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どうも、暗躍です

どうも、対戦です

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「光帝と戦えるのをずっと楽しみにしていたのヨ! ここで会ったが100年目ェ!」

 闇帝はオネエ口調の高い声でテンション高く言い放つと、いきなり闇の刃でルイスに斬りかかった。
 オネエ口調というか、実際お姉様ではあるのだが、なんというか……必要以上にウザったい。

「100年目って言われても、俺は100年も生きてないよ」

 ルイスは刃を軽々と躱し、光をまとわせた高速の正拳突きで刀身を相殺する。

 闇帝の魔武器である闇色の剣は、光と衝突して瞬時に揮発した。

「あの動き…やはり光帝じゃ!」

「え? 僕?」

「頼む光帝! 帰ってきてくれ!」

「どうして私たちを置いて闇ギルドなんかに…」

「娘に手を出していないだろうね?」

「抜けるなら声をかけてほしかった…」

 魔武器を召喚し直した闇帝とルイスが戦っている後ろで、騒ぐ土帝に、自分を指さす現光帝の勇者、縋る炎帝に嘆く水帝、ここでも親バカな風帝に、一緒に辞めたかったと呟く雷帝という、カオス空間が生まれた。

 皆の思いはひとつ、「光帝(勇者)をなんとかしてほしい」である。

 光帝が首を傾げる。

「魔帝って何かすごい人なの? みんなの知り合い?」

 鈍いとは幸せである。

「【ダークインフェルノ】【ダークウェーブ】【ダークカッター】」

 闇の炎が結界内を暴れ回り、多数の闇の触手が波のようにうねって伸び、無数の闇の刃が乱舞すして迫り来る。

 それをルイスは、神速の光帝と呼ばれたかつてを上回るスピードで走り、跳び、結界の壁すら足場にしてすべて避けきった。

「さすがだワ光帝…。はあ、はあ」

 上級魔法を連続の全力で放った闇帝は肩で息をしている。
 炎帝を上回る大きさの炎に、調子に乗って出しすぎた波と刃。相手がルイスだから無傷なものの、一般的にはオーバーキルにも程がある。

「皆に話したら、皆も辞めるって言うだろ? そうしたら俺が辞められないじゃないか」

「いーやーじゃー!」
「帰ってきてくれよ!」
「お願い…」

 フードで隠していても、ルイスが良い笑顔を浮かべていることは筒抜けだろう。そのくらい、チームワークは良かったわけだ。
 ルイスとて、不満はなかった。帝のメンバーに対しては。

 ただやはり、ちょくちょく権力濫用でこき使ってくる姉がウザかったのと、諸々の理由で心の内に秘めていた闇を封じきれなかった。光帝の闇堕ちには、深くて浅い理由ワケがあるのである。

「余所見してて良いノー? 当たっちゃうわヨー?」

 闇帝は魔武器で斬りかかり、突き、魔法を放つ。結界内の至る所で爆裂音が轟いた。

 …絶対に城でやることではない。

「まだまだ余裕だよ。それにしても、相変わらずギルドで会うときとは別人だね」

 ルイスは息も切らさずに打ち合って反撃も挟みながら、爽やかに苦笑した。

「フフフッ! だってあーんな事務仕事! 楽しくないモノー!【ダークバインド】」

 どこからともなく音速で伸びてきた闇のベルトが、駆けるルイスの手首に絡まる。

「あっ! ……なんてね」

 しまった、と焦るフリをしてから、ルイスは短剣で魔法を断ち切る。光の属性付加はしているが、ただの剣である。普通は斬れない。

「あいにく、闇魔法は黒帝の得意分野でね。彼は闇帝よりも容赦がないから。ということで」

 ルイスは駆け、結界の隅から声を上げる他の帝たちに近づいた。

「どう、して、じゃ…」

 背後から手刀を入れられ気絶したのは土帝だ。老人を労るように、ルイスは優しく床へ寝かせてあげる。

「君の敗因は、先週学園にいなかったことだ」

 ただし、まだ根に持っていた。執念を感じる。爽やかからは程遠い。

「私を無視しないでヨ光帝!」

 そこへ突撃してきた闇帝の剣を拳で折り、腹へグーパンを決める。

「ぐはぁ!」

 女性とは思えぬうめき声とともに、闇帝は地に伏した。

「君の敗因は、うるさかったこと」

 奇襲が奇襲になっていなかったという意味ではない。闇堕ちした光帝を懲らしめてやろうというテンションが、オーラがうるさかったのである。

「女の人になんてことを…!」

「【白雷】」

 光帝が棒立ちで憤っている横をすり抜け、炎帝、水帝、風帝、雷帝に光り輝く白い雷を落とす。脳天から直撃した4人は仲良く気絶した。

「君たちの敗因は……今は俺の敵だから? 恨みはないんだけどね」

「【ライトレーザー】!」

 崩れ落ちた4人に声をかけていたところに、極太レーザーが飛来する。

「君の敗因は…」

 ルイスは極小の光の矢を放つ。
 それはいつかの試合のように、極太レーザーを切り裂きながら突き進み、光帝の頭に直撃した。

 あのときは軽い脳震盪だけだったが、今回は光帝の頭から血が飛び散る。

「…学習しないからだ」

 弱いから、ウザいから、などと理由は他にもあって悩んだが、ルイスが指導しても強くならないというのはつまり、そういうことだろう。
 現に、ルイスの指導を少し受けただけのペタでも相当強くなっている。

 決め台詞よろしくルイスが告げたと同時に、光帝の体は後ろへバタリと倒れた。

「…まったく。御前試合で殺すな」

「だって、全帝が防死結界まで張ってくれたからね。使わないともったいないでしょ」

 隅で様子を見守っていた全帝が中央に歩み出てきた。ルイスとしてはここからが本番だ。

 一度も戦ったことのない相手。一緒に任務をこなしたことすらない。戦い方が未知数だ。実力も未知数。

「でもきっと、黒帝のほうが強いんだろうね」

 謎の深さでいえば、アゲハのほうが上だ。
 アゲハとは闇ギルドの依頼を共にして、学園の戦闘訓練の授業でも一緒に行動しているのに、まだまだ限界が見えない。自分や全帝ではなく、彼こそが人類最強なのではないだろうか、と思っている。

 その予想は、半分当たりで半分外れている。
 アゲハは世界最強ではあるが、人類ではない。たとえ、今は体の組成が人間だとしても、魂の質が違うのである。

 そんなことは露知らず、ルイスは身体強化して臨戦態勢を取った。

「さて全帝、俺が勝ったら正体を教えてもらうよ」

 ルイスは気合い十分だ。両手の拳を打ち鳴らす。いつ全帝がかかってきても対応できる。

「連絡先が知りたいだけなら黒帝に聞けばいい。教えてくれるだろうさ」

 しかし、全帝に気合いなどなかった。

 2週連続の召集とあって疲れているのだ。その上試合など、それも史上最強の光帝と謳われた相手と対決など、シンプルに面倒くさい。

 一方で、ルイスは違うところにショックを受けた。

「え? 黒帝は全帝が誰か知ってるの…?」

「先週、一緒に飯行ったからな」

「え…」

 婚約者は別にいるのに、ルイスは信じていた恋人に浮気されたかのような気分になった。
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