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 夜は長浜城のこれまた一際大きい部屋に案内され羽柴さん、今井さん、津田さん千さんオレ、イシュとこのメンバーだけのご飯だ。

 明智さんと違い羽柴さんは根掘り葉掘り何でも聞いてくる。例えば・・・

 「山岡殿の国も日の本のような感じなのか?」

 「山岡の家族は居るのか?兄弟は?女兄弟はいないのか?」

 「タケル殿は何ができるのだ?元々将軍なのか?」

 「タケルはイシュ嬢が言うには相当に剣も槍もやると聞いたがどのくらいなのだ?」

 「まぁ飲みなさい!うん?タケルの酒の方が美味い!?なんじゃこれは!?飲んだ事がない酒だ!しかも強い・・・」

 このようにどんどん呼び方が変わり、30分もしない内にタケルと呼び捨てになった。だが不思議と嫌いではない呼ばれ方だ。少し不気味なのは今井さん。ずっとオレを探る感じがするが特に何か言われるでもない。

 夜ご飯はthe普通だ。恐らくこの時代では豪華なのだろう。大津宿よりかは濃い味だがやはり肉が食べたい。

 皆々はオレが出したドワーフ&エルダードワーフが作った異世界産の酒を飲み、早くも出来上がっている。

 「皆様!オレはそろそろ休みます。酒は置いておきますので好きにお飲みください」

 「やれ!待たれぃ!タケルも飲もうぞ!」

 「勘弁してください。船の件で気分が悪いのです」

 これは嘘だ。津田さんとならまだしも他の人は未だよく分かっていないから飲みたくないだけだ。それにイシュとの約束もあるし。

 そこから暫く問答があったが丁寧にお断りしてオレは部屋に戻る。竹さんも無言で着いてくる。本当にこの娘は帰ってもらっていいと思う。これを羽柴さんに言えば、下手すれば手討ちとか言いそうだから敢えてオレは言わなかった。

 「竹さん?今日はもういいから帰っていいよ。オレも休むから」

 角が立たないように丁寧に断る。

 「いえ。そういうわけには・・・」

 「いいから。羽柴様には良くしてくれたと伝えるから」

 「・・・・・・」

 中々帰ろうとしないから、異世界産のお菓子を渡す。飴玉のようなものだ。

 「これは・・・」

 「甘い甘味みたいな物だよ。砂糖を固めたような物。これあげるから本当に今日はいいから」

 こんな娘に飴玉をあげるのすら本当はいやだけどする事はしてしまったからしょうがない。

 「ありがとうございます・・・」

 「うん。じゃあ今日は休むからね。おやすみ」

 素っ気なくそう言った後、オレは充てがわれた部屋に戻る。

 「ヴァースブランク!」

 「久しぶりにその魔法使うの見たよ」

 「まぁ、向こうではダミーでも魔力でバレるから使えない魔法だったけど、ここなら大丈夫だろう」

 ヴァースブランク・・・要は擬態だ。スーラの分身のように何か行動させたりはできない。本当のダミーだ。

 「よし!イシュ!行こう!」

 「了解!」

 「フライ!」 「そ~れ!」

 
 
