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どうも、サバイバルです
どうも、昔話です
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アゲハが転生させられた頃には、勇は既にアゲハを幼馴染として認識していた。神による記憶改竄の結果だ。そのため勇のなかでアゲハがいつから幼馴染として認識されていたのかは、定かではない。調べようとも思わない。
アゲハの知る神野勇は、王子やヒーローのようなかっこいい人間になりたいとほざくイタい人間だった。
正義感にあふれ、女性に優しく、頼りになる存在。
そんな、お伽噺や、あるいは漫画やアニメの中だけに生息できるような人種になりたがっていた。
勇本人は二次元オタクではなく、むしろサブカルには疎いほうだが、端から見ていると二次元に憧れているようにしか思えなかった。
もちろん日々の鍛錬は欠かさない。
カツアゲを目撃すれば止めに入り、代わりにカツアゲされる。ナンパを見れば止めに入り、ボコボコにされる。
情けない姿を晒しているのに、被害者女性は皆「身を挺して守ってくれた」と勇に好意を抱いた。
女性たちは勇と行動をともにするようになり……次第に、隣にいる在華覇を見つける。人間界の瑣事には心動かさない在華覇はクールに見えるらしい。
神からの「性格改善のための10の課題」を実践していたことも災いした。こなさなければ毎晩、翌朝までずっと拘束されて神の仕事の手伝いをさせられるのが嫌で実践していたが、そもそもが性格改善のための課題である。実践すると爽やか好青年に見えてしまうのが難点だった。
在華覇にまで言い寄ってくる女性が増え、ついに我慢ならなくなり、在華覇はクズ避け結界を張った。
しかし、本来ならば魔法を使うことのできない地球での魔法の使用。世界の理を曲げた在華覇は魔導路を負傷し、地球で魔法を完全に発動できなくなった――というのは裏話。
皆にできる、勇との表の話はここからだ。勇の勇者たる由縁でもある。
まずは、カフェで大学生に家庭教師代を渡す小学生を見つけたとき。
カツアゲと勘違いした勇はいきなり大学生を殴り、小学生には「今のうちに逃げるんだ!」と声を張り上げた。
あっけにとられて動けない小学生を勇が走って連れ出し、手を引いてどこぞの裏道まで案内して「ここまで来れば大丈夫。気をつけてね」と放置。
割れたグラスや大学生の治療費などは店内に残されていた在華覇が支払い、放り出された小学生が怖いオニイサンたちに連れ去られそうになったところを在華覇が救出した。
次に、路上でイチャイチャするバカップルを発見したとき。
「いいだろ~」「やだあ…もう…」と人前でアレコレしようとしている現場を押さえ、女性の手を引き、「嫌がってるじゃないか!」と男を怒鳴りつけた。
ぽかんとした女性の手を引いてヒールで数百メートル走らせたうえ、これまた「ここまで来れば大丈夫」でラストスパートをかける。
最後にトドメの「嫌なことは嫌って言っていいんだよ」と優しさを見せたところで、「いやぁーっ!!」と叫んだ女性にブランドバッグで張り倒され、勇は逆転KO負けを喫した。
後日談として、報復に来た彼氏とその仲間に勇はボコボコにされた。
彼氏とともに取り残された在華覇がフォローに迫られ、いろいろ話している間に、彼氏はちょっぴりヤバ目なつながりのある男だとわかった。そのため一応学生の身分にあたる在華覇は、素直に勇の情報を吐いておいたのだ。
在華覇の被害は少なかった回だが、さらにその後日、勇の取り巻きと件の彼女さんとの間で「勇の好意を無駄にしないで!」的ないざこざが起き、学校前へヤの付く職業の方々がやって来るバトル漫画的展開が起きたのでとてもよく覚えている。
