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伏犠(里志)と女媧(有沙)
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長篠での最低限の仕事をしたオレ達は浜松へ向かっている。初めてこの時代の浜名湖を見たが、堀江城がある庄内半島を掠めるように隘路を通る。
この道は・・・まぁ道と言えるかも怪しいが畦道に近い峠のような所も通り、三方ヶ原大地を抜け、約2時間程で浜松に到着した。
道中、西へ逃げている領民も見えた。
「なんとか・・・無事到着致しましたね」
「あやめさんすいません。ありがとうございました」
「いえ。なんともございません」
「ふん!大将!こんな事もあるんだ!馬の乗り方くらい覚えておけ!武蔵が勿体ぶらずに岐阜から運搬車を持って来ておけばよかったのだ!ったく!」
いやあんた等が入り口変えたから持って来れなかったんだよ!最初はオレも運搬車で移動する予定だったんだよ!
「其方達は・・織田方の・・・」
「ほほほ。織田家 小荷駄隊 合田武蔵 与力 竹中半兵衛重治でございます。本多殿とお見受け致すが?」
「うむ。徳川家 本多平八郎忠勝。其方達は長篠のはずでは?まさか!?武田が!?」
「詳しくは中で話しましょう。徳川殿はおられるか?」
「殿なら本丸にて・・1人にしてほしいと」
まぁ1人になりたくなる時もあるよな。武田怖いもんな。まさか鉄砲撃ってるのに突撃してくるくらいだもんな。オレもあやめさんと2人になりたいよ・・・。
「そうですか。とりあえず徳川殿も諸将もお呼びください」
オレ達があの有名な本多さんに浜松に案内されるところに例の走って出て行った人たちが到着した。ちゃんと大事に布で絡んでドアを抱えてだ。
いったいなんちゅう体力お化けなのかと問いたい。
「あなた達も来ましたか。少し休憩しておきなさい」
「はっ!合田様これを。戸とぽけっとわいふぁいなる物も持ってきました」
「さすがです!ありがとうございます!少し待っててください!コーラでも持って来ますよ!」
オレはこちらの世界で見れば木1枚の戸を持ち、何を入れる小屋か分からないが広場の端の方にある掃除もされてなさそうな小屋に入り戸を立て掛けた。
不思議な事にこの戸は簡単に取り外しできる。そして、どこでも立て掛けると未来の家・・・未来のトイレに繋がるのだ。なんなら、この行軍もオレは向こうに帰り2時間経ってこちらに戻って来たのでもよかったのかなとすら思う。
まぁ流石にそれは反則すぎると思うけど。
そのまま慶次さんや小川さん、あやめさんにこの場を守ってもらい一度未来に帰る。
「武蔵!帰って来たのか!?途中で電話が切れて分からなかったんだ!どうだった!?」
「合田君!?テルミットどうだった!?」
「とりあえず、長篠は多分落ちた。奥平さんって人が捕まったみたいなんだ。そしてテルミットは効果絶大だったよ!けど、前と後ろに挟まれるのは良くないって事で竹中さんの一声で浜松城に今来てるんだ!」
「そうか・・・やはり落ちたか。それでこれからどうするんだ?」
「いや、とりあえず伝令役の人が向こうの戸とポケットWi-Fi運んでくれたからお礼にコーラとシュークリームでも渡そうと思って一度戻って来たんだよ!」
「そうか。それにしても戦とは悲惨だったな。武蔵の撃った弾は3人に当たったように見えたぞ」
「いや・・・必死だったから分からなかった。けどまだこれからだと思う。とりあえず本当の意味での初陣は終わったよ」
「あぁ。あまり無理するなよ?武蔵の後ろにはオレ達が居るからな!向こうには行けないけど、オレが必ず武蔵を名のある武将にしてみせるからな!」
いやいや当初の目的はどうした!?いつからオレが武将になると言った!?
「はい!はーい!私も姿絵が一切残っていない希代の武器製造者として名前を残すんだ!どうせパラレルワールドなんだから!」
「へ!?」
「言葉は悪いが有沙と決めたんだ。信玄ってどっちにしろもう時間が残ってないだろう?だったら武田ブランドを時間で失うのはもったいない。もし、武蔵が武田を討ったらどうなると思う?」
「はい!?」
「論功行賞の時の第一功は間違いなく武蔵だろう。晴れて武将の仲間入りだ!」
「いや、オレは別に武将になりたいわーー」
「そうそう!合田君の名前が残ればそのドアの向こうの未来では合田君が使った装備なども残る!製作者は誰か・・・一ノ瀬有沙!私の名前が残る!」
「うんうん。その影の策士とは誰か・・・漆原里志!オレの名前も残る!古代中国の神話に出てくる伏羲と女媧みたいな感じかな?」
「はぁ~!?」
「まぁそういうことだ!武蔵!頑張ってくれよな!少し待っててくれ!シュークリームとコーラだろ?すぐに買ってくるよ!」
そう言うと里志君は1人で出かけて行った。そして、残されたオレと有沙さん。
その有沙さんが口を開いた。
「本当はね・・・合田君を戦わせたくなかったんだよ。けど、合田君はあやめさんと一緒になりたいんでしょ?私達はもうそちらに行けなくなってしまったけど・・・」
「恥ずかしながら・・・そうだね」
「合田君にだけ人殺しをさせてしまう形になってしまう。だから里志と話し合って、合田君が戦う時はテレビ電話越しだけど必ず見届けよう。少しでも合田君の気持ちに寄り添おうと決めたんだよ」
「そうだったんだ。けどオレは大丈夫だよ。適性があったみたいでトラウマもないよ!」
「それでもだよ。合田君にだけ苦労させたくないからね。だからどうせなら・・・私と里志も名を残そう!ってなってね。だから合田君?もし悩む事があれば教えてね?アドバイスできるかどうかは分からないし、あやめさんの代わりにはなれないけど苦しまないでね?」
なんて・・・なんて良い子や!里志君!羨ましすぎるぞ!!
少し有沙さんと話した後、久しぶりに爺ちゃん婆ちゃんの写真に向かい手を合わせた。近況報告だ。
「爺ちゃん!久しぶり!最近手合わせられなくてごめん!」
オレがいつも独り言を言う。だが当たり前だが応答はない。
「オレ・・・あの有名な三方ヶ原の戦いに参加する事になったんだ!必ず名を残す!合田家の名前を残すよ!婆ちゃん!婆ちゃんが前に言った『幸せにしてやりな』って事忘れてないよ!あやめさんを必ず幸せにするから!」
オレがそう言うと婆ちゃんの写真から水滴が一滴付いていた。
昔なら心霊現象かのように思いビックリしてたと思う。けど今のオレには分かる!姿は見えないけど、爺ちゃんも婆ちゃんも絶対にオレを守ってくれていると!
オレが立ち上がろうとすると、棚の上に置いていた安全+第一と書かれている黄色のヘルメットがゴトンと落ちてきてオレの頭に綺麗に入った。
なんとなく爺ちゃんも応援してくれてるように思う。
「ただいま!お待たせ!買ってきたぞ!浜松城って8千人くらい居るんだろう?さすがにシュークリーム8千個はなかったからコンビニ回ってあるだけ買って来たから主要な人には渡せると思うぞ!コーラも30ケース買って来たからかなりの人に飲ませられると思うぞ!」
「あ、里志君ありがとう!じゃあさっそくオレ向こうに行くから!後・・・里志君!必ず里志君と有沙さんの名前を向こうに残せるような働きするから!」
言い捨てるようにカッコつけて1ケース持ちドアを潜ったが・・・
クッ・・・オレとした事が往復しないと持ってこれないじゃないか!あんな臭い言葉言った手前恥ずかしい!
「あら?もう戻って来たのか?」
「慶次さん!山先2本必ず来週に渡します!手伝ってください!」
「何をするのだ?まさかその箱を城に運べってか?」
「そのまさかです!後、29ケースあります」
「5本だ!」
「いや、山先高いんすよ!もう向こうのお金も少なくなってきてるんですよ!3本!」
「チッ。しゃーねーな!山先3本とあのシュワシュワの金色の酒で手を打とう」
はい。ビールですね。ビールなら安いから別にいいけど。
「私も手伝います!」
「ありがとうございます。後、あやめさん?大丈夫だと思うけど戦に参加する以上いつ何が起こってもいかないから先に渡したい物があります。今日の夜2人で話せますか?」
「・・・・はい」
オレも男だ。覚悟を決めよう。
渡す物・・・先日、有沙さんと里志君と購入した指輪だ。恋人に渡すにしては安いかもしれない、5万円の指輪だ。本当は高いやつを買いたかったが、プロポーズする時に自らハードルを上げるのはよくないと思い、最初だからこの値段のやつにした。
身の丈合わない贈り物は続かないからな。所詮、今のオレは成り金だからな。実力で稼いだお金であやめさんには渡したい。
この道は・・・まぁ道と言えるかも怪しいが畦道に近い峠のような所も通り、三方ヶ原大地を抜け、約2時間程で浜松に到着した。
道中、西へ逃げている領民も見えた。
「なんとか・・・無事到着致しましたね」
「あやめさんすいません。ありがとうございました」
「いえ。なんともございません」
「ふん!大将!こんな事もあるんだ!馬の乗り方くらい覚えておけ!武蔵が勿体ぶらずに岐阜から運搬車を持って来ておけばよかったのだ!ったく!」
いやあんた等が入り口変えたから持って来れなかったんだよ!最初はオレも運搬車で移動する予定だったんだよ!
「其方達は・・織田方の・・・」
「ほほほ。織田家 小荷駄隊 合田武蔵 与力 竹中半兵衛重治でございます。本多殿とお見受け致すが?」
「うむ。徳川家 本多平八郎忠勝。其方達は長篠のはずでは?まさか!?武田が!?」
「詳しくは中で話しましょう。徳川殿はおられるか?」
「殿なら本丸にて・・1人にしてほしいと」
まぁ1人になりたくなる時もあるよな。武田怖いもんな。まさか鉄砲撃ってるのに突撃してくるくらいだもんな。オレもあやめさんと2人になりたいよ・・・。
「そうですか。とりあえず徳川殿も諸将もお呼びください」
オレ達があの有名な本多さんに浜松に案内されるところに例の走って出て行った人たちが到着した。ちゃんと大事に布で絡んでドアを抱えてだ。
いったいなんちゅう体力お化けなのかと問いたい。
「あなた達も来ましたか。少し休憩しておきなさい」
「はっ!合田様これを。戸とぽけっとわいふぁいなる物も持ってきました」
「さすがです!ありがとうございます!少し待っててください!コーラでも持って来ますよ!」
オレはこちらの世界で見れば木1枚の戸を持ち、何を入れる小屋か分からないが広場の端の方にある掃除もされてなさそうな小屋に入り戸を立て掛けた。
不思議な事にこの戸は簡単に取り外しできる。そして、どこでも立て掛けると未来の家・・・未来のトイレに繋がるのだ。なんなら、この行軍もオレは向こうに帰り2時間経ってこちらに戻って来たのでもよかったのかなとすら思う。
まぁ流石にそれは反則すぎると思うけど。
そのまま慶次さんや小川さん、あやめさんにこの場を守ってもらい一度未来に帰る。
「武蔵!帰って来たのか!?途中で電話が切れて分からなかったんだ!どうだった!?」
「合田君!?テルミットどうだった!?」
「とりあえず、長篠は多分落ちた。奥平さんって人が捕まったみたいなんだ。そしてテルミットは効果絶大だったよ!けど、前と後ろに挟まれるのは良くないって事で竹中さんの一声で浜松城に今来てるんだ!」
「そうか・・・やはり落ちたか。それでこれからどうするんだ?」
「いや、とりあえず伝令役の人が向こうの戸とポケットWi-Fi運んでくれたからお礼にコーラとシュークリームでも渡そうと思って一度戻って来たんだよ!」
「そうか。それにしても戦とは悲惨だったな。武蔵の撃った弾は3人に当たったように見えたぞ」
「いや・・・必死だったから分からなかった。けどまだこれからだと思う。とりあえず本当の意味での初陣は終わったよ」
「あぁ。あまり無理するなよ?武蔵の後ろにはオレ達が居るからな!向こうには行けないけど、オレが必ず武蔵を名のある武将にしてみせるからな!」
いやいや当初の目的はどうした!?いつからオレが武将になると言った!?
「はい!はーい!私も姿絵が一切残っていない希代の武器製造者として名前を残すんだ!どうせパラレルワールドなんだから!」
「へ!?」
「言葉は悪いが有沙と決めたんだ。信玄ってどっちにしろもう時間が残ってないだろう?だったら武田ブランドを時間で失うのはもったいない。もし、武蔵が武田を討ったらどうなると思う?」
「はい!?」
「論功行賞の時の第一功は間違いなく武蔵だろう。晴れて武将の仲間入りだ!」
「いや、オレは別に武将になりたいわーー」
「そうそう!合田君の名前が残ればそのドアの向こうの未来では合田君が使った装備なども残る!製作者は誰か・・・一ノ瀬有沙!私の名前が残る!」
「うんうん。その影の策士とは誰か・・・漆原里志!オレの名前も残る!古代中国の神話に出てくる伏羲と女媧みたいな感じかな?」
「はぁ~!?」
「まぁそういうことだ!武蔵!頑張ってくれよな!少し待っててくれ!シュークリームとコーラだろ?すぐに買ってくるよ!」
そう言うと里志君は1人で出かけて行った。そして、残されたオレと有沙さん。
その有沙さんが口を開いた。
「本当はね・・・合田君を戦わせたくなかったんだよ。けど、合田君はあやめさんと一緒になりたいんでしょ?私達はもうそちらに行けなくなってしまったけど・・・」
「恥ずかしながら・・・そうだね」
「合田君にだけ人殺しをさせてしまう形になってしまう。だから里志と話し合って、合田君が戦う時はテレビ電話越しだけど必ず見届けよう。少しでも合田君の気持ちに寄り添おうと決めたんだよ」
「そうだったんだ。けどオレは大丈夫だよ。適性があったみたいでトラウマもないよ!」
「それでもだよ。合田君にだけ苦労させたくないからね。だからどうせなら・・・私と里志も名を残そう!ってなってね。だから合田君?もし悩む事があれば教えてね?アドバイスできるかどうかは分からないし、あやめさんの代わりにはなれないけど苦しまないでね?」
なんて・・・なんて良い子や!里志君!羨ましすぎるぞ!!
少し有沙さんと話した後、久しぶりに爺ちゃん婆ちゃんの写真に向かい手を合わせた。近況報告だ。
「爺ちゃん!久しぶり!最近手合わせられなくてごめん!」
オレがいつも独り言を言う。だが当たり前だが応答はない。
「オレ・・・あの有名な三方ヶ原の戦いに参加する事になったんだ!必ず名を残す!合田家の名前を残すよ!婆ちゃん!婆ちゃんが前に言った『幸せにしてやりな』って事忘れてないよ!あやめさんを必ず幸せにするから!」
オレがそう言うと婆ちゃんの写真から水滴が一滴付いていた。
昔なら心霊現象かのように思いビックリしてたと思う。けど今のオレには分かる!姿は見えないけど、爺ちゃんも婆ちゃんも絶対にオレを守ってくれていると!
オレが立ち上がろうとすると、棚の上に置いていた安全+第一と書かれている黄色のヘルメットがゴトンと落ちてきてオレの頭に綺麗に入った。
なんとなく爺ちゃんも応援してくれてるように思う。
「ただいま!お待たせ!買ってきたぞ!浜松城って8千人くらい居るんだろう?さすがにシュークリーム8千個はなかったからコンビニ回ってあるだけ買って来たから主要な人には渡せると思うぞ!コーラも30ケース買って来たからかなりの人に飲ませられると思うぞ!」
「あ、里志君ありがとう!じゃあさっそくオレ向こうに行くから!後・・・里志君!必ず里志君と有沙さんの名前を向こうに残せるような働きするから!」
言い捨てるようにカッコつけて1ケース持ちドアを潜ったが・・・
クッ・・・オレとした事が往復しないと持ってこれないじゃないか!あんな臭い言葉言った手前恥ずかしい!
「あら?もう戻って来たのか?」
「慶次さん!山先2本必ず来週に渡します!手伝ってください!」
「何をするのだ?まさかその箱を城に運べってか?」
「そのまさかです!後、29ケースあります」
「5本だ!」
「いや、山先高いんすよ!もう向こうのお金も少なくなってきてるんですよ!3本!」
「チッ。しゃーねーな!山先3本とあのシュワシュワの金色の酒で手を打とう」
はい。ビールですね。ビールなら安いから別にいいけど。
「私も手伝います!」
「ありがとうございます。後、あやめさん?大丈夫だと思うけど戦に参加する以上いつ何が起こってもいかないから先に渡したい物があります。今日の夜2人で話せますか?」
「・・・・はい」
オレも男だ。覚悟を決めよう。
渡す物・・・先日、有沙さんと里志君と購入した指輪だ。恋人に渡すにしては安いかもしれない、5万円の指輪だ。本当は高いやつを買いたかったが、プロポーズする時に自らハードルを上げるのはよくないと思い、最初だからこの値段のやつにした。
身の丈合わない贈り物は続かないからな。所詮、今のオレは成り金だからな。実力で稼いだお金であやめさんには渡したい。
応援ありがとうございます!
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