完結•不遇な皇帝とお飾りではなかった妻の物語

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お飾り妻の始まり

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「最高に可愛い女であれ」
「かしこまりました」

 私の唐突な命令にも、少女は優雅に頭をさげた。
 15歳という若さで突如、皇帝に即位した私と強い繋がりを持つための、政略結婚。隣国の公爵家の娘であり、傍から見れば、皇帝について何も知らないお飾り妻。

 それでも、その日から少女は可愛くなった。

 柔らかな春の日差しのように煌めく金髪は季節の花で飾られ、大きな紫水晶アメジストの瞳に彩りを添える。滑らかな白い肌に、淡いピンク色の唇は人形のように愛らしい。
 まだ幼さを残す体は可愛らしいドレスをまとい、優雅に過ごす。

「これでいい」

 政略と陰謀の世界へ巻き込んでしまった少女への贖罪。少しでも穏やかな世界で生きられるように。
 華やかな令嬢たちに囲まれて談笑している少女に私は目を細めた。



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