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どうも、戦闘訓練です

どうも、無知です

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「あの、先生! 回復魔法ってどうやるんですか?」

「は? お前知らないで返事してたわけ?」

 返事だけはいい勇にシラは呆れる。方法もわからずに手伝えるつもりだったのか。

「…もう俺がやるからいいよ、教えんの面倒臭え……」

 教師にあるまじきことを呟いて、シラは全員に一斉回復魔法をかけた。地味に高難度魔法だ。シラのスペックは計り知れない。

 実は回復魔法自体もそれなりの難易度だったりする。教えるのが面倒、というのも、それなりに正しい。
 シラが教師でなければ。

「おら、みんな起きたなー? 禁忌召喚で2名が犠牲になったが…つーかなんのために禁忌召喚の説明しなかったと思ってんだ…。説明したらやるやつ出てくんだろ…」

 意識の戻った生徒たちがよろよろと立ち上がる間、シラは説明しなくてもやんのかよとかめんどくさいとかだるいとか寝たいとかをぶつぶつ呟いていた。

「んじゃ、気を取り直して模擬戦やるぞー。おんなじ属性か、魔力量の近いやつ同士でペア組めー」

 シラのやる気のない号令で、クラスメイトの死に若干どんよりとした生徒たちが動き出す。

 そんな中。

「あ、それなんですけど…。僕、属性とか魔力とかってあんまりわからなくて」

「…………………………はあ?」

 勇は棒立ちのまま、すっとぼけた発言をした。
 シラや、回復したフレイたちの疑問符が重なる。

「だって、そんなの教えてもらってないよね。ね、アゲハ。僕たち知らないよね?」

 そういえば、まだ調べてもらっていないな…。

 勇に言われて初めて、召喚から覚醒して寝て学校、という一連の過程に魔力測定がなかったと気づいた。
 アゲハは当然ながら自分の魔力も属性も把握していたため、勇者が知らないことを失念していた。

「知らなくて死神に挑んだのかよ…」

 やめてくれ、と頭を抱えるシラ。

「魔力のことを知らなくてあの力…」

 一方で気絶寸前まで勇に注目していたクラスメイト大半は徐々に元気を取り戻し、さすがは勇者だと口々に囃し立てる。

「アゲハも…?」
「知らないで…あのコントロール…」
「ってことは、アゲハは闇属性?」
「他に属性があるなら混じるわよね」

 復活したフレイ、ペタ、クレア、リズはアゲハに感心していた。

 人間に属性を複数もつ者が少ないとは聞いていたが…多属性持ちは属性が混じるだと? 属性別のコントロールもできないのか。

 アゲハは人間のレベルの低さに驚く。

 フレイたちが言うのは、実は誤りだ。人間の多属性持ちでも属性ごとに魔力コントロールできる者はいる。
 ただしそれは相当な手練れであり、少なくとも学生レベルではない。

「ということは、俺は闇属性しか使えないのか…」

 小声で呟く。
 属性が混じる云々の話を信じるならば、さっきから闇属性のみを使ってきたアゲハは、闇属性しか持たない人間だという設定を知らず知らずのうちに作ってしまっていたことになる。

 まあいいか。普段使う黒魔法に一番近いのは闇属性だ。

 アゲハが属性縛りを受け入れた横で、ザガンは心配そうに主の顔を窺っていた。曰く、また雑用を押しつける気じゃないだろうか、と。

「へぶっ!?」

 騒ぎ立てる生徒が面倒になり、シラは勇の上に出席簿を転移させて落とした。
 勇が潰れたカエルのような声を出し、クラスは静かになる。 

「………あー、もういい。放課後にギルドにでも行ってこい」

 シラは死んだ目ですべてを投げ出した。
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