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本編
35 休憩所
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御神輿の奉納をするまではあちこち見て回ろうと思っていたのに、おっちゃんのせいで居づらい。
そんなテンの様子はディオーレンとヴィジスタに筒抜けで、ひょいとヴィジスタがテンを抱き上げると認識阻害の魔法を3人にかけた。
あっという間に突き刺さる視線が無くなり、ホッと息をつく。
「オーリ、テンを休ませよう。どこかいい所知ってる?」
「そうだな、鳥居の近くにある休憩所に行こう。オルタリア家専用の休憩所を用意してある」
「ふぅん。もちろん見えないようにしてあるよね?」
「当たり前だ」
「じゃあそこに行こう」
ぽてりとヴィジスタの肩に頭を乗せているテンに、2人は優しくキスを落として歩き始めた。
はぁ…せっかくのお祭りなのに…おっちゃんのバカぁー…。
お祭りは大体4~5時間ほどを目安にしているからまだまだ時間はあるけれど、隅から隅まで楽しみたかったテンにしてみれば本当に余計なことをしやがって…!!と恨み節もでるものだ。
人混みをするすると通り抜けると、鳥居の前の広場に出る。
特設ステージは鳥居から見て右側に、お祭り運営団体の受付と休憩所が左側に、そして随所にお客さんが休憩できる椅子とテーブルがある。
休憩所はオルタリア家専用と運営団体に別れているので、気兼ねなく休憩できる。
そもそもオルタリア家としてはテン専用の休憩所として設置したような物だから、他の家族は全く使用する気もなかった。
それを知ってるのもテン以外で、テンには変に気を使わなくて良いように知らせなかった。
レンガ造りの小屋と呼ぶには少し大きい休憩所は前面にガラス張りの大きい窓がある。
休憩していてもお祭りが見えるように配慮されていて、中にあるソファに座ると雑音もなく静かな空間で楽しめる仕様だ。
もちろん外からは全く見えない。
ヴィジスタにソファへと降ろされたテンはふぅと息をつく。
お祭りの賑やかさは楽しいけれど、やはり人混みでの気疲れは体に負担をかけていた。
テンの左右に2人は座り、顔を覗き込む。
「少し顔色が悪いね。御神輿が広場に集まるまでゆっくり休もうか」
「うん。ちょっと疲れちゃった…」
「ほら、果実のジュース。オレンジのやつ好きだろ?」
「ディー、ありがとー」
ディオーレンは魔法でキンキンに冷やしたオレンジジュースをマジックボックスから取り出した。
甘いけれど酸味のあるオレンジジュースを満足そうにんくんくと飲むテンの様子に、2人も安堵する。
ヴィジスタはテンとオーリから商会長の話は聞いていて、良い人なんだけど面倒臭いという人柄もテンの愚痴で知っていた。
確かにアレは面倒臭いだろうなと思った。
他の人であればサラッと流される会話だろうが、アレはテンとの相性が悪い。
害はなさそうだから放っておいているが、あまり会わせたいとは思えない人物だった。
ヴィジスタはボーッと目の前のお祭りの広場を眺めているテンの頭にちゅっちゅっとキスを落とす。
反対に座っているディオーレンも空になったコップを取り、水滴のついた手のひらをちゅっちゅっと吸っている。
「ん…くすぐったいよディー…」
「ちゅ…ヴィズ。少し、遊ぼうか」
「ふふ、そうだね。オーリもそのつもりで用意したんだよね」
「当たり前だ」
「ん?何をして遊ぶの?」
未だにちゅっちゅっとテンにキスをする2人のやり取りに、テンは首を傾げる。
この意味を知るのはあと数秒後。
そんなテンの様子はディオーレンとヴィジスタに筒抜けで、ひょいとヴィジスタがテンを抱き上げると認識阻害の魔法を3人にかけた。
あっという間に突き刺さる視線が無くなり、ホッと息をつく。
「オーリ、テンを休ませよう。どこかいい所知ってる?」
「そうだな、鳥居の近くにある休憩所に行こう。オルタリア家専用の休憩所を用意してある」
「ふぅん。もちろん見えないようにしてあるよね?」
「当たり前だ」
「じゃあそこに行こう」
ぽてりとヴィジスタの肩に頭を乗せているテンに、2人は優しくキスを落として歩き始めた。
はぁ…せっかくのお祭りなのに…おっちゃんのバカぁー…。
お祭りは大体4~5時間ほどを目安にしているからまだまだ時間はあるけれど、隅から隅まで楽しみたかったテンにしてみれば本当に余計なことをしやがって…!!と恨み節もでるものだ。
人混みをするすると通り抜けると、鳥居の前の広場に出る。
特設ステージは鳥居から見て右側に、お祭り運営団体の受付と休憩所が左側に、そして随所にお客さんが休憩できる椅子とテーブルがある。
休憩所はオルタリア家専用と運営団体に別れているので、気兼ねなく休憩できる。
そもそもオルタリア家としてはテン専用の休憩所として設置したような物だから、他の家族は全く使用する気もなかった。
それを知ってるのもテン以外で、テンには変に気を使わなくて良いように知らせなかった。
レンガ造りの小屋と呼ぶには少し大きい休憩所は前面にガラス張りの大きい窓がある。
休憩していてもお祭りが見えるように配慮されていて、中にあるソファに座ると雑音もなく静かな空間で楽しめる仕様だ。
もちろん外からは全く見えない。
ヴィジスタにソファへと降ろされたテンはふぅと息をつく。
お祭りの賑やかさは楽しいけれど、やはり人混みでの気疲れは体に負担をかけていた。
テンの左右に2人は座り、顔を覗き込む。
「少し顔色が悪いね。御神輿が広場に集まるまでゆっくり休もうか」
「うん。ちょっと疲れちゃった…」
「ほら、果実のジュース。オレンジのやつ好きだろ?」
「ディー、ありがとー」
ディオーレンは魔法でキンキンに冷やしたオレンジジュースをマジックボックスから取り出した。
甘いけれど酸味のあるオレンジジュースを満足そうにんくんくと飲むテンの様子に、2人も安堵する。
ヴィジスタはテンとオーリから商会長の話は聞いていて、良い人なんだけど面倒臭いという人柄もテンの愚痴で知っていた。
確かにアレは面倒臭いだろうなと思った。
他の人であればサラッと流される会話だろうが、アレはテンとの相性が悪い。
害はなさそうだから放っておいているが、あまり会わせたいとは思えない人物だった。
ヴィジスタはボーッと目の前のお祭りの広場を眺めているテンの頭にちゅっちゅっとキスを落とす。
反対に座っているディオーレンも空になったコップを取り、水滴のついた手のひらをちゅっちゅっと吸っている。
「ん…くすぐったいよディー…」
「ちゅ…ヴィズ。少し、遊ぼうか」
「ふふ、そうだね。オーリもそのつもりで用意したんだよね」
「当たり前だ」
「ん?何をして遊ぶの?」
未だにちゅっちゅっとテンにキスをする2人のやり取りに、テンは首を傾げる。
この意味を知るのはあと数秒後。
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