上 下
6 / 9

6 吸い込まれるご飯

しおりを挟む
ルディが俺のお腹の音が気に入ったみたいで、くぉー。と鳴く度にクツクツ笑ってお腹を撫でてくる。

「すぐに食わせてやるからな」
「お腹を撫でるのやめい」

ぺちっとお腹の手を叩く。
ただ今ピルスナーに乗って、ルディおすすめのお店へと向かう途中。
ルディの家の近くに美味しいご飯屋さんがあるみたい。
道中は建物や人々を眺めていた。RPGゲームの街並みに似た景色は、ちょっとした海外旅行気分。

着いたお店もアットホーム感のある可愛らしい外観で、外国の田舎のおばあちゃん家っぽい。自分で言っててよくわかってないけど。
ルディが先にドアを開けて中に入ると、元気の良い声で「いらっしゃい!あ、ジョルディじゃないか。今日もいつものか?」という本当に常連客らしい台詞が聞こえてきた。

「いや、今日は連れがいるんだ。紹介するよ」

そう言ってルディに背中を押されて前に出された。
爽やかな見た目の店員さん?が俺を見て驚いてる。

「えっどちら様!?この辺の人じゃないよな?」
「この子は移り人だ。今日から私の家で一緒に生活をする。これからも連れてくるから覚えておいてくれ」
「移り人!へぇー久々だなぁ。ジョルディと一緒に住むねぇ。良かったじゃないか!俺はパーテル、この店の店主だ。よろしくな!」

キラッと爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。凄い良い人感出てる~。

「俺は氷置  格です!よろしくお願いします」
「彼のことはヒオキと呼んでくれ」

ジョルディがイタルの肩を自身に引き寄せながら言う。
それを見たパーテルも苦笑しながら、

「わかったわかった。ヒオキでいいか?」
「うん。俺はパーテルさんで大丈夫?」
「もちろん!今日はヒオキとジョルディのお祝いだな!奢りだ!好きなもの頼めよ!」

凄く元気な人だなー。
お祝いってなんだろ?

イタルはジョルディに促されるまま席に着き、向かい合わせにジョルディが座るとメニュー表を広げて説明をしてくれた。
ステーキや煮込みが美味しいらしいので、煮込みを頼むと、ビーフシチューっぽい物とバゲットパンがゴロゴロ出てきた。
肉は牛じゃないからビーフじゃないけど。

ここの人達は体が大きいからシチューもどんぶりみたいな器でちょっと困った。
食べ盛りの俺でもギリギリかも…。

日本人としてはお残しは許されへんで~!と意気込んで、いただきますをしてからスプーンを突っ込み、パクリと口に含む。

「美味いっ」

煮込まれたお肉はホロホロとスプーンで崩れるくらいに柔らかく、ごろっと入っている野菜は素材からして美味しい。
夢中になってもぐもぐしていると、ルディの方に運ばれてきたステーキを細かくカットしているなーって思ったら、フォークに刺したお肉をこちらに向けてきた。

「はい、あーん」
「へ?あー?んぐ」

反射的に口を開けるとお肉を突っ込まれた。
もぐもぐすると肉汁がどわっと出てきたのに、この肉汁全然油っぽくない。

「んんー!ん!」
「美味いか?」
「んっ、ごくっ…すごい!こんな美味しいお肉初めて食べた!」

そうか、と言いながらカットされたお肉を俺がシチューを食べるあいまにタイミング良く口に入れてくる。
美味しいから食べるじゃん?そしたらまた口に新たなお肉が近づくんだよ。無限ループかな?

たまにパンをはさんで、シチューとステーキを食べていると俺の腹はぱんぱんに満たされた。

「はぁ~…もう食べられない…」
「ん?まだ残ってるけど、もういらないのか?」

シチューが3分の1とパンが2個残ってしまった。でももう無理。これ以上食べると吐いちゃう。

ぽんぽこになったお腹をさすってアピールすると、ルディも納得してくれて俺が残したシチューとパンをぺろりと平らげた。
そしてパーテルさんに挨拶をしてから店をあとにした俺たちはルディの家に到着した。
買い物は時間も時間だからと、明日に行くことにして。

ピルスナーを自宅横の厩舎に入れ、ピルスナー用のご飯と水を用意してから家の中の案内をするから少し待っててくれと言われたので、俺も手伝った。
水を桶に入れるという、子供のお手伝いっぽいものだけど。
森からここまで乗せてくれたピルスナーへのお礼を言うと、ピルスナーが俺の顔をベロンっと舐めてくれた。

おっ?と思ったらガサッと紙袋の音がして、俺はハッとする。

あれ…?俺、紙袋被ったままご飯食べてた…!!??

え?どういう原理???

またしても俺はスペースを背負った猫ちゃんになるのだった。




********


パーテル視点→ご飯がマスクに吸い込まれ……???

ルディ視点→たくさんお食べ。



ちなみに紙袋は装備だとみんな思ってます。
フルフェイスマスク的な。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

耳の聞こえない僕があなたの声を聞くまでの物語

さばさん
BL
僕は生まれつき声が聞こえない。

蔑まれ王子と愛され王子

あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子 蔑まれ王子 顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。 基本的なことは1人でできる。 父と母にここ何年もあっていない 愛され王子 顔が美しく、次の国大使。 全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える 兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ 父と母はこの世界でいちばん大嫌い ※pixiv掲載小説※ 自身の掲載小説のため、オリジナルです

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

処理中です...