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どうも、合宿です

どうも、ペア組みです

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 放課後アゲハたちが校門前に到着すると、既にルイスたちが待っていた。

「すげえ…生徒会メンバーだ…」

 フレイが感嘆の声を漏らす。

「そんなにすごいのか?」

「生徒会メンバーは人気投票で選ばれてるけど、実力もピカイチで、去年の国対抗戦でも優勝しているんだ」

 アゲハの呟きに詳しい解説で答えてくれたクレア。
 つまり生徒会メンバーは、学生では世界一の実力を誇ると。

「それはすごいな」

 ならば合宿も面白そうだという意味でアゲハは答える。弱い者とともに過ごしてもつまらない。

「来たねアゲハ。皆も」

 露骨なアゲハ贔屓。しかし爽やか笑顔のおかげでフレイたちをおまけ扱いしているとは気取られない。

 先頭にいたルイスは全員の顔が見えるように横へずれて、他のメンバーを手で示した。

「紹介するよ。ミックとティティー…ミケルとティティスは前も一緒だったよね。あとは書記のニコラ…ニコライ・ダークネスと、ヴィー…ツヴァイゲルト・ホワイトだよ。ヴィー以外は3Sで、ヴィーは2Sクラス。それと…ああ、ニコラとヴィーは闇と光の属性貴族だから、4人は知り合いかもしれないね」

 ルイスは思い出したようにフレイ、クレア、ペタ、リズの顔を順に見た。

「パーティーで何度かお会いしていましてよ」

 答えたのは金髪縦巻きツインテールと長いスカートの揺れる胸ペタのツヴァイゲルト。今日も今日とて態度がデカい。態度だけは。

「お互いまだ当主じゃないし、挨拶程度しか面識はないけどね」

 補足したのは男子と見紛う長身の、けれど間違いなく女子の美貌を持つ黒紫の長髪のニコライだ。こちらはフランクに「ハロー」と手を振った。挨拶程度の面識しかない相手に対しては気さくすぎる再会の声かけだ。

「まあ挨拶はこの辺にしておいて、人数も多いしペアを組もう。そのほうが効率的だ。いいよね?」

 「もちろん」や「いいわ」「賛成」などの返事が響く。先輩で生徒会長で最強と名高いルイスに異議を唱えられるはずがない。

「じゃあ属性で分けるよ。フレイは炎の得意なティティー、リズは風の得意なミック、アゲハは闇の属性貴族のニコラとペアになって。こっちに土と水をメインにしてる人がいないから、クレアはヴィーと組んでもらおうかな。ヴィーは光使いだから土魔法とは相性が悪いし、勉強になるはずだ。何かあったら俺を呼んでね。水をまともに使えるのが俺しかいないから、ペタは俺と組んでもらうよ。いいかな?」

 そこまで決められていて異議を唱えられるわけが以下略。

「大会まで毎日、放課後はこのペアで森に行ってもらうからね。合宿の道具は上級生が持ってるから、1年生は遠慮なく使ってね。以上、解散」

 ルイスはペアを組めなくて残念そうにアゲハを見たが、アゲハはまじまじと初対面のニコライを見ていた。ルイスは仕方なくペタを連れて森へ転移していく。
 それにならって、フレイとティティス、リズとミケルは軽く挨拶をしてから身体強化して走り、クレアとツヴァイゲルトは挨拶しながら歩いて学校をあとにした。

「改めて、僕はニコライ。よろしくね」

「アゲハです。お願いします」

 微笑むニコライに応え、アゲハは爽やかな笑顔を浮かべながら好青年風に挨拶した。

「あはは。会長にも敬語使わないんだから、僕にも楽にしてよ」

 しかしルイスの作り笑いを見慣れているニコライには嘘くさいと気づかれてしまった。

「そうか。ではよろしく、ニコライ」

「よろしくね、アゲハ」

 絶妙に緊張感に満ちた挨拶が生まれた。ニコライは名前で呼ばれたくないのかもしれない。

「さて、いつもなら夜は合流してバーベキューなんだ。今回は合流できるかわからないけど、バーベキューできるようにしっかり狩ろうね。場所は近場の森だけど、走る?」

 ニコライは遠足を楽しみにする子どものように無邪気に尋ねた。

 しかしアゲハの答えは決まっている。

「転移する」

 アゲハが指を鳴らすと、次の瞬間には2人は近場の森にいた。

「転移魔法も詠唱破棄かあ…」

 詠唱破棄なうえに本当は指を鳴らす必要もないのだが、そこはなんの合図もないと不安になるだろうとの気づかいでやっている。

「僕が教えることはなさそうだね」

「そんなことはない。闇属性の技はまだまだ知らないんだ。見せてくれると嬉しい」

 偉そうな口調だが、普段は命令しかしないアゲハにとっては最大限の譲歩である。なにせ教えを乞うなど、アゲハの人生初のことである。ルイスにはいろいろと教えてもらっているが、ルイスは勝手に気を回してやってくれるスパダリなのだ。
 …そんなことを言えばツヴァイゲルトの妬みを買いそうである。

「そっか。じゃあ僕たちなりにゆっくりと親睦を深めようか」

 それなら良かったとニコライは笑い、魔力探知で引っかかった魔物のいるほうへと歩みを進めた。

「よろしく頼む」

 魔物がいるとわかっていながら、アゲハもニコライに続く。
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