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第2話 やっぱり王子を泣かせたい!
番外編 侍女は幸せ(マリー視点(終))
しおりを挟む「う゛う゛う゛……マ゛リ゛ぃ……」
「泣きすぎですよ、お嬢様」
「だ、だい゛ずぎよ゛、じあ゛わ゛ぜに゛な゛っでね゛ぇっ……ひぐっひぐっ! ううぅっ!」
「はいはい。マリーは幸せになりますので。次はお嬢様の番ですからね」
「……ひぐっ……ひぐっ……」
私は苦笑しながら泣きじゃくるお嬢様を見つめました。
こんなに短い間に、二回も嬉しさで号泣するお嬢様を見られるとは思いませんでした。
私もまだまだ王子には負けていないことがわかって嬉しいです。
本日は快晴。
そして、私の結婚式でもあります。
そうです!
ヴィヴィとの賭けに見事勝利した私は、彼と家族になる権利と高級ボトルを勝ち取ったのです。
まぁ、あんなことがあって決闘は無効になってしまいましたし、賭けの勝敗も微妙と言えば微妙でしたけれども。
リオルド殿下は帰ってしまわれましたし、お嬢様の心を射止めたのは残念ながらジェラルド殿下の方のようでしたので……。
私の勝ちです! その件に関しては異論反論一切認めません。
「ほらお嬢様、旦那様たちの所へお戻りください!」
本当に王子サマサマでございますね。もちろん本人には言いませんけれども。
「マリー」
向こうから私を呼ぶ声がします。もうそろそろ彼の元へ行かなければ。
「マ゛リ゛ぃぃぃ……」
「全く。お側を離れるわけじゃないんですから。明日、その腫れた目やお顔の手入れをするのは誰だかわかってるんですか、お嬢様?」
「…………マ゛リ゛ぃ……」
「わかってるなら早く!戻って!ほら!」
お嬢様はこくこくと頷きながら、旦那様たちの席へと戻っていきました。
ありがたいことに旦那様や奥様も笑顔で、涙ぐんでくれています。
彼らはこの結婚を報告した時も、「マリーは私たちの娘のようなものだから私たちも嬉しい」と言って、我が事のように喜んでくださいました。
私も、心の中ではお二人を両親のようにお慕いしております。
お嬢様の隣では、金髪頭がハンカチを差し出しております。
あやつも随分と成長して……あ、ちょっとそれ、握りしめすぎてシワッシワではありませんか!
そのガサガサなハンカチで、お嬢様の繊細なお肌に傷でもつけたら許しませんからね、クソ王子!
「マリー、おいで」
そう言って優しく私の手を引くのは、大切な私の旦那様。
女として愛されなくても、男として愛することはできなくても、かけがえのない私の家族。
「綺麗だよ、マリー」
「ヴィヴィこそ素敵ですよ」
ヴィヴィは、はにかんだように笑ってその逞しい腕に私の手を絡めます。
視界の端には彼の家族が見えます。
ヴィヴィはまだ家族に対して蟠りがあるようで、彼らを式に呼ぶことを反対しましたが、私が来てもらうべきだと言って譲りませんでした。
そして彼らの様子を見るに、私たちを心の底から祝福をしているように思えます。
「厄介払いできてほっとしているのよ」
あら。彼にもどこかの誰かさんの憎まれ口が移ってしまったようですね。
でも、そう呟いた彼の口元は少し綻んでいます。
多分それは、一番近くに私だけにわかる表情。
きっと、不幸になってほしい訳ではなく。
大切な家族に幸せになって欲しいからこそ。
人は、自分の幸せを当てはめてしまおうとするのでしょう。
でも、私は。
私たちは。
人とは違う幸せの形を見つけたのです。
きっと……。
「……あなたがた二人は、いつ如何なる時も、互いを裏切ることなく、尊重し、助け合い、愛し合うことを誓いますか?」
「「誓います」」
だから、私たちは。
家族として愛し続けることを。
──誓います。
(番外編 完)
──────────
これにて本編、番外編共に完結です~。
文章も表現も構成も、本当に拙いこの作品を最後までお読みくださった方々、ブクマや感想で応援して下さった方々、本当にありがとうございました!
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番外編のマリーさん話がなかなか濃い展開で、これだけで1本別の物語になりそうですね。マリーさん好きになっちゃいました♥️
pinkmoon様♪
ご感想ありがとうございます!
軽ーい気持ちで始めた続編なのですが、番外編のマリーさんの話が意外と重いものになってしまいました(汗)
でも、重いマリーさんを好きになってくれて嬉しいです。ありがとうございます(∩´∀`∩)♡
あはははーー!
アレクサちゃんの斜め上しかない解釈が
笑える〜!
人は都合のいい解釈しかしない典型だわ〜
このままのアレクサ脳内暴走状態で
王子と殿下はどう太刀打ち(恋愛成就)
出来るんだろぅ‥
hachisuzu様♪
いつも感想ありがとうございます(*^^*)
アレクサ暴走中ですね~
ここから殿下たちは挽回できるのでしょうか?
完結までもう少しの予定なので、頑張りますね!
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pinkmoon様♪
ご感想ありがとうございます!
アレクサンドラの脳内妄想の中では大分ややこしいことになってますね…(´°ω°)チーン
手っ取り早く泣かせるために隣国に行くって言っちゃいますかね!
そんでもって、実は隣国の従兄弟のお家に遊びに行くだけだったりして(笑)
でも、泣きながら追っかけてきたらちょっとうっとおし……ゲフンゲフン。