12 / 99
どうも、戦闘訓練です
どうも、野生の勇者です
しおりを挟む
「アゲハ、その…人? は誰だ?」
魔法陣から人間が出てくるはずはないが、どこからどう見ても人間なザガンに戸惑っているフレイ。
「あー、俺の――」
アゲハの台詞に被せて派手な爆発音がしたと思えば、閃光が一瞬で目を焼いた。
恐る恐る目を開いた者から、元凶へと視線を移してゆく。
皆予想していたが、やはり勇がいた。
それも、幼女とグラマー美女の2人に抱きつかれている。若干服がはだけているのもまさしく勇者。
人間ではなく、召喚使い魔の2体だろう。女型が2体、それも勇者にメロメロとは。これでハーレムメンバーが追加されたというわけだ。
「フハハハハッ! 幼女まで巻き込むか!」
「失礼な! 妾は光の属性神、天界に属する者じゃぞ。ひれ伏せ愚民どもよ」
仮にも属性神にクズ避けは作用せず、勇の唇を奪っていた幼女はアゲハを睨んだ。
「属性神!?」「天界!?」とクラスメイトは騒然としていたが、もちろんアゲハは知っている。あと、見ればわかる。
この幼女は…300年ほど前にひねり潰してやったはずだ。
「…つまり中身は老婆か」
300歳超えの幼女。うむ、やはり老婆のほうが正しいな。アゲハはひとり頷く。
「聞こえておるぞ愚民1号」
「まだ耳は遠くないらしい」
「アゲハ、煽りすぎだ。ロリが怒ってるから」
「そうだぞアゲハ。怒った子どもは怖いんだ。泣き止んでくれないんだぞ」
呆れるクレアと幼児に手を焼いたらしいフレイの苦言で止められる。一体2人に何があったのか。
ここで「そいつの中身は300超えてるぞ」などと言っても、異世界人が何を言うと馬鹿にされるか正体がバレるかのどちらかだ。愚民と呼ばれるのは気に食わないが、仕方なくアゲハは黙った。
300年前とは姿が違うため、幼女はアゲハに気づいていないのだろう。あの頃は銀髪で、今より背も高かった。成人してたし…。
と懐古に忙しいアゲハは口を閉ざす。
すると、黙ったアゲハに満足した幼女は、また勇に絡みに行った。
もう面倒なので遠目で眺めるだけにしておく。
「ア、アゲハ。それで、その人? は誰?」
見たくないものから目を逸らそうと、ペタが話題を戻した。人前とは思えぬラブコメ展開を繰り広げる勇者から目を逸らしたいようだ。
さっきはアゲハの笑いっぷりに引いていたのに、そのアゲハに話しかけるとは、よほど勇者と関わりたくないらしい。
「俺と同郷の村の人」
「え? うん、そうそう! アゲハの幼馴染的な?」
端的に答えたアゲハの尻拭いをさせられて冷や汗をかくザガン。
そういえば昔もこうだったと懐かしく思った。
まだアゲハが魔王になる前だ。一緒に魔界の村で生活していた頃。
すぐにアゲハは魔力が膨大になり、前魔王との決闘の末、魔王の座に最年少即位してしまったが…。
離れたのが寂しくて、努力を重ねて四天王にまで登り詰めた純粋な友情に我ながら泣きそうになった。
「なんか、泣いてないか…?」
「大丈夫か? どこか痛いのか?」
「これ、使ってもいいわよ」
引いたクレアと心配して肩を叩くフレイ、ハンカチを差し出すリズ。
情緒のおかしな人は怖いと、ペタは近寄らなかった。ペタの野生の勘は侮れない。
「じゃあ、アゲハと同郷ってことは、勇者とも同郷なわけ?」
フレイはザガンを慰めながら、さらに尋ねた。
「え? 地球の人? アゲハの使い魔って地球の人なの? でも僕は知らないよ?」
「同郷」という単語につられ、野生の勇者が現れた。
魔法陣から人間が出てくるはずはないが、どこからどう見ても人間なザガンに戸惑っているフレイ。
「あー、俺の――」
アゲハの台詞に被せて派手な爆発音がしたと思えば、閃光が一瞬で目を焼いた。
恐る恐る目を開いた者から、元凶へと視線を移してゆく。
皆予想していたが、やはり勇がいた。
それも、幼女とグラマー美女の2人に抱きつかれている。若干服がはだけているのもまさしく勇者。
人間ではなく、召喚使い魔の2体だろう。女型が2体、それも勇者にメロメロとは。これでハーレムメンバーが追加されたというわけだ。
「フハハハハッ! 幼女まで巻き込むか!」
「失礼な! 妾は光の属性神、天界に属する者じゃぞ。ひれ伏せ愚民どもよ」
仮にも属性神にクズ避けは作用せず、勇の唇を奪っていた幼女はアゲハを睨んだ。
「属性神!?」「天界!?」とクラスメイトは騒然としていたが、もちろんアゲハは知っている。あと、見ればわかる。
この幼女は…300年ほど前にひねり潰してやったはずだ。
「…つまり中身は老婆か」
300歳超えの幼女。うむ、やはり老婆のほうが正しいな。アゲハはひとり頷く。
「聞こえておるぞ愚民1号」
「まだ耳は遠くないらしい」
「アゲハ、煽りすぎだ。ロリが怒ってるから」
「そうだぞアゲハ。怒った子どもは怖いんだ。泣き止んでくれないんだぞ」
呆れるクレアと幼児に手を焼いたらしいフレイの苦言で止められる。一体2人に何があったのか。
ここで「そいつの中身は300超えてるぞ」などと言っても、異世界人が何を言うと馬鹿にされるか正体がバレるかのどちらかだ。愚民と呼ばれるのは気に食わないが、仕方なくアゲハは黙った。
300年前とは姿が違うため、幼女はアゲハに気づいていないのだろう。あの頃は銀髪で、今より背も高かった。成人してたし…。
と懐古に忙しいアゲハは口を閉ざす。
すると、黙ったアゲハに満足した幼女は、また勇に絡みに行った。
もう面倒なので遠目で眺めるだけにしておく。
「ア、アゲハ。それで、その人? は誰?」
見たくないものから目を逸らそうと、ペタが話題を戻した。人前とは思えぬラブコメ展開を繰り広げる勇者から目を逸らしたいようだ。
さっきはアゲハの笑いっぷりに引いていたのに、そのアゲハに話しかけるとは、よほど勇者と関わりたくないらしい。
「俺と同郷の村の人」
「え? うん、そうそう! アゲハの幼馴染的な?」
端的に答えたアゲハの尻拭いをさせられて冷や汗をかくザガン。
そういえば昔もこうだったと懐かしく思った。
まだアゲハが魔王になる前だ。一緒に魔界の村で生活していた頃。
すぐにアゲハは魔力が膨大になり、前魔王との決闘の末、魔王の座に最年少即位してしまったが…。
離れたのが寂しくて、努力を重ねて四天王にまで登り詰めた純粋な友情に我ながら泣きそうになった。
「なんか、泣いてないか…?」
「大丈夫か? どこか痛いのか?」
「これ、使ってもいいわよ」
引いたクレアと心配して肩を叩くフレイ、ハンカチを差し出すリズ。
情緒のおかしな人は怖いと、ペタは近寄らなかった。ペタの野生の勘は侮れない。
「じゃあ、アゲハと同郷ってことは、勇者とも同郷なわけ?」
フレイはザガンを慰めながら、さらに尋ねた。
「え? 地球の人? アゲハの使い魔って地球の人なの? でも僕は知らないよ?」
「同郷」という単語につられ、野生の勇者が現れた。
31
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる