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どうも、国対抗戦です
どうも、帰還です
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「……んあ? 終わったかー?」
閉じた目蓋をこすりながら顔を上げたシラ。頬に机の痕がついている。大会中も寝ていたというのに、また本気で寝ていたらしい。
「今まで寝てたってのも驚きだけど…」
「なんでこのタイミングで起きたんですか?」
シラのことなどお見通しだと言うように、フレイとクレアは起き抜けのシラに尋ねた。シラなら皆が立ち去っても起きなかったとして、まったく不思議ではないというのに。
「おー…今念話があってなー。明日のエキシビションマッチは中止だと。団体戦も中止だから帰ってこいだとよー」
「ええー…せっかく特訓したのに…」
合宿の成果を見せたかった面々はフレイを筆頭に膨れっ面だ。
「おー。ま、魔族が来てあと1年で侵略してくるとなりゃ大会なんてしてる場合じゃないって判断だろうなー」
「え!? 大会中止っすか!?」
しかし、念話がなければまだ寝ていただろうシラの帰る発言に最も大きく反応したのはミコトだった。
エキシビションマッチのために寂しがり屋の冥王を説き伏せて人間界へやって来たのだから、その落胆は推して知るべしである。
「ボクたち…なんの…ため…」
「会長以外は出場しなかったのに、なんのために来たのかわからないわよね」
落胆を引きずるペタに同意して頷くリズは、さらっと勇のことを忘れている。何気に酷い。
「ま、そのへんは埋め合わせしてもらえー。夏休みに旅行連れてってもらうとかなー」
「和国スイーツの旅、よろしく」
教師としての職務諸々を放棄したシラの発言にすかさず乗ったティティスは、ちょうどポップコーンキャラメル味を食べ終えた。そしてマドレーヌへ手を伸ばす。一体どれだけ食べる気だ。
「あっ、オレは稽古つけてほしいな。クレアもだろ?」
「俺たちまで埋め合わせ頼んでいいのか…?」
「かまへんかまへん、この際なんでも頼んどき」
「ボクも…かいちょ…練習…」
「僕は練習じゃなくて――」
「あんたは試合に出たじゃない」
「勇者なら鍛えなさいよ」
フレイも注文し、クレアが迷い、勝手にミケルが決めて、ペタもルイスとの練習を希望したところで割り込んだ勇は、ティティスとリズの正論に論破された。
普段からルイスに鍛えられている勇としてはルイスと練習など今更したくなかったのだろうが、成果が出ていない以上、鍛錬しろというリズの意見は正しい。
「勇者は適性と補正があるはずなのに、なぜ成果が出ないのか…」
アゲハが小声で呟く。
「まあ大方、あのあんちゃんの言うことまともに聞いてないんだろぉ、あの様子じゃあさぁ」
いつの間にか隣に来ていたミコトが応じる。
「まだいたのか。さっさと帰らないと後が怖いぞ」
「それを考えないようにしてたのにっ!」
自称友人思いなアゲハは、今頃冥王は寂しがって泣いている……とはいかずとも、暇つぶしがなくて悲しんでいるだろうと思いを馳せてみた。
「あれ? そういえば最後の英雄はいつまでいるんだ?」
「フレイ、今それを言ったら早く帰ってほしいみたいに聞こえるだろ」
「黒ずくめ…あやし…」
「不審者に用はないし、さっさと帰ってもらっていいわよね」
「俺、泣いちゃうんだぞ……シクシク…」
「泣き声を語るなんて、英雄らしくないわね」
「英雄って変な奴なんやな」
フレイたち1年生に詰められて泣き真似をしたミコトは、ティティスとミケルにとどめを刺された。
「もう俺、帰る…」
ミコトがカタコトで言うと、足元に紫色の穴があいた。そのままストンと落ちて消える。
「え?」
「何今の?」
生徒たちは消え方にざわざわするが、アゲハは冥界へ落ちたのだとわかるし、ルイスは興味がないし、はじめは警戒心を向けていたシラも怪しむのがめんどくさい域に達したようだ。
