異世界へ追放された魔王、勇者召喚に巻き込まれて元の世界で無双する

朔日

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どうも、学内対抗戦です

どうも、第2次戦ですパート2

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「圧巻の生徒会対決のお次はー…勇者対ミケル選手!」

 勇とミケルがリングに上がると、歓声は2つに割れた。勇を応援する女子、ミケルの名を呼ぶ男子。

「ついに学園全体が勇者ハーレムになったか」

「世も末だね」

 さり気なくアゲハの隣に戻ったルイス。押しのけられたクレアは文句を言わず、ただ勝利を祝福した。ルイスは嘘くさい笑顔で応えて、またアゲハに向き直る。
 しかしアゲハが発したのは祝福の言葉ではなかった。

「ニコラは?」

「一応医務室に行ったよ。ティティーの容態も見てくれるそうだ。俺はこっちを見ないといけないからね」

「そうか」

 ルイスはアゲハに心配されているニコライにちょっとだけ妬いた。自分のことは心配してくれないしおめでとうとも言ってくれないのに…と女々しい思考に陥る一方で、依頼を受けたときにもっと酷い怪我をして、自力で一瞬にして回復し打ち勝った姿を見せてきただけに、それはそれで信頼の証かとも思ってしまう。アゲハに対する色眼鏡の色が濃い。

「見るって言っても、会長なら対策いらないですよね?」

 一応不安げに確認を取るクレア。ルイスが勇者の戦いを見るのは相手として警戒してのことだと思っているらしい。

「当然…と言いたいけど、残念ながら対策はいるかもね」

「え?」

 そもそもミケルが勝てば、勇とルイスが戦う場面など訪れない。
 それにも関わらず「対策」ということは、ルイスはミケルが負ける想定をしていることになる。

「勇者はこの1週間、ギルドで特訓していたらしい。20年もだ」

「えっ…?」

 時間を操作できる部屋を使える限り使って、という意味だろう。時間を操作し外の1週間を中の20年にして…………それでこれ?

 クレアとアゲハの顔を読み取ったルイスは苦笑した。

「言いたいことはわかるけど、少なくとも、もう勇者は魔力を手にして数ヶ月のひよっこではないし、魔力量もはじめの一億程度じゃなくなっているだろうね。でなければティティーは負けないし、ミックもここまで追い詰められない」

 その言葉でリングの上に視線を戻せば、無傷の勇とボロボロのミケルが開始から変わらない位置に立っていた。
 躱す間もなく勇が大技を連発しまくって、ミケルが防戦一方を強いられ今に至った経緯が手に取るようにわかる。

「ほら、制御の指輪に制御の腕輪、ネックレスまで付けてあれだ。10億なんてレベルも超えてるかもしれないね」

「10億って、かつて人間界を滅ぼそうとした大魔王、プシューケ・ヴィルモンティーノが10億って言われてますよね?」

「つまりそういうことだよ。勇者は今、世界を滅ぼしかねない力を持っている」

 クレアとルイスが深刻に話す横で、アゲハだけは首を捻った。

 唐突に持ち出された前世の自分の話題。あの頃の自分の魔力量は10億程度だっただろうか。そんなに少なくはないはずだが。

 アゲハの回想はさておき、それほど人間界で「10億」の魔力量はあり得ないものなのである。

「ティティーの顔…。オレはお前を許さん…【デッドブレス】」

 魔力が尽きげっそりとしたティティスの顔を思い出して怒り狂ったミケルは、迫りくるレーザーをシールドで受け止めるのを諦め、身を晒しながら、当たった者の命を奪う風属性最上級の禁忌魔法を使った。

 極太レーザーに焼かれるミケルと、風に命を攫われる勇。

「お前ら防死結界があるからってほいほい殺すなよー。さすがに禁忌魔法は反則取らねえとなー」

 2人の間に割って入ったのは、普段死んでいる、いや今も死んだ目をしているシラだった。死んでいるのに、今日はかつてないほどに教師然としている。

 シラは片手に勇、もう片方にミケルを抱えている。死亡と致命傷。禁忌魔法でなければミケルの勝ちだと言えたのに。
 そんなことをシラが考えている間に、勇は蘇生してピクリと動いた。防死結界に守られたのだ。一方のミケルは気を失ったままだ。こちらは医療班に任せることにする。

 禁忌魔法は使えば犯罪、学ぶことすら禁止されている魔法だ。それを使ってでもティティスの仇討ちをしたかったミケルの執念だけは、男気があったのかもしれない。
 もちろんアゲハ的には許容範囲、むしろナイスなチョイスだった。

「……ティティーには、ミックはきちんと仇を討ったと伝えよう」

「えーっと……これは…ミケル選手の反則負け! 勇者が決勝に進出…かあ……。次はアゲハ選手がシードで…だから、我らが生徒会長と勇者、勇者の巻き込まれの三つ巴の戦いだあ! はあ…」

 ルイスの声に、無理やりテンションを上げようとしてのりきれなかった司会の声がかぶさった。

「ミックの分も叩きのめすか」

 拳を握りしめたルイスの横で、アゲハは勇をどう扱うべきか迷っていた。
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