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どうも、学内対抗戦です

どうも、予選ですパート2

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「会長とアゲハ、もう決めたのか」

「ルイスは相変わらずせっかちやなあ。そんなに急がんでも勝てるやろうに…はよ優勝したかったんやなあ」

 第2リングにいたフレイとミケルがそれぞれ呟いて、顔を見合わせた。

「リズに教えてくれたみたいですけど、負けるつもりはないですよ」

 礼儀正しい熱血のフレイ。
 一方のミケルは、寝転んでばかりいた合宿を思い出す。自分がリズに何か特別なことを教えただろうか?

「あー…。せや、オレも負けへんからな」

 咄嗟に何も思いつけなかったミケルは、とりあえず勝負を受けてごまかした。

 それが良くなかった。

「行け! 【フレアボム】!」

 魔力量もちょうどで質の良い拳大の火球が次々にミケルへと迫る。ティティスとの訓練の成果で、フレイは一撃に込めるべきただ魔力量を見極められるようになっていた。

「ほお。さすがティティーの教え子、うまなっとるやん」

 元がどの程度なのか詳細は知らないが、これほどの熟練度に達するまでには並々ならぬ努力が必要なことはわかる。

「脚や腕が焦げても特訓したんだ、死ぬ寸前まで! 絶対に負けない! 【フレアボム】!」

 熱血同士波長が合ってしまったがゆえに生まれた悲劇をフレイは思い出す。焼けた腕や脚を炎で治療され、燃えているのか癒しているのかわからなくなっていった1週間だった。
 そんな合宿を思い返しながら、フレイは火の球を5つ展開して順々に放つ。

「甘いな。オレに勝ちたいなら死んでも特訓することや!」

 単純に鍛えただけで学生ながら帝の補佐になどなれるはずがない。死んでも治され死んでは治され、数多の致死傷を乗り越えてきたからこそ、ミケルとティティスは今帝の補佐という役職に就いているのだ。
 つまり、ミケルは特訓内容で誰にも負けない自負がある。

「【竜巻】からの【乱気流】! 今や! 巻き上げろ!」

 ミケルが起こした竜巻はフレイの放ったフレアボムをすべて上空へと巻き上げた。竜巻に吸収されたかに見えた火球は、竜巻の上部で渦を巻く。まるで火の蛇がとぐろを巻いているようだ。

 そこへ間髪入れずに起こした乱気流により、火はリング内を駆け巡った。右往左往して逃げ惑う他の生徒たち。

 風は火を強める属性効果を利用して、ミケルはフレイの炎を広げ、2人の戦闘を見守っていた他の生徒たちを排除した。

「すっげぇ…」

 フレイはその様を唖然として見上げる。時折炎が降ってきているが、火傷に慣れたフレイはもう動じない。逃げ惑う周囲すら気にすることなく、ただフレイの攻撃を利用してみせたミケルの技を眺めていた。

「…って、熱っ! 解除しよ…あれ、できない!?」

 手の甲を焼いた火の粉で我に返り、フレイは炎を消そうとする。
 しかし、できない。そこへミケルの高笑いが響く。

「風は察知と探知の属性や! 魔法の指揮権はオレが取ったで」

 先輩風を吹かせてドヤ顔で語るミケルは、ドヤ顔をしてもおかしくないことを説明してのけた。

 魔法から魔力の波長を読み取り、自身の波長を馴染ませて魔法を横取りするのは、並大抵の努力でできることではない。

 基本的に魔法は、放たれるまでは使い手に指揮権がある。使い手の魔力を消費して魔法が形づくられるからだ。
 そして熟練した魔法使いならば、放ったあとの魔法にも指揮権を維持することができる。フレイは合宿の成果で、この段階に達していた。

 さらに熟練した魔法使いであれば、他人の魔法の指揮権を奪い取り、自分の魔法とすることができる。ミケルはなんとこの段階に達していたのだった。
 さすがは帝の補佐、ただのサボり魔ではなかったようだ。

「なっ! こうなったら…【ファイアウォール】!」

 迫りくる竜巻に巻き込まれれば、巻き上げられて自分の炎に焼かれてしまう。フレイは苦渋の策で、竜巻と自分の間に高い炎の塀を打ち立てた。

「おーっと! これは炎対風! 風を薙ぎ払えるだけの風圧を生む炎を作り出せるのか、因縁の属性対決だあ!」

「風は炎を強化し、炎は風を生む。補完関係にある属性の対決じゃな」

 司会と理事長はおもしろがっているが、第2リングは炎の嵐でもれなく全員汗だらだらである。

「くっ! 行けーっ!」

 フレイの気合いに呼応して、炎が厚さを増す。

 そこからは一気に暴風が吹き荒れ、水蒸気が上がり、リングの砂が宙を舞い踊り狂った。

「因縁の戦いを制したのは……なんと! 引き分けです! ミケル選手フレイ選手ともに立っています!」

 第1リングで脱落し試合を観戦していた者たちから大きなどよめきの声が上がる。まさか1年生が3年生相手に、それも不利な属性で引き分けられるとは思っていなかったのである。

「他の選手は巻き込まれて全滅! 勝ち残ったのは、生徒会会長補佐のミケル・ミケア! 1Sクラスのフレイ・ファイアだぁあ!」

 ミケルの竜巻、フレイの炎壁に巻き込まれて地面に突っ伏す生徒が治療に搬送される中、フレイはリングから下りてきた。観戦していたアゲハが声をかける。

「どうした? 勝ち残ったのに不満そうだな」

 下りてくるフレイは唇を噛み締め、悔しそうな顔をしていたのだ。

「…ミケル先輩、手加減してたんだ。最後、俺が魔力暴走起こしそうになって、水で弾き飛ばしたんだ。あんなに魔力込めたファイアウォールだったのに…」

 魔力を一気に込めすぎても魔力暴走を招くことがある。フレイがファイアウォールに魔力を注ぎすぎていると気づいたミケルは、リング全体を覆うほど勢いのあった巨大な火の壁を水魔法で一瞬にして相殺したのだという。

「それに気づけたなんて、すごいじゃないか。ミックは表向き、風属性しか持たないことになっているからね。きちんと見えたなら誇るべきことだよ」

「会長! ミケル先輩も」

 ミケルをねぎらっていたルイスが寄ってきて、爽やか笑顔で慰めた。その後ろでミケルも笑っている。

「さすがティティーの弟子、ゆうんは失礼やな。フレイはちゃんと実力あるで。オレに水魔法まで使わせたんやから」

「ミックは基本、ピンチのときしか水は使わないからね」

「まだ風ほど使いこなせへんからな。中途半端な魔法見せんのは恥ずかしいやろ」

 サボり魔のくせに妙なところでカッコつけたがるミケルだった。

「はい! ありがとうございます!」

 バカ正直なフレイは、先輩2人に褒められて素直に照れた。

「あ、第6リングが終わったみたいやで」

「第6は…ニコラか」

 ミケルとルイスが振り向いたのにつられて、アゲハとフレイも目を向けた。そこには、多数の生首が出現していた。
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