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挿話(4)一方その頃②

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(あー……眼福眼福。それにしてもアリステラちゃんは美人だなぁ)

 カケルは今日も、城の庭園で王女のアリステラと差し向かいでお茶の時間を過ごしていた。

 勇者として認められた日には国王に謁見も果たしたものの、それ以外に特になにもすることはなかったので、美味しい食べ物を食べ、基本的には好きなように過ごしていた。

 国王と言っても、カケルから見たら、色々着飾って偉そうにしているから王様然として見えるだけであって、会社の社長とかとそう変わらないな、と思った。
 あれなら自分にだって可能だろう。

(オレが次期国王に認定される日も近いかもなぁ……ちなみにオレの今の生活を小説にするとしたら、タイトルは『勇者として召喚されたはずなのに、お城でスローライフ送ってますがなにか?』とかだな~)

 つい、そんなアホなことを考えてしまうくらい、することがないのだ。

 聞けばもう五十年以上この平和が続いているのだとか。
 ならば勇者としてのカケルのすることなど何もないだろう

 そんなことをつらつらと考えていたら、アリステラと目が合った。
 カケルがニコッと笑うと、彼女ははにかむように笑った。
 彼女の頬が薔薇色に色づいて、そこだけパッと空気が華やぐ。

(アリステラちゃん、何かいい匂いするわ……)

 思ったより距離が縮まらなくて少し焦っていたが、今の反応を見る限り脈はかなりありそうだ。

(そうだよな。もうそろそろ、オレに落ちる頃だよな)

 カケルは、イケメンに生まれたと言うだけで『ただしイケメンに限る』の特権が使い放題なのだ。
 仕事ができるイケメンと仕事ができる不細工なら、女は誰でもイケメンをとる。例え仕事ができないイケメンだとしても、仕事ができない不細工よりは圧倒的に有利だ。
 カケルはニヤッと笑いながら、クッキーを口に放り込んだ。

(邪魔者もいないし、今夜勝負をかけようかな♪)

 ユウカは今、神殿に出張している。
 手っ取り早く言うと、アリステラを口説くために邪魔なユウカを厄介払いしてある。
 といっても、カケルが無理やり押し込んだわけではない。
 前任の聖女が急にいなくなったとかで、急遽神殿へ来て欲しいと言われたのだ。
 ユウカは行くのを渋っていたのだが、逆らうと死刑になるかもしれないと脅してみたら、顔を青ざめさせながら行った。
 カケルがアリステラを口説こうとすると牽制して面倒だったので、神殿からの呼び出しは渡りに船だったと言える。

(いちいち彼女面してウザかったんだよね)

 今はそれよりアリステラだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

「アリステラちゃん、一度君とゆっくり話したいんだけど、今夜どうかな?」

 すると、アリステラは耳まで真っ赤になって……そしてコクリと頷いた。
 その瞬間、カケルには分かった。

(あ、これ絶対オレを好きになってる!)

 色男の勘──のようなもので感じる。

(キテルキテル! 今オレ、ちょーキテル!)

 カケルは騒がしい胸の高鳴りを押さえ込みつつ、彼女を舐めまわすように眺めた。

 白い肌、程よい大きさの形のよい胸。

 胸も、大きければ大きいほどいいというものではない。大きいのも嫌いじゃないが、大きすぎると服を着た時に下品になりがちだ。脱がせる時、あの巨大な下着が目に入ると少し萎えてしまうし。
 まぁ、それはカケルの持論ではあるが。

 とにかく、これから王女が手に入るなんて、本当に──何という幸運だろう。
 彼女と比べたら、今まで付き合ってきた女は全て、不良品のようなものだ。


 カケルは、アリステラのドレスの下を想像しながらゾクゾクした。

 王女なんて、ユキには一生かかっても手に入れることなどできはしないだろう。そう思うと愉快で仕方がない。

「では今夜、わたくしがカケル様の部屋を訪ねますので、お待ちくださいますか?」

(待つ待つ!一晩でも待ってる!)

 騒がしい胸中を表情に出さないようにしながら、カケルは紳士的に微笑んだ。







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