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処刑へ

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 連行された先は、広場に急ごしらえで作られた処刑台。遠くからでもよく見えるように木を組んだ高台の上にギロチンがある。
 それを困惑顔で見上げる民たち。

「……なんで、陛下が処刑なんだ?」
「税が軽くなって、暮らしやすくなったのに」
「派手な生活をしたらしいぞ」
「そうなのか?」

 不審が混じったヒソヒソ声。だが、声をあげて処刑に反対する者はいない。
 民からの視線を浴びながら階段を登る。少しずつ空が広がり、その先にあるギロチンが近づいてきた。

「跪け!」

 言葉と同時に足を蹴られ膝をつかされた。

 ガシャン。

 バランスを崩したところで、重い枷が首に嵌められる。

 そこに一人の男がやってきた。派手な装飾品で身を飾り、くすんだ茶色の髪を揺らす。皇族の血は引いてないが、自分にとって伯父となる人物。
 その姿にやっと合点がいった。

「黒幕は、おまえか」

 男が鼻を鳴らして私を見下す。

「まさか双子の弟がいたとはな。おまえも兄のように従順であれば、こんなことにはならなかったのに」

 皇帝と妃の急死。そこから兄の病死。不自然な死の連続と、消えた金。それは、すべて……

「その従順だった兄を殺したくせに、何を言う?」
「私の裏金に気づいたからな。あと、皇帝に受け継がれる魔力を渡さなかった」
「渡すのは無理だ。血縁がいれば魔力はそちらに引き継がれる」

 伯父がニヤリと口角をあげた。

「だが、もう他に血縁はいない」
「民の前で私を殺し、皇帝の魔力を奪うのか?」
「奪うとは言葉が悪いな。処刑され行き場のない皇帝の魔力を引き継ぐだけだ。民の前で魔力が引き継がれれば、私が次の皇帝であることに異論は出まい」
「そうか」

 皇帝という地位に未練はない。そもそも自分は赤子の時に死ぬ運命だった。それが、ここまで生きられたのだ。執務も少女が住みやすいように頑張っただけ。
 その少女が隣国へ逃げられたなら……

「あとは、おまえの妃を捕まえて私のものにするだけだ」

 思わぬ言葉に私は顔をあげた。

「どういうことだ!?」

 焦る私に下卑た笑みが落ちる。

「言葉の通りだ。前皇帝の妃を娶れば私の基盤も盤石になる。おまえとは白い結婚であったようだし、何も問題はあるまい?」

 少女の平穏な生活が崩れる。それだけは許されない。憎悪と憤怒が突き上がる。

「させるか!」

 私は初めて皇帝の魔力を解放させた。
 大地が揺れ、空に暗雲がたちこめ、稲妻が走る。見物に集まっていた民たちは逃げまどい、警備兵たちも逃げ腰に。
 だが、肝心の枷が外れず。

「クソッ!」

 ガチャガチャと枷を揺らすだけの私に最初は驚いていた伯父が安堵したようにせせら笑った。

「その枷がある限り、何もできん。見苦しい最期だったな」

 伯父がギロチンへ手をかけ……



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