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イザークの初恋
もう一人の幼馴染
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イザークの初恋相手はリアである。
リアは同じ村で育った一歳下の幼馴染。
妹のようだが、時に姉のようにしっかりした少女だ。
帝国の西のはずれにある寂れた田舎で暮らし、物心つく前から共にいた。
近所に他に子供がおらず、草原と海が広がる村で、いつもふたり遊んでいた。
きっと大きくなっても一緒にいるだろう。
イザークは、将来リアと結婚すると子供ながらに考えていた。
仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしていたから。
──しかしある日、村にもう一人子供がやってきた。
塔がそびえる敷地に引っ越してきたのだ。
いつもより遠出し、リアと遊んでいると塔の窓から外を眺めているその少年を見つけた。
走っていたリアは立ち止まって、塔を仰いだ。
「この間引っ越してきたひとね?」
「そうだな。──行ってみる?」
「うん」
気になって、二人で塔の傍に近寄ってみた。
「こんにちは」
少年に声をかけると、彼は塔からじっとこちらを見ながら返事をした。
「こんにちは」
リアは明るく名乗る。
「私、リアっていうの!」
リアの隣でイザークも名を告げた。
「俺はイザーク」
リアは興味津々で少年に訊く。
「あなたの名前は?」
少年は金の髪をさらさら揺らせて、答えた。
「パウル」
少年──パウルもこちらに関心をもっているようだったので、イザークは誘ってみた。
「外に出てきて、一緒に遊ばないか?」
「うん、遊ぼう!」
リアが続いて言う。
しかしパウルは表情を曇らせ、かぶりを振った。
「僕はここから出てはいけないから」
(出てはいけない……)
どうしてだろう。
彼に話を聞いてみれば、親戚と暮らしており、どうやら許可なく勝手に外に出られないらしい。
厳しい家だ。
のどかな田舎で、危険などないのに。
(まあ、崖とかは近寄ると危ないけど)
それからも、イザークとリアは塔まで行き、パウルの親戚に見つからないように彼と話すようになった。
◇◇◇◇◇
「リア、イザーク」
ある日草原で声がし、後ろを振り返ればパウルが立っていた。
「パウル!」
リアは目をぱちくりとした。
「出てきたの?」
「怒られないか?」
今までは塔の窓越しに会話していた。
家のひとに彼が注意されるんじゃないかと、リアもイザークも心配した。
パウルは小さく肩を竦める。
「気付かれると怒られるかも。見つからないように、抜け道を使った。僕も君達と遊びたくて」
リアは眉尻を下げた。
「たいへんなのね……」
パウルは家を出るにも一苦労である。
「見つからないようにしなきゃな」
イザークが言い、パウルは頷いた。
「うん」
「でもこうして会えて嬉しいわ! 一緒に遊ぼ!」
パウルは嬉しそうに笑顔になった。
その後、彼は塔から抜け出して、三人で遊ぶようになった。
パウルはどこか謎めいていたが性格は良く、同い年なこともあってすぐに仲良くなった。
三人で会うようになり、あるとき気づいた。
リアがパウルに恋をしたことに。
嫌でもわかってしまった。ずっとリアを見てきたから。
パウルを前にそわそわとし、頬が染まったりする。
パウルのほうもリアに恋をしていた。
好きになったのは、リアよりパウルが先。
でもパウルよりもずっと前に、リアを好きになったのは自分だ。
出会ったのも先である。
正直、大切なものをとられたように感じた。
けれどパウルも大事で大好きな友達となっていた。余計に入り組んだ気持ちになった。
パウルが亡くなったのは、本当に突然だった。
病で体調を崩して、あっという間に亡くなってしまったのだ。
喪失感で、恋敵がいなくなったというより、友を失った痛みで胸がひりついた。
つい数日前、三人で過ごしたばかりだったのに──。
イザークとリアは悲嘆に暮れた。
リアは同じ村で育った一歳下の幼馴染。
妹のようだが、時に姉のようにしっかりした少女だ。
帝国の西のはずれにある寂れた田舎で暮らし、物心つく前から共にいた。
近所に他に子供がおらず、草原と海が広がる村で、いつもふたり遊んでいた。
きっと大きくなっても一緒にいるだろう。
イザークは、将来リアと結婚すると子供ながらに考えていた。
仲が良く、家族ぐるみの付き合いをしていたから。
──しかしある日、村にもう一人子供がやってきた。
塔がそびえる敷地に引っ越してきたのだ。
いつもより遠出し、リアと遊んでいると塔の窓から外を眺めているその少年を見つけた。
走っていたリアは立ち止まって、塔を仰いだ。
「この間引っ越してきたひとね?」
「そうだな。──行ってみる?」
「うん」
気になって、二人で塔の傍に近寄ってみた。
「こんにちは」
少年に声をかけると、彼は塔からじっとこちらを見ながら返事をした。
「こんにちは」
リアは明るく名乗る。
「私、リアっていうの!」
リアの隣でイザークも名を告げた。
「俺はイザーク」
リアは興味津々で少年に訊く。
「あなたの名前は?」
少年は金の髪をさらさら揺らせて、答えた。
「パウル」
少年──パウルもこちらに関心をもっているようだったので、イザークは誘ってみた。
「外に出てきて、一緒に遊ばないか?」
「うん、遊ぼう!」
リアが続いて言う。
しかしパウルは表情を曇らせ、かぶりを振った。
「僕はここから出てはいけないから」
(出てはいけない……)
どうしてだろう。
彼に話を聞いてみれば、親戚と暮らしており、どうやら許可なく勝手に外に出られないらしい。
厳しい家だ。
のどかな田舎で、危険などないのに。
(まあ、崖とかは近寄ると危ないけど)
それからも、イザークとリアは塔まで行き、パウルの親戚に見つからないように彼と話すようになった。
◇◇◇◇◇
「リア、イザーク」
ある日草原で声がし、後ろを振り返ればパウルが立っていた。
「パウル!」
リアは目をぱちくりとした。
「出てきたの?」
「怒られないか?」
今までは塔の窓越しに会話していた。
家のひとに彼が注意されるんじゃないかと、リアもイザークも心配した。
パウルは小さく肩を竦める。
「気付かれると怒られるかも。見つからないように、抜け道を使った。僕も君達と遊びたくて」
リアは眉尻を下げた。
「たいへんなのね……」
パウルは家を出るにも一苦労である。
「見つからないようにしなきゃな」
イザークが言い、パウルは頷いた。
「うん」
「でもこうして会えて嬉しいわ! 一緒に遊ぼ!」
パウルは嬉しそうに笑顔になった。
その後、彼は塔から抜け出して、三人で遊ぶようになった。
パウルはどこか謎めいていたが性格は良く、同い年なこともあってすぐに仲良くなった。
三人で会うようになり、あるとき気づいた。
リアがパウルに恋をしたことに。
嫌でもわかってしまった。ずっとリアを見てきたから。
パウルを前にそわそわとし、頬が染まったりする。
パウルのほうもリアに恋をしていた。
好きになったのは、リアよりパウルが先。
でもパウルよりもずっと前に、リアを好きになったのは自分だ。
出会ったのも先である。
正直、大切なものをとられたように感じた。
けれどパウルも大事で大好きな友達となっていた。余計に入り組んだ気持ちになった。
パウルが亡くなったのは、本当に突然だった。
病で体調を崩して、あっという間に亡くなってしまったのだ。
喪失感で、恋敵がいなくなったというより、友を失った痛みで胸がひりついた。
つい数日前、三人で過ごしたばかりだったのに──。
イザークとリアは悲嘆に暮れた。
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