【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~

真辺わ人

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後編 悪役令嬢を待つ、末路、終末

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「悠斗くん、体調はどう?」

 悠斗くんが熱を出して一晩が経った。
 昨日よりかは顔色も良くなっている気がする。

「昨日よりかはだいぶ良くなったよ。小春のおかげだ」
「それなら良かった。一応体温計ってね」

 私は手に持っている体温計を悠斗くんに渡す。
 三十八度を下回っていれば嬉しいんだけど……
 待つ事数秒、体温を計り終えた悠斗くんは私に体温計を渡してきた。

「うん。結構下がったね」

 体温計には三十八度丁度と表示されている。
 
「でもまだ治っては無いから安静にしなきゃダメだからね!」
「うん。分かってる」

 私は悠斗くんに毛布をかけながら言う。

「食欲はある? あるなら今日はお粥じゃなくて違うの作るよ?」
「食欲は昨日よりもあるかな。小春に任せるよ。簡単なもので良いからね」
「じゃあ今日は饂飩《うどん》にしようか。今から作って来るね」

 私はキッチンへと向かい、冷凍の饂飩を取り出し料理した。
 毎日お粥だったら飽きちゃうもんね。早く治ってほしいけど、いつ治るか分からないし、もしかしたらまた上がってきちゃうかもしれないもん。
 冷凍の饂飩は直ぐに作れる、だから直ぐに持っていける。

「悠斗くん、できたよ。冷凍の饂飩だけど、ごめんね」
「ありがとう。そんな、謝らなくても良いよ簡単なもので良いって言ったのは俺だし。それに俺は作ってもらってる側なんだから」

 私は悠斗くんのベッドの横にミニテーブルを設置して、そこに饂飩を置いた。

「ちょっと待ってね。ふー、ふー。はい、あーん」
「じ、自分で食べれるよ」

 せっかくあーんしてあげようと思ったのに、悠斗くんに断られちゃった。
 結構勇気出したのに……

「え⁉」

 私が落ち込んでいることに気づいたのか、悠斗くんは私が差し出している饂飩を食べてくれた。
 やっぱり悠斗くんは優しい。

「うん。美味しい。ありがとね、小春」

 悠斗くんは笑顔でお礼を言ってくれた。
 
「れ、冷凍の饂飩なんだから誰でも美味しくできるよ」

 私は嬉しさを抑えて笑いながらそう言う。
 
「小春が作ってくれたから美味しいんだよ。好きな人が作ってくれたものはなんでも美味しいんだよ」

 急にそんなこと言われて照れないでいるなんて私には無理だった。
 私も熱が出たのではないかというほど顔が赤くなって熱くなる。

「ん? どうかしたの? 顔赤いけど」
「な、なんでもないよ」
「まさか小春も体調悪くなったの⁉ もしかして俺が移しちゃった⁉」

 顔が赤くなったのは悠斗くんのせいだけど……でも熱も多分ないと思う。体も重くないし頭痛も無いから。

「だ、大丈夫だよ。本当に熱ないから」

 私は両手を振りながら否定する。

「本当に? でも本当に移しちゃったらダメだから後は自分で食べるよ。ありがとう」
「う、うん。じゃあ私リビングに居るから、何かあったら読んでね。早く治してね」

 そう言って私はリビングに向かった。
 
「私も熱だして悠斗くんに看病してほしいな……」

 悠斗くんが熱を出して苦しんでいるのにそんな事言っちゃダメなのは分かってる。分かってるはずなのに言ってしまった。
 熱を出して弱ってる私のためにお粥作って私に食べさせてほしいもん……
 でも、悠斗くんの熱が治っていつも通りこのリビングで、このソファーで二人で並んで座って、笑い合って話したい。
 それが今の私の一番の理想。

「明日には治っててほしいな……」
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感想 3

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みんなの感想(3件)

リコ
2024.12.20 リコ

なんとなくですが王子はヒドインとは何も無く、側近2人が籠絡されて近くに侍らす状況になったのかな?
それと馬鹿2人はヒドインの三文芝居に酔い、運命の2人のお膳立てをしようと、婚約者を悪役令嬢に仕立て上げたっていうのが正解かなと。

王子が婚約者との交流を避けていたのも、馬鹿2人が暴走して彼女を害する危険性があったから?

なんとなく王子は水面下で、馬鹿2人の解任を進めていたから、婚約者の父親が婚約破棄はできないと言ったのかな?父親の表情云々でそうかなと。

今回婚約者の心が限界を迎えていなければ、王子の問いかけに答えてハッピーエンドを迎えられたかもですが、今回は彼の問いかけに彼女を気遣う様子を悟る事無く自死。

馬鹿2人と大根女優のくだらない三文芝居が始まり、周辺の輩は罪悪感から彼女を悪に仕立て上げようとする芝居に、違和感ありまくりであったとしても同調。愛する人を失い、彼女を悪と叫ぶバカどもに失望して膨大な魔力の暴走が起こり、跡形もなく消し去ったって感じですかね?

匂わせがたくさんあったので、この完結で正解だと思います。読者の想像にお任せスタイルだと、ハッピーエンド希望者は色々考えられるので。
アッサリしていて濃い内容だったので面白かったです。

解除
葉月
2024.10.07 葉月

初めまして。面白かったです。もう少し王子が主人公に惚れ込んでいる描写があればよかったなと思いますが、好きなお話です。お気に入りに入れてまた読みにきます。

解除
あましょく
2022.05.19 あましょく

こういう終わりは好きだけど、主人公が死んでからの王子のキレ方があまりにも???
実は悪役っぽいヒロイン(?)はともかく、王子の掌返しが唐突すぎて、うーん。
できれば王子サイドがほしかったです。

真辺わ人
2022.05.19 真辺わ人

あましょく様♪

ご感想ありがとうございます!
わぁぁぁ……すみません!!!
一番最初に書いた話で、公開しているのが恥ずかしいほどなのですが……お読みいただけたなんて(汗)。
当時は蛇足だと思っていたのですが、今読み返してみると確かに王子側の話も欲しいな、と私も思いました。
幸い、完結表示もつけ忘れてる!ということで、追加します。
ただ、この王子sideは当時書いたものなので、辻褄合わせとかが甘いところも多いです。
わかってはいるものの直すとなると丸っと書き直す必要があり……ほぼほぼ当時のまま掲載してみます。
いや、でも、載せたことでさらにモヤッとさせてしまうかもしれません。
王子、思ったより自己中男でした。イメージと違っていたらごめんなさい!

しばらくしたら非公開にするかもしれません。ご容赦くださいまし……:( ;´꒳`;):

解除

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