こうして日々勘違いを繰り広げて珍事を巻き起こしていた勇だが、最も大きな事件は学校内での「消しゴム忘れ勘違い事件」だろう。
ある日勇は授業中、消しゴムを使っていない隣の席の女子生徒に勇は、
「消しゴム忘れたの? 貸してあげるよ」
と申し出た。
しかし女子生徒は首を振り、
「いらない」
と答えた。
彼女は消しゴムを持っていたが、必要がないため消しゴムを筆箱から出していないだけだったのだ。
そんな勇の勘違いのせいにも関わらず、取り巻きたちは激昂。
「いらないって、言い方が他にあるでしょ!」
「せっかくの勇の厚意なのに…!」
勇が「きっと事情があるんだよ」などと宥めるが、事情も何も、すべては勇の勘違いなのである。「いらない」がすべてなのだ。
しかも、いくら勇が宥めても取り巻きは聞く耳をもたなかった。
「隣の席なのも羨ましいのに…」
「勇様の消しゴムに触れる機会を…」
「羨ましい…っ!」
羨望が嫉妬に変わり、嫉妬が憎悪に変わるのは早かった。
取り巻きたちはその女子生徒をいじめるようになった。勇にバレて幻滅されるのは嫌だからと、それはそれは陰湿な方法で……。
彼女は不登校になったが、それでもSNSなどを通じていじめはやまず、最終的に自ら命を絶った。
勇は呼ばれてもいないのに彼女の告別式へ取り巻き付きで出席すると、棺の前で、
「相談してくれれば良かったのに…」
と呟いた。
それに怒ったのは彼女の両親らである。彼女から相談を受け、遺書を読み、日記を読んだ彼らは発端が勇であることを知っていた。
それでも悔やみに来たのなら、謝りに来たのなら、勇も勇の取り巻きたちもそれぞれ1人のクラスメイトとして接するつもりだった。
しかし、元凶が無自覚となると度し難い。
特に母親は、
「あんたのせいでうちの子が…!」
と泣きながら叫んで勇を追い出した。
「勇がせっかく来てくれているのに!」と憤慨する取り巻きには、反省の色が見られない。
勇は勇で、
「僕に当たることで気が晴れるのなら、いくらでも八つ当たりしてくれればいい」
と幸せな勘違いを繰り広げるだけだ。
その勇を見てさらに取り巻きたちが惚れる……という無限地獄が、告別式会場の入口で生まれていた。
いじめで自殺となれば騒ぎになりそうだが、勇に惚れていた担任はいじめを隠蔽した。両親は裁判を起こし――
「裁判が終わる前に召喚されたから、俺も結果は知らないが」
そこまで話すと、全員視線が異様に下がっていた。テンションも下がり、血の気やその他いろいろなものが引いている気がする。
「ってことは、勇者は人殺し…?」
恐る恐るミケルが口を開いた。
「いえ、直接手は下してませんし、あいつが殴るのは男だけ…それも、弱いから返り討ちにされるレベルです。奴がやったのは勘違いだけで」
一応先輩に敬語を使うアゲハ。ルイスとは多少親しくても、口調以外は特徴のない先輩とはまだ距離を置きたい。
「でも…それだけでもそれだけじゃないだろ…」
珍しくフレイが難しい顔で難しいことを言っていた。似合っていない。ただ、気持ちはわからなくもない。
「でも、そんな人間を勇者に選んだのはこの世界だ」
アゲハがそう答えれば、皆が黙り込んだ。
中途半端な偽善者ではアゲハに敵わない。だから世界は完全なる偽善者を選んだのだろう。
あとは神の言った通り、この世界とつながりを持つ在華覇の近くにいたからだろう。
しかし、適性を持たなければそもそも勇者には選ばれない。勇がこの世界に選ばれたのは、やはり事実である。
気を遣ったフェイが線香花火程度にまで火力を抑え、パチパチと静かな火花が野営の地に散っていた。
どうしてこれほど酷い日常にアゲハが付き合っていたのかといえば、暇だったからである。
今回の召喚がなければ、アゲハは死ぬまで平和な地球の日本に監禁されているはずだった。勇の隣にいれば、毎日厄介事に巻き込まれるが暇はしない。
地球の人間界の日本は、勇の隣を選んでしまうほど、魔王にとって暇で退屈過ぎたのである。勇を酷いとは思うが、在華覇に実害はさほどない。とにかく暇をしない点で、勇の隣はまあまあ愉しめた。
「……まあ、今回の勇者には期待できそうにないから、各自頑張ろうってことかな」
お葬式のように沈んだ空気をルイスが爽やかに吹き飛ばした。
「ボク…頑張る…」
「そうだな…。それしかないか…」
ペタが真っ先に同意して、徐々にフレイらも自分に言い聞かせていった。
「って、あれ? 王女様は?」
勇の悪評となれば真っ先に騒ぎそうな王女の声がしない。
「ああ、王女ならそこで寝てるよ。寝る直前まで食べるなんて、よほどおいしかったみたいだね」
ルイスの指の先にはサラダボウル片手に泡を吹く王女がいた。気絶している。まずさに耐えられなかったのだろう。
ルイスは腹黒というよりも鬼畜だった。
「みんなー!」
勇者の帰還の呼びかけ。
「ちょうど良い、王女が寝てるぞ」
「よし皆、今日はお開きにしよう。結界を張っておくから、明日に備えてよく休むんだよ。ミックは俺と交代で夜番を」
アゲハは王女を戻ってきた勇へと投げ、ルイスの指示で全員がテントへ入った。フェイも戻り、ザガンはダークナイトアーマーとともに魔界へ消えた。
「えっと……僕の寝る場所は?」
「王女と2人で寝る? 俺の布団あげるからさ。返さなくていいよ」
「いや、そんな、でも……?」
テントに入りたい勇者と入らせたくないルイスとの静かなバトルは、腹芸のできるルイスが勝利を収めた。
「じゃ、また明日ね」
晴れやかな笑顔でテントに入り手を振ったルイス。見張り番は中から魔力探知で行うから外にいなくてもいいのだ。
「えー……」
外では王女を抱えた勇の無念の声が夜中じゅうずっと響いていたという。
また魔界では、アーマーの背から肉の脂を懸命に拭き取るザガンの泣き声が魔王城中に響き渡っていたという。
アゲハの知る神野勇は、王子やヒーローのようなかっこいい人間になりたいとほざくイタい人間だった。
正義感にあふれ、女性に優しく、頼りになる存在。
そんな、お伽噺や、あるいは漫画やアニメの中だけに生息できるような人種になりたがっていた。
勇本人は二次元オタクではなく、むしろサブカルには疎いほうだが、端から見ていると二次元に憧れているようにしか思えなかった。
もちろん日々の鍛錬は欠かさない。
カツアゲを目撃すれば止めに入り、代わりにカツアゲされる。ナンパを見れば止めに入り、ボコボコにされる。
情けない姿を晒しているのに、被害者女性は皆「身を挺して守ってくれた」と勇に好意を抱いた。
女性たちは勇と行動をともにするようになり……次第に、隣にいる在華覇を見つける。人間界の瑣事には心動かさない在華覇はクールに見えるらしい。
神からの「性格改善のための10の課題」を実践していたことも災いした。こなさなければ毎晩、翌朝までずっと拘束されて神の仕事の手伝いをさせられるのが嫌で実践していたが、そもそもが性格改善のための課題である。実践すると爽やか好青年に見えてしまうのが難点だった。
在華覇にまで言い寄ってくる女性が増え、ついに我慢ならなくなり、在華覇はクズ避け結界を張った。
しかし、本来ならば魔法を使うことのできない地球での魔法の使用。世界の理を曲げた在華覇は魔導路を負傷し、地球で魔法を完全に発動できなくなった――というのは裏話。
皆にできる、勇との表の話はここからだ。勇の勇者たる由縁でもある。
まずは、カフェで大学生に家庭教師代を渡す小学生を見つけたとき。
