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第一章・無自覚編〜出遭い
子爵による誤算だらけな昼食会〜ルド視点〜(11/24追加)
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黙って待つルドにオンディビエラ子爵は堂々と言った。
「悪魔の力を借りているからだ」
「ブッ……!」
ルドは吹き出しそうになった口を押さえる。
「どこからそんな発想が? 治療師は定期的に身辺を調査されます。悪魔なんて怪しい存在の力を使ったら、すぐに発覚します。そもそも悪魔を呼び出すなんて、個人で出来ることではありません」
「確かに悪魔は言い過ぎた。だが、クリスティアヌス様が神以外の力を使っていることに間違いはない」
オンディビエラ子爵が強く断言する。ルドは呆れ半分、諦め半分で訊ねた。
「それで私をここに呼んだ理由は?」
ようやく本題に入れたオンディビエラ子爵が椅子にふんぞり返る。
「君からクリスティアヌス様に私の娘の治療をするように頼んでくれ。治療さえしてくれれば、このことは私と君だけの秘密としよう」
(何が秘密としよう、だ!)
ルドは心の中で憤慨した。こういう人間は一度脅しが通ると、何度でも同じことで脅してくる。バカの一つ覚え、と言いたくなるが実際にそうなのだからしょうがない。
神の加護がないのかあるのかは、ひとまず置いておく。まずはこの馬鹿をどうにかしなければ。
そう考えながらルドはオンディビエラ子爵に言った。
「メイドを見つけないのですか? 私が頼んでもクリス様が聞き入れるとは限りません。それよりメイドを見つけたほうが確実に治療をしてもらえます」
ルドの提案をオンディビエラ子爵が鼻で笑う。
「この広い街でメイドを見つけられるわけないだろ」
師匠は見つけて治療しましたけど。と、いう言葉をルドは呑み込んだ。
オンディビエラ子爵が腹立たし気に続ける。
「あれは娘の治療をしないための言い訳だ。どの治療師も治せなかった傷を神の加護がないのに治せるわけがない」
予想外の言葉にルドが首を傾げる。
「そう思っているなら、なぜクリス様に治療を頼むのですか?」
「クリス様は傷を治せると言った。だが、実際は治せなかった。と、なると責任をとってもらわなければならない」
「責任をとる?」
「ああ。責任をとって娘と結婚してもらう」
「けっこん!?」
ルドは再び吹き出しそうになった。どうすれば、そこまで話を飛躍させることができるのか。
驚きを通り越して唖然をしているルドにオンディビエラ子爵が持論を語る。
「年頃の娘の顔に傷があるのだよ? 娘はそのことを気にして、ずっと自室に引きこもっている。それを治せると言って喜ばせ、実は治せませんでした。となると、娘はどうなるか……幸い、娘はクリス様のことを気に入っている。クリス様が嫁にすると言えば、娘は喜ぶだろう」
あまりの話にルドの開いた口が塞がらない。どうするか考えていると、ノックの音がしてドアが開いた。
「本日のお食事はいかがでしょうか?」
白髪混じりの灰色の髪をオールバックにまとめた、初老の男性が部屋に入ってきた。青い瞳は柔らかく、目元のシワも男性を穏やかに魅せている。
その姿を見るやいなや、オンディビエラ子爵は慌てて椅子から立ち上がった。
「やあ、オーナー自ら挨拶に来られるとは。いつもと変わらず美味し……」
オーナーがオンディビエラ子爵を無視して通り過ぎ、ルドの前で頭を下げる。
「お久しぶりでございます」
ルドは椅子に座ったまま笑顔で答えた。
「お久しぶりです。今日はお忍びなので家の者には内密にお願いします」
「そうでしたか。前もって連絡をいただけておりましたら、いつもの料理をご用意いたしましたのですが」
