33 / 42
本編
28 オルタリア家の人たち
しおりを挟む
「おい、いつまで揉んでるんだよ」
ニコニコ笑いながら、もにもにとおれの腕を揉んでいたロズディオンに、ディオーレンが注意しながら握っていた手を叩き落として腕を解放してくれた。
ベシリと叩かれた手をプラプラと揺らしながら、
「ああ、残念。もっと触らせてくれてもいいのに」
と残念そうに眉を下げているがやっぱり目が笑ってる。
「減る」
「減らないよ」
「なんでお前が決めるんだよ」
「ね?テンもそう思うよね?」
ひえっ…こっちに話ふらないでよ…っ!
ビクリと震えたおれを、ディオーレンが左に寄せてロズディオンから見えない所に匿ってくれた。
ディーの双子の弟のロズディオンはちょっぴり苦手だ。
……………すみません。ちょっぴりじゃないです…だいぶ苦手です。
何考えてるか分からないんだもん。
ディオーレンと同じ赤毛に琥珀色の瞳で目尻は少し下がっている。甘い雰囲気を醸し出す外見はさぞや恋人に事欠かないであろう。
特に次期侯爵当主であるロズディオンは外面も良い。ニコニコ微笑みながら人の裏を探るのが趣味だってディーに聞いたことがある。
なんつー趣味だよ。
ディーには人の裏を読むって無理だもんね…そんなディーだから好きなんだけど…って恥ずっ。
だから初対面の時にはずっとニコニコ微笑んでいるロズディオンが怖くて怖くて…。普通の子供だったら微笑んでいるお兄さんにしか見えないから安心して懐くかもしれないけど、おれには威嚇されているようにしか思えなかった。
極力関わらないようにしていたら、それがロズディオンには新鮮だったみたいで、何故かめちゃくちゃ懐かれたんだよ…何で?
それから何かとちょっかいをかけられるようになったんだけど、被害があるわけじゃないから嫌とも言えない。
ただこっちが勝手に警戒してるだけなんだよねぇ。なんか怖いから。
隠れてホッと息をついたところをオルタリア家のご両親に微笑ましげに見られていた。
「ふふっオーリもロジィもテンちゃんの事が大好きだね。もちろん私達も大好きだけどね」
「ああ、こんなに可愛くておもしろ…頼もしい嫁がオーリのところに来てくれるなんて嬉しい限りだ」
ちょっ、ディーの父ちゃん!今面白いって言ったよね!?聞こえてるかんな!!
侯爵家当主のブレイブ・オルタリアは赤毛に琥珀色瞳で当主になる前は王族の近衛兵隊長を勤めていた。隊長と言うだけあって筋骨隆々……とまではいかないが、かなり鍛えられているのがわかる。
実践向きの筋肉って感じ?
おれの左に座っているのはディーの母親、侯爵夫人のラバニャ・オルタリア。
腰まである真っ直ぐの栗毛は緩く一つにまとめて前に垂らしていて、ディーと同じ翡翠色の瞳はいつも優しく、身長が190センチを超えてなければ女性にしか見えない。
甘々なオルタリア家の人達だが、テンをからかって遊ぶのもまた楽しんでいるので、色んな表情で反応するテンが可愛くてしょうがない。
ぷくっと頬を膨らまして不満気なテンの姿に、オルタリア家の人は見悶える。
うちの子(嫁)可愛い…!!と。
「ゴホン…皆様、そろそろ宜しいですか?お祭りについて話し合いを進められないとテン様との御昼食会は無しになりますよ」
執事のドムさんが窘めるように発言すると、一斉に「ではお祭りについて詳しく聞こうか」と姿勢を正した。
ドムさんありがとう…!でも昼食会って何?今初めて聞いたけど?普通のお昼ご飯の事だよね?