カツアゲと勘違いした勇はいきなり大学生を殴り、小学生には「今のうちに逃げるんだ!」と声を張り上げた。
あっけにとられて動けない小学生を勇が走って連れ出し、手を引いてどこぞの裏道まで案内して「ここまで来れば大丈夫。気をつけてね」と放置。
割れたグラスや大学生の治療費などは店内に残されていた在華覇が支払い、放り出された小学生が怖いオニイサンたちに連れ去られそうになったところを在華覇が救出した。
次に、路上でイチャイチャするバカップルを発見したとき。
「いいだろ~」「やだあ…もう…」と人前でアレコレしようとしている現場を押さえ、女性の手を引き、「嫌がってるじゃないか!」と男を怒鳴りつけた。
ぽかんとした女性の手を引いてヒールで数百メートル走らせたうえ、これまた「ここまで来れば大丈夫」でラストスパートをかける。
最後にトドメの「嫌なことは嫌って言っていいんだよ」と優しさを見せたところで、「いやぁーっ!!」と叫んだ女性にブランドバッグで張り倒され、勇は逆転KO負けを喫した。
後日談として、報復に来た彼氏とその仲間に勇はボコボコにされた。
彼氏とともに取り残された在華覇がフォローに迫られ、いろいろ話している間に、彼氏はちょっぴりヤバ目なつながりのある男だとわかった。そのため一応学生の身分にあたる在華覇は、素直に勇の情報を吐いておいたのだ。
在華覇の被害は少なかった回だが、さらにその後日、勇の取り巻きと件の彼女さんとの間で「勇の好意を無駄にしないで!」的ないざこざが起き、学校前へヤの付く職業の方々がやって来るバトル漫画的展開が起きたのでとてもよく覚えている。
こうして日々勘違いを繰り広げて珍事を巻き起こしていた勇だが、最も大きな事件は学校内での「消しゴム忘れ勘違い事件」だろう。
ある日勇は授業中、消しゴムを使っていない隣の席の女子生徒に勇は、
「消しゴム忘れたの? 貸してあげるよ」
と申し出た。
しかし女子生徒は首を振り、
「いらない」
と答えた。
彼女は消しゴムを持っていたが、必要がないため消しゴムを筆箱から出していないだけだったのだ。
そんな勇の勘違いのせいにも関わらず、取り巻きたちは激昂。
「いらないって、言い方が他にあるでしょ!」
「せっかくの勇の厚意なのに…!」
勇が「きっと事情があるんだよ」などと宥めるが、事情も何も、すべては勇の勘違いなのである。「いらない」がすべてなのだ。
しかも、いくら勇が宥めても取り巻きは聞く耳をもたなかった。
「隣の席なのも羨ましいのに…」
「勇様の消しゴムに触れる機会を…」
「羨ましい…っ!」
羨望が嫉妬に変わり、嫉妬が憎悪に変わるのは早かった。
取り巻きたちはその女子生徒をいじめるようになった。勇にバレて幻滅されるのは嫌だからと、それはそれは陰湿な方法で……。
彼女は不登校になったが、それでもSNSなどを通じていじめはやまず、最終的に自ら命を絶った。
勇は呼ばれてもいないのに彼女の告別式へ取り巻き付きで出席すると、棺の前で、
「相談してくれれば良かったのに…」
と呟いた。
それに怒ったのは彼女の両親らである。彼女から相談を受け、遺書を読み、日記を読んだ彼らは発端が勇であることを知っていた。
それでも悔やみに来たのなら、謝りに来たのなら、勇も勇の取り巻きたちもそれぞれ1人のクラスメイトとして接するつもりだった。
しかし、元凶が無自覚となると度し難い。
特に母親は、
「あんたのせいでうちの子が…!」
と泣きながら叫んで勇を追い出した。
「勇がせっかく来てくれているのに!」と憤慨する取り巻きには、反省の色が見られない。
勇は勇で、
「僕に当たることで気が晴れるのなら、いくらでも八つ当たりしてくれればいい」
と幸せな勘違いを繰り広げるだけだ。
その勇を見てさらに取り巻きたちが惚れる……という無限地獄が、告別式会場の入口で生まれていた。
