109 / 132
不死身の鬼美濃の最後
しおりを挟む
ズドンッッ!!!!
「殿ッッ!!!」「馬場様!!!!」
「目をお覚ましください!!!不死身の鬼美濃なのですぞ!!!」
オレは撃った。ほぼ間違いないであろうパラレルワールドの世界で大きな歴史が変わる事象だろう。馬場美濃守信春。またの名を不死身の鬼美濃。
この人は信玄亡き後に勃発した長篠の戦いにて武田勝頼を逃がすため殿(しんがり)となり、そこで果てたと記憶している。
~少し前~
馬場が甲冑を巻いた竹筒を捨てて刀の斬り合いとなり、それは小川さんと慶次さん2人を相手にしても互角だった。
オレは少し後方にてそれを見ていた。
竹中隊の方も竹中さん自ら刀を抜き戦っている。軍師とは聞いて呆れる。やっぱりどこからどう見ても武闘派の人のように見える。
そんな周りを分析できるくらいに落ち着いていたところ、本多さん達本隊がもう少しで飲み込まれそうとなっているところに・・・小川さん慶次さんが一瞬、間合いが空いた。
そこに、あやめさんから託された戦局を変える最後の1発・・・12ゲージの弾を込め、馬場信春に向けて撃った。
距離にして10メートルほどだろう。さすがのオレでも外すわけがない。弾は見事に馬場の体に命中した。
ズドンッッ!!!!
「殿ッッ!!!」「馬場様!!!!」
「目をお覚ましください!!!不死身の鬼美濃なのですぞ!!!」
「ほほほ!合田殿!やりましたか!皆の者ッ!!勝ち鬨を上げなさい!」
「「「えい!えい!おー!」」」
「「「えい!えい!おー!」」」
オレはこの光景を夢のような感覚で見ていた。オレが・・・オレが・・・
「き、き、貴様!卑怯だぞ!刀の斬り合いにて鉄砲なぞーー」
「そ、そうだ!そこに直れ!今すぐ俺がその首掻き切ってーー」
スパッ スパッ
「ほほほ。感傷に浸っている時間はありませんよ。将は射てても兵力の差は大きい。早くここを離脱します。その前に・・・」
「グハッ・・・・チッ・・・よもや弾が残っていようとは・・・不死身の鬼美濃もここで終わりか・・・」
「「「殿!」」」 「「「馬場様!!」」」
「すぐに後方に連れて行きます!手当てすればまだまだーー」
「やめい!ワシの体はワシが一番分かる・・・。内腑がやられている。もう助からん」
「そ、そんな・・・」
「お前達!手を出すな!おい!そこのお前だ!ワシを撃ったお前!名はなんと申す?」
「合田武蔵といいます」
「なんだその顔は!?鉄砲とはいえワシを討ったのだ!もっと誇れ!」
見れば見るほど小さいおじさんだ。だが死を直前にして尚も大きく見える。本物の武将とはこの人のような感じなのだろうと思う。
「卑怯と言われようが気にしません。オレはオレの戦をするまでです」
「貴様!なにを偉そうに!馬場様!今暫しお待ちください!俺がこいつの首をーー」
「やめいッ!何回も言っておるだろうが!!こいつの言うとおりだ!戦に卑怯もなにもない!勝てばそれが正道だ。ワシは負けた。だが大局的に見れば徳川織田は負けじゃ。お館様が到着すれば瞬殺されるであろう」
この馬場信春が心酔する武田信玄とは・・・
「馬場美濃守信春、見事也!」
「ふん。鹿頭め。もう少しだったところを。だがワシはこんなヒヨッ子の鉄砲では死なぬ!ワシは・・・ワシこそ不死身の鬼美濃ぞ!松浦!今日は終いじゃ!お館様に事の顛末を伝えよ!馬場が謝っていたとも言え!」
「グスン・・・は、はい!」
馬場はそう言うとは血が溢れている体なのが嘘のような動きで正座して、腹を十字に切り裂いた。
「合田殿!やりなさい!」
「え!?え!?なにを!?」
「首を斬りなさい!これ以上馬場殿に恥をかかせてはなりません」
オレは耳を疑った。よくテレビやなんかで見る首を斬るあれだよな!?無理!無理!できるわけないだろう!?恥をかかすなって無理よりの無理だろ!?
オレが躊躇していると、それを察してか慶次さんが名乗りをあげた。
「織田軍 合田武蔵 与力 前田慶次郎利益 某が新しき門出を。馬場美濃守信春、見事」
「クッ・・・。合田ではないが貴様ならいいであろう。貴様も中々の剛の者だったが刀でワシは負けてはおらぬぞ!もそっと精進せい!殺れ!」
「・・・・・・御免ッ!」
スパッ
慶次さんが踊りを踊るかのような綺麗なフォームで、一刀にて首を斬った。こんなに綺麗に刀を振れるのかと見惚れてしまった。
「ほら。武蔵。この首はお前のだ。お前が好きにしろ」
「慶次さんごめん。ありがとう」
慶次さんにお礼を言って、オレは馬場が松浦って呼んでた人にその首を丁寧に渡した。
「後はよろしくお願いします」
「ほほほ。首に興味はありませんか。まぁそれでこそ合田殿です。さぁ戻りましょうか」
「この戦ッ!!徳川、織田軍の勝利だ!えいえいおぉー!」
「「えいえいおー!!」」
「「「「えい!えい!オォーーーーッ!!」」」」
その後すぐに後方に居る本多隊の人達にも伝えこの場を去る事にした。
去り際に松浦って人がオレに話しかけてきた。
「合田武蔵・・・その名は覚えた。必ず殿にお前の首を届ける。だが・・・首の返却は謝する。それにしても若いな。これだけ持っていけ。殿の脇差しだ。殿を討った貴様が変なところで死ぬなよ。俺がこの手で必ず殺す。馬場隊!道をあけよ!殿の遺言じゃ!今日は終いじゃ!」
オレは無言でその脇差しをもらい、あやめさんの後ろに乗り帰ることにした。長かった一言坂の戦いが終わった。
「殿ッッ!!!」「馬場様!!!!」
「目をお覚ましください!!!不死身の鬼美濃なのですぞ!!!」
オレは撃った。ほぼ間違いないであろうパラレルワールドの世界で大きな歴史が変わる事象だろう。馬場美濃守信春。またの名を不死身の鬼美濃。
この人は信玄亡き後に勃発した長篠の戦いにて武田勝頼を逃がすため殿(しんがり)となり、そこで果てたと記憶している。
~少し前~
馬場が甲冑を巻いた竹筒を捨てて刀の斬り合いとなり、それは小川さんと慶次さん2人を相手にしても互角だった。
オレは少し後方にてそれを見ていた。
竹中隊の方も竹中さん自ら刀を抜き戦っている。軍師とは聞いて呆れる。やっぱりどこからどう見ても武闘派の人のように見える。
そんな周りを分析できるくらいに落ち着いていたところ、本多さん達本隊がもう少しで飲み込まれそうとなっているところに・・・小川さん慶次さんが一瞬、間合いが空いた。
そこに、あやめさんから託された戦局を変える最後の1発・・・12ゲージの弾を込め、馬場信春に向けて撃った。
距離にして10メートルほどだろう。さすがのオレでも外すわけがない。弾は見事に馬場の体に命中した。
ズドンッッ!!!!
「殿ッッ!!!」「馬場様!!!!」
「目をお覚ましください!!!不死身の鬼美濃なのですぞ!!!」
「ほほほ!合田殿!やりましたか!皆の者ッ!!勝ち鬨を上げなさい!」
「「「えい!えい!おー!」」」
「「「えい!えい!おー!」」」
オレはこの光景を夢のような感覚で見ていた。オレが・・・オレが・・・
「き、き、貴様!卑怯だぞ!刀の斬り合いにて鉄砲なぞーー」
「そ、そうだ!そこに直れ!今すぐ俺がその首掻き切ってーー」
スパッ スパッ
「ほほほ。感傷に浸っている時間はありませんよ。将は射てても兵力の差は大きい。早くここを離脱します。その前に・・・」
「グハッ・・・・チッ・・・よもや弾が残っていようとは・・・不死身の鬼美濃もここで終わりか・・・」
「「「殿!」」」 「「「馬場様!!」」」
「すぐに後方に連れて行きます!手当てすればまだまだーー」
「やめい!ワシの体はワシが一番分かる・・・。内腑がやられている。もう助からん」
「そ、そんな・・・」
「お前達!手を出すな!おい!そこのお前だ!ワシを撃ったお前!名はなんと申す?」
「合田武蔵といいます」
「なんだその顔は!?鉄砲とはいえワシを討ったのだ!もっと誇れ!」
見れば見るほど小さいおじさんだ。だが死を直前にして尚も大きく見える。本物の武将とはこの人のような感じなのだろうと思う。
「卑怯と言われようが気にしません。オレはオレの戦をするまでです」
「貴様!なにを偉そうに!馬場様!今暫しお待ちください!俺がこいつの首をーー」
「やめいッ!何回も言っておるだろうが!!こいつの言うとおりだ!戦に卑怯もなにもない!勝てばそれが正道だ。ワシは負けた。だが大局的に見れば徳川織田は負けじゃ。お館様が到着すれば瞬殺されるであろう」
この馬場信春が心酔する武田信玄とは・・・
「馬場美濃守信春、見事也!」
「ふん。鹿頭め。もう少しだったところを。だがワシはこんなヒヨッ子の鉄砲では死なぬ!ワシは・・・ワシこそ不死身の鬼美濃ぞ!松浦!今日は終いじゃ!お館様に事の顛末を伝えよ!馬場が謝っていたとも言え!」
「グスン・・・は、はい!」
馬場はそう言うとは血が溢れている体なのが嘘のような動きで正座して、腹を十字に切り裂いた。
「合田殿!やりなさい!」
「え!?え!?なにを!?」
「首を斬りなさい!これ以上馬場殿に恥をかかせてはなりません」
オレは耳を疑った。よくテレビやなんかで見る首を斬るあれだよな!?無理!無理!できるわけないだろう!?恥をかかすなって無理よりの無理だろ!?
オレが躊躇していると、それを察してか慶次さんが名乗りをあげた。
「織田軍 合田武蔵 与力 前田慶次郎利益 某が新しき門出を。馬場美濃守信春、見事」
「クッ・・・。合田ではないが貴様ならいいであろう。貴様も中々の剛の者だったが刀でワシは負けてはおらぬぞ!もそっと精進せい!殺れ!」
「・・・・・・御免ッ!」
スパッ
慶次さんが踊りを踊るかのような綺麗なフォームで、一刀にて首を斬った。こんなに綺麗に刀を振れるのかと見惚れてしまった。
「ほら。武蔵。この首はお前のだ。お前が好きにしろ」
「慶次さんごめん。ありがとう」
慶次さんにお礼を言って、オレは馬場が松浦って呼んでた人にその首を丁寧に渡した。
「後はよろしくお願いします」
「ほほほ。首に興味はありませんか。まぁそれでこそ合田殿です。さぁ戻りましょうか」
「この戦ッ!!徳川、織田軍の勝利だ!えいえいおぉー!」
「「えいえいおー!!」」
「「「「えい!えい!オォーーーーッ!!」」」」
その後すぐに後方に居る本多隊の人達にも伝えこの場を去る事にした。
去り際に松浦って人がオレに話しかけてきた。
「合田武蔵・・・その名は覚えた。必ず殿にお前の首を届ける。だが・・・首の返却は謝する。それにしても若いな。これだけ持っていけ。殿の脇差しだ。殿を討った貴様が変なところで死ぬなよ。俺がこの手で必ず殺す。馬場隊!道をあけよ!殿の遺言じゃ!今日は終いじゃ!」
オレは無言でその脇差しをもらい、あやめさんの後ろに乗り帰ることにした。長かった一言坂の戦いが終わった。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる