83 / 99
どうも、学内対抗戦です
どうも、第2次戦ですパート2
しおりを挟む
「圧巻の生徒会対決のお次はー…勇者対ミケル選手!」
勇とミケルがリングに上がると、歓声は2つに割れた。勇を応援する女子、ミケルの名を呼ぶ男子。
「ついに学園全体が勇者ハーレムになったか」
「世も末だね」
さり気なくアゲハの隣に戻ったルイス。押しのけられたクレアは文句を言わず、ただ勝利を祝福した。ルイスは嘘くさい笑顔で応えて、またアゲハに向き直る。
しかしアゲハが発したのは祝福の言葉ではなかった。
「ニコラは?」
「一応医務室に行ったよ。ティティーの容態も見てくれるそうだ。俺はこっちを見ないといけないからね」
「そうか」
ルイスはアゲハに心配されているニコライにちょっとだけ妬いた。自分のことは心配してくれないしおめでとうとも言ってくれないのに…と女々しい思考に陥る一方で、依頼を受けたときにもっと酷い怪我をして、自力で一瞬にして回復し打ち勝った姿を見せてきただけに、それはそれで信頼の証かとも思ってしまう。アゲハに対する色眼鏡の色が濃い。
「見るって言っても、会長なら対策いらないですよね?」
一応不安げに確認を取るクレア。ルイスが勇者の戦いを見るのは相手として警戒してのことだと思っているらしい。
「当然…と言いたいけど、残念ながら対策はいるかもね」
「え?」
そもそもミケルが勝てば、勇とルイスが戦う場面など訪れない。
それにも関わらず「対策」ということは、ルイスはミケルが負ける想定をしていることになる。
「勇者はこの1週間、ギルドで特訓していたらしい。20年もだ」
「えっ…?」
時間を操作できる部屋を使える限り使って、という意味だろう。時間を操作し外の1週間を中の20年にして…………それでこれ?
クレアとアゲハの顔を読み取ったルイスは苦笑した。
「言いたいことはわかるけど、少なくとも、もう勇者は魔力を手にして数ヶ月のひよっこではないし、魔力量もはじめの一億程度じゃなくなっているだろうね。でなければティティーは負けないし、ミックもここまで追い詰められない」
その言葉でリングの上に視線を戻せば、無傷の勇とボロボロのミケルが開始から変わらない位置に立っていた。
躱す間もなく勇が大技を連発しまくって、ミケルが防戦一方を強いられ今に至った経緯が手に取るようにわかる。
「ほら、制御の指輪に制御の腕輪、ネックレスまで付けてあれだ。10億なんてレベルも超えてるかもしれないね」
「10億って、かつて人間界を滅ぼそうとした大魔王、プシューケ・ヴィルモンティーノが10億って言われてますよね?」
「つまりそういうことだよ。勇者は今、世界を滅ぼしかねない力を持っている」
クレアとルイスが深刻に話す横で、アゲハだけは首を捻った。
唐突に持ち出された前世の自分の話題。あの頃の自分の魔力量は10億程度だっただろうか。そんなに少なくはないはずだが。
アゲハの回想はさておき、それほど人間界で「10億」の魔力量はあり得ないものなのである。
「ティティーの顔…。オレはお前を許さん…【デッドブレス】」
魔力が尽きげっそりとしたティティスの顔を思い出して怒り狂ったミケルは、迫りくるレーザーをシールドで受け止めるのを諦め、身を晒しながら、当たった者の命を奪う風属性最上級の禁忌魔法を使った。
極太レーザーに焼かれるミケルと、風に命を攫われる勇。
「お前ら防死結界があるからってほいほい殺すなよー。さすがに禁忌魔法は反則取らねえとなー」
2人の間に割って入ったのは、普段死んでいる、いや今も死んだ目をしているシラだった。死んでいるのに、今日はかつてないほどに教師然としている。
シラは片手に勇、もう片方にミケルを抱えている。死亡と致命傷。禁忌魔法でなければミケルの勝ちだと言えたのに。
そんなことをシラが考えている間に、勇は蘇生してピクリと動いた。防死結界に守られたのだ。一方のミケルは気を失ったままだ。こちらは医療班に任せることにする。
禁忌魔法は使えば犯罪、学ぶことすら禁止されている魔法だ。それを使ってでもティティスの仇討ちをしたかったミケルの執念だけは、男気があったのかもしれない。
もちろんアゲハ的には許容範囲、むしろナイスなチョイスだった。
「……ティティーには、ミックはきちんと仇を討ったと伝えよう」
「えーっと……これは…ミケル選手の反則負け! 勇者が決勝に進出…かあ……。次はアゲハ選手がシードで…だから、我らが生徒会長と勇者、勇者の巻き込まれの三つ巴の戦いだあ! はあ…」
ルイスの声に、無理やりテンションを上げようとしてのりきれなかった司会の声がかぶさった。
「ミックの分も叩きのめすか」
拳を握りしめたルイスの横で、アゲハは勇をどう扱うべきか迷っていた。
