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姓(かばね)と諱(いみな) 

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 寂しい思いと不安な気持ちを抱えながら廊下を雑巾で拭く。

 「こんな事誰にも言えないよな・・・ばあちゃん?笑ってないで何か言ってくれよ・・・」

 本格的にばあちゃんに話しかけている。疲れてるんだろうな。ただのバイト風情なのに・・・。

 「あれが確かに織田信長と池田恒興だとして・・・手ぶらで行くのは失礼だよな!?何か手土産を・・・」

 1人で呟いているとカップラーメンが目に入る。

 よし!カップラーメンなら戦国時代でも湯を注ぐだけだから食べれるよな!?ちょうど二つあるしプレゼントしよう!

 自分の家なのにしかもトイレにノックをしてしまう。そして恐る恐るドアを開ける。

 ドォォォォォーーーーーーン!!!

 ドア開けた瞬間に刀が見えました。しかもオレの目の前に振り下ろされました。どうもありがとうございました。

 「来たか!宣言通り来るとは見た目によらぬとはこの事よのう?小便漏らしが!」

 「動くなッ!!!」

 2人の連携した行動にオレは即座に縄で縛られてしまう。しかも血が止まるんじゃないかと言わんばかりの強さでだ。

 「痛い!痛い!痛い!血が止まる!!!!」

 「ふん。他愛ない奴じゃ!正直に申せ!貴様何者ぞ?」

 「お館様!見慣れぬ物を持っておりますが?」

 「捨ておけい!はよう答えろ!何者ぞ?その召物も見た事がない!南蛮の者か?」

 「だから手紙に書いていた通りです!オレの家のトイレに繋がっててオレも困ってるのです!!」

 「かぁ~!恒興!訛りが酷くて分からぬ!訳せ!」

 「へ!?お、俺がですか!?おい!お前!もう一度ゆっくり言え!」

 「は、はい・・・手紙に書いてた通り、オレの家のトイレとあなたの家のこのドアが繋がってしまいオレも困っているのです!」

 「恒興!どういう意味ぞ!」

 「・・・・申し訳ない。とりあえずこの者の家と岐阜城が繋がったという事だと・・・といれ?とどあが何かは分かりませぬ・・・」

 あっ!?縛られている中頭が閃いた。というか思い出した。英語なんか分かるはずないよなと。

 「チッ。手紙手紙と言うておるがそもそもこの紙はなんじゃ!?どこ産の紙ぞ?それにこの字はなんだ!?分かる字もあるが読めぬではないか!?暗号か!?」

 「い、いえ・・・至って普通の文字です!字の汚さは学がないため否めませんが・・・」

 「チッ。恒興!此奴の身を改めろ!武器や刃物がないかだ」

 それからこれでもかと言うくらい至る所を弄られた。パンツの中にまで手を入れられる始末である。

 「貴様の召物はなんだ!?何故伸びたり縮んだりするのだ!?」

 「いやそれは・・・」

 「お館様、何も武器になるような物はございません。四角い箱のような物があるだけです」

 「うん?それはなんぞ?南蛮の箱か?」

 「あっ、ちょ!スマホ・・・」

 バチンッ

 「縄目は解いてやったが動いて良いとは言っておらぬ!貴様は聞かれた事を正直に答えよ!良いな?まずこの箱はなんぞ?手に持ってきたかしゃかしゃ鳴っている物はなんぞ?貴様は何者ぞ?その召物はなんぞ?」

 いや質問多すぎだろ!?答えれるかよ!?

 「オレは人間です!その箱はスマートホンと言います!要は電話です!手に持って来た物は手ぶらでは失礼かと思いお土産のカップラーメンです!かしゃかしゃ鳴るのはナイロンの袋です!召物って服ですよね!?ただの服ですよ!」

 バチンッ

 「0点じゃ!分かりやすく言え!もう一度じゃ!」

 いや分からないからってぶつなよ!?親父にもぶたれたことないのに・・・。

 それから小一時間ゆっくり何回も何回も説明した。

 「ほう?ならこのどあとやらの向こうに貴様の家があるのか。ワシが出向いてやろう。案内致せ!」

 「え!?来るのですか!?」

 「ワシが向かうのに不都合があるのか?」

 「いや・・・そもそも自己紹介してないと思うのですが・・・」

 「ほう?ワシを知りたいか」

 うん。ほぼほぼ分かります。織田信長さんですよね。確信が欲しいだけです。

 「織田上総介平朝臣信長である!」

 え!?なに!?なに!?なんでそんな名前長いんだ!?織田信長じゃないの!?

 「すいません。織田信長さんじゃないんですか?」

 ゴツンッ!!!

 「貴様はやはりその命要らぬと見える!姓(かばね)を呼び捨てならまだしも諱を親族でも家臣でもない奴に呼ばれるとはな」

 「かばね!?いみな!?なんですか!?」

 「お館様!俺に此奴を斬る命令を!許しておけませぬ!」

 「恒興!待て。此奴の国を見てからに致そう」

 なんか分からないし今までビンタだったのがグーパンチに代わりクッソ痛いんだけど・・・。とりあえず名前呼びはダメって事は分かったけど・・・。織田様と呼べば間違いないかな。

 「すいません。知りませんでした。気を付けます」

 「ふん。まあ、ワシは諱で呼ばれようが家臣にならば怒らぬ器量を持ってるのだがな。変な仕来りに縛られるのは真っ平だ。諱こそ親父やお袋に付けられた真名だと思うがな」

 「お館様!?その様な戯言ではこの先ーー」

 「くどい!何回も聞いた!ワシはワシの思うようにやる!貴様ははよう案内せい!」

 「すいません。ここを入ります。ここがオレのばあちゃんの家でーーえ!?織田様!?」

 気がつくとオレしかばあちゃんの家に居なかった。まさかこの家に来れるのってオレだけなのか!?ってか頬っぺが痛い・・・。
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