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 「あっ!タケル~!」「タケルゥゥ~!!」

 「タケルちゃん!!」「タ・ケ・ル♪」

 (あるじ~!!)

 朝になり外に出てみると元遊女の方々達に声をかけられる。1人朝から色っぽい呼び方が聞こえるけど。そして驚くべき事にスーラだ。溶け込みすぎな件について。

 なんの遊びだろうか・・・。スーラは投げられて遊ばれている。スライムだぞ!?百合や朱音さん、シキちゃんとか怖くないのか!?

 「皆さん心配してくれたみたいですいません。もう大丈夫です。ありがとうございました!」

 「いいのいいの!」

 「そうそう。アタイ達の事なんてね!タケルの事が心配で昨日なんて眠れなかったんだから!」

 「そうそう。胸が高鳴りタケルがあのまま目を覚まさなければアチキ達はどうなる事かと・・・」

 「そうよね~。それがまさかね・・・。三喜子だっけ?あのアマ!な~にが旦那様より大きいだ!」

 は!?何でその事を知っているんだ!?ミナミさんはオレの探知魔法を潜り抜けていたのか!?彼の地で最高ランクに達するロンリーベアという、探知が極めて困難な魔物ですら探知できるオレのレーダー魔法をこのミナミさんは潜り抜けたと!?

 「えっと・・・ミナミさん!またミナミさんのところにも行くから!」

 「ふん!まぁ我が儘言ったら罰が当たるよね~。タケルはみんなのタケルだからね!みんなタケルに抱かれたいんだって!」

 いやそれなんてハーレム!?まぁ抱いてと言われれば抱くよ?いや土下座案件よ?

 「あぁ~!タケルのマラが大きくなってるぅ~!」

 モミモミ モミモミ モミモミ

 「あっ!本当だ!今夜はアタイの番だよ!」

 「何言ってるのさ!アチキの番さ!」

 あぁ~・・・感無量・・・。オレの青春はここにあったのか・・・。

 「ゴホンッ・・・・夜に・・・よろしく頼もうか」

 「キャハッハッ!タケル爺臭い言葉だよ!」

 
 と、いう事でスーラが普通に受け入れられているという事をオレは確認したわけだ。各家庭というか一家に1匹スーラに分裂してもらって・・・正確にはトイレにも居るから2匹だが、何かの時のためにみんなを守ってもらう事にした。

 スーラはオレが彼の地に転移した早い段階でテイムした・・・まぁこれも正確には落ち込んでいた時に最下級であるスライムという魔物に生類憐れみの気持ちを持たれ勝手にテイムしていたのだが、その早い段階でテイムしてたから魔物の本能である人間に忌避感はないのだ。

 会話ができればさぞ良かっただろうがそれはできない。そんな魔法もない。こればかりは仕方がない。

 「さて・・・オレは街作りを再開するのでみんなはゆっくりしててください!」

 「分かったよ!ただ、あの南蛮仕込みの魔法を使う時はアタイ達に言うんだよ!いいね?」

 「はいはい!分かりました!」

 南蛮仕込みの魔法・・・南蛮だろうが明だろうが魔法使える人は誰も居ないよ!?



 (イシュ?この堀に水を入れようかと思ってるんだがどう思う?)

 (水なんて入れてどうするの?もしここが攻められたら逆にその水を利用されるんじゃないの?)

 (いや、ここは魔法使える人が居ないからそれは大丈夫かな?)

 (え?ヒューマンの女がさっき南蛮って国のヒューマンが魔法使うって言ってなかった?)

 (あ、いやあれは例えの話で地球には魔法はないんだよ)

 (ふ~ん。そうなんだ。ならいいんじゃない?それかスーラにお願いしてスーラの分体を液体にしてもらってもいいんじゃない?)

 (確かにそれもアリだな。スーラのスキルの液体化、無限増殖が使えるな)
 
 (そうね。あの子は魔物に珍しくヒューマン大好きだからみんなを守る事ができるから喜ぶんじゃないかしら?)

 よし。とりあえず堀の中の水はスーラにしてもらおう。なんなら少し考えていた。もし仮に本当に水を入れてしまえば循環させないと濁ってしまい水が汚くなるし、ボウフラまで湧いてしまいそうだからだ。

 

 (スーラ!この窪み一帯に無限増殖できるか?)

 (できるよ~♪)

 (じゃあその後液体化で水に擬態できる?ここを守ってほしいんだ!誰か怪しい奴が来たりしたらオレに念話で教えてほしい。もしオレが留守の時もスーラが居るなら安心できるんだ)

 (あるじのお願いならいいよ~♪)

 プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル

 それからスーラの行動は早かった。プルプル震え本体のスーラから子スーラがポコポコ現れ堀の窪みにどんどん増える。そして窪み半分くらいまで埋まってきた頃に液体化が始まり、ものの数分で立派な水堀の完成だ。見た目は水と変わらない。これで怪しまれないだろう。

 まぁ探知魔法があるから何かあっても問題はないが見せかけの櫓やなんかもあるから平城みたいな感じになったな。さて・・・次はアイテムボックスに眠ってある彼の地の訳の分からないオブジェやなんかを調度品に使うか。