執事のドムさんは50歳くらいの細身のナイスミドル。細身とは言っても適度な筋肉がついていて、190オーバーの身長に見合った肉体はシュッとしていて凄く格好いい。
ディーの剣術の師匠としての面を持つ凄腕の執事さんだ。うーん、マンダム。
「さっきの紙をもう一度見せてくれるかな?」
「…はい」
侯爵家当主であるブレイブ・オルタリアは先程までの甘さはなりを潜め、仕事のスイッチを入れたようだ。
この切り替えにテンはちょっぴり怖気付く。
真剣に紙を見つめながら色々と質問をしてくるブレイブに、必死でテンは答えを返す。
どんな出店がいいのか、人混みはどのくらいになるのか、御神輿は何故人が担ぐのか、時間はどのくらいになるのかetc.etc.etc.……
必死なあまりにテンは7歳とは思えない程の知識と応答に、オルタリア家の人達は苦笑を漏らしながらも自領にとってのメリットとデメリットを計算していく。
テンの目がくるくると回り始めた頃、ようやくお昼になり、解放された。
くるくるどころじゃないお目目はぐるぐるだ。
くったりと疲れきっているテンの背中をポンポンと宥めながら、ディオーレンはテンを抱えて移動する。テンはこっくりこっくりと船をこいでいる。
それを眺めながら隣を歩くのはロズディオンだ。
「うーん、テンは天使のテンだったんだねぇ?」
「はあ?」
「だって神の御使いでしょ?天使って」
「何言ってんだ?テンが天使なのは今に始まった事じゃねぇだろ」
「そういう意味じゃないんだけどね。オーリは相変わらず脳筋だねぇ」
「あ?バカにしてんのか?」
「してないよ。そのままでいてねって話」
ニコニコと笑うロズディオンに、ディオーレンはため息をつく。
「あんまりテンをからかってやるなよ。まだ警戒してんだろーが」
「いやぁ、それが可愛くてしょうがないんだよ。周りにはベタベタと近寄ってくる奴しかいないからね」
「それが楽しくてしょうがねぇって顔してる奴は誰だよ」
「誰だろうねぇ?」
ふふふふっと笑うロズディオンに、ディオーレンはイイ性格してるよとため息をつく。
だがそのお陰で侯爵家を継がなくていいのだからディオーレンにとっては幸いだった。
********
テンちゃんのパパママより先に出るオルタリア家のご両親(笑)
ニコニコ笑いながら、もにもにとおれの腕を揉んでいたロズディオンに、ディオーレンが注意しながら握っていた手を叩き落として腕を解放してくれた。
ベシリと叩かれた手をプラプラと揺らしながら、
「ああ、残念。もっと触らせてくれてもいいのに」
と残念そうに眉を下げているがやっぱり目が笑ってる。
「減る」
「減らないよ」
「なんでお前が決めるんだよ」
「ね?テンもそう思うよね?」
ひえっ…こっちに話ふらないでよ…っ!
ビクリと震えたおれを、ディオーレンが左に寄せてロズディオンから見えない所に匿ってくれた。
ディーの双子の弟のロズディオンはちょっぴり苦手だ。
……………すみません。ちょっぴりじゃないです…だいぶ苦手です。
何考えてるか分からないんだもん。
ディオーレンと同じ赤毛に琥珀色の瞳で目尻は少し下がっている。甘い雰囲気を醸し出す外見はさぞや恋人に事欠かないであろう。
特に次期侯爵当主であるロズディオンは外面も良い。ニコニコ微笑みながら人の裏を探るのが趣味だってディーに聞いたことがある。
なんつー趣味だよ。
ディーには人の裏を読むって無理だもんね…そんなディーだから好きなんだけど…って恥ずっ。
だから初対面の時にはずっとニコニコ微笑んでいるロズディオンが怖くて怖くて…。普通の子供だったら微笑んでいるお兄さんにしか見えないから安心して懐くかもしれないけど、おれには威嚇されているようにしか思えなかった。
極力関わらないようにしていたら、それがロズディオンには新鮮だったみたいで、何故かめちゃくちゃ懐かれたんだよ…何で?
それから何かとちょっかいをかけられるようになったんだけど、被害があるわけじゃないから嫌とも言えない。
ただこっちが勝手に警戒してるだけなんだよねぇ。なんか怖いから。
隠れてホッと息をついたところをオルタリア家のご両親に微笑ましげに見られていた。
「ふふっオーリもロジィもテンちゃんの事が大好きだね。もちろん私達も大好きだけどね」
「ああ、こんなに可愛くておもしろ…頼もしい嫁がオーリのところに来てくれるなんて嬉しい限りだ」
ちょっ、ディーの父ちゃん!今面白いって言ったよね!?聞こえてるかんな!!
侯爵家当主のブレイブ・オルタリアは赤毛に琥珀色瞳で当主になる前は王族の近衛兵隊長を勤めていた。隊長と言うだけあって筋骨隆々……とまではいかないが、かなり鍛えられているのがわかる。
実践向きの筋肉って感じ?
おれの左に座っているのはディーの母親、侯爵夫人のラバニャ・オルタリア。
腰まである真っ直ぐの栗毛は緩く一つにまとめて前に垂らしていて、ディーと同じ翡翠色の瞳はいつも優しく、身長が190センチを超えてなければ女性にしか見えない。
甘々なオルタリア家の人達だが、テンをからかって遊ぶのもまた楽しんでいるので、色んな表情で反応するテンが可愛くてしょうがない。
ぷくっと頬を膨らまして不満気なテンの姿に、オルタリア家の人は見悶える。
うちの子(嫁)可愛い…!!と。
「ゴホン…皆様、そろそろ宜しいですか?お祭りについて話し合いを進められないとテン様との御昼食会は無しになりますよ」
執事のドムさんが窘めるように発言すると、一斉に「ではお祭りについて詳しく聞こうか」と姿勢を正した。
ドムさんありがとう…!でも昼食会って何?今初めて聞いたけど?普通のお昼ご飯の事だよね?
執事のドムさんは50歳くらいの細身のナイスミドル。細身とは言っても適度な筋肉がついていて、190オーバーの身長に見合った肉体はシュッとしていて凄く格好いい。
ディーの剣術の師匠としての面を持つ凄腕の執事さんだ。うーん、マンダム。
「さっきの紙をもう一度見せてくれるかな?」
「…はい」
侯爵家当主であるブレイブ・オルタリアは先程までの甘さはなりを潜め、仕事のスイッチを入れたようだ。
この切り替えにテンはちょっぴり怖気付く。
真剣に紙を見つめながら色々と質問をしてくるブレイブに、必死でテンは答えを返す。
どんな出店がいいのか、人混みはどのくらいになるのか、御神輿は何故人が担ぐのか、時間はどのくらいになるのかetc.etc.etc.……
必死なあまりにテンは7歳とは思えない程の知識と応答に、オルタリア家の人達は苦笑を漏らしながらも自領にとってのメリットとデメリットを計算していく。
テンの目がくるくると回り始めた頃、ようやくお昼になり、解放された。
くるくるどころじゃないお目目はぐるぐるだ。
くったりと疲れきっているテンの背中をポンポンと宥めながら、ディオーレンはテンを抱えて移動する。テンはこっくりこっくりと船をこいでいる。
それを眺めながら隣を歩くのはロズディオンだ。
「うーん、テンは天使のテンだったんだねぇ?」
「はあ?」
「だって神の御使いでしょ?天使って」
「何言ってんだ?テンが天使なのは今に始まった事じゃねぇだろ」
「そういう意味じゃないんだけどね。オーリは相変わらず脳筋だねぇ」
「あ?バカにしてんのか?」
「してないよ。そのままでいてねって話」
ニコニコと笑うロズディオンに、ディオーレンはため息をつく。
「あんまりテンをからかってやるなよ。まだ警戒してんだろーが」
「いやぁ、それが可愛くてしょうがないんだよ。周りにはベタベタと近寄ってくる奴しかいないからね」
「それが楽しくてしょうがねぇって顔してる奴は誰だよ」
「誰だろうねぇ?」
ふふふふっと笑うロズディオンに、ディオーレンはイイ性格してるよとため息をつく。
だがそのお陰で侯爵家を継がなくていいのだからディオーレンにとっては幸いだった。
********
テンちゃんのパパママより先に出るオルタリア家のご両親(笑)
22
お気に入りに追加
2,029
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる