ドア開けたら戦国時代!?

デンデンムシ

文字の大きさ
上 下
107 / 132

陰陽の力

しおりを挟む
 本多さんに続いてオレ達の隊も秋葉街道まで後退したわけだが・・・前に見えるのは真っ黒な出立ちの武田軍だ。

 そしてその中に何も着ていない、おっさんが居る。

 だが、このおっさん・・・

 「あれに見えるが馬場美濃守ぞ。合田殿よ?ハズレたな。だが、敵の回り込みを予見したのは素晴らしい」

 「え!?小杉って人じゃなく馬場信春本人!?」

 ここで少し焦る。史実では回り込みしてきた人は小杉なんとかさんって人だったはずだ。だがどうだろう?馬場信春が居るなんて・・・

 「ほほほ。では取るべき道が決まりましたな」

 「ははは!そうだな!武蔵!気合いを入れろ!1当てで敵の大将を狩るぞ!間違いなく大将首だ!あれを討つ事ができれば間違いなくーー」

 「お館様に褒められますよ」

 「あやめさんまで・・・。よっしゃ!やってやるぞ!!」

 馬場信春・・・甲冑もなにも着ていないし、この回り込みの武田軍は500くらいは居るだろうか・・・だがその500人程の中で1番大きく見える。

 ここが正念場だ。


 「徳川軍のヒヨッ子どもッ!!!ここは通さぬ!通りたくばワシを倒してから通れぃッ!!不死身の鬼美濃とはワシぞ!」

 拡声器を使ってるかのような声だ。しかも異名がこれまた不死身の鬼美濃と厨二病臭くカッコイイ。

 「馬場美濃守殿とお見受け致す。どうしてもここを通してはくれぬか?」

 「事ここに至ってそんな事を言うとは見損なったぞ?本多平八郎よ」

 2人が向かい合うくらいまで近付いて言い合いをしている・・・。

 この世界に来て意外な事実の一つだ。合戦とはいきなり始まるかと思いきや、意外にも示し合わせて始める事が多い。先触れや書状などで日にちを決めたりもする。

 まぁ何もなしに始まる事もあるにはあるが・・・。今回がまさにそれだ。だが、この恐らく一言坂の戦いと後世で呼ばれる戦は行き当たりばったりな戦だけど。

 そしてこの秋葉街道にて行われる一連の戦・・・なんとなく・・・本当になんとなくだがこの馬場信春を倒さないと帰れない気がする。



 「え!?武蔵が死ぬのですか!?」

 「えぇ。私の陰陽の術を使い見たのです。あの合田武蔵殿が亡くなれば色々不都合が多いのですよ」

 「不都合ですか!?」

 「はい。世界とは枝分かれしているものです。今この時あなたは私の話を信じず何もしない世界があるとします。でも、私の話を信じ合田武蔵殿を助ける世界があります。そうすれば二つの世界ができますね?」

 「パラレルワールドですか!?」

 「ほぅほぅ。今世ではぱられるわあるどと申すのですか。これまた一つ勉強になりました。まぁその捉え方で間違いないですよ」

 「ちょ、ちょっと里志と安倍晴明様だけで話進めないでよ!そもそも何でこんな事が起こったのですか!?」

 「あの合田武蔵殿の家にーー」

 「違うわい!あれはワシの家じゃ!」

 「・・・失礼。合田殿の家にある札・・・あれは本当にあの当時の私の力を最大限入れた札なのです。その札をあなたが触った事であなたにも刻渡りの力が備わってしまったと言えばいいですか」

 「何で私にその力が備わるのですか!?」

 「あなたの先祖は私の臣下の1人でしてね。陰陽道は今世では志す者も少なくなりましたがその血筋は本物でしてね。だからあの札を触った事をきっかけになったのかと推測します」

 「あ!確かお婆ちゃんに聞いた事があったような・・・」

 「ふふふ。その通りですよ。まあ話を戻します。その枝分かれした世界を管理するのが私です。ただ、これ以上世界を増やすのをなんとかしないと大変な事になるのですよ」

 「大変な事!?」

 「えぇ。世界は歴史の修正力と申しますか・・・元の本流に戻ろうとする力があります。それがどんどん世界が増え、戻ろう戻ろうとする力が大きくなると、違う世界が混ざり合い、捻り合う世界になったりします。そうなると同じ人物が2人居たりとおかしな世界になるのです」

 「そんな・・・」

 「だから私は事前にこうやって枝分かれした世界を増やす可能性のある者に道を示しています。合田武蔵殿を助けてくれませんか?」

 「待ってください!もう一つ!俺達が武蔵を助けるのは当たり前として、なんでそんなに武蔵を助けるように仕向けるのですか!?」

 「合田武蔵殿が亡くなればその捻り合う世界になるからですよ。あの合田武蔵殿が亡くなればこの今の世界は閉じます。そのくらいあの子には力が備わっているのですよ。まぁそれは武蔵殿のお爺さんのせいで後天的に力が備わったのですがね?」

 「煩い!ヘボ陰陽師めが!おい!漆原!お前は小さい時よく武蔵と遊んでいただろう!その武蔵が危ないのだ!」

 「分かってます!必ず俺と有沙が助けます!だからお爺さんは安心してください!」

 「ふん!どうじゃ!ヘボ陰陽師!武蔵の友達は優秀なのだ!武蔵と同じで優しい奴ばかりじゃ!」

 「ふふふ。分かりました。漆原殿?一ノ瀬殿?感謝しますよ」

 「ってか、安倍晴明様!?助けるってこのドアがどうなるのですか!?」

 「それは合田殿の家の入り口と同じですよ。行き先は同じ、ただ入り口が増えただけですよ。男女が交わるしがらみもありません。ただ・・・誰でもは通さないように。数人くらいならば問題ないでしょう。ですが、100名単位になると入り口が閉じる可能性があります。その辺は一ノ瀬殿にお任せしますよ」

 「いや任せるって・・・」

 「おい!ツベの大きい姉ちゃん!武蔵を頼むぞ!あいつはワシの大事な大事な孫だ!助けてやってくれ」

 パチンッ

 「また女の人を見たらすぐにお尻ばっかり・・・」

 「ははは。刻渡りの術は中々に力の消費が激しい。二度と会う事はないでしょう。では御二人共に・・・十二分に頼みますよ。みんなに幸在らん事を・・・薩婆訶(そわか)!」

 ピカーーーーーーーーーーーンッ

 「「うわっ!!」」

 「あ、有沙!大丈夫か!?」

 「だ、大丈夫!それより・・・さっきのは夢!?現実!?」

 「いや間違いなく現実だ。それより、早く準備しよう!安倍晴明が言った事が本当なら岐阜城に通じているはずだ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

天才?秀才?そんなのじゃなくて可愛いって言って!!

如月花恋
ファンタジー
西園寺真由華(さいおんじ まゆか)は生粋のお嬢様だった たくさんの友人を持ち、とても充実した人生を送っていた なのに…恨まれ…憎しみを持った人に殺された そして次に目を覚ますと転生して赤ん坊になっていた

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

処理中です...