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持つべきものは友情

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 オレは家に戻り風呂に入った。結局石鹸や砂糖なんかは置いて来たがいくらで買い取ってくれるのだろうか。
そもそもあの貰った茶器は売れるのだろうか。

 そんな事を思いながら夢に出て来たじいちゃんばあちゃんの写真を見ながら呟く。

 「じいちゃん?オレはじいちゃんと違うからあやめさんだけ紹介したいんだ」

 「「・・・・・・・」」

 もちろん、2人からの返答はない。

 オレは例の茶器を持ち、ネットで探した、自転車で15分程のところにある骨董品買取します!と書かれているお店に持ち込んだ。

 言葉は悪いがこんな店に来たのは初めてだ。リサイクルショップではなく、骨董品と限定しているところがなんとなく胡散臭く感じるが・・・。しかも、外の看板は手書きでアトリエって書いてあるし。

 ただ、このアトリエ?に似つかわない綺麗なガーデニングがある。

 「いらっしゃい!」

 店の中は、外の看板とは程遠い胡散臭いお爺さん・・・ではなく、なんとあの池田さんの子孫のマダムさんが居た。

 「え!?池田さんですか!?」

 「あら?たしかホームセンターの!?」

 「そうです!ここでパートとかされてるのですか!?」

 「あら?やだわ!ここは私が趣味で始めたお店なのよ?ちゃんと古物商認可も受けて、正確な資格とは言えないけど宝石鑑定士、美術鑑定士、古物査定士なのよ?ちゃんと役員にも入っているのよ?」

 「そうなんですか!?初めて聞きました!」

 「そうね。あまり自慢したところでだからね?若い頃は美術館や博物館に勤めるため学芸員の国家資格も取ったのよ?ほら!これよ?」

 そうやって自慢気に見せてくれた資格書の数々・・・。とりあえず本当に凄い人だという事は分かった。話には聞いていたが学芸員の資格を持ってる人は初めて見た。

 「すいません!疑ってたわけではなく純粋に凄いなと思いまして」

 「いいのよ?この歳にもなると私のアトリエを見てお客さんが何を考えてるのかなんとなく分かるのよ。それで何か買い取って欲しいの?」

 「あっ、すいません!これです!実はばあちゃんの家にありまして、持っててもオレは使いませんのでいくらくらいで買い取ってくれるのかな?と思いまして」

 オレは信長さんに貰った瀬戸の急須と湯呑みを渡した。

 「うん?これはかなりの年代物ね?少し時間もらう事になるけどいいかしら?」

 「あ、はい!いつでも構いません!どうしましょう?」

 「よければ・・・明日また来てくれる?」

 「分かりました!また明日伺います!」

 「久々にワクワクする品が届いたわ」

 「え!?そうなのですか?」

 「えぇ。最近は偽物も中々精巧に作られててね?そういう時は例えばこの焼き物なんかで例えるなら語りかけるのよ」

 「オレには分からない世界です。では明日また伺いますのでよろしくお願いします!」


 よし!とりあえず持って行ったぞ!いくらくらいになるのだろう?なんせさっき持って帰った本物だからな!10万円くらいになれば御の字かな!?半分は信長さんに還元しないと失礼だよな!?ははは!


 「あの子のおばあさんは名家の人なのかしら?家紋入りの茶器は偽物や今の時代で作られた物はいっぱいあるけどこれは・・・本物のように見えるけど・・・。調べ甲斐があるわね!ふふふ」

 
 オレは帰りの際にATMから1万円出金し、ドラッグストアでロキソニン湿布とどこのメーカーか分からないワゴンに入っている激安カップラーメンやカップ焼きそば、チョコレートを購入した。

 忘れていけないのが、前田さんのお土産と池田さんのお土産だ。前田さんも池田さんも酒が好きだから1ケースと言いたいところだけど、電気代や電話代でお金が要るため1パック1000円の激安焼酎を2つ購入した。

 オレはすぐに家に帰り、勝った物をいつもの戦国時代用のバッグに入れてトイレに向かう。

 「おっと!その前に里志君に電話だな」

 プルルルル

 『もしもし?武蔵君?どうした?』

 「実は聞きたい事があるんだけど今いいか?」

 『悪い!今彼女と一緒なんだ。少しなら大丈夫だけど?』

 チッ。また彼女に現を抜かしているのか。うらやま・・・けしからん!!

 「ごめんごめん!ならまた改めるからいいよ!」

 『いや気になるから言ってくれ!どうしたんだい?』

 「いや、もしもだけど・・・もし、里志君が戦国時代にタイムスリップして行き来できるとして、織田信長に仕えるとする。軍事的支援をしてくれ!と言われればどんな事する?」

 『いやいやまた面白い事考えるね?そうだな・・・軍事的と言われればまずは火縄銃の改良を言うかな?』

 「火縄銃の改良?」

 『そうそう。火縄銃は、火挟に付いた火縄が、バネ仕掛けによって火皿に押し付けられ、火皿と銃口の内部は火穴という小さな穴で繋がっているのだけどね?まぁその火縄によって、火皿においた火薬に火がつくと、銃口内部に詰められた火薬に引火して爆発し、弾丸が発射される仕組みなんだ。分かるかい?』

 うん。まったく分からん!

 「ごめん。もっと分かりやすく教えてくれる?」

 『まぁ火縄銃の仕組みはネットでいっぱいあるから調べてみるといいよ。それでこの火縄銃は前装式なんだけどなんせ、弾が真っ直ぐ飛ばなかったらしいんだ。だからライフリング加工を教え、弾を1849年にフランス陸軍大尉のクロード・エティエンヌ・ミニエーが採用した弾、通称ミニエー弾を教えるかな?』

 聞いたオレが馬鹿だった。マジで初耳の事ばかりだ。

 『もしもーし?聞いてる?』

 「あぁ。悪い。さすが里志君だなと思ってね?」

 『ははは。全然だよ。けど、やっぱ1番は火薬の生成方法かな?多分その時代なら黒色火薬全盛期だから、褐色火薬をすっ飛ばして、俺なら無煙火薬を教えるかな?』

 「無煙火薬?」

 『そう。無煙火薬は現在の各国の軍事でも使われてる火薬さ。ニトログリセリン、ニトロセルロース、ニトログアニジンの3つが基剤だよ。ニトロセルロースは脱脂綿の繊維を・・・ごめんごめん!近々時間見つけてメールで送ってあげるよ!』

 「ごめん!助かる!」

 『っていうか何でこんな事聞くんだい?まさか変なテロリストみたいな事考えてるわけじゃないよね!?』

 「違う違う!実は・・・実は今、無料小説サイトでタイムスリップした話を書いてるんだ!」

 『へぇ~!武蔵君にそんな趣味あったんだ!俺も見てみたいから題名教えてよ?』

 「いや、恥ずかしいからやめてくれ!見てくれてる人も居ないし、趣味みたいなものだから!」

 『いや、面白いと思うけどな?まあまたメールでも送るよ!武蔵君のその小説が伸びるといいな!じゃな!』

 クッ・・・・思わず嘘吐いてしまった・・・。里志君!悪い!実は本当にタイムスリップしてるんだ!そして向こうに恋した人ができたんだ!盛大にオワタかもしれないけど・・・。
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