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第一部
協力する
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十五歳になったリアは、高級賭博場にきていた。
記憶を得てから、前世とほぼ同じように過ごしている。
一つ大きく違うのは、本来、十六歳で出会うはずだったヴェルナーと十歳で知り合ったことだ。
彼は今生でも、家族なく独り身で仕事に生き、帝都一の会員制賭博場を築き上げた。
帝都中の上流階級の人間が集まり、ここに通うのは、帝国の紳士たちのステータスで、憧れとなっている。
他国の王族も利用するほどだ。
営業前、眩く煌めく賭博場の二階で、リアはヴェルナーと話をしていた。
彼の蒐集した美術品が飾られている。
緩やかなカーブを描く吹き抜けの天井には、豪華絢爛なシャンデリアが下がり、一階には、ゲーム用のテーブルが置かれている。
建物内には、幾つもの秘密通路がある。
営業前なので客はおらず、従業員のみ。ここでは多くの従業員が働いている。
「昔から君は、変わってたけどな。十代前半で賭博場に出入りするんだから」
ヴェルナーは、艶やかなテーブルの上で頬杖をつく。
彼に来るんじゃないと言われていたが、リアが度々彼の前をうろうろしたので、彼は根負けした。
リアは賭博はしないが、ヴェルナーからカードの扱い方などは教えてもらった。
「おれと君は将来、旅に出ると?」
リアは笑顔で頷く。
「皇太子殿下に婚約を破棄されるって?」
「そうよ」
「君はおれが帝都一の賭博場を築くっていうのは、当てたけど」
今生、リアは十歳で南の地区の状況をまざまざと目にし、物乞いや、劣悪で過酷な労働のもとにおかれている者、虐げられた子供たちを助けられないかと思った。
ヴェルナーは幼少時にかなり苦労したようで、辛い目に遭っている人々を救いたいと考えていた。
リアとヴェルナーは協力し合った。
賭博場の経営者で、魔術探偵でもあるヴェルナーは、貴族の交友関係はもちろん、資産状況など、帝都の紳士の情報に通じている。
彼はそれを利用、リアは有力者である養父に働きかけ、法案を幾つか成立させ、今は五年前より、南地区の治安は大分よくなった。
あのときスリをしていた少年も、今はこの賭博場の従業員として真面目に勤務している。
「自分の周りに関することについて、予知夢をみたって、君は言うが……」
そうヴェルナーには説明している。
二度目の人生を送っているとはさすがに、話していなかった。
きっと信じてもらえないだろう。
「ええ。私、婚約破棄されるの。そのあと、人買いに捕まってしまう。それを助けてほしいのよ」
ヴェルナーは呆れたようにリアを眺める。
「君なら、助けがなくても逃げられるだろ? 『風』術者だし、それに君の魔力は変わってて他の術者よりも強い」
リアは『闇』術者であることを前世同様、隠していた。
両親に言われていたからだ。
誰にも話してはいけないと。
ヴェルナーが信頼できないわけではないが、それでも亡くなった両親との約束を守った。
彼は優秀な魔術探偵であるので、魔力を抑え、気を付けている。
心を落ち着かせてから、リアは返事をした。
「でもそのときはなぜか、駄目なのよね」
人買いに捕まってしまったのだ。
自暴自棄になっていた直後だったことも、関係しているのだろうか。
(婚約破棄がショックだったから、それで力が出なかった……?)
しかし今は、心構えができている。
今回は婚約破棄を突き付けられても、傷つくことはないだろう。
波風立てず、公爵家に迷惑をかけず帝都を離れるベストのタイミングは、婚約破棄されてすぐ。
たとえ人買いに捕まっても、自分だけでも逃げられるとは思うのだが、心配なことがある。
記憶を得てから、前世とほぼ同じように過ごしている。
一つ大きく違うのは、本来、十六歳で出会うはずだったヴェルナーと十歳で知り合ったことだ。
彼は今生でも、家族なく独り身で仕事に生き、帝都一の会員制賭博場を築き上げた。
帝都中の上流階級の人間が集まり、ここに通うのは、帝国の紳士たちのステータスで、憧れとなっている。
他国の王族も利用するほどだ。
営業前、眩く煌めく賭博場の二階で、リアはヴェルナーと話をしていた。
彼の蒐集した美術品が飾られている。
緩やかなカーブを描く吹き抜けの天井には、豪華絢爛なシャンデリアが下がり、一階には、ゲーム用のテーブルが置かれている。
建物内には、幾つもの秘密通路がある。
営業前なので客はおらず、従業員のみ。ここでは多くの従業員が働いている。
「昔から君は、変わってたけどな。十代前半で賭博場に出入りするんだから」
ヴェルナーは、艶やかなテーブルの上で頬杖をつく。
彼に来るんじゃないと言われていたが、リアが度々彼の前をうろうろしたので、彼は根負けした。
リアは賭博はしないが、ヴェルナーからカードの扱い方などは教えてもらった。
「おれと君は将来、旅に出ると?」
リアは笑顔で頷く。
「皇太子殿下に婚約を破棄されるって?」
「そうよ」
「君はおれが帝都一の賭博場を築くっていうのは、当てたけど」
今生、リアは十歳で南の地区の状況をまざまざと目にし、物乞いや、劣悪で過酷な労働のもとにおかれている者、虐げられた子供たちを助けられないかと思った。
ヴェルナーは幼少時にかなり苦労したようで、辛い目に遭っている人々を救いたいと考えていた。
リアとヴェルナーは協力し合った。
賭博場の経営者で、魔術探偵でもあるヴェルナーは、貴族の交友関係はもちろん、資産状況など、帝都の紳士の情報に通じている。
彼はそれを利用、リアは有力者である養父に働きかけ、法案を幾つか成立させ、今は五年前より、南地区の治安は大分よくなった。
あのときスリをしていた少年も、今はこの賭博場の従業員として真面目に勤務している。
「自分の周りに関することについて、予知夢をみたって、君は言うが……」
そうヴェルナーには説明している。
二度目の人生を送っているとはさすがに、話していなかった。
きっと信じてもらえないだろう。
「ええ。私、婚約破棄されるの。そのあと、人買いに捕まってしまう。それを助けてほしいのよ」
ヴェルナーは呆れたようにリアを眺める。
「君なら、助けがなくても逃げられるだろ? 『風』術者だし、それに君の魔力は変わってて他の術者よりも強い」
リアは『闇』術者であることを前世同様、隠していた。
両親に言われていたからだ。
誰にも話してはいけないと。
ヴェルナーが信頼できないわけではないが、それでも亡くなった両親との約束を守った。
彼は優秀な魔術探偵であるので、魔力を抑え、気を付けている。
心を落ち着かせてから、リアは返事をした。
「でもそのときはなぜか、駄目なのよね」
人買いに捕まってしまったのだ。
自暴自棄になっていた直後だったことも、関係しているのだろうか。
(婚約破棄がショックだったから、それで力が出なかった……?)
しかし今は、心構えができている。
今回は婚約破棄を突き付けられても、傷つくことはないだろう。
波風立てず、公爵家に迷惑をかけず帝都を離れるベストのタイミングは、婚約破棄されてすぐ。
たとえ人買いに捕まっても、自分だけでも逃げられるとは思うのだが、心配なことがある。
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