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どうも、戦闘訓練です
どうも、魔武器生成です
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「よし、じゃあ説明ついでにファイア、魔武器生成について説明任せたぞ」
「えー」
嫌そうにするフレイだが、シラのこういう人任せ行為には慣れているようで口答えせず説明を始めた。
「魔武器生成とは、魔石に魔力を流して自分の最も使いやすい武器をつくることです。魔武器と一般の武器との違いは、魔武器は喚び出せば出てくるので常に携帯する必要がない点と、一度生成すると壊れず、壊れても喚び直せば修復されている点です。魔武器生成に用いる魔石は自然界の魔力が石に蓄積したもので、純度によって魔武器の性質も異なります……くらいですか?」
「おし、というわけだからこの魔石に各自魔力を流せ~」
説明をすべてフレイに押し付けたシラが手のひらに収まるサイズの黒っぽい石ころを掲げて見せる。
「フレイってバカじゃないんだな」
強化生成の説明は抜けているが、もしかすると人間界では知られていないことかもしれない。
アゲハは、他の説明は概ねできていたしな…と黙っておくことにした。
「フレイはテンションがバカなだけだから、頭はバカじゃないんだ」
アゲハに答えるクレアは真面目そのものだ。
「そうそう…って、テンションがバカってなんだよ⁉」
「ほら」
「そういうとこ…」
「バカっぽいのよ」
クレア、ペタ、リズのナイスコンビネーション。
フレイは崩れ落ちた。
「さ、魔石取りに行こうぜ」
クレアは何事もなかったかのように続ける。
これがこの4人のデフォルトなのだろう。
「あ…ボク、あの中行きたくないかも…」
ペタが指差す先には、シラが――厳密には魔石に群がるクラスメイトがいた。
そこへ勇者と取り巻きも混ざって、どさくさに紛れてボディタッチをしたりさせたり…と、カオスなことになっている。
「あれは…嬉しくないな」
「痴女ね、痴女」
何人もの女子が群がって、勇に自分の体の凹凸を押しつけ触らせ…という光景に、クレアは目を細め、リズは貴族の恥だと吐き捨てた。
「あー、シラ先生! 5つ投げてください!」
見かねたアゲハは少し大きめの声でシラに頼んだ。
石を自力で転移させる手もあった。しかしアゲハたちは、まだ魔力コントロールができないからと年下のクラスへ編入させられた身だ。ならばこういうときはやってもらうに限るだろう、と、設定を思い出したのであって…。
…面倒だからやってもらおう、と思ったわけではない。そう、そんなわけではない。
アゲハにも怠惰が感染し始めたところで、手元に寸分の狂いなく魔石が飛んできた。それも、きちんと5人それぞれの手元に投げられている。
「あの人ごみの中から…」
「すごいわね…」
ペタとリズに、アゲハは心の中で同意する。
シラはやはり、なかなかの実力者のようだ。
「じゃあやろうぜ」
何事もなかったかのようにクレアが言う。
クレアの順応性は高すぎるな。俺が魔王だと明かしても驚かないかもしれない…。なかなかに面白い。
暇つぶしが残念勇者しかなかったアゲハは、面白いことに飢えていた。
「力を込めるというより、魔力を馴染ませるんだよな…」
フレイが呟いて、集中し始めた。それを皮切りに、それぞれが慎重に魔力を込め始める。アゲハも手の中の石に目線を落とした。
さて、どうしたものか…。一応属性は闇と自然系、時として様々と設定しようかと思うから、ここはやはり闇で行くべきだろうか。光や自然系だと、奴と被りそうで嫌だしな…。
などと考えているうちに魔力を込めすぎ、魔石は砕けた。
魔王の魔力なのだ、魔石とはいえただの石ころが耐えられなくて当然である。
「アゲハ! 俺、新しいのもらってくる!」
アゲハの白い手のひらの上で粉々になっている魔石だったものを見て、フレイが慌てる。
お前のようなお人好しは、嫌いではないぞ。
アゲハの気持ちが傾いた。
それなりに気に入った人間は、それなりの扱いをしてやろう。