つまり、誰もミコトがいなくなったことについては何も言わなかった。英雄なはずなのに不憫である。
「んじゃ、俺たちも帰ろうか。【転移】」
もう収拾のつかなくなった集団を、ルイスがまとめてセイントの学校まで転移させた。
「ティティーとミックは、一応生徒会として臨時会議をしないといけないから俺と一緒に来てね。勇者は王城に呼ばれるだろうし、先生も……まあいいや。1年生たちは寮に戻ってゆっくりしなよ」
シラが全帝だと明かすわけにはいかないから、と黙ったルイスは、転移したにも関わらず立ったまま寝ているシラを見て口を閉ざした。それ以外はとても爽やかで、頼れる会長である。
「おー。お前らは別の大会に呼ばれるかもだしなー。んじゃ【転移】」
「え?」
「別の大会?」
「ちょっと先生!」
ほんの一瞬だけ目を開けたシラは意味深なセリフだけ残して、恐らく教員寮へと転移していった。
残った生徒たちは深い溜め息をつく。
「リズ、これ余ったお菓子。あげるわ。みんなで食べて」
リズが慰めるように言った。上級生でも別の大会が何かはわかっていないようだ。とすると、学園に関するものではないらしい。
「わあ、ありがとうございます! じゃあこのあと食堂でおやつパーティーね」
「え、リズまだ食うの?」
無邪気に喜んだリズはしっかりとティティスに染まってきている。
「全員来なさいよ。アゲハもだから」
「いや、悪いが今日はやることがある。皆で楽しんでくれ」
「そう…? じゃ、また明日ね」
急に降って湧いた休みにすることってなんだ? と訝しみつつも、休みだからやりたいこともあるよな、と約1名を除いた全員が空気を読んだ。
「じゃあアゲハ、久しぶりに一緒に――」
「やることがあるって言っただろ。【転移】」
「え、あ、……じゃあ」
妙にアゲハに追い縋る勇はにべもなく一蹴されて逃げられ、今度はフレイたちに向き直った。
フレイたちはついてこられるのが嫌で蜘蛛の子を散らすように逃げた。気づけばルイスたちも引き上げている。
勇者は1人、ぽつんと夕焼けの校門前に残された。
そんな憐れな様子を見届けることなくアゲハがやって来ていたのは、もちろん魔界の魔王城だった。
閉じた目蓋をこすりながら顔を上げたシラ。頬に机の痕がついている。大会中も寝ていたというのに、また本気で寝ていたらしい。
「今まで寝てたってのも驚きだけど…」
「なんでこのタイミングで起きたんですか?」
シラのことなどお見通しだと言うように、フレイとクレアは起き抜けのシラに尋ねた。シラなら皆が立ち去っても起きなかったとして、まったく不思議ではないというのに。
「おー…今念話があってなー。明日のエキシビションマッチは中止だと。団体戦も中止だから帰ってこいだとよー」
「ええー…せっかく特訓したのに…」
合宿の成果を見せたかった面々はフレイを筆頭に膨れっ面だ。
「おー。ま、魔族が来てあと1年で侵略してくるとなりゃ大会なんてしてる場合じゃないって判断だろうなー」
「え!? 大会中止っすか!?」
しかし、念話がなければまだ寝ていただろうシラの帰る発言に最も大きく反応したのはミコトだった。
エキシビションマッチのために寂しがり屋の冥王を説き伏せて人間界へやって来たのだから、その落胆は推して知るべしである。
「ボクたち…なんの…ため…」
「会長以外は出場しなかったのに、なんのために来たのかわからないわよね」
落胆を引きずるペタに同意して頷くリズは、さらっと勇のことを忘れている。何気に酷い。
「ま、そのへんは埋め合わせしてもらえー。夏休みに旅行連れてってもらうとかなー」
「和国スイーツの旅、よろしく」
教師としての職務諸々を放棄したシラの発言にすかさず乗ったティティスは、ちょうどポップコーンキャラメル味を食べ終えた。そしてマドレーヌへ手を伸ばす。一体どれだけ食べる気だ。
「あっ、オレは稽古つけてほしいな。クレアもだろ?」
「俺たちまで埋め合わせ頼んでいいのか…?」
「かまへんかまへん、この際なんでも頼んどき」
「ボクも…かいちょ…練習…」
「僕は練習じゃなくて――」
「あんたは試合に出たじゃない」
