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 「山岡殿!おめでとう!」

 「よっ!タケル!!」

 「天晴れ也!」

 「これでお主も織田家の一員ぞ!!」

 「於犬様!誠にようございました!」

 「於犬様が再婚されるのが殊の外、嬉しゅうございます!」

 話が決まった後は超早い。いや、超超超早かった。これが織田信長という人物なのだろう。すぐに祝言という運びになった。なったはいいが、於犬さんは出戻りであり、2回目の結婚となるわけだ。

 盛大にとはいかず、なんなら形式だけでもという運びになり、服なんかもそのまま。於犬さんの方はイシュが作った新品の代えの服を渡し、付近に居る諸将や、有力者だけを呼び形だけの祝言だ。最早、あんた誰だよ!?って人しか居ない。なんなら知ってる人は津田さん達、信長、慶次さんくらいだ。

 結納の品はどうしたのか。織田家側からはシンプルにお金だった。その額124貫と目録に書かれ、瓶いっぱいの銭だった。

 ちなみに於犬さんとはこの祝言?までにかなりデートをした。デートという名の魔法遊びが多かった。だが周りからは、信長の妹、それに出戻りだから、断れない政略結婚にしか見えないだろう。しかも、言葉悪いがこの時代ではお世辞にも美人とはいえない於犬さん。お市さんの方ならこの時代の人なら万歳三唱ものだろう。そのくらい美的感覚が違う。

 オレとは家格が明らかに違うけど、ただの客将に・・・しかも新参も新参のオレに織田家に連なる女が嫁に来るわけだ。否応でもこれから織田家に使われるだろうとオレでも分かる。

 それを差し引いてもオレはこの於犬さんを抱いてみたいと思ってきている。まぁ考えはゲスいかもしれないが。何故こうまで気持ちが昂っているのかというと・・・

 「こんな出戻りの醜女なんかを引き取ってもらいありがとうございます」

 「妾なんぞ仏門に入るのが筋ですのに」

 「山岡様は不思議な力を使い、兄上を・・・延いては織田家に尽力してくださいますよう妾もその架け橋になるよう」

 いつ話しても姿勢良く、発音良く、言葉の抑揚良く、着ている着物もピシッとしているせいか、ここ戦国時代では比較的ガードが低い女性が多い中、於犬さんに関してはそれがない。着物の下が気になって気になって仕方がない。

 「なんですの!?こんな美味しくて甘い菓子は初めてでございます!え!?女中の皆にもですか!?」

 「本日の夕餉もまた見た事ない物ですね?美味しい!!これほど美味しい夕餉があるとは思いもよりませんでした!え!?これがあの鮭ですの!?妾は初めて食べます」

 身体だけで抱いてみたいと言えばゲスイ。それは自分でも思う。身体以外で言えば、オレが作ったご飯を美味しい美味しいと食べてくれる。正月明けに暇だから千さんに言って抹茶アイスでも食べようかと思い、作ってもらったのだがこれも大好評だった。

 あっ、ちなみに千さんの抹茶アイスは織田家全員、そして公家?なんかも居たらしく千さんは相当みんなに喜ばれたそうだ。

 そのついでで作った、クッキー、プリン、ホットケーキなど於犬さんは全て美味しいと言ってくれ笑顔が素敵だった。城でも女中の人達に結構ヒソヒソされているらしく、いくら城主の妹と言ってもやはり出戻りは肩身が狭いらしく、そういう話も込みでオレは於犬さんを連れて帰りたいと思っている。決して、身体だけではない。


 「ここに来て居る者はタケルが何をしている者か知らぬ者も多いだろう。それは近い内に分かる事だろうから敢えて言わん。一つ言える事は新参だと舐めて掛かるなということだ」

 信長がそう言い切った事で来てくれた人達から笑みが消えた。オレを買い被り過ぎだ。

 
 2月に入ったところで、クソ寒い中、堺へ帰る事となった。当初の雪がなんたらという事はどうしたんだよ!?と思うかもしれないが、桃源郷で少しやっかいな事が起こったから、前倒しで帰る事となった。

 茶衆の人達は暫く岐阜に留まるそうで、オレ達だけでの帰還だ。オレ達だけと言ってもかなり人が増えた。まず、ふくちゃん、とよちゃん、くめちゃん。慶次さんも居るし、於犬さんとその側仕えの人3人。後は・・・

 「喜八も着いて来るのか?」

 「へぇ~。旦那の護衛及び大殿と旦那の連絡役と相成りました」

 「そうか。とりあえずこの人数全員をオレの家にと言えば住まなくはないが個人の部屋が足りないから大幅に増築する事とする」

 大量の尾張兵に見守られながら帰る事となるが城から1キロは兵が並んでいて、オレは早くフライで帰ろうと思うのに中々そうはいかなかった。

 喜八の配下10名が輿を担ぎ、やっとの思いで兵が途切れるところまで来た。

 「ふぅ~。疲れた。さて・・・イシュ?フライで帰ろうと思うけどいいか?」

 「いいわよ」

 まぁそこから大変だ。空を飛ぶなんて言っても誰も信じない。いや、於犬さんと慶次は信じている。怖がるかと思ったがそうでもないみたいだ。


 「キャァ~!!」「うぎぁ~!!」「ぬぉぉぉ~!!!」

 「南無阿弥陀南無阿弥陀!!」「妾は空を飛んでおるぞ!!」

 ストン

 「すいません!ここで一度休憩します!!」

 まずは大津までやってきた。アオイさんを連れて帰るためだ。明智さんは話を通しておくと言ってくれたからな。

 まずフライの魔法だが、まぁ予想通りの反応だ。だが、やはり血筋というべきか・・・。於犬さん1人だけ余裕のあるような反応だった。喜八に関しては怖いくらいに南無阿弥陀ばっか言ってるし。
 
 「店主!山岡です!」

 「お待ちしておりました!さぁ!アオイ!しっかり奉公してきなさい」

 「はい!お世話になりました!」

 本当に話が済んでたみたいでかなり早く事が終わった。

 「たまにまた顔出させてもらいます。アオイさんを幸せにします!」

 臭い言葉を伝え、さっさと大津を後にする。何故オレがこんなに急いでいるかというと・・・

 「タケル!早く桃源郷に戻りましょう。スーラだけでは不安よ」

 「分かってるって!それにしても偽薬だなんてイチャモンつけてこられるなんてな」

 スーラからの報告で、桃源郷で購入した薬で死人が出たとか言われているらしい。それプラス、明智さんからかなり手紙が届いているとのこと。住所なんかもないこの時代によく手紙届けられるなと思う。飛脚の人はすげーわ。

 「休憩終わり!於犬様!大津宿のアオイさんという方です」

 「た、タケル様!?於犬様って・・・まさか・・・」

 「あら?また女が増えるのですか?」

 「すいません。於犬様との話が纏まる前に色々とありまして・・・」

 そうだ。確かに色々とあった。主にアナルへの城門突破の件とか、アナルへの探究心だ。

 「そうですか。まだ妾も誰が誰だかよく分かっておりません故・・・とりあえず山岡様の家でお聞かせください」

 「分かりました。とりあえず帰ります!みんな!手を繋いで!!」

 「旦那!?またですかぃ!?ここからは歩いてみては!?」

 「喜八!それは無理だ!フライ!」

 ビシュンッ
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