 「う~ん。やっぱこの時代は暗いな。ってか明かりがまったくないな」

 「そうね。けど、私はこの地球好きだよ?時代は違うかもしれないけどタケルの故郷だしね」

 「ははは。ありがとう。最近イシュは変わったな」

 「そう?けど・・・タケルとこうやって今も一緒に居て楽しいかもね」

 「これからも一緒だからな!あっ!そうだ!甲賀に行ってみよう!あっちの方角だから!すぐだ!」

 「こうが?」

 「千草さん覚えてるだろう?イシュが地球に来た時に居た女性だよ。まぁ色々とあったんだけど元気にしてるか気になるからな!まぁ行こう!」
 


 ビシューーーーーン ストッ

 「もう!!いきなり飛ばさないでよ!」

 「悪い悪い。久しぶりにイシュの魔力を感じたけどなんというか・・・丸く包み込まれるような柔らかい魔力になっているな」

 「なによ!?いきなり」

 「いや、一段とイシュは強くなった気がしたんだよ。それにほら・・・着いたぞ。ここだ。千草さん?こんばんは~」

 スチャ

 「うぉっと!?危ない!」

 「なんだい!タケルじゃないかい!?」

 千草さんは素早い動きでオレに短刀を突きつけて出迎えた。

 「タケル?この人が恩人?短刀出してるよ?」

 「大丈夫大丈夫!千草さんはA級冒険者くらいは動ける女性だよ」

 最初イシュの姿が見えない時にイシュだけが千草さんを見てたんだよな。

 「なんだい?えいきゅう?それよりこんな夜更けにどうしたの!?その女は!?」

 オレは千草さんにイシュを紹介し、イシュには千草さんとの経緯を伝えた。直近の事なんかも千草さんに伝える。イシュは上手い事話を合わせてくれるようだ。


 「なにかの間違いじゃないの!?だってこの間まで・・・」

 「それが本当なんですよ!それより畑の方はどうなってますか?」

 「それが・・・大根から声が聞こえるんだよ・・・怖いんだよ・・・」

 「え!?」

 「タケル?大根が喋るって・・・マンドレイクでも地球には居るの?」

 「いや違う。この辺は貧しいし畑の土が元気がないからオレの魔力で活性化させたんだ。まさか・・・」

 いやまぁ、イシュと一緒に祝福したんだけど。女の嘘は怖い。驚いた顔してるけどそうした張本人の1人がイシュなんだけど。

 
 真っ暗な中3人で裏の畑に向かう。

 「なっんじゃこりゃ~!?」

 松田◯作バリの声が出てしまった。

 この驚きはマジのやつだ。こんなになるなんて・・・。夜だから畑を気にしてなかった。いや、だからといってこれを見逃すとは・・・。

 「ねぇ?タケル?これ明らかに向こうの野菜達よね?それにこの金色(こんじき)に輝く大根ってゴールドマンドレイクだよね?S級を超えて厄災級の」

 「あ、あぁ・・・間違いない。けど・・・魔力に敵意が感じられないんだが・・・」

 「ね~?タケル?それにイシュだっけ?2人が言ってる事がわからないんだけど」

 「あ、千草さんすいません!簡単に言うと・・・」

 「はぁ~!?生きた大根!?それも南蛮の技ってのかい!?」

 「えぇ・・・簡単に言えば・・・」

 こうやって言うしかない。詳しく言えば時間がいくらあっても足りない。幾度となくこの言葉で難を逃れた。

 「まぁ、最近じゃ村の男達もアタイには寄り付かなくなったけどさ?それにタケルが来てから明らかに畑が違うようになってるし、まもなく冬が来ようとしてるのに、今は暗いから見えにくいけど辺り一面見た事ない物の実がビッシリ育ってるんだよ!?」

 「ははは。それは良かったです。全部食べられますよ?」

 「よしておくれ!アタイはもうそろそろここを引っ越そうか思ってたのさ!地頭になんて言われることやら・・・最悪生きていられないよ!こんなにここだけ色々稔って、しかも先日やっと金塊を換金してもらったのに怪しさ満点じゃないさ」

 あの金塊換金できたんだ。それは良かった。けど、まさかそんな弊害があるとは思いもよらなかった。

 「なんかすいません」

 「いや、いいさ。草でも下っ端の私に良かれと思ってしてくれた事だろう?これだけ銭があればなんとでもやってけるよ!それに・・・ほら!アタイはそれなりに身は守れるし!タケルには悪いけど今生の別れになるかもしれないよ」

 確かに普通ならそうだろう。携帯もないし、住所なんて知らせる術もない時代だもんな。連れてくか。桃源郷に。

 「千草さん?オレがさっき言った桃源郷に来ますか?それなりに動けるようだし、警備でもされます?いや、なんなら千草さんなら何もしなくても衣食住くらいは保証しますよ」

 「え!?そんなの悪いよ。ただですらタケルには恩を返していないのに」

 「いいから!いいから!その代わりたまに夜、一緒に居てください!」

 「そんなにアタイが恋しいのかい?そんな南蛮の美人さんが居るのにかい?」

 「ふふふ。あなた面白い事言う人ね。気に入ったわ!」

 なんか知らないけどイシュが千草さんを気に入ってくれたらしい。

 「決定でいいですか?その大根の事も調べたいですし」

 「いいけど引っこ抜けないよ?おぉ~怖っ・・・」

 確かに喋る大根とかトラウマだよな。当初は金色に光ってただけだしな。そもそもイシュが地球に来た最初の魔法が祝福だった。加減を間違えたんだろう。だがこんな事は異世界でもあり得なかった事だ。

 オレの絶対防御やらヒヒイロカネプロテクトシールド、永久再生、絶対守護神の魔法をかけているから無敵に近い大根だ。まぁ敵意を感じないし、一段楽すれば調べよう。

 「千草さん?今からオレがあなたを桃源郷に飛ばします。向こうの仲間にも伝えておくのでとりあえずオレが帰るまで好きな事して過ごしてください!」

 「え!?なに!?何を言っているの!?」

 「イシュ?畑もこの家も転送できるよな?」

 「できるわよ」

 「了解。悪いけど魔力借りるよ?転送は苦手で魔力ロストが多いんだ」

 「確かにタケルは転送下手くそだったもんね。いくよ!」

 「「転送!!」」

 「え!?ちょ、ちょっとタケーー」

 ビシューーーーーン

 「よし上手いこといったな!イシュありがとうな!後はスーラに念話を飛ばしておくよ!熊五郎さんも居るしなんとかしてくれるだろう!」

 「それもそうね!じゃあ私達も長浜城だっけ?帰ろう!タケルに魔力譲渡したからしたくなっちゃった!約束は守ってね」

 そうだった・・・。イシュを抱く約束したんだった。
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