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 「ハイキュア!」「ハイキュア!」「ハイキュア!」

 「えぇ。南蛮の技です。ハイキュア!」

 「昔、南蛮の霊峰にて身に付けた技です。ハイキュア!いやいや菩薩なんかじゃないですから!」

 「え!?仏!?いやいや仏なんかじゃないですよ!いやいやこんな貰うだなんて・・・」

 「え!?あなたもですか!?そんな悪いですよ!?」

 

 オレはキュアをかけまくっていた。色々な人の家を回り即座に治るもんだから干し柿やら蓑をくれたり、めっちゃ臭い何かの動物の毛皮をくれたりと・・・。おまけにオレのことを仏じゃ菩薩とか言ってくる始末だ。

 「うむ。何度見ても驚くな。とりあえずはこれで終わりだ。夜になってしまったな」

 「クァ~。さすがに眠くなっちまったぜ」

 「2人ともわざわざすいません」

 「なんのなんの。礼を言わねばならぬのはこちらの方だ。長島の一向衆はタチが悪くてな。失う物がない物はあんなに凶暴になるのかと冷や汗かいたものだ」

 「河尻様は仕えて長いのですか?」

 歴史でこの人の事少しは知ってるが敢えて聞いてみた。帰りながら色々教えてくれた。元は尾張、岩崎村というところの出身だそうだ。今は信長だが信長パパ、信秀に仕えていたのだそう。

 かの有名な桶狭間の戦いにも参加していたらしい。そして、美濃攻めの一つ堂洞城攻めなんかでは激戦の中1番乗りまでしたらしい。姉川、志賀と主要な戦には出ているという事を聞いた。

 「タケル?この河尻の旦那はな?戦になれば鬼のような働きをするのだ!間違っても怒らせるんじゃないぞ?鬼が出るぞ?ははは!」

 「慶次郎!勝手な事を言うな!」

 確かに並々ならぬ物を感じる人だとはオレでもわかる。だが、自分の武勇を誇る訳でもなく礼儀正しい人だと思う。オレを怪しみこそしていたが今は普通だ。なんなら、彼の地のかつての仲間のジョンに雰囲気、性格が似てるせいかオレは親近感が湧いている。

 「おっと・・・待ちな。怪しい奴等が居る。4人だ」

 いやこの時代の人っておかしいんじゃないのか?オレもサーチで今分かった事を慶次も分かっているんだが!?

 「やれやれ・・・お館様の領内ですら未だ賊が蔓延っている。これじゃあ夜も出歩けぬではないか。慶次郎?1人で構わぬか?」

 「へっ。素浪人や賊如き10人でも相手できるさ。そこの者!出て来い!大方、誰ぞに雇われた乱波者だろう」

 「チッ。お前は傾奇者の前田慶次郎だろう?お前には用はない。俺達が用があるのは後ろのおっさんだ。河尻・・・やっと単独で動くところを見つけた・・・」

 「なんぞ?俺に用か。どこかの家中の者か?」

 「ふん。お前がそれを無くした。越前と言えば思い出すか?三段崎家・・・」

 「いや~すまん!まったく思い出せぬ。だが今は客人も居るからな。危険な目を見せるわけにはいかぬ。俺に用ならあちらで話さぬか?ん?」

 この河尻秀隆が鬼と言われるのが分かった気がする。猛将だ。これは殺る気だ。それにまったく覚えていないのも本当みたいだ。ムゴい。力量差がありすぎるな。多分すぐに終わるだろう。

 「チッ。この刀で思い出せ!!死ねやぁぁぁぁぁぁ~~!!!!」

 男がそういうと一斉に賊の人達が河尻に飛び掛かる。用はないと言ったのに1人が慶次の方、1人がオレ達に向かってきた。

 「タケル?どうする?殺っちゃっていいの?」

 「向かってきたのは向こうだ。イシュはいいよ。オレが殺る」

 「むむむ・・・山岡殿!すまぬ!1人そっちへ行っーー」

 河尻の言葉を遮ってオレは魔法を唱えた。

 「許せ。向かってきたお前が悪い。ヴァースコメット!」

 ヴァースコメットとは石つぶてを降ってくる魔法だ。向こうでは目眩しくらいにしか使えないが防御もなにもないこの時代の人なら有効だろう。致命傷になると思う。それと一応人数差があるため、慶次と河尻にバフをかける。

