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どうも、実技演習です

どうも、変更です

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 勇者がハーレム一大勢力を築き上げ、フレイたちが訓練に勤しみ、アゲハとルイスが暗殺依頼をこなしつつ着実に仲を深めていた頃。

「今日から戦闘訓練の授業は実技演習だ。ギルドで本物の依頼を受けてもらうぞー。まだ登録してないやつは放課後にでも行っとけー。チームは……サバイバルのときと同じでいいなー? よし、そのチームで依頼受けろよー」

 前半でワクワクしたフレイたちは、シラの後半の台詞で徐々にげんなりしていった。

「先生、勇者と王女様は……」

「ちょっと……」

 嫌だが、嫌だとは言えないだけに、フレイもクレアも渋面で黙り込む。
 他の、主に男子クラスメイトは勇者を押しつけられるのではとざわざわひやひやしていた。

「あー、まあ、ランクがあれだしなー。いいぞー。勇者と王女はそこの取り巻きのチームに入れー。よし、他はいいなー?」

「はーい」

 何を知っているのか、やけにあっさりと受け入れたシラに、クラスメイトのいい返事。
 誰も損をしない結果になって良かったのかもしれない。

「そんな! 他の女子と一緒だなんて!」

 …王女以外は。

 シラは王女の言い分を考慮しなかった。まあ勇を独り占めしたいなどという言い分まで考慮していれば学園が崩壊してしまうため、教師としては当然である。

「アゲハの登録してるギルドって、勇者と同じだよな?」

 クレアが尋ねてきた。アゲハがギルドに登録していると疑っていない顔だ。

 それはある意味正解なのだが……登録しているのは闇ギルドだなどと、仮にも勇者の巻き込まれが表立って言えるわけがない。

「いや…俺は……」

 ちょうどそのとき、教室の扉が開いた。職員室に帰ろうとしたシラが戻ってきたのだ。

 シラが教室に戻って来るなど何事か、とクラスメイトは静まり返った。

 注目されているシラ本人は至っていつも通りで、とてもだるそうだが、仕事だから仕方ないという顔をしている。

「アゲハ。お前、いつまで経ってもギルドから測定結果が来ないんだが、勇者と一緒に登録してるよな?」

 語尾が間延びしていない。目は死んでいるし表情筋も働き方を忘れているのに、どこか真剣味のある声がどうして出せるのか。

「えっ、アゲハ、登録まだなのか?」

 フレイが驚いたので便乗することにする。

「あー、実はそうなんだ。勇者の測定結果がすごかったからそっちに気を取られたみたいで、俺は測定もしてない。だから結果が送られてこないんだと思います、先生」

 アゲハの「先生」呼びに無性に寒気がしたシラだったが、あのギルマスならやりかねんと、今はそっちへの呆れが勝った。

「わかった。お前らは登録してるだろ。今日にでもアゲハを案内してやれ」

「はい」
「わかりました」
「先生…やる気ある…」
「いつもこうならかっこいいのに」

 フレイ、クレアは力強く頷き、ペタは普段とは異なるシラの態度に驚き、リズは褒めているのか貶しているのかわからない感想を述べた。

「あー、やる気しねぇ…」

 しかし、シラはシラだった。ボサボサの後ろ頭を掻きながら、また教室を出てゆく。

 アゲハは真剣なシラの雰囲気、まとうオーラに、どこか見覚えのある気がしていたが、何分前世からの記憶まで引き継いでいるため、特定には至らなかった。

「じゃあ放課後、門の前で集合な! せっかくだし皆で依頼も受けてみようぜ!」

 お人好しのフレイはとても張り切っている。アゲハのランクを上げるのに協力してあげようという優しさは、不要だと切り捨てるにはいささか温か過ぎた。

「ありがとう、皆」

 だからアゲハははにかみ笑顔の礼で返した。

 その頃魔界では、あまりにも稀で「らしくない」魔王の感謝の言葉に寒気がして風邪をひいた者が続出したとか。
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