「いえ。たまには違う料理もいいですよ。ただ、ソースの味が少し物足りないように感じました」
ルドの指摘にオーナーがすまなそうに説明した。
「さすが、お気づきになられましたか。いつもの料理に使うソースには、あんこうの肝を入れているのですが、本日は切らしておりまして……他の物で代用いたしましたが、あんこうの肝には劣ります。それで、物足りないように感じたのかと」
海産物を使った料理もあるが、ここは内陸のため痛みやすい内臓は破棄されてから運ばれてくる。そんな痛みやすい食材を特別に準備して、隠し味に使う。
しかも、あんこうの肝は名高い高級食材であるため、そう簡単に仕入れられるものでもない。それを毎回使用し、しかも定番の料理があるほどの常連で。
オンディビエラ子爵がルドと自分との扱われ方の差に、なんとなく気づき始めた。
ルドは横目でオンディビエラ子爵を見た後、視線をオーナーに戻してにこやかに話す。
「そうでしたか。今日は突然、呼び出されたので連絡ができませんでした。次は連絡してから来ます」
「はい、お待ちしております」
ルドとオーナーの親しげな様子に、オンディビエラ子爵が嫌な汗をかき始めていた。
自分でさえ、あのように親しげに声をかけられたことはない。それこそ特別な地位の者でなければ、オーナーに顔を覚えてもらえない。
そこでオンディビエラ子爵の背筋が寒くなった。この若造は、もしかしたら自分より爵位が上なのかもしれない。
嫌な予感がよぎったところで、オーナーが始めてオンデイビエラ子爵に顔を向けた。
「それにしても、この方を突然呼び出すとは無礼な……」
オーナーからの視線が非難めいたものに変わる。居心地が悪くなったオンディビエラ子爵が慌てて立ち上がった。
「で、では、そういうことだ! 考えておいてくれ!」
早々に立ち去ろうとするオンディビエラ子爵にルドの低い声が絡み付く。
「お待ち下さい、オンディビエラ子爵」
振り返ったオンディビエラ子爵にルドはにっこりと男前の笑顔を向けた。
「先ほどのことについては、後日また話し合いましょう」
「そ、そうだな。失礼する!」
オンディビエラ子爵が逃げ出すように部屋から出て行った。
「まったく、面倒なことを……」
ルドは呟きながら食事を再開する。オーナーが心配そうに声をかけた。
「手伝えることがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
「いえ、これぐらい大したことありませんから」
「あなたのお爺様には、大変お世話になっております。私の力など微々たるものですが、なにかありましたら手伝させて下さい」
「ありがとうございます」
ルドは礼を言うと鴨肉を口に入れた。
たしかにクリスが使った治療魔法は普通とは違う。しかし、それが悪魔の力とはとても思えない。
「今は急いで戻ろう」
ルドは残りの料理をさっさと食べ終えた。
「悪魔の力を借りているからだ」
「ブッ……!」
ルドは吹き出しそうになった口を押さえる。
「どこからそんな発想が? 治療師は定期的に身辺を調査されます。悪魔なんて怪しい存在の力を使ったら、すぐに発覚します。そもそも悪魔を呼び出すなんて、個人で出来ることではありません」
「確かに悪魔は言い過ぎた。だが、クリスティアヌス様が神以外の力を使っていることに間違いはない」
オンディビエラ子爵が強く断言する。ルドは呆れ半分、諦め半分で訊ねた。
「それで私をここに呼んだ理由は?」
ようやく本題に入れたオンディビエラ子爵が椅子にふんぞり返る。
「君からクリスティアヌス様に私の娘の治療をするように頼んでくれ。治療さえしてくれれば、このことは私と君だけの秘密としよう」
(何が秘密としよう、だ!)