「勇者なら鍛えなさいよ」
フレイも注文し、クレアが迷い、勝手にミケルが決めて、ペタもルイスとの練習を希望したところで割り込んだ勇は、ティティスとリズの正論に論破された。
普段からルイスに鍛えられている勇としてはルイスと練習など今更したくなかったのだろうが、成果が出ていない以上、鍛錬しろというリズの意見は正しい。
「勇者は適性と補正があるはずなのに、なぜ成果が出ないのか…」
アゲハが小声で呟く。
「まあ大方、あのあんちゃんの言うことまともに聞いてないんだろぉ、あの様子じゃあさぁ」
いつの間にか隣に来ていたミコトが応じる。
「まだいたのか。さっさと帰らないと後が怖いぞ」
「それを考えないようにしてたのにっ!」
自称友人思いなアゲハは、今頃冥王は寂しがって泣いている……とはいかずとも、暇つぶしがなくて悲しんでいるだろうと思いを馳せてみた。
「あれ? そういえば最後の英雄はいつまでいるんだ?」
「フレイ、今それを言ったら早く帰ってほしいみたいに聞こえるだろ」
「黒ずくめ…あやし…」
「不審者に用はないし、さっさと帰ってもらっていいわよね」
「俺、泣いちゃうんだぞ……シクシク…」
「泣き声を語るなんて、英雄らしくないわね」
「英雄って変な奴なんやな」
フレイたち1年生に詰められて泣き真似をしたミコトは、ティティスとミケルにとどめを刺された。
「もう俺、帰る…」
ミコトがカタコトで言うと、足元に紫色の穴があいた。そのままストンと落ちて消える。
「え?」
「何今の?」
生徒たちは消え方にざわざわするが、アゲハは冥界へ落ちたのだとわかるし、ルイスは興味がないし、はじめは警戒心を向けていたシラも怪しむのがめんどくさい域に達したようだ。
つまり、誰もミコトがいなくなったことについては何も言わなかった。英雄なはずなのに不憫である。
「んじゃ、俺たちも帰ろうか。【転移】」
もう収拾のつかなくなった集団を、ルイスがまとめてセイントの学校まで転移させた。
「ティティーとミックは、一応生徒会として臨時会議をしないといけないから俺と一緒に来てね。勇者は王城に呼ばれるだろうし、先生も……まあいいや。1年生たちは寮に戻ってゆっくりしなよ」
シラが全帝だと明かすわけにはいかないから、と黙ったルイスは、転移したにも関わらず立ったまま寝ているシラを見て口を閉ざした。それ以外はとても爽やかで、頼れる会長である。
「おー。お前らは別の大会に呼ばれるかもだしなー。んじゃ【転移】」
「え?」
「別の大会?」
「ちょっと先生!」
ほんの一瞬だけ目を開けたシラは意味深なセリフだけ残して、恐らく教員寮へと転移していった。
残った生徒たちは深い溜め息をつく。
「リズ、これ余ったお菓子。あげるわ。みんなで食べて」
リズが慰めるように言った。上級生でも別の大会が何かはわかっていないようだ。とすると、学園に関するものではないらしい。
「わあ、ありがとうございます! じゃあこのあと食堂でおやつパーティーね」
「え、リズまだ食うの?」
無邪気に喜んだリズはしっかりとティティスに染まってきている。
「全員来なさいよ。アゲハもだから」
「いや、悪いが今日はやることがある。皆で楽しんでくれ」
「そう…? じゃ、また明日ね」
急に降って湧いた休みにすることってなんだ? と訝しみつつも、休みだからやりたいこともあるよな、と約1名を除いた全員が空気を読んだ。
「じゃあアゲハ、久しぶりに一緒に――」
「やることがあるって言っただろ。【転移】」
「え、あ、……じゃあ」
妙にアゲハに追い縋る勇はにべもなく一蹴されて逃げられ、今度はフレイたちに向き直った。
フレイたちはついてこられるのが嫌で蜘蛛の子を散らすように逃げた。気づけばルイスたちも引き上げている。
勇者は1人、ぽつんと夕焼けの校門前に残された。
そんな憐れな様子を見届けることなくアゲハがやって来ていたのは、もちろん魔界の魔王城だった。
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