決めたアゲハは爽やかな笑顔を浮かべ、今にも走り出しそうなフレイを引き止めた。
「大丈夫、まだ使える」
大量の魔力を流し破壊した魔石にさらに魔力を流すと、砕けた魔石が溶けて液状になり、それが集まって再び固体として定着することで純度のより高い魔石となる。
その魔石で魔武器生成を行うのが、先程のフレイの説明からは抜けていた魔武器の強化生成だ。
強化生成をやはり知らなかったようで、フレイは動揺している。
良かろう。ではその目の前で、わざわざ強化生成を見せてやる。
久しぶりにアゲハの胸が高鳴った。
とはいえ、剣や魔剣は気分で使い分けられるくらい持っている。何を作るか…異世界ファンタジー…現実…歴史…。
強力な紫の光が辺りを包んだあと、連想ゲームをしていたアゲハの手にあったのは白と黒2本の刀だった。
鞘から抜くと、刀身が黒紫に妖しく輝く。闇の属性魔力が込められている証拠だ。
「ほら」
砕けた魔石でもできただろう、とアゲハは首を傾げてみせる。
一瞬の沈黙。
そして。
「すげえー!!」
「これは…強化生成か? 初めて見た…」
「ボクもやりたい…」
「なんて魔力なの…」
フレイ、クレア、ペタ、リズまで、全員が自分の生成を中断して見ていた。
それぞれバラバラな反応をしているが、唯一クレアだけは強化生成の知識があったようだ。人間界ではまったく知られていない、というわけではなかったらしい。
「おい誰だ~強化生成したやつ~」
シラの問いかけ。
しかしその瞬間に、まばゆい光が辺り一帯を包んだ。
………………言わずもがな、残念勇者だ。
魔力の制御ができず、結果的に強化生成となっていた。
「フハハハハッ! さすが」
勇者なだけあって世界の勇者補正は凄まじいようだ。あんな奴でも強くしたいらしい。
まあいいさ。少しくらい強くないと、張り合い甲斐がない。
アゲハは腹を抱えて笑いながら、一応横目で状況を確認した。
横でフレイたちが目を丸くしていた。
アゲハのフハハ笑いを初めて見るからだろう。
人間どもの感想などどうでも良い、と気にせずもう一度笑って、腹がよじれそうになってから、アゲハはようやく笑いを収めた。
勇者の取り巻きたちが口々に囃し立てて騒いでいるため、アゲハが派手に笑ったところで近くの者にしか聞こえない。
それに、そもそも結界がある。クラスメイトの大半はアゲハが笑ったことすら知らないだろう。
「…アゲハ…そっちが本性?」
笑いが治まった頃に、ペタが青い髪を揺らして問いかけた。引き気味だ。リズも困惑顔をしている。
「ん? ああ、そうそう」
アゲハはテキトーに答える。
やはり繊細で爽やかな好青年というキャラには無理があった。地球ではまだ頑張れたが、自分の世界に帰ってくると、どうしても元の性格が出てしまう。
「なんだ、普通で良かったのに! 遠慮するなよ!」
フレイがアゲハの肩を抱く。
友達だろ? という意味らしい。端的にいえば、暑苦しい。アゲハは回ってきた腕をさりげなく落とした。
「じゃあそうさせてもらおうか。よく偉そうって言われるからさ」
言い訳を並べる。
結界を破った相手には弁舌で勝負するしか…ないわけではないが、今はそうしている。
「別に良いわよ、それくらい…。よし、わたしも強化生成できたわ」
俺よりも魔武器に興味津々とは変な女だ、とアゲハは興味深く思った。
もちろん恋愛感情などというものではない。
この4人の中で、リズはわずかながら実力で劣る。それなのにクズ避けに引っかからなかったのはそういうわけか、と納得していたのだ。
澄ました顔で生成を終えたリズだが、強化生成できたことは嬉しそうだ。
フレイやクレアには及ばず、アゲハ基準では底辺だとしても、初めての強化生成を一度でできる者は少ない。人間としては、リズもそれなりの実力者だと言える。
リズの両手には、鍔の部分に雪の結晶の彫刻が施された細剣があった。
「スピアーよ、よろしくね」
名前を付けなければ能力がわからないんだった。
武器に名を付け挨拶するという一見妙なリズに、アゲハは昔の記憶を掘り起こす。
「じゃあお前らは、白い方が沖田で黒い方が斎藤な」
他意はない。
