスが編纂した東方諸国記の方がミゲルは身近ではないか?」

 「よくご存知ですな。我々商人は必ず見た事がある書物ですよ」

 「まぁ金は古今東西、価値が変わらないからな。まぁもし日の本に来る事があれば是非、堺まで来てくれ。もてなすぞ」

 「ははは。その時が来るように精進致しましょう」

 「オレがまた来るかもしれないぞ?じゃあな。世話になった。シゲちゃん、テルちゃん、フクちゃん。手を。帰るよ。フライ!」

 ビシューーーーーン



 「きゃぁ~!!怖いです!!!」

 「ははは。オレかイシュに触れてたら大丈夫だよ。寒くもないだろう?」

 「テル様。そうですよ。タケルが落ちたりなんかしないわよ」

 「タケル様・・・その・・・着物が・・・」

 「うん?うをっ!?あっ、ちょ、もう少しだからごめん!見ないようにするから!」

 シゲちゃんの帯が緩くなっていたのか・・・着物が、はだけてオッパイが丸出しになっている。うん。狙っていたわけではない。不慮の事故だ。だが・・・

 「タケル?何か変な事考えてない?シゲ様の胸ばかり見ているけど?」

 「いやイシュ!違う!違うんだ!って・・・あれ!?船!?」

 「タケル?話を逸らさないで」

 「違う!本当に船なんだ!イシュ!先に桃源郷に戻っていてくれ!シゲちゃん!本当に違うからごめん!テルちゃんもフクちゃんもイシュと手を繋いで!オレはあの船を確認してくる!」

 「ちょっと!タケル!?もうっ!!シゲ様。タケルに悪気はないから許してね。じゃあすぐに帰るわよ」

 「はぃ・・・」

 
 バチンッ!!!

 「誰が吐いていいと言った!!?」

 ストン

 「邪魔するぞ」

 「なっ、なんでぃ!?空から男がやって来ただと!?」

 「おいおい。いきなり現れ、乗り込んだのはオレが悪いが、今お前は人相手にムチ打ってたよな?」

 「お前達!此奴を殺せ!!海に投げ捨てろ!!」

 「あぁもう。少しくらい話を聞けよ!ストップ!」

 「クッ・・・身体が・・・動かん・・・」

 「まぁな。そういう魔法だからな。お前達は奴隷船か?この中に日の本の人間は居るか?まぁいいや。ヴァースビーコン!」

 ピーン

 「な、なにをやっている!?お前は何者だ!?」

 「いや、あんたに教えるつもりはないよ。あぁ、日の本の人間とだけ言っておく。お前達はどこの国の者だ?ポルトガル人ぽいが言語が違うな」

 「クッ・・・シャムの商船だ」

 「嘘だな。いや、商船といえば商船か。船室に何人も人が居るな。調べさせてもらうぞ」

 オレはヴァースビーコンという魔力を反射させて室内に何人居るかというのが分かる。何かに繋がれて人が押し詰められているのが分かる。間違いなく奴隷だと思う。

 そして、船の中に降りていく。が・・・

 「臭ッ!!なんだここは!?」

 汗、糞尿の臭いが充満していた部屋に、アジア系の人間が座らされていた。みんな手と足にロープを絡められてだ。たまたま見かけた船で、イシュからの問い詰めから逃れようと降りた船だが、まさかこんな風だとは思わなかった。
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