異世界からの帰還。ただし・・・時間軸を間違えた件

デンデンムシ

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 「オォーーーー!!!勇者様ッ!!!」

 「勇者様ッッ!!!」

 「勇者様!いえ・・・タケル・・・お帰りなさい」

 「ただいま。やっと魔王討伐したよ・・・疲れたよ」

 山岡尊(タケル)23歳・・・よくある魔法陣が浮かび上がり違う世界に送り込まれる・・・所謂異世界というところに連れて行かれた。スキルや魔法有りの世界だ。

 そして、迷い込んだ先で見たのは一際綺麗な女性と王冠を被った男性と兵士達だ。そしてこれもよく聞く魔王だの魔物を倒せだのと言われ、最初こそ実はダメなタイプの召喚じゃないかと疑い、この連れてこられた世界の情勢をオレなりに調べると、本当に魔物が居て、魔王が居る世界だった。その魔王も実は話せば分かる奴なのかと思い、魔界というところまでオレは1人で出向いたが・・・

 「人間を駆逐してやる!!人間は魔族全ての糧だ!!」

 と、抜かす魔王だったためオレは戦う術(すべ)を習い、魔物を退治し、レベルを上げ、魔法を覚え、連れて来られた時は16歳だったが7年という歳月をかけてやっと魔王を討伐した。

 それからオレは民から英雄と言われたり、国の守護者とも言われたり。

 そして召喚された時に居た綺麗な女性、この国の皇女様と結婚し国の後継者になり一生を終えるのかと思った。だが魔界にある数々の古い書物を調べると古の魔法で帰還魔法なる物を見つけた。

 オレはそれから更に調べた。莫大な魔力が必要だがこの帰還魔法を使えば地球に帰れると・・・。オレはこの地球に帰れるというところに舞い上がってしまい、大事な時間軸の事なんかは頭になかった。

 帰れると分かったオレが動くのは早かった。皇女様も献身的な女性だ。王様もなによりもオレのことを考えてくれた方だ。だから変に城で過ごすと情が湧いてしまう。

 かつての仲間に事情を話して、みんなが魔力を出し合ってくれる事・・・半年掛けて集めた魔力を魔法陣に流し込む。魔法の発動はすぐだった。オレはサヨナラの言葉も言わず魔法陣に乗る。

 ポワンッ

 「タケル!!!」「タケル君!!」「タケルゥゥ~~!!!」

 「みんなすまん!乗れば発動してしまうみたいだ!皇女様と王様に謝っておいてくれ!ジョン!これを皇女様に渡してくれ。オレは故郷に帰るが心はいつまでも貴方のそばにってな!じゃあな!」

 「「「タケルッッッッ!!!!!」」」




 ビシューーーーーン!!バァァァァン!

 「帰ってきた!!懐かしの地球に帰って来た!!!!」

 「な、な、何奴だ!!?」

 「え!?いやここはどこだよ!?」

 7年・・・・いや、大方8年は経つだろうがまさか8年で地球は何かが起こったのだろうか・・・。

 「おじさん!すまない。ここは地球ですよね?」

 「なーにを訳の分からん事言っているのだ!」

 いやいや、待てよ・・・明らかにボロを着ている。時刻は浅い夜の時間くらいだろうか。ってか、この男女・・・いやこの人達だけじゃないぞ!?なんだここは!?よく見ると着物来た男女が交わっているんだが!?

 「す、す、すいません!」

 「覗きならちゃんと守る事守って見ろ!後、知ってると思うがこの逢引坂では刀傷沙汰はなしだぞ」

 逢引坂って・・・いや確か・・・古い古い記憶だ。オレがまだ異世界に行く前に社会の歴史の話で先生が脱線して少し言ってたような・・・確か昔の日本では男女が外で交わる場所があったと・・・その名称が逢引と言っていたような・・・

 「ちょっとあんた!なにさね?あらやだ!いい男じゃない!その服装は南蛮の服装かぃ?」

 「おい!お亀!銭払ってるんだから俺だけ見てくれよ!」

 「はいはい!それよりあんた!あんたなら銭いらないから一晩アタイを抱いておくれ!」

 「え、あ、ちょ!ごめんなさい!!!!」

 オレは何がなにやら分からず走り出した。身体強化の魔法もかけ、走った。かつては魔王も倒し、勇者と呼ばれ、賢者とも言われたオレが久々にビックリした。ここは確かに地球だ。それは間違いない。ただ・・・

 「なっんで!!なんで!なんでオレが居た時代じゃねーーーんだよーー!!!!!」

 オレは山に向かって叫んでいた。

 「いやいや待て待て!まだ慌てる時間じゃない!今一度魔力を込めて発動すればあるいは・・・」

 「あのう・・・そこで何をされておられるのですか?お武家様ですか?」

 「あ、え!?は、はい。オレは武士や武家ではなく一般人です!それで・・・特に何もしてるわけでは・・・すいません。ここはどこですか?」

 「ふふ。おかしなお人!ここは甲賀ですよ」

 「甲賀・・・」

 まさか伊賀、甲賀の甲賀とは・・・忍者の村か。

 「よければ夜も遅いですし上がっていきますか?なにやら事情がある様子・・・何もありませんが雨風くらいは凌げるかと」

 「えっと・・・見ず知らずの男にそこまでして怖くないんですか?いや、別に何かしようというつもりではありませんが・・・」

 「ふふふ。多分、殿方にやられる事はないですよ」

 シュッ

 「ほらね?」

 「うをっ!?なに!?」

 オレはビックリした。いきなり気配が消え、気付けば後ろを取られていたからだ。オレもビックリしてたとはいえまさか女性に後ろを取られるとは思ってもいなかったが・・・えっ!?う、嘘!?!?

 「おや?何かアタイについてますか?」

 「い、いや!ぱぱパンツは!?下がま、丸見えですよ!?」

 「え?なんだい?これが気になるのかい?アタイは商売女じゃない!それが目的なら他所に行っとくれ!」

 「あっ、ち、違います!そんなつもりじゃなくて・・・あぁ~!すいません!お詫びにこれ渡しますので一晩だけ泊めてください!」

 オレがこの女性に渡した物は異世界に居た時にはそれなりに貴重ではあったが中級レベルの金塊だ。異世界では金より、ミスリルやヒヒイロカネ、アロダイトなど他にも希少鉱物が多かったから金はアイテムボックスにかなり入っている。

 「うん?こここ、これってまさか・・・金塊かい!?」

 まぁここが昔の日本だと仮定して・・・奈良時代か?平安時代か?室町時代か?江戸時代か?は分からないがとりあえず異世界で覚えた魔法は使えるみたいだ。剣も人からは剣聖と呼ばれるくらいまで修練は積んだ。なんとかなるだろうか・・・

 グゥ~~~~~~~

 「!?!?!?!?」

 「はっはっはっ!面白い殿方だねぇ~。さぁ入っといで」

 とても現代とは程遠い木でできた家・・・明かりはなさそう。いや・・・囲炉裏か?炭が燃えてる明かりだけだ。よく見ると似たような家が並んでいる。

 この女性・・・名前はまだ聞いていないけど敵意は感じない。先程の身のこなしは驚いたが本当に忍者だったりして。見ず知らずの男を泊めてくれるとは・・・まぁ金塊を渡してはいるけど。

 「さぁ食べて!」

 想像以上だわ。赤米というのだろうか・・・赤飯とは違うが米っぽい。そしてたくあん?後はお湯・・・。

 「ありがとうございます。いただきます」

 まぁ腹は減ってはいた。それなりに美味しく感じた。久しぶりの米?らしきものだったからな。約8年振りの日本食・・・いや、もっとこう・・・寿司とか寿司とか寿司とか食べたかった・・・。
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