勇とミケルがリングに上がると、歓声は2つに割れた。勇を応援する女子、ミケルの名を呼ぶ男子。
「ついに学園全体が勇者ハーレムになったか」
「世も末だね」
さり気なくアゲハの隣に戻ったルイス。押しのけられたクレアは文句を言わず、ただ勝利を祝福した。ルイスは嘘くさい笑顔で応えて、またアゲハに向き直る。
しかしアゲハが発したのは祝福の言葉ではなかった。
「ニコラは?」
「一応医務室に行ったよ。ティティーの容態も見てくれるそうだ。俺はこっちを見ないといけないからね」
「そうか」
ルイスはアゲハに心配されているニコライにちょっとだけ妬いた。自分のことは心配してくれないしおめでとうとも言ってくれないのに…と女々しい思考に陥る一方で、依頼を受けたときにもっと酷い怪我をして、自力で一瞬にして回復し打ち勝った姿を見せてきただけに、それはそれで信頼の証かとも思ってしまう。アゲハに対する色眼鏡の色が濃い。
「見るって言っても、会長なら対策いらないですよね?」
一応不安げに確認を取るクレア。ルイスが勇者の戦いを見るのは相手として警戒してのことだと思っているらしい。
「当然…と言いたいけど、残念ながら対策はいるかもね」
「え?」
そもそもミケルが勝てば、勇とルイスが戦う場面など訪れない。
それにも関わらず「対策」ということは、ルイスはミケルが負ける想定をしていることになる。
「勇者はこの1週間、ギルドで特訓していたらしい。20年もだ」
「えっ…?」
時間を操作できる部屋を使える限り使って、という意味だろう。時間を操作し外の1週間を中の20年にして…………それでこれ?
クレアとアゲハの顔を読み取ったルイスは苦笑した。
「言いたいことはわかるけど、少なくとも、もう勇者は魔力を手にして数ヶ月のひよっこではないし、魔力量もはじめの一億程度じゃなくなっているだろうね。でなければティティーは負けないし、ミックもここまで追い詰められない」
その言葉でリングの上に視線を戻せば、無傷の勇とボロボロのミケルが開始から変わらない位置に立っていた。
躱す間もなく勇が大技を連発しまくって、ミケルが防戦一方を強いられ今に至った経緯が手に取るようにわかる。
「ほら、制御の指輪に制御の腕輪、ネックレスまで付けてあれだ。10億なんてレベルも超えてるかもしれないね」
「10億って、かつて人間界を滅ぼそうとした大魔王、プシューケ・ヴィルモンティーノが10億って言われてますよね?」
「つまりそういうことだよ。勇者は今、世界を滅ぼしかねない力を持っている」
クレアとルイスが深刻に話す横で、アゲハだけは首を捻った。
唐突に持ち出された前世の自分の話題。あの頃の自分の魔力量は10億程度だっただろうか。そんなに少なくはないはずだが。
アゲハの回想はさておき、それほど人間界で「10億」の魔力量はあり得ないものなのである。
「ティティーの顔…。オレはお前を許さん…【デッドブレス】」
魔力が尽きげっそりとしたティティスの顔を思い出して怒り狂ったミケルは、迫りくるレーザーをシールドで受け止めるのを諦め、身を晒しながら、当たった者の命を奪う風属性最上級の禁忌魔法を使った。
極太レーザーに焼かれるミケルと、風に命を攫われる勇。
「お前ら防死結界があるからってほいほい殺すなよー。さすがに禁忌魔法は反則取らねえとなー」
2人の間に割って入ったのは、普段死んでいる、いや今も死んだ目をしているシラだった。死んでいるのに、今日はかつてないほどに教師然としている。
シラは片手に勇、もう片方にミケルを抱えている。死亡と致命傷。禁忌魔法でなければミケルの勝ちだと言えたのに。
そんなことをシラが考えている間に、勇は蘇生してピクリと動いた。防死結界に守られたのだ。一方のミケルは気を失ったままだ。こちらは医療班に任せることにする。
禁忌魔法は使えば犯罪、学ぶことすら禁止されている魔法だ。それを使ってでもティティスの仇討ちをしたかったミケルの執念だけは、男気があったのかもしれない。
もちろんアゲハ的には許容範囲、むしろナイスなチョイスだった。
「……ティティーには、ミックはきちんと仇を討ったと伝えよう」
「えーっと……これは…ミケル選手の反則負け! 勇者が決勝に進出…かあ……。次はアゲハ選手がシードで…だから、我らが生徒会長と勇者、勇者の巻き込まれの三つ巴の戦いだあ! はあ…」
ルイスの声に、無理やりテンションを上げようとしてのりきれなかった司会の声がかぶさった。
「ミックの分も叩きのめすか」
拳を握りしめたルイスの横で、アゲハは勇をどう扱うべきか迷っていた。
31
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる