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第一部
幼馴染2
しおりを挟む父は元々、母の家に仕えていた。
意に沿わない結婚をさせられそうな母をさらって逃げたのだ。
両親は、子供のリアが照れてしまうくらい、深く愛し合っていてとても仲が良い。
リアも父のようなひとと、将来結婚をしたいと思う。
「母さんが、リアのこと褒めてた。明るく元気で働き者だって。いつもリアに手伝ってもらって助かるって」
村では、ほぼ自給自足の生活だ。
イザークは母親と二人暮らしで、リアは彼の家の手伝いもしていた。
「二人とも親がいて、いいね……」
パウルが寂しそうに呟く。
彼には親がいなかった。
今、親戚と一緒に暮らしているが、ほかの村人と接するのをパウルは禁じられているらしい。
こうして外に出られるのも、目を盗んでなのだった。
「親戚のひとに意地悪をされているの?」
心配になってリアが訊くと、パウルはかぶりを振って否定した。
「ううん、そんなことはないよ。彼らは親切だ。でも外に自由に出ることを、僕は許してもらえないから。行動が制限されているんだ。愛を与えてくれる親がいて、君達が羨ましい」
リアとイザークは顔を見合わせた。
パウルと最初に出逢ったのは、二年前で、塔の窓から外を眺めていたパウルに、リアとイザークが声をかけたのがきっかけだ。
一緒に遊ぼうと誘ったら、彼は抜け道を使って、塔から出てきた。
それからよく、こうして遊んでいる。
「君達がいるから、今は全然寂しくないけれど。それまでは結構辛かったかな」
リアが心配に思うと、パウルは安心させるように笑んだ。
「で、リアが作った花の冠は僕とイザークのどちらがもらえる?」
首を傾げて尋ねられ、リアは少し考えたあと、笑顔で答えた。
「同時だったから、じゃ、二人ともに!」
丘を降りて、草原に戻ったリアは、母から作り方を教わった花の冠をもうひとつ編んだ。
パウルとイザークの頭にそれをのせる。
「嬉しい、リア」
「ありがとう」
「いつか絶対、二人とかけっこして勝って、私が作ってもらう!」
「うん」
「わかった」
パウルとイザークは、本気で宣言するリアにくすくすと笑って頷いた。
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