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オスカーの秘密
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リアがアーレンス家に来て、少し経ったある日、父が言った。
「オスカー、おまえとリアが結婚してくれると、安心なのだが」
「はい、父上。私はリアと結婚します」
丁度よい。
話そうと思っていたところだ。
この機会に掛け合い、もう父の許しを得ておこう。
「しかし、リアはおまえの妹だ」
「私は兄として、妹を大切にするつもりです。そして、大人になってからもリアを幸せにしたいです」
オスカーは真剣に告げた。
「私たちはいとこ。結婚するのに支障はなく、利点しかありません。私達が結婚することで、リアは大人になってもこの家でずっと暮らすことになりますし、まぎれもない家族となります。誰にとっても幸せなことです」
初めて会ったときから結婚すると決めている。
自分達が結ばれることが、リアにとっても自分にとっても、周りにとっても幸せなことだ。
最良だ。
自分達の結婚を望んでいる父は、深く首肯した。
「そうだな。折をみて、リアにおまえとの結婚を話そう」
「はい」
リアが自分のものになることを、オスカーは当然のこととして、まったく疑っていなかった。
◇◇◇◇◇
妹に紹介したいひとがいると言われ、オスカーとカミルは、クルム侯爵家のメラニーと、屋敷で過ごすことになった。
「お会いできて嬉しいですわ!」
着飾り、媚を売り、熱心にアピールしてくる。
メラニーは他の多くの令嬢と同じだった。
ちょっと違うのは、驚くほどのしたたかさ、野心の強さだった。
オスカーもカミルも儀礼的に笑顔で対応したものの、自己顕示欲の強い、こんな令嬢は辟易してしまう。
メラニーが帰ったあと、これからこういうことはしないでほしいとリアに話した。
「紹介をおまえに頼む令嬢は、今後もいるだろうけど、間に入ることはない。すべて断ってほしい。私達がそう言っていると相手方には伝えてくれ」
リアは頷いた。
「わかりました。ちゃんと聞かずに、ごめんなさい」
「気にすることはないが。私がいいと言う者以外、リアも付き合わないようにしなさい」
落ち込んでいるリアの頭を撫でる。
アーレンス家の人間になったことで、様々な思惑を持つ者達が寄ってくる。
気を付けないとお人好しなリアは、図々しい者達に利用されるだろう。
オスカーやカミル目当てではなく、リア自身に取り入ろうとする者も出てくる。
妹が傷つくことのないように注意が必要だ。
オスカーは煩わしさから離れ、いっそリアと外国で暮らせればと思った。
「……国外に行きたいな」
「国外、ですか?」
「ああ。芸術の発展しているツェイル王国に滞在し、暮らしてみたい」
そこでリアと生き、絵の腕を磨き、愛するリアの姿を描いて過ごすことができたら。オスカーはリアとの幸せな生活を夢見た。
父の跡を継ぐことになるし、不可能だろうけれども。
◇◇◇◇◇
ある日、皇宮に妹が呼ばれ、夕食時、父が信じられない出来事を告げた。
リアが皇太子に気に入られてしまったと。
オスカーは愕然とした。すぐには言葉が喉にひっかかり出ない。
「リアと殿下が婚約?」
「ああ、今日内々に決まったのだ」
頭が真っ白になった。
「姉上が、叔母上と同じ立場になるわけ? 今日、皇宮に行ったのはそれでだったの? 殿下にお目にかかり、婚約することに?」
目を見開いて瞬くカミルに、父は頷いた。
「そうだ」
婚約話は流れるとリアは考えていたようだが、それからすぐに、リアと皇太子の婚約は正式に決まってしまったのだった。
オスカーは荒れた。
自分は名門アーレンス家の跡継ぎであり、ほぼすべての男は蹴散らせる。
だが──皇太子は無理だ。次期皇帝である。
排除できない。
なぜリアが、皇太子と……。
(リアは私のものだ……!)
「オスカー、おまえとリアが結婚してくれると、安心なのだが」
「はい、父上。私はリアと結婚します」
丁度よい。
話そうと思っていたところだ。
この機会に掛け合い、もう父の許しを得ておこう。
「しかし、リアはおまえの妹だ」
「私は兄として、妹を大切にするつもりです。そして、大人になってからもリアを幸せにしたいです」
オスカーは真剣に告げた。
「私たちはいとこ。結婚するのに支障はなく、利点しかありません。私達が結婚することで、リアは大人になってもこの家でずっと暮らすことになりますし、まぎれもない家族となります。誰にとっても幸せなことです」
初めて会ったときから結婚すると決めている。
自分達が結ばれることが、リアにとっても自分にとっても、周りにとっても幸せなことだ。
最良だ。
自分達の結婚を望んでいる父は、深く首肯した。
「そうだな。折をみて、リアにおまえとの結婚を話そう」
「はい」
リアが自分のものになることを、オスカーは当然のこととして、まったく疑っていなかった。
◇◇◇◇◇
妹に紹介したいひとがいると言われ、オスカーとカミルは、クルム侯爵家のメラニーと、屋敷で過ごすことになった。
「お会いできて嬉しいですわ!」
着飾り、媚を売り、熱心にアピールしてくる。
メラニーは他の多くの令嬢と同じだった。
ちょっと違うのは、驚くほどのしたたかさ、野心の強さだった。
オスカーもカミルも儀礼的に笑顔で対応したものの、自己顕示欲の強い、こんな令嬢は辟易してしまう。
メラニーが帰ったあと、これからこういうことはしないでほしいとリアに話した。
「紹介をおまえに頼む令嬢は、今後もいるだろうけど、間に入ることはない。すべて断ってほしい。私達がそう言っていると相手方には伝えてくれ」
リアは頷いた。
「わかりました。ちゃんと聞かずに、ごめんなさい」
「気にすることはないが。私がいいと言う者以外、リアも付き合わないようにしなさい」
落ち込んでいるリアの頭を撫でる。
アーレンス家の人間になったことで、様々な思惑を持つ者達が寄ってくる。
気を付けないとお人好しなリアは、図々しい者達に利用されるだろう。
オスカーやカミル目当てではなく、リア自身に取り入ろうとする者も出てくる。
妹が傷つくことのないように注意が必要だ。
オスカーは煩わしさから離れ、いっそリアと外国で暮らせればと思った。
「……国外に行きたいな」
「国外、ですか?」
「ああ。芸術の発展しているツェイル王国に滞在し、暮らしてみたい」
そこでリアと生き、絵の腕を磨き、愛するリアの姿を描いて過ごすことができたら。オスカーはリアとの幸せな生活を夢見た。
父の跡を継ぐことになるし、不可能だろうけれども。
◇◇◇◇◇
ある日、皇宮に妹が呼ばれ、夕食時、父が信じられない出来事を告げた。
リアが皇太子に気に入られてしまったと。
オスカーは愕然とした。すぐには言葉が喉にひっかかり出ない。
「リアと殿下が婚約?」
「ああ、今日内々に決まったのだ」
頭が真っ白になった。
「姉上が、叔母上と同じ立場になるわけ? 今日、皇宮に行ったのはそれでだったの? 殿下にお目にかかり、婚約することに?」
目を見開いて瞬くカミルに、父は頷いた。
「そうだ」
婚約話は流れるとリアは考えていたようだが、それからすぐに、リアと皇太子の婚約は正式に決まってしまったのだった。
オスカーは荒れた。
自分は名門アーレンス家の跡継ぎであり、ほぼすべての男は蹴散らせる。
だが──皇太子は無理だ。次期皇帝である。
排除できない。
なぜリアが、皇太子と……。
(リアは私のものだ……!)
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