ルドは心の中で憤慨した。こういう人間は一度脅しが通ると、何度でも同じことで脅してくる。バカの一つ覚え、と言いたくなるが実際にそうなのだからしょうがない。
神の加護がないのかあるのかは、ひとまず置いておく。まずはこの馬鹿をどうにかしなければ。
そう考えながらルドはオンディビエラ子爵に言った。
「メイドを見つけないのですか? 私が頼んでもクリス様が聞き入れるとは限りません。それよりメイドを見つけたほうが確実に治療をしてもらえます」
ルドの提案をオンディビエラ子爵が鼻で笑う。
「この広い街でメイドを見つけられるわけないだろ」
師匠は見つけて治療しましたけど。と、いう言葉をルドは呑み込んだ。
オンディビエラ子爵が腹立たし気に続ける。
「あれは娘の治療をしないための言い訳だ。どの治療師も治せなかった傷を神の加護がないのに治せるわけがない」
予想外の言葉にルドが首を傾げる。
「そう思っているなら、なぜクリス様に治療を頼むのですか?」
「クリス様は傷を治せると言った。だが、実際は治せなかった。と、なると責任をとってもらわなければならない」
「責任をとる?」
「ああ。責任をとって娘と結婚してもらう」
「けっこん!?」
ルドは再び吹き出しそうになった。どうすれば、そこまで話を飛躍させることができるのか。
驚きを通り越して唖然をしているルドにオンディビエラ子爵が持論を語る。
「年頃の娘の顔に傷があるのだよ? 娘はそのことを気にして、ずっと自室に引きこもっている。それを治せると言って喜ばせ、実は治せませんでした。となると、娘はどうなるか……幸い、娘はクリス様のことを気に入っている。クリス様が嫁にすると言えば、娘は喜ぶだろう」
あまりの話にルドの開いた口が塞がらない。どうするか考えていると、ノックの音がしてドアが開いた。
「本日のお食事はいかがでしょうか?」
白髪混じりの灰色の髪をオールバックにまとめた、初老の男性が部屋に入ってきた。青い瞳は柔らかく、目元のシワも男性を穏やかに魅せている。
その姿を見るやいなや、オンディビエラ子爵は慌てて椅子から立ち上がった。
「やあ、オーナー自ら挨拶に来られるとは。いつもと変わらず美味し……」
オーナーがオンディビエラ子爵を無視して通り過ぎ、ルドの前で頭を下げる。
「お久しぶりでございます」
ルドは椅子に座ったまま笑顔で答えた。
「お久しぶりです。今日はお忍びなので家の者には内密にお願いします」
「そうでしたか。前もって連絡をいただけておりましたら、いつもの料理をご用意いたしましたのですが」
「いえ。たまには違う料理もいいですよ。ただ、ソースの味が少し物足りないように感じました」
ルドの指摘にオーナーがすまなそうに説明した。
「さすが、お気づきになられましたか。いつもの料理に使うソースには、あんこうの肝を入れているのですが、本日は切らしておりまして……他の物で代用いたしましたが、あんこうの肝には劣ります。それで、物足りないように感じたのかと」
海産物を使った料理もあるが、ここは内陸のため痛みやすい内臓は破棄されてから運ばれてくる。そんな痛みやすい食材を特別に準備して、隠し味に使う。
しかも、あんこうの肝は名高い高級食材であるため、そう簡単に仕入れられるものでもない。それを毎回使用し、しかも定番の料理があるほどの常連で。
オンディビエラ子爵がルドと自分との扱われ方の差に、なんとなく気づき始めた。
ルドは横目でオンディビエラ子爵を見た後、視線をオーナーに戻してにこやかに話す。
「そうでしたか。今日は突然、呼び出されたので連絡ができませんでした。次は連絡してから来ます」
「はい、お待ちしております」
ルドとオーナーの親しげな様子に、オンディビエラ子爵が嫌な汗をかき始めていた。
自分でさえ、あのように親しげに声をかけられたことはない。それこそ特別な地位の者でなければ、オーナーに顔を覚えてもらえない。
そこでオンディビエラ子爵の背筋が寒くなった。この若造は、もしかしたら自分より爵位が上なのかもしれない。
嫌な予感がよぎったところで、オーナーが始めてオンデイビエラ子爵に顔を向けた。
「それにしても、この方を突然呼び出すとは無礼な……」
オーナーからの視線が非難めいたものに変わる。居心地が悪くなったオンディビエラ子爵が慌てて立ち上がった。
「で、では、そういうことだ! 考えておいてくれ!」
早々に立ち去ろうとするオンディビエラ子爵にルドの低い声が絡み付く。
「お待ち下さい、オンディビエラ子爵」
振り返ったオンディビエラ子爵にルドはにっこりと男前の笑顔を向けた。
「先ほどのことについては、後日また話し合いましょう」
「そ、そうだな。失礼する!」
オンディビエラ子爵が逃げ出すように部屋から出て行った。
「まったく、面倒なことを……」
ルドは呟きながら食事を再開する。オーナーが心配そうに声をかけた。
「手伝えることがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
「いえ、これぐらい大したことありませんから」
「あなたのお爺様には、大変お世話になっております。私の力など微々たるものですが、なにかありましたら手伝させて下さい」
「ありがとうございます」
ルドは礼を言うと鴨肉を口に入れた。
たしかにクリスが使った治療魔法は普通とは違う。しかし、それが悪魔の力とはとても思えない。
「今は急いで戻ろう」
ルドは残りの料理をさっさと食べ終えた。
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