 「ヘイスト!メドーラ!オブドーラ!」

 ズシャッ ズシャッ ズシャッ ズシャッ ズシャッ

 ブサッ ブサッ ズシャッ ブサッ

 「なんだ?なんか身体が軽くなったような・・・それにこんな簡単に此奴が振れたっけな?おーい!河尻の旦那!手助けは・・・いや要らないな。っていうか瞬殺すぎるぜ?」

 「いや、俺も驚いている。山岡殿が喋ったあと急に体が軽くなった・・・っつ・・・」

 「河尻様?怪我でもされましたか?」

 「いや、古傷がたまに痛む時があるのだ。まぁ気にするな。それにしても迷惑かけた」

 「ハイキュア!」

 ポワンッ

 「早く言ってくださいよ。河尻様もお治ししますね。それとオレの方の1人はどうしましょうか?殺してはないんですが」

 「なんか石が降ってたように見えたが・・・そんな事より痛みがなくなった」

 ズシャッ

 「おい!慶次郎!?」

 「タケルは甘いぜ?賊は殺すに限る!どうせ碌な者ではないだろう。三段崎家と言えば越前・・・姉川の時か一乗谷の時だろう。河尻の旦那は恨みを買いすぎだぜ?」

 「そう言われてもだな・・・俺は本当に覚えておらん」

 「ははは。敵も可哀想ですね。まぁとりあえず戻りましょうか。オレが魔法かけているので少しの間は速く動けますよ。ちなみに、怪我は完璧に治ってるはずです」

 「うむ!ありがとう。礼は必ず。それと上岡殿、何か美濃や尾張であれば俺を頼ってくれ!」

 なんとなくだけど、やはりジョンに似ている。少し懐かしく思うし、少しこの人の事が好きになりそうだ。いや、ラブじゃなくてライクの方だけど。


 ゴグリ・・・

 今は夜だ。何時かは分からない。だが一つ言える事は・・・

 「肉・・・肉がこんなに・・・・」

 「ふん!やはり南蛮の者だな。急遽作り直させた。まさか今日で全員治療するとは思わなんだ。まぁなんだ。無礼講だ。好きに食べ好きに飲め。食材はお主が献上したぼあ?という獣の肉を使っておる。丁寧に食材の使い道なんかの紙も書いていたらしいな」

 オレがこの場は居る事がおかしいだろう。誰が誰かは分からない。明智さんと羽柴さん、池田恒興だけは分かる。後は知らない人だらけだが、そんな事より肉が並べられてある事に感動だ。

 味噌と、たまりを漬けて焼くようにと紙に書いていた。まさかその通りの物が出てくるなんて・・・。未来の焼肉とは程遠いし、なんなら1週間前まで食べてたのにこんなに美味いとは・・・。

 「ありがとうございます」

 「うむ!皆の者も今宵は好きに食べて好きに飲め!先に言っておく!今宵の酒はこのタケルが献上した異国の酒だ!権六!飲み過ぎるなよ!」

 「はっはっはっ!ご冗談を」

 あの人が柴田勝家か。想像のまんまのような人だ。

 信長の号令で始まった夜飯・・・

 「さぁさぁお館様!一献!」

 「うむ」

 「お館様!某の方からも一献・・」

 史実では下戸と思っていたが案外飲むんだな。

 「さぁお館様!盃が空いてますぞ!」

 「・・・うむ」

 怪しくなってきたな。顔が真っ赤だ。

 「タケル!!!この酒はなんだ!?美味いではないか!!おっと・・・俺は丹羽五郎左と申す!!好きに呼んでくれ!」

 「は、はい!喜んでいただきこちらも嬉しいでーー」

 「おぅおぅ!この懸かれ柴田を満足させる酒を持ってくるとはお前は中々だな!」

 「はっ、はは・・・」

 「物珍しき南蛮の物を相当持ってきたらしいな。某は滝川左近。調べた時とは違うようだな」

 この人は滝川一益か。調べた時・・・この人がオレとイシュを探ってたのか!?いや、それにしてもよく調べたな。

 「いえいえ。得体の知れないオレ達ですから・・・よく内部の事まで調べられましたね?」

 「気を悪くするなよ?あのお主の桃源郷だったか?あそこは中々の堀と中々の櫓がある。だが、客に対して無防備すぎるな。まぁあんな石壁まで作って誰と戦う気だ?」

 マジか・・・。客の中に潜んでいたのか!?

 「・・・・・」

 「まぁそんな顔するな。これからも信頼できるまではお主の前に出るやもしれぬが許せ。これが某の仕事だ」

 滝川一益・・・侮れない人だ。
 


 酔えばみんなは方々で好きな人達と飲み始めた。初対面だからかなり壁があるオレだが、津田さんが気を利かせてみんなに紹介してくれる。如何に桃源郷が素晴らしい所か、如何に桃源郷で出される飯が美味いかだ。イシュも料理と酒を飲んで食べているが、全てスーラに吸収されているだろう。

 オレは明智さんに耳打ちをした。例のアオイさんの件だ。
少し問答があるかと思いきや・・・

 「うん?例の御礼がそんな事でいいのか?」

 「はい。是非お願いします」

 「ふ~ん。そうか。権兵衛に伝えておこう。帰りに迎えに参ると良い。お館様~!?」

 明智さんもかなり酔っているせいか、らしからぬ返事と信長に対して甘えた声を出していた。うんうん。この時代の人は大概酒を出しておけばバッチグーだな。

 「タケル?あの信長ってヒューマンかなり酔ってしんどそうだよ?」

 「そうはオレも思うけど・・・キュアでもかけようか・・・」

 「あの人は相当、権力あるんでしょ?この人達のボスでしょ?今後の事も考えれば近づき過ぎて悪い事はないと思うよ?」

 「う~ん。分かったよ」

 イシュには何か考えがあるのか、ここ最近やたら権力者にオレを近付けようとしてくる。だが、信長は確かに絶大なカリスマを持っている。それはオレにすら分かるレベルだ。

 「織田様?相当酔っている様子・・・お治ししましょうか?それとこれからはこれをお飲みください」

 オレが出したのは彼の地でエルフに人気のジュースだ。

 「うん?なんだ?これは?ぬぉ!?甘いじゃと!?」
 
 オレはジュースを渡す時一緒にキュアもかけた。とりあえず酔いは醒めるだろう。

 「それは酒ではなく果物の汁を搾った飲み物ですよ」

 「殿ぉ~!?そんなところでぇ~なにやってるんですかぁ~?皆、殿の話を待っておりますよぉ~」

 凄い勢いで飲み始めたみんな。さっそく誰とも分からない人が酔ってるわ。これ明日怒られるやつじゃね!?

 「ふん!お主等は好きに飲んでおれ。タケル来い。酔いどれは酔いどれだけで飲ませておけば良い」

 信長はそういうとオレを私室に連れてった。もちろんイシュも一緒だ。
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