「和国の人名みたいだな」
自らも強化生成を終えたクレアの冷静なツッコミ。
クレアの手には身長を超える長さの杖があった。単なる木のようだが、先には術式が既に組まれている。高性能な後方支援型の魔武器だ。
アゲハはまた昔の記憶を探る。和国…そういえばこっちにも地球の日本みたいな国があったな、と思い出す。東の果てにあり、魔界との交流もあったはずだ。
ただ、今はそれよりも魔武器についてだ。
「クレアのは原田にでもするか?」
「…よくわからんがやめておく。アゲハに笑われそうだ」
「それは残念」
少しも残念だと思っていない様子でアゲハは肩をすくめる。
「アゲハ…良い性格だな」
「だろ?」
ひねくれている、と暗に言ったクレアだが、アゲハは「性格が良い」という意味だと解釈することにする。
そのくらいの傲慢さがなければ魔王など務まらない。
――アゲハは神に逆らっただけだ。
他の歴代魔王だって傲慢だったが、神には歯向かわなかった。
それが歴代魔王とアゲハ、いやノワールとの違いだ。
「俺たちもできたぜ! フェニックスだ!」
「ボクも…ルナだよ!」
刀身に焔をまとう大剣を見せるフレイと、アーチェリー競技用に近い形状の弓をもつペタ。
「へえ、すごいな」
「すごいな、全然すごそうに聞こえないぞ」
感嘆の声を上げたアゲハに、またもクレアの冷静なツッコミ。
魔王なのだからこの程度の武器で驚くはずはない。なんなら同じようなものはいくつも持っている。
談笑していると、別の場所で「シャイニングサン!」と勇が叫んだのが聞こえた。
直訳すると、太陽の光の太陽…。
またしてもアゲハは笑いを堪えられなかった。
あまりにも勇者の両手剣が光るので、勇は仕舞えとシラに怒られている。
その光景に加速するアゲハの笑い声。
「アゲハ…こんなに笑うのね…」
「ボクちょっと怖いかも…」
「笑うと腹筋が鍛えられるよな!」
「アゲハの性格が掴めん…」
引き気味なリズとペタに、快活だがどこかおかしいフレイ、顎に手を当てて悩むクレア。
ペタの感想がある意味で1番正しかった。
「えー」
嫌そうにするフレイだが、シラのこういう人任せ行為には慣れているようで口答えせず説明を始めた。
「魔武器生成とは、魔石に魔力を流して自分の最も使いやすい武器をつくることです。魔武器と一般の武器との違いは、魔武器は喚び出せば出てくるので常に携帯する必要がない点と、一度生成すると壊れず、壊れても喚び直せば修復されている点です。魔武器生成に用いる魔石は自然界の魔力が石に蓄積したもので、純度によって魔武器の性質も異なります……くらいですか?」
「おし、というわけだからこの魔石に各自魔力を流せ~」
説明をすべてフレイに押し付けたシラが手のひらに収まるサイズの黒っぽい石ころを掲げて見せる。
「フレイってバカじゃないんだな」
強化生成の説明は抜けているが、もしかすると人間界では知られていないことかもしれない。
アゲハは、他の説明は概ねできていたしな…と黙っておくことにした。
「フレイはテンションがバカなだけだから、頭はバカじゃないんだ」
アゲハに答えるクレアは真面目そのものだ。
「そうそう…って、テンションがバカってなんだよ⁉」
「ほら」
「そういうとこ…」
「バカっぽいのよ」
クレア、ペタ、リズのナイスコンビネーション。
フレイは崩れ落ちた。
「さ、魔石取りに行こうぜ」
クレアは何事もなかったかのように続ける。
これがこの4人のデフォルトなのだろう。
「あ…ボク、あの中行きたくないかも…」
ペタが指差す先には、シラが――厳密には魔石に群がるクラスメイトがいた。
そこへ勇者と取り巻きも混ざって、どさくさに紛れてボディタッチをしたりさせたり…と、カオスなことになっている。
「あれは…嬉しくないな」
「痴女ね、痴女」
何人もの女子が群がって、勇に自分の体の凹凸を押しつけ触らせ…という光景に、クレアは目を細め、リズは貴族の恥だと吐き捨てた。
「あー、シラ先生! 5つ投げてください!」
見かねたアゲハは少し大きめの声でシラに頼んだ。
石を自力で転移させる手もあった。しかしアゲハたちは、まだ魔力コントロールができないからと年下のクラスへ編入させられた身だ。ならばこういうときはやってもらうに限るだろう、と、設定を思い出したのであって…。
…面倒だからやってもらおう、と思ったわけではない。そう、そんなわけではない。
アゲハにも怠惰が感染し始めたところで、手元に寸分の狂いなく魔石が飛んできた。それも、きちんと5人それぞれの手元に投げられている。
「あの人ごみの中から…」
「すごいわね…」
ペタとリズに、アゲハは心の中で同意する。
シラはやはり、なかなかの実力者のようだ。
「じゃあやろうぜ」
何事もなかったかのようにクレアが言う。
クレアの順応性は高すぎるな。俺が魔王だと明かしても驚かないかもしれない…。なかなかに面白い。
暇つぶしが残念勇者しかなかったアゲハは、面白いことに飢えていた。
「力を込めるというより、魔力を馴染ませるんだよな…」
フレイが呟いて、集中し始めた。それを皮切りに、それぞれが慎重に魔力を込め始める。アゲハも手の中の石に目線を落とした。
さて、どうしたものか…。一応属性は闇と自然系、時として様々と設定しようかと思うから、ここはやはり闇で行くべきだろうか。光や自然系だと、奴と被りそうで嫌だしな…。
などと考えているうちに魔力を込めすぎ、魔石は砕けた。
魔王の魔力なのだ、魔石とはいえただの石ころが耐えられなくて当然である。
「アゲハ! 俺、新しいのもらってくる!」
アゲハの白い手のひらの上で粉々になっている魔石だったものを見て、フレイが慌てる。
お前のようなお人好しは、嫌いではないぞ。
アゲハの気持ちが傾いた。
それなりに気に入った人間は、それなりの扱いをしてやろう。
決めたアゲハは爽やかな笑顔を浮かべ、今にも走り出しそうなフレイを引き止めた。
「大丈夫、まだ使える」
大量の魔力を流し破壊した魔石にさらに魔力を流すと、砕けた魔石が溶けて液状になり、それが集まって再び固体として定着することで純度のより高い魔石となる。
その魔石で魔武器生成を行うのが、先程のフレイの説明からは抜けていた魔武器の強化生成だ。
強化生成をやはり知らなかったようで、フレイは動揺している。
良かろう。ではその目の前で、わざわざ強化生成を見せてやる。
久しぶりにアゲハの胸が高鳴った。
とはいえ、剣や魔剣は気分で使い分けられるくらい持っている。何を作るか…異世界ファンタジー…現実…歴史…。
強力な紫の光が辺りを包んだあと、連想ゲームをしていたアゲハの手にあったのは白と黒2本の刀だった。
鞘から抜くと、刀身が黒紫に妖しく輝く。闇の属性魔力が込められている証拠だ。
「ほら」
砕けた魔石でもできただろう、とアゲハは首を傾げてみせる。
一瞬の沈黙。
そして。
「すげえー!!」
「これは…強化生成か? 初めて見た…」
「ボクもやりたい…」
「なんて魔力なの…」
フレイ、クレア、ペタ、リズまで、全員が自分の生成を中断して見ていた。
それぞれバラバラな反応をしているが、唯一クレアだけは強化生成の知識があったようだ。人間界ではまったく知られていない、というわけではなかったらしい。
「おい誰だ~強化生成したやつ~」
シラの問いかけ。
しかしその瞬間に、まばゆい光が辺り一帯を包んだ。
………………言わずもがな、残念勇者だ。
魔力の制御ができず、結果的に強化生成となっていた。
「フハハハハッ! さすが」
勇者なだけあって世界の勇者補正は凄まじいようだ。あんな奴でも強くしたいらしい。
まあいいさ。少しくらい強くないと、張り合い甲斐がない。
アゲハは腹を抱えて笑いながら、一応横目で状況を確認した。
横でフレイたちが目を丸くしていた。
アゲハのフハハ笑いを初めて見るからだろう。
人間どもの感想などどうでも良い、と気にせずもう一度笑って、腹がよじれそうになってから、アゲハはようやく笑いを収めた。
勇者の取り巻きたちが口々に囃し立てて騒いでいるため、アゲハが派手に笑ったところで近くの者にしか聞こえない。
それに、そもそも結界がある。クラスメイトの大半はアゲハが笑ったことすら知らないだろう。
「…アゲハ…そっちが本性?」
笑いが治まった頃に、ペタが青い髪を揺らして問いかけた。引き気味だ。リズも困惑顔をしている。
「ん? ああ、そうそう」
アゲハはテキトーに答える。
やはり繊細で爽やかな好青年というキャラには無理があった。地球ではまだ頑張れたが、自分の世界に帰ってくると、どうしても元の性格が出てしまう。
「なんだ、普通で良かったのに! 遠慮するなよ!」
フレイがアゲハの肩を抱く。
友達だろ? という意味らしい。端的にいえば、暑苦しい。アゲハは回ってきた腕をさりげなく落とした。
「じゃあそうさせてもらおうか。よく偉そうって言われるからさ」
言い訳を並べる。
結界を破った相手には弁舌で勝負するしか…ないわけではないが、今はそうしている。
「別に良いわよ、それくらい…。よし、わたしも強化生成できたわ」
俺よりも魔武器に興味津々とは変な女だ、とアゲハは興味深く思った。
もちろん恋愛感情などというものではない。
この4人の中で、リズはわずかながら実力で劣る。それなのにクズ避けに引っかからなかったのはそういうわけか、と納得していたのだ。
澄ました顔で生成を終えたリズだが、強化生成できたことは嬉しそうだ。
フレイやクレアには及ばず、アゲハ基準では底辺だとしても、初めての強化生成を一度でできる者は少ない。人間としては、リズもそれなりの実力者だと言える。
リズの両手には、鍔の部分に雪の結晶の彫刻が施された細剣があった。
「スピアーよ、よろしくね」
名前を付けなければ能力がわからないんだった。
武器に名を付け挨拶するという一見妙なリズに、アゲハは昔の記憶を掘り起こす。
「じゃあお前らは、白い方が沖田で黒い方が斎藤な」
他意はない。
「和国の人名みたいだな」
自らも強化生成を終えたクレアの冷静なツッコミ。
クレアの手には身長を超える長さの杖があった。単なる木のようだが、先には術式が既に組まれている。高性能な後方支援型の魔武器だ。
アゲハはまた昔の記憶を探る。和国…そういえばこっちにも地球の日本みたいな国があったな、と思い出す。東の果てにあり、魔界との交流もあったはずだ。
ただ、今はそれよりも魔武器についてだ。
「クレアのは原田にでもするか?」
「…よくわからんがやめておく。アゲハに笑われそうだ」
「それは残念」
少しも残念だと思っていない様子でアゲハは肩をすくめる。
「アゲハ…良い性格だな」
「だろ?」
ひねくれている、と暗に言ったクレアだが、アゲハは「性格が良い」という意味だと解釈することにする。
そのくらいの傲慢さがなければ魔王など務まらない。
――アゲハは神に逆らっただけだ。
他の歴代魔王だって傲慢だったが、神には歯向かわなかった。
それが歴代魔王とアゲハ、いやノワールとの違いだ。
「俺たちもできたぜ! フェニックスだ!」
「ボクも…ルナだよ!」
刀身に焔をまとう大剣を見せるフレイと、アーチェリー競技用に近い形状の弓をもつペタ。
「へえ、すごいな」
「すごいな、全然すごそうに聞こえないぞ」
感嘆の声を上げたアゲハに、またもクレアの冷静なツッコミ。
魔王なのだからこの程度の武器で驚くはずはない。なんなら同じようなものはいくつも持っている。
談笑していると、別の場所で「シャイニングサン!」と勇が叫んだのが聞こえた。
直訳すると、太陽の光の太陽…。
またしてもアゲハは笑いを堪えられなかった。
あまりにも勇者の両手剣が光るので、勇は仕舞えとシラに怒られている。
その光景に加速するアゲハの笑い声。
「アゲハ…こんなに笑うのね…」
「ボクちょっと怖いかも…」
「笑うと腹筋が鍛えられるよな!」
「アゲハの性格が掴めん…」
引き気味なリズとペタに、快活だがどこかおかしいフレイ、顎に手を当てて悩むクレア。
ペタの感想がある意味で1番正しかった。
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これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
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