 ~天王寺屋 津田邸~

 「そう日中に幾度となく会合をかけるとは・・・津田はん誠敵わんで~?」

 「今井よ。そう言うな。だが確かに数日の間に忙しい皆を集めるのは心苦しい。ワテの蔵から名物を出している。1人一つずつ持って帰ってくれ。手間賃だ」

 「ほっ!中々の太っ腹でんな?津田はん?」

 「含みを持たせた言い方をするな。油屋。此度は薬番のお前にもいい話なんだぞ?」

 「ほぅほぅ。日の本一のワテの知らない薬があるような言い方でんな?」

 「あぁ~。まぁ隠しても仕方あるまい。先日、然る男に譲渡した土地・・・腐女最地だがあの地にてその男が商売をしようとしてるらしい。詳しくはワテもまだ聞いていない」

 「なんと!?」

 「何の商売でっか?」

 「いや、商売かどうかもまだ分からないのだがどうやら薬学や、れんきんじゅつ?という事に精通してるそうだ」

 「ゴホンッ・・・津田はんの言い分はよう分かった。だがワテはそんな得体の知れん男を信用するには些かおかしいと思うのですがね?津田はん?あんたが1番商売で大事にしてる事でっしゃろ?」

 「確かに今井の言う事も分かる。だがこの道に入り足掛け40年・・・この男は信用できる」

 「いや~、津田はんがそう言いましてもね?ワテ等は何も信用できんのですわ。そもそも信用だけで、おまんまは食えんですからな。それに素性がまったく分からんと言っておりますな?」

 「あぁ。そこは詳しく聞いていない」

 「ならこの話は津田はんだけで進めなされ。いやほら・・・ワテらは会合衆でもあり納屋衆でもある。困った事があれば皆で協力しましょう。ですが此度の話は津田はん・・・あんさんがいつになく勝手に進めてるんでっしゃろ?それだけ商機を感じてるんでっしゃろ?」

 「・・・何が言いたい?」

 「いやだからその上なんとかっちゅう男を津田はんは信用してるんでっしゃろ?その男は堺に自分で座代も払わず商いしようとしてるんでっしゃろ?そんな者今まで許した事ある奴居らんかったでっしゃろ?何故その男だけ特例なのかワテには分からへん」

 「いやそれは銭がまだないからワテが立て替えると言うたではないか?」

 「それこそちゃんちゃらおかしい話でんな?津田はん。あんさん今まで特例を作らなかった男や。それがいきなり例外を作るとは・・・ワテら不思議で仕方ない」

 「なら会合衆としては協力しないという事か?この道40年のワテが1番商機を感じている今この話を今井は足蹴にするというのだな?」

 「いやその男をワテが信用できるならばそうしましょう。いやこの会合衆全員協力しましょう。ですが筋の通っていない裏道からの商いなんぞ怖~て、ワテは協力できまへんな」

 「油屋は?」

 「ワテも見送りでんな」

 「茜屋は?」

 「同じく」

 「千は?」

 「ワシは静観だ。まだ本人を見ていない。会ってから決める」

 「山上は?」

 「俺も今井はんと同意見じゃ。その男は舐めてるよな。なんと言っても筋道が通っていない」

 「塩屋や紅屋、松江は?」

 「まずは御自慢の蓄えで面倒を見てはどうか?津田はんが見つけた御仁でしょう?その上岡尊と申す者は」

 「分かった。皆は賛成ではないという事だな。なら、ワテが個人的に取り引きをする。皆には迷惑をかけないように致す。それで良いか?」

 「カッカッカッカッ。良いも悪いもそれは津田はん個人の事、ワテ等他の者は銭も出さぬのに口出しはできんでっしゃろ。ただ、各々の領分を侵蝕してくるならばいくら津田はんとて容赦しまへんで?その覚悟はおありで?」

 「皆の領分に踏み込むつもりはない。それはワテが手綱を引いておく。飽く迄・・・あの腐女最地で活動させるだけだ」

 「よっしゃ。なら決まりだ。まぁあの地で商機を感じる事ができる津田はんはさすがですな。ワテにはどう転んでも上手くいくようには思えまへんで」

 「それは天のみぞ知るじゃな。これにて解散。手間を取らせた」



 ~今井邸~

 チッ。おもんないわ。実におもんない。あの目は耄碌なぞしておらん。状況を見ていっぺん、いてこましてやらなあかんわ。

 「どうだった?」

 「はっ。それが堺の街のような堀が出来上がり早々には潜り込めそうもありません。申し訳ございません」

 「なに!?堀じゃと!?いつできあがった!?誰が作った!?」

 「いやそれは・・・」

 おもんない。おもんない。できたものは仕方がない。表に出て来ないだけで裏方にまだ農奴が居ると見える。

 「ただ・・・」

 「なんだ?」

 「ただ、あの腐りかけていた女どもが表で蹴鞠?のような事をしておりました」

 「腐毒が治ったというのは誠という事じゃな?」

 「えぇ。それに関しては間違いなく薬があるのだと」

 「分かった。次の手を。誰ぞ堺の貧乏長屋に似たような症状の奴が居るだろう。そいつ等を腐女最地に送り届けよ。銭を使いその女どもの家族を使え。情報が手に入ればその情報により倍額を出すと言ってな」

 「はっ。畏まりました」
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