いじめで自殺となれば騒ぎになりそうだが、勇に惚れていた担任はいじめを隠蔽した。両親は裁判を起こし――
「裁判が終わる前に召喚されたから、俺も結果は知らないが」
そこまで話すと、全員視線が異様に下がっていた。テンションも下がり、血の気やその他いろいろなものが引いている気がする。
「ってことは、勇者は人殺し…?」
恐る恐るミケルが口を開いた。
「いえ、直接手は下してませんし、あいつが殴るのは男だけ…それも、弱いから返り討ちにされるレベルです。奴がやったのは勘違いだけで」
一応先輩に敬語を使うアゲハ。ルイスとは多少親しくても、口調以外は特徴のない先輩とはまだ距離を置きたい。
「でも…それだけでもそれだけじゃないだろ…」
珍しくフレイが難しい顔で難しいことを言っていた。似合っていない。ただ、気持ちはわからなくもない。
「でも、そんな人間を勇者に選んだのはこの世界だ」
アゲハがそう答えれば、皆が黙り込んだ。
中途半端な偽善者ではアゲハに敵わない。だから世界は完全なる偽善者を選んだのだろう。
あとは神の言った通り、この世界とつながりを持つ在華覇の近くにいたからだろう。
しかし、適性を持たなければそもそも勇者には選ばれない。勇がこの世界に選ばれたのは、やはり事実である。
気を遣ったフェイが線香花火程度にまで火力を抑え、パチパチと静かな火花が野営の地に散っていた。
どうしてこれほど酷い日常にアゲハが付き合っていたのかといえば、暇だったからである。
今回の召喚がなければ、アゲハは死ぬまで平和な地球の日本に監禁されているはずだった。勇の隣にいれば、毎日厄介事に巻き込まれるが暇はしない。
地球の人間界の日本は、勇の隣を選んでしまうほど、魔王にとって暇で退屈過ぎたのである。勇を酷いとは思うが、在華覇に実害はさほどない。とにかく暇をしない点で、勇の隣はまあまあ愉しめた。
「……まあ、今回の勇者には期待できそうにないから、各自頑張ろうってことかな」
お葬式のように沈んだ空気をルイスが爽やかに吹き飛ばした。
「ボク…頑張る…」
「そうだな…。それしかないか…」
ペタが真っ先に同意して、徐々にフレイらも自分に言い聞かせていった。
「って、あれ? 王女様は?」
勇の悪評となれば真っ先に騒ぎそうな王女の声がしない。
「ああ、王女ならそこで寝てるよ。寝る直前まで食べるなんて、よほどおいしかったみたいだね」
ルイスの指の先にはサラダボウル片手に泡を吹く王女がいた。気絶している。まずさに耐えられなかったのだろう。
ルイスは腹黒というよりも鬼畜だった。
「みんなー!」
勇者の帰還の呼びかけ。
「ちょうど良い、王女が寝てるぞ」
「よし皆、今日はお開きにしよう。結界を張っておくから、明日に備えてよく休むんだよ。ミックは俺と交代で夜番を」
アゲハは王女を戻ってきた勇へと投げ、ルイスの指示で全員がテントへ入った。フェイも戻り、ザガンはダークナイトアーマーとともに魔界へ消えた。
「えっと……僕の寝る場所は?」
「王女と2人で寝る? 俺の布団あげるからさ。返さなくていいよ」
「いや、そんな、でも……?」
テントに入りたい勇者と入らせたくないルイスとの静かなバトルは、腹芸のできるルイスが勝利を収めた。
「じゃ、また明日ね」
晴れやかな笑顔でテントに入り手を振ったルイス。見張り番は中から魔力探知で行うから外にいなくてもいいのだ。
「えー……」
外では王女を抱えた勇の無念の声が夜中じゅうずっと響いていたという。
また魔界では、アーマーの背から肉の脂を懸命に拭き取るザガンの泣き声が魔王城中に響き渡っていたという。
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