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オレはオレのできる事を

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 「やっべ!後6時間もないじゃん!早く寝よう!あやめさん!寝よう!」

 「はぁ~い!すぐに!」

 正直、ラボのドアから来れる今、欲望を満たしてもいいと思う。だが、今はだめだ。池田マダム、田中さんが明日に来るからだ。別にいつ来るとかは聞いていない。聞いてはいないがオレには分かる。

 「多分6時頃には来ると思うから5時30分に目覚まし合わすから、もしオレが寝過ぎたら起こしてくれる?」

 「クスッ!畏まりました。それと・・・漆原様も一ノ瀬様も武蔵様も新たな事をしようとしております。私は身分も何もない存在ですが、それでも武蔵様のお役に立ちたいと思います」

 「当たり前じゃん!身分なんて関係ない!あやめさんは大切な存在だよ!急にどうしたの?」

 「いえ。私にもできる事があるなら武蔵様を手伝いたい・・・ですが、私にはその身分がございません」

 確かこの時代は官位が全てという節があったよな。信長さんに、あやめさん名義で贈り物でもさせようか。それもあの人がかなり喜びそうなものを。

 それで1番下の官位が何かは分からないがおねだりすればこの卑屈な感じをやめてもらえるかな?どうせ戦国に居るならオレも官位貰ってみたいし。

 それとこの家・・・

 「それにしても風が入ってきて寒いよね~。断熱シートもなにもしていない、ただの木造家屋だから当たり前だけど・・・。みんなのABCで色々購入して建て直しをしたいところだ」

 「やる事がいっぱいですね!」

 「そうなんだよ。明日には小川さん達は一度甲賀に戻るんでしょ?お土産も渡さないといけないし、来年の頭はかなり忙しいと思う。まぁやれる事からお互い頑張ろう!」

 「はい!武蔵様!」

 オレは軽くあやめさんと唇を交わして意識を手放した。


 ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ

 「うぁ!?もう朝!?眠い・・・」

 「はっ!!武蔵様申し訳ございません!!寝過ぎてしまいました!起きてください!」

 珍しくあやめさんより少し先に起きたオレ。あやめさんの寝起きを見る事は少ない。少ないというより、2回目だ。

 ジャージを着てお互い寝たのだが、ここは戦国本来の服の方が良かったかもしれない。初めて寝起きを見た時、着物が、はだけてかなり色っぽかったのだがジャージではそんな事はない。

 冗談はさておき・・・オレは早く現代に戻らないといけない。

 トントン

 「合田様、お姉ちゃん?起きていますか?」

 「いろはちゃん!大丈夫だよ!起きてるよ!ありがとうね!」

 「はい!朝食はどうされますか?」

 「いや、後で食べるよ!先に戻らないといけないから!甲賀の人達には適当にお土産渡しておいてくれる?あ!小泉さんと小川さんはカステラにしておいて!違う物ならまた喧嘩したらいけないから!」

 「畏まりました!お気をつけて!」

 いろはちゃんに気をつけてと言われたが、別に危ないことはなにもないんだけど。と思いながら、あやめさんに着替えを持って来てもらい、いつものジーパンにトレーナーという洒落っ気もなにもない服に着替え現代に向かう。

 「あやめさんはまだ寝ててもいいよ!里志君達もまだ寝てるだろうし」

 「そんなわけにはいけません!私は客間にてお待ちしております!」

 里志君達は余ってる部屋に泊まってもらっている。静かだからまだ寝てるだろう。有沙さんもかなり酔っていたし。まさかここで男女の営みなんぞしてないよな!?


 「爺ちゃん!婆ちゃんただいま!」

 元気よく独り言を言ったわけだが、戻って来たところはラボだ。自分が入ったドアすら忘れていた。

 家の方に入り、さっきと同じ言葉をもう一度言う。

 「爺ちゃん、婆ちゃん!ただいま!」

 「「・・・・・・」」

 まぁもちろん返事なんてありはしないんだけど。まだ太陽が登っていない暗い早朝。顔と歯磨きを済ませ、2人の到着を待つ・・・

 「って・・・田中さん!?何やってもるんですか!?」

 うん。田中さんは玄関で1人用の長細いテントで寝ていた。

 「うん。武蔵君!おはよう!いやぁ~、寝坊してしまうと申し訳ないから昨日からここに泊まってたんだよ」

 いやそれは見れば分かるけどこのクソ寒い中テントで寝てたのか!?

 「そ、そうですか・・・とりあえず中に入ってください!池田さんはまだなので風呂でも浸かりますか!?」

 「すまない。頂戴するよ!さすがに冬の外泊まりは少し無茶してしまったよ」

 池田さんが到着する前に田中さんを風呂に入れて、オレは森林通販を見る事にした。あやめさんから信長さんに渡す贈り物の検索だ。今日は12月31日。謹賀の儀というものは1月2日に行うと聞いている。

 正月でも白猫宅急便は休みなく配達してくれるみたいだ。感服するとはこの事だろう。

 品の方だが既に決めてある。信長さんが喜ぶだろう物・・・それは・・・

 「そうそう!これだよこれ!釣竿とリール、時計、電動髭剃り・・・お!?こんな禍々しい剣も売ってあるんだ!?全部買ってやろう!ポチッとな」

 最後に横のバナーで見つけた剣・・・刃はついていないだろうが、持ち手の所に髑髏の装飾が施され、宝石擬みたいなものが散りばめられている西洋風の剣だ。説明も・・・

 《真エクスカリバーここにあり。現代の力で蘇った古の聖剣をあなたの手に》

 と、書かれていた。男なら誰しも手にしてみたいものだと思う。それと、釣竿とリール。信長さんは鷹狩り、茶が好きなだけのように思っていたが意外にも釣りもかなり好きらしく、マイ釣竿を城のとある部屋に飾っていたのだ。

 オレも多少は釣りをした事があるので分かる。

 リールの付いていない竿、竹で作った延べ竿を何本も持っているのは確認している。だから、これを渡せばさぞ喜ぶだろう。ちなみに、ウキ、針、糸もセットになっているやつだ。

 残りの時計は早く、12進法、60進法と覚えてもらいたいからだ。信長さんの強権でどうにかして定着してもらわないと、戦国の人と話す時に未だに困るからだ。

 「ほほほ。敵は後、2町くらいですかね」とか「3半刻くらいには来るだろう」

 こんな事言われても分からないよ!というのをずぅ~~~っと思っていたのだ。

 最後は髭剃り。なんとなく髭剃りがあれば便利かな?と思って購入しただけだ。お会計は合計で8万3千円だった。なんと、現代の力で蘇ったらしい聖剣エクスカリバーが1番高かった。あれだけで5万円もしたのだ。

 到着は1番早い、1月1日の午前に置き配にしておいた。さすがに盗まれたりはしないだろうと思う。

 「合田君!おはよう~!!」

 「いやぁ~!武蔵君!気持ちよかったよ!着替えをバッグに入れたまま・・・・池田さん!!」

 「きゃぁぁぁ~~!!」 「うをぉぉ~~!!!」

 思わずオレまで叫んでしまった。

 「武蔵君!バッグ投げてくれ!!」

 「どうぞ!!」

 「池田さん!すいません!」

 田中さんが風呂からタオル1枚で出て来たの同時に池田マダムの到着だった。なんというタイミングだよ。

 少し悶着があったが、とりあえずは準備できた。

 「朝からびっくりしたよ!田中君?これからは気をつけてね?」

 「すいません」

 いや気をつけるもなにも、ピンポンも鳴らさず入ってきた池田マダムはいいのかよ!?とオレは思った。

 これからどうなる事やら・・・。

 有沙さんや里志君達が会ったと言った安倍晴明さんや爺ちゃん、婆ちゃん。あまり人を連れて行きすぎると捻り合う世界って言ったっけ?オレは基本的に誰も呼ぶつもりはない。これは池田マダムにも守ってもらうつもりだ。

 色々な事がこれから変わってくるだろう。

 「さぁ!武蔵君!行くぞ!みどりを待たせているんだ!」

 田中さんは田中さんで本当に戦国に骨を埋めるのか分からない。

 「合田君!早く行こう!」

 池田マダムは知らない歴史の探究か。

 里志君や有沙さんはこれからどんどん戦国に未来の力を見せつけるだろう。オレは・・・

 「オレはあやめさんとオレでやれる事をやる」

 「なにを言ってるんだい?」

 「そうよ!早く行くわよ!本物の戦国時代がこの目で見えるのだから!」

 「すいません!じゃあ行きましょう!!」

 オレ達3人はそれぞれの夢を持ち、ラボのドアを潜った。
 
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