上 下
45 / 70

42

しおりを挟む
 「なんと!?身体が軽い!なに!?もう関ヶ原だと!?」

 「そうなんですよ。タケルが南蛮式の呪(まじな)いをしたら身体が軽くなるのです!」

 「これは・・・こんな事聞いた事がない!まぁこの分なら本日中に美濃に入れる!このまま進もうぞ!」

 もっと本気を出せば今日中に未来の秋田県くらいまで走れるんじゃないかと思う。

 関ヶ原を抜け、関所も何箇所もあったが全て顔パスして美濃に入る。現在の大垣市を抜けると人が多くなる。集落も多い。

 「美濃国は凄いですね。人が多いし、堺ほどではないにしてもそこら中に行商人のような人も居ますね」

 「そうさ。お館様が楽市楽座を行い自由な商いを奨励しているからな。本格的な店を持つならやはり城下の方がいいだろうが他の地の城下より美濃の村々の方が銭が動いているだろう」

 「そうやんな。ワテが関所を極力廃止し、流通も取り入れた方が良いと言った事を織田はんは即座に理解しましたからな」

 楽市楽座・・・確か座代が掛かっていたのを廃止し、関所もなくし人の行き来も楽になったのだったよな。まさか今井さんが絡んでいるとは思わなかったな。

 もしオレが信長なら更に違う事もするだろう。人が多くなり物が溢れ、お金が溢れると儲ける人が居る。そうなると人は更に贅沢がしたいと思い、質の良い物を欲しがる。そこでオレなら織田家が直営する飯屋でも茶屋でも何でも質の高い店を配置し、金額の設定も高くし、金を持っている人を呼び更にお金を落とさせるだろう。

 後は治安の方がどうだろうな。素浪人のような人は結構見えるけど。それに道だ。やはり凸凹道が多い。ここもヴァースクリエイトで転圧して滑らかにすれば、馬車なんかも普及するだろうな。

 「タケルはなにか思うところがあるのか?」

 「え?あ、いやいや素晴らしい街だと思いますよ!」

 「そうか!お館様の肝入りの政策だからな」

 更に歩を進めながら話し込む。羽柴さんも先の長浜城 城下にて似た事をしてるらしい。水運の方でだ。今やその流通の規模がここ美濃に匹敵するそうだ。素直に羽柴さんが凄いと思う。だが、残念ながら出費の方が多く中々お金が羽柴家にまで入ってこないらしい。その事をよく、奥さんのねねさんに言われるらしい。

 「ねねは銭に関しては厳しいからな。又左のところの、おまつ殿より厳しいからな」

 これまたオレが知ってる人の名前が出たな。かなりのロリコン前田利家とその奥さんだよな。

 そうこう話ししていると稲葉山・・・現在の金華山に姿を現す。大きい。豪華な感じはしないけど、オレが1番驚いているのは堺くらい人人人。物物物。店店店。往来の人も笑顔の人が多い。ここに1番驚く。

 治る人によってここまで変わるものなのかとも思う。如何に信長が良い治世をしたるのかが分かる。京なんかより、大津なんかよりも凄い。まぁ大津はこれから発展するのだと思うけど。

 オレが呆気に取られていると、急に人が道の端に寄り羽柴さんや今井さん達を下馬をし平伏する。

 「こら!タケル!早く下馬しろ!お館様だ!」

 「すいません!」

 パカラ!パカラ!パカラ!パカラ!パカラ!

 「ほう?誠、南蛮の女連れとはな。サル!ご苦労!」

 「はっ!茶衆の者を無事連れて参りました!」

 「ふん。昨日、金柑も登城した!なんぞ奴らしからぬ臭いをしておって敵わんかったがな。して・・・貴様はなんと申す?聞いたところ南蛮人のような出立ちと聞いたが日の本の人間のように見えるが?女は違うようだがな」

 「はっ。山岡尊と申します」

 「タケルか。よく来た。今井も津田も千も久しぶりだな。お主等の茶を期待している」
 
 第一印象としては細マッチョなダンディーなおじさん。別にオレ達を偏見するでもなく普通な感じがする。まぁ、とりあえず先に来てるっていう明智さんにアオイさんを連れて帰れないか聞きたい。


 城に登るのも一苦労だ。長浜城はそんな丘の上でもなく平城ってやつだったからなんともなかったが、ここ岐阜城は山を上らなくてはいけない。その道中オレは例の如く馬の事をかなり聞かれ、出身地やオレが堺で何をしてるか、南蛮での事など根掘り葉掘り聞かれた。

 羽柴さんなんか目じゃないくらいに上っ面だけではなく内面の事まで聞かれた。誰が治め、誰がどういう風な役職をしてるのか、民はどんな暮らしをしてるのかや食べ物や遊び事まで何から何まで聞かれた。その姿は後世で言われる第六天魔王とは程遠く感じる。

 時折り、羽柴さんに言葉遣いの事を言われたが、信長は気にしていない感じだ。一応、オレなりに敬語を使ってるのだが、それなりにルールが多い。まず、信長より先に馬を出してはだめだとか、話を遮ってはダメだとか質問を質問で返すのは失礼だとかだ。そして呼び方・・・みんながお館様とか織田殿、織田はん、と呼ぶからオレは当たり障りのないように織田様と呼んだがツッコミがきた。

 「南蛮では諱関係なく名前で呼ぶのが普通ではないのか?」

 この信長が指す南蛮とはポルトガルやスペインの事だろう。今の時代がどうかは分からないし、ポルトガル、スペインが未来のアメリカのように呼ぶかは分からない。ミドルネームがあるのかすら分からない。が、宣教師と度々会っている信長は南蛮人には結構寛容とのこと。

 それに方言の強い堺の人、主に今井さんだがその今井さんも形式張った席ではちゃんと話すがこういう普段の時は意外にフランクだそうだ。

 「自分が居た世界では目上の人には基本的に姓で呼びかけます。名で呼ぶのは仲良くなった方や仲間内などです」

 「ふん。そうか。まぁ好きに呼べ。別にお主はワシの臣下ではないのだからな。客人の1人だ」

 本当に寛容な人なんだと思う。イメージとしては『今の口調はなんだ!!手討ちに致す!』とか言われるかとまで思った。なんなら、側に居る小姓?らしき人の方から殺気が向けられている。

 
 そうこう話しているの城の前まで到着した。やはり日本人なら誰しも城に憧れるだろう。オレもその1人だ。城の主になればさぞ気持ちの良い事だろう。

 「お館様のお帰りだ!門を開けよ!」

 「「「「お帰りなさいませ」」」」

 みんなが信長を迎え入れる。深々とお辞儀までしてだ。凄い統率だと思う。

 「何もないところだがまぁ入れ」

 この言葉がそうじゃない事を物語っている。少しニヤッとしていた。オレは驚かないかもしれないが、多分外国の物なんかかなり置いてあるんだと思う。一応、イシュに驚いた振りをしろと念話を飛ばし、城の中に入った。

 
 城の中は普通だ。普通だけど違う。殺風景というのは悪いが何もない所が多い。だが何箇所かの部屋に現代と同じような畳が敷かれてある部屋もある。そしてサーチで軽く城を調べると隠し通路のようなものがかなりある。特に・・・

 「今井達はここで待っててくれ。ワシはこの者から先に聞かねばならぬ事がある」

 そう言って、オレとイシュは違う部屋に連れて行かれたがこの茶室は屏風と掛け軸の後ろに通路があるのが分かる。現代映画で見るようなまんまなのかと驚いた。まぁ普通なら気が付かないだろう。

 そして連れて行かれた部屋が3階だろうか。天守というとこだろう。だがこの部屋は凄かった。未来を知ってるオレからしても凄いと思う。

 「入れ。何もない所だがな。足は崩してよい」

 「あ!?え!?地球儀!?それに虎の・・・剥製ですか!?鎧まで!?うを!?絨毯まで敷いてあるのですか!?」

 「ふん。さすが南蛮の奥の出身だな。全て知っておるか」

 うん?オレはこの人にまだ何も言ってないんだが?なんでその話を知ってるんだ!?

 「すいません。取り乱してしまいました」

 「構わん。女の方も驚いた風を装っているがそうでもなさそうだな。ワシが調べた貴様等は南蛮の奥の奥、中々到達できない場所から来たそうだな。いつどこでどうやってなぞとは聞くまい。貴様が地球儀と呼んだこれのどこがその国か?」

 いやいやさっきまでの雰囲気とかなり変わってるんだが!?魔王以上のオーラが